事業を志す人は絶対に必読であろう。わたしなどは起業向きでないとよくわかっているので、ただの読み物として読んだわけだが、それでも付箋だらけになってしまった。後から読み返すと何で付箋を貼ったのかよくわからないところもあるが、要するにわたしのような「生まれついてのサラリーマン」からみると、かれのような「生まれついての実業家」の行動がまぶしく映るのであろう。かれが Natural Born の起業家、アントレプレナーであることはさまざまな記述からもうかがえる。もう、なんというか、息をするように事業を興すのだ。アイデアを実行に移すまでの行動力、そして胆力がすばらしい。これこそケインズ先生がおっしゃっていた「アニマル・スピリット」ではないのだろうか。
本書はウォルター・ブロックの『Defending The Undefendable (注:リンク先PDF) 』(1991)を橘玲氏が訳したものだが、あとがきで断っている通り、「翻訳」ではなく「超訳」である。つまり訳者である橘氏自身が原著の論旨をそのままにしつつも、大胆な日本風アレンジが施されている。そのため、「2ちゃんねらー」だの「ホリエモン」だのがぼんぼん出てきて、無防備に読むと「ブロックさんって、日本のこと詳しいんだな」などと思ってしまうので気をつける必要がある(思うわけがないかw)。
著者の中島聡氏は、かつて成毛眞さんらとともにマイクロソフトの日本法人の設立からに携わっていたという、日本のIT黎明期から第一線で活躍されている方のようだ。わたしは不勉強にして存じあげなかったのだが、成毛さんが営業代表ならこちらは技術代表という感じなのだろうか? Life is beautifulというブログを長年運営されているようで、こちらもかなりの有名ブログであり、知らない方が恥ずかしくなった。そう言われてみると、これまでにもTwitterやブログなどを経由してこのサイトのエントリは見たことがある。今回、書籍を購入して初めて著者とサイトを意識したわけだ。わたしもつくづく「オールドメディア」な人間である。
…と、いうことで勘のいい方はすでにお気づきかもしれないが、内容のほとんどが著者のブログ Life is beautiful からの記事という、いわゆる「ブログ本」である(一部雑誌の再録もあるが)。すなわち、著者のブログの熱心な読者なら今更カネを出して買うまでもないという内容である。わたしのように本を買ってからブログを知る、というのは少数派だろう。編集の巧拙はわからないので言及しない。ただ内容の割に値段が高いというのはあると思う。