がんの練習帳 | One of 泡沫書評ブログ

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がんの練習帳 (新潮新書)/中川 恵一

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今年の3月に、父親ががんになったという電話があった。ちょうど例の大震災が起きた直後のことであったが、実際に告知されたのはもう少し前のことらしい。地震があったりして色々大変だったため、連絡するのを少し遅らせたのだろう。初期の胃がんということであった。幸い発見が早かったため、即、入院して手術して事なきを得たらしい。わたしの家系は父方が「脳をやられる」パターンで、母方は「心臓をやられる」パターンが多く、いわゆる「がん家系」ではなかったはずなのに、身内からがんが出たのは少なからずショックであった。(本書を読んで、これがただの「迷信」であることが後にわかるわけだが・・・)

身近な人ががんに罹患することで、色々と思うところもあり、これまで考えないようにしてきた「がん」について少し考えてみようと思ったのが本書を手に取ったきっかけであった。本書によれば、日本人でがんに罹患する人はなんと2人に1人だという。そういわれれば、親類縁者には胃がんだの乳がんだの、結構な数がいた気がするが、皆いつの間にか手術して快復しているため、記憶に残らなかっただけのようである。結局、加齢とともにがんになる可能性が高くなるため、平均寿命が伸びればそれだけがんが(統計上)増えるのもあたりまえ、ということらしい。このように、非常にポピュラーな病気であるはずの「がん」だが、わたしのような者がいることからもわかるように、著者によれば我が国の「がんリテラシ」は非常にお粗末であるようだ。

ということで本書は「がんの予習」のために書かれたものである。たまには本文を引用してみよう。

日本人のおよそ2人に1人が、がんになります。筆者も含めて、読者の半数が、がんに罹るというわけです。そして、日本人の3人に1人が、がんで亡くなっています。65歳以上の高齢者に限れば、2人に1人が、がんで死亡しています。今やがんの半数以上が治癒する時代ですので、高齢者の大半が、がんになっている計算です。(まえがき)

本書、『がんの練習帳』は、読者の皆さんにがんを「練習」して頂くために書いたものです。がんとはいったい何者か、がんにならない生活とは、早期発見のためのがん検診の大切さ、がんと言われた時の心構え、治療法の選択のコツ、がん治療にいくらかかるのか、がんの痛みとのつきあい方、などなど、実用的な情報を、読者の目線で、分かりやすくお話しします。(まえがき)

後半、「死生観」に関連しての著者の宗教観が開陳されており、この部分だけは少々首肯しかねる部分があるが、それはまあご愛嬌であろう。ぜひ健康なうちに読むべき一冊である。