
¥1,680
Amazon.co.jp
著者の中島聡氏は、かつて成毛眞さんらとともにマイクロソフトの日本法人の設立からに携わっていたという、日本のIT黎明期から第一線で活躍されている方のようだ。わたしは不勉強にして存じあげなかったのだが、成毛さんが営業代表ならこちらは技術代表という感じなのだろうか? Life is beautifulというブログを長年運営されているようで、こちらもかなりの有名ブログであり、知らない方が恥ずかしくなった。そう言われてみると、これまでにもTwitterやブログなどを経由してこのサイトのエントリは見たことがある。今回、書籍を購入して初めて著者とサイトを意識したわけだ。わたしもつくづく「オールドメディア」な人間である。
…と、いうことで勘のいい方はすでにお気づきかもしれないが、内容のほとんどが著者のブログ Life is beautiful からの記事という、いわゆる「ブログ本」である(一部雑誌の再録もあるが)。すなわち、著者のブログの熱心な読者なら今更カネを出して買うまでもないという内容である。わたしのように本を買ってからブログを知る、というのは少数派だろう。編集の巧拙はわからないので言及しない。ただ内容の割に値段が高いというのはあると思う。
個人的な話で恐縮だが、じつは最近本業の受託開発で行き詰まりを感じており、日本の受託開発業界に対する「処方箋」と、個人的なレベルで役に立つ「啓蒙書」が同時に書かれている都合のいい本はないものかと探している。マクロな話で「日本の受託開発はもうダメだ」的なブログエントリや本はよくみかけるが、経営者でもないわたしにとってあまり意味のあるものではないし、駄目だ駄目だと連呼されても鬱になるだけだ。それに「日本のIT業界はもうダメ→英語をやってグローバルに通用する技術を」という論旨はうんざりするほどわかったので、正直食傷気味でもある。「もうわかったよ!」と言って、英語の勉強を始めればいいだけなのだが…ちなみに本書も2章「日本のエンジニアは大丈夫か?」で落としておいて、4章「自分を変えて自由になろう」5章「エンジニアとして世界で成功する」でだいたいアルファブロガたちが言っていることと同じことが書かれている。
ただ、著者のバイアスはちゃんと認識しておいた方がいいのかもしれない。著者の略歴を見ると、冒頭に述べたようにマイクロソフトの日本法人設立から携わっていた方で、数年後に米国本社勤務となり、Windows95とIEの開発を手掛けたスーパープログラマである。生粋の”米国育ち”のソフトウェアエンジニアであり、いわゆる日本のIT産業とはカルチャーやバックグラウンドがぜんぜん違う。そういえば本書のオビは梅田望夫氏とdankogaiが書いている。こうしたささいなことも一つの参考になるだろうw こういう方がエンジニアのキャリア論を語ると…答えはもう出ているということであろう。