四神降臨 第2章 降臨 (3)無邪気な守護龍・龍磨
「小龍という言い方はいいにくいわね。何かいい名前はないかしら・・・。宮中で生活するとなると、龍の身分を隠さなければなりませんからね・・・。」
と龍哉の母が言う。
「俺は主人である龍哉様に決めて欲しい。それが慣例だからね。「小龍」って名は仮の名だから・・・。」
この小さき守護龍はじっと眠っている龍哉の側に座り、眠っている龍哉の顔を眺めている。いつの間にか朝が訪れ、龍哉は目覚める。側にいる年格好が似ている童子を見て、飛び起きる。
「ねぇ、母様。この子は誰?」
母宮は龍哉に優しく微笑みながら言う。
「龍哉の父君様がおつかわしになった友ですよ・・・。仲良くなさいね・・・。」
「うん・・・。名前は?」
「龍哉がお付けなさい。」
龍哉は悩みながらもこの童子に名前を付ける。
「龍磨。」
そういうと龍哉は笑いながら龍磨を見つめた。
「東宮様、お目覚めでございますか?主上がこちらに・・・。」
「お爺様が?」
帝がたくさんの供の者を連れて東宮御所の龍哉の御在所にやってきたのである。そして龍哉の元気そうな表情を見て微笑んだ。帝は童子に気付きいう。
「おや、見慣れない子がいるね?姫宮、誰かな?」
「お父様、龍哉の遊び相手に呼び寄せた龍磨でございます。」
「うむ・・・。よさそうな子だね・・・。」
龍磨はむくれた顔をして言う。
「このおっさん誰?」
母宮は焦って龍磨に言う。
「龍磨、なんて恐れ多いことを・・・。この方は龍哉の祖父宮。そして帝であられますよ。」
「そんなの関係ないや。俺はさ、龍哉様のみ主人だ。帝であろうと神であろうと関係ない。俺は龍哉様とともに生きるんだから・・・。で、おっさんはいくつだ?」
帝は意外な言動をする龍磨に興味を示す。
「ほう面白い童子だ・・・。気に入った。私は四十八歳だ。」
「なあんだ俺より年下かあ・・・。俺は六十三だよ。」
「六十三????そのようには見えないが・・・。」
「龍族は人間よりも十倍遅く時が流れる。龍王は三百歳。ということは人間で言えば三十歳かな・・・。まあ、龍哉様は半龍半人だから、ちょっと成長の仕方は違うと思うけどね・・・。龍族でも前代未聞だよ。ホントに・・・。」
本当に無邪気な表情で帝と会話する龍磨。
周りの者たちはハラハラしながら、龍磨の言動を気にしたのである。
四神降臨 第2章 降臨 (2)守護龍
どんな龍かと思えば童子姿の小さな子。
龍哉と変わらないような背格好。
皆は目を疑った。
このようなかわいらしい童子姿のものに何が出来ようか・・・。
「もしかして俺のこと疑っていない?俺の名は守護龍・小龍。れっきとした守護龍族の一員さ。でもまだ一人前じゃないけどね。でも守護龍たるもの、ご主人様を守るのは当たり前!俺はきっと主、龍哉様をお守りするんだ!下級物の怪ぐらいならなんとかなるよ。だから任せてよ!ま、普段は龍哉様の子守でも遊び相手でも何でもする。よろしく!」
そういうとちょこんと座って無邪気は表情で笑うのである。
「小龍といったわね・・・。もう夜は遅いわ・・・眠ったらどう?」
「とんでもない!守護龍はなんどきとも主人の側を離れません!眠らなくても大丈夫な一族なのです!ですから、俺は龍哉様の側にずっとついていますから。」
本当に無邪気な顔で笑う小龍を見て、龍哉の母は微笑み、龍哉の部屋を後にしたのである。
もちろんこの時から守護龍・小龍は龍哉の側をなんどきとも離れず、龍哉の覚醒するその時まで、守護する者として仕えていく事になるのである。
四神降臨 第2章 降臨 (1)青龍の皇子の力と鍵
すくすくと育っている東宮龍哉。もう5歳となった。笑みの絶えないその表情は帝をはじめ内裏中を和ませる。しかし時折見せる獣のような表情。それに気づいたのはやはり母。
「半龍半人の龍哉・・・。この子の未来はどうなってしまうのだろう・・・。」
と龍哉の母は嘆く。
時折現れる龍王の使い。龍哉の寝顔を見ると何かを言い残して消えていく。それが何なのかは、龍の言葉であったので理解できなかった。そして龍王の使いに渡されるひとつの勾玉。龍哉の首にかけまた消えていく。気になった母は陰陽頭に真意を相談する。
「姫宮様。東宮の力に相当なものを感じます。東宮の力を封印したほうがよいかもしれません・・・。まだ東宮は幼子・・・。力の加減が出来ない恐れがございます。爆発的な力が出てしまった場合、この都は無事ではないでしょう。」
母は承諾し、龍哉の力を封印する。
陰陽頭は紙に何かを書くと、龍哉の胸元に置く。そして呪文を・・・。
「封・・・。」
しかし封印の呪文は破られ、龍哉の胸元に置かれた封印呪文の紙は宙に浮き、燃えてしまう。そして龍哉の胸元に掛けられた青い勾玉が青白く光る。
「どうして封印できないのだ・・・。」
後ろに忍び寄る気配。
『龍哉の力、封印は許さん・・・。』
声の主は龍王龍希。
龍王は眠っている龍哉を抱きしめ、続けていう。
『龍哉の力を封印すれば、四神は集まらぬ・・・。龍哉は四神降臨の鍵となる。そして・・・最後の五神目・・・。黄龍を復活させなければ、乱れは収まらない・・・。あなた方が立ち向かう敵は、黄龍なくては倒せまい・・・。この青龍最強の力を持つ私であっても・・・。その敵がどのようなものであるのか、そしてどのような力があるのか・・・。想像不可能な敵・・・。』
龍哉の母は龍王に近づく。龍王は微笑み、龍哉を龍哉の母に返す。
『姫宮。よい子を産んでくれたね。この龍哉は私にとっても大事な子。この龍哉の力は私以上・・・。この子なくして青龍の繁栄はない。それどころか消滅しまうかもしれない。ですから姫宮、龍哉が覚醒するまで、頼みましたよ・・・。龍哉には守護龍をつけておこうと思う。きっと何か助けにはなると思うが・・・。』
そういうと龍王は龍哉の母の頬に手を延ばし、名残惜しそうな顔をして光と共に消えていくのである。
四神降臨 第1章 予言 総集編(2)
龍の国。たくさんの龍たちがこの龍王に仕えている。もちろん普段は人型。見た目はホント人と同じ。姫宮が育った人間界と同じような生活をしているのである。
姫宮と龍王はその日から毎日会い、いつの間にか2人の間には愛が芽生えていた。姫宮は一身に寵愛を受け、幸せに暮らしていたのだ。
しかし龍王には正妻がいる。そして龍王の子供たちまで・・・。もちろん正妻は人間である姫宮が気に入らない。正妻からの嫌がらせに耐えながら龍王の愛を信じ、過ごしていた。そしておなかの中には竜王との愛の結晶が・・・。
「龍希さま、私、懐妊をしました・・・。龍希さまとの子を・・・。」
「そう・・・。姫、あなたはここにいてはいけない・・・。ここにいてはあなたが辛い目にあう。人間界にお帰りなさい。待っている人がいる。そしておなかの子は人間界に必要不可欠な子になるであろう・・・。」
「龍希さま・・・。どうして?どうして辛いの?」
「私も辛いのです。あなたのほうが先に死んでしまう・・・。私の歳を知っていますか?私は三百歳。しかしまだまだ若い。そして人間であるあなたがここにいるために、歪みが生じてくるのです。ですから・・・。お帰りなさい。これを差し上げます。きっと何かの役に立つから・・・。」
龍王は姫宮に水晶の玉を渡し、姫を人間界に送り届ける。
そして姫宮にお別れのくちづけ・・・。
「きっとお腹の御子があなたやいろいろな人々を助けてくれるでしょう・・・。それがこのお腹の子の使命だから・・・。」
そういうと龍王は光に包まれ、消えていったのである。
姫宮の言葉を聞いた帝は言葉を失った。信じようと思ってもそのようなことがあるのかと思ったのである。しかしこの姫宮は昔から嘘などつくような姫宮ではなかったので、信じようと思ったのである。
殺せ・・・
殺せ・・・
青龍の子を殺せ・・・
青龍の子を抹殺せよ
人には聞こえない物の怪の声・・・。夜毎ますます物の怪どもが青龍の子の出現におびえそして暴れまわる。
一方青龍の子を懐妊中の姫宮は後宮にて龍王にもらった水晶を眺めながら、毎日を過ごす。時折元気に動くお腹の子を慈しみながら・・・。この水晶の周りは空気が違う。爽やかな空気に満ちている。自然と姫宮の周りに人が集まり、姫宮のいる御殿のみが和やかな雰囲気で時が過ぎていく。
見つけた見つけた青龍の子
殺せ
殺せ
母子共々殺せ
四神集まる前に母子共々抹殺せよ
低俗物の怪が荒い息をたてながら、姫宮のいる御殿に近づく。物の怪どもは御殿を覆い尽くす。
陰陽師、近衛の者が物の怪を退治しようと挑むが、数が多すぎて歯が立たない。
怯える姫宮。
姫宮は龍王の水晶を取り出し、願をかける。
すると眩い光があたりに満ち、低俗物の怪は苦しみ転げまわり、一瞬のうちに消滅したのである。
姫宮は意識を失い倒れる。大切な水晶を抱えながら・・・。
春の日差しが感じられる頃、姫宮は産気づき元気な皇子を産む。見た目は普通の男の子。この皇子の産声は都中に一時的な安泰をもたらせた。命を狙う物の怪たちは皇子の誕生を恐れ、息を潜める。
名前は「龍哉」。
帝は待望の皇子の誕生に、大喜びし、帝の養子に迎える。なぜなら年が明けた頃、病で臥せっていた東宮が息を引き取り、東宮は空席になっていた。帝にはもう東宮になるべき皇子が居ない。帝は意を決し、父が龍王かどうか確かではないこの皇子を東宮とするために帝の養子としたのである。生後すぐに龍哉は東宮の宣旨を受け、東宮となる。
そして皇籍にこう書かれる。名は和仁親王。父は亡き東宮誠仁親王。母は藤原晴子と・・・。
「姫宮、すまないね・・・。姫宮の子として東宮には立てられないのだよ・・・。亡きお前の兄宮と東宮妃の子として・・・。我慢をしておくれ・・・。」
もちろん姫宮はわかっていた。父が誰とも知れないこの若宮が東宮になれるわけではない。たとえこの若宮が龍王の子であっても・・・。
青龍の皇子が生まれた年の秋、ある邸にも若君が生まれる。陰陽頭安倍家の待望の男児。しっかりとした顔立ち、そして凛々しい顔立ちは陰陽頭を喜ばせる。
若君の名は「安倍西斗」。
この名前は陰陽道の占いにより決められた。
この若君が生後2ヶ月ごろのことである。父である陰陽頭は自室で書き物をしている。するとふっと明かりが消える。何か引き付けられる様に若君のいる部屋へ向かう。
グルルルル・・・・

父の目にはこの若君が噛み殺されようとしているように見えた。
陰陽頭は式神を使い、その獣に立ち向かうも見事に敗れる。
しかし白い獣はこちらを見つめるも、一行に襲う気配がない。
それどころかさらに白い光を放ち、若君の頬をなめたあと、若君の体内に消えていった。
「あの獣は一体・・・。」
陰陽頭は若君に駆け寄る。そして抱き上げると、今まで若君がつけていなかったものに気がつく。
「これは・・・?」
若君の首には白い勾玉がかけられていたのだ。その勾玉は清い光を放ち、若君を包み込んでいる。
「あれはもしや・・・。白虎・・・?何故うちの嫡男に・・・・。」
自室に戻ると紙にこう書かれている。
『青龍にひきつけられし白虎、選ばれし幼きものに宿る。』
また神の声を書き記す式神の仕業か・・・。
「父上見て!」四つになった若君は父である陰陽頭のほうに近寄り自慢げにある岩を指差す。
「父上、いくよ。」
指を指した大きな岩がひとりでに動き、若君の指差すほうに飛んでいく。
「父上すごいでしょ。式神を使わないで出来るんだ。どうして僕だけなの?父上は式神にさせるよね・・・。」
「そうだね・・・。西斗だけだね・・・。でもその力はやたら使うものではないよ・・・。いいかい・・・使うべき時のみ使うんだ・・・。私が式神を使う時みたいにね・・・。」
「うん・・・。」
陰陽頭である父はわが子の内に秘めた力に気づいていた。
それはとてつもない力に違いない・・・。
わが子の力を使うべき時まで封印することに決める。
それがいい事なのか、反対に悪いことなのか・・・。
それはその時が来なければわからないであろう・・・。
子守代わりの式神と遊んでいる若君を見て陰陽頭は苦悩の表情を見せた。
『泉の湧き出(いずる)側。玄武の選ばれし幼き姫君に宿る。
その者、生と霊を兼ね備える姫君なり。』
ある冬の日、神の声を書き記す式神によって知らされる。陰陽頭はいつものように中務省に報告する。中務卿宮は首をかしげ、考える。
「湧き水の出る泉?その近くにいるという姫とは・・・。」
「たったひとつ都にございます。」
「どこ?」
「清水が湧き出る泉を持つ邸が・・・。何度か清水を頂きに参ったことが・・・。それは五摂家近衛殿の一条邸・・・。」
「そういえば近衛殿には御歳三歳の姫君がいたね・・・。確か・・・。麻耶姫。これで三神揃ったわけか・・・。あと一神。」
「いえ、陰陽道では五行・・・。言い伝えでは四神揃った後に四神の長、黄龍が現われ乱れを封じ込めると・・・。」
近衛家唯一の姫君麻耶姫が庭先で遊んでいる。まだ幼き三歳の麻耶姫。小春日和の温かい日差しを受けて、伸び伸びと育っている。可愛らしいその姫君は清水が湧き出る泉の側で遊んでいた。ふとした拍子にその姫君は泉の中に落ちてしまった。
「キャ~~麻耶様!!!」
着ている着物が水分を吸いずんずん重くなる。そしておぼれる姫君・・・。そして沈んでいったのである。お付きの者たちや警備の者たちは姫君を助けようと必死になるが見つからず諦めかけた頃、泉が光り気を失った姫君が現れる。獣の背中に乗せられた姫君。その獣の姿はこの世のものとは思えないものであった。亀のようであり蛇のようである。その獣は姫君をそっと地面に寝かすと、姫君の顔を覗き込んだ。
ゴ~~~~~~~~~~~~
獣はなんとも言えない声で吠える。そして姫君の体の中へ消えていくのである。そして姫君の胸には黒の勾玉。この不思議な現象に驚く邸の者たち。姫君の父、関白は姫君に駆け寄り姫君を抱く。
「麻耶!」
冷たくなった体が徐々に温かくなり、顔色がよくなってくる。姫君は気がつき、何がなんだかわからない表情で父君にしがみついた。
「父さま・・・。」
「今の獣はなんだったのか・・・。あれはもしや・・・。」
関白は玄武神社の祠に使いを出し、あれはもしや玄武ではないかと、真意を確かめる。
従者が持ち帰ったお札に書かれた玄武の絵はまさしく先ほど姫君の体内に消えていった獣そのものであった・・・。
第1章 予言 完
この創作はもちろんフィクションです。
実際に実在する人物名が出てきますが、関係ございません。時代背景もモチーフにはしておりますが・・・。笑ってごまかしてください。(笑)所詮フィクションですから・・・。
次は第2章「降臨」です・・・。
ではでは。
作者:なお^^ より
また制服を書いたんだけどねぇ^^;陸上自衛隊幹部礼装(?)
別ブログ創作広場 用の挿絵を描きました。それもまた飽きもせず制服を・・・。
だってしょうがないんだもん。主人公が防大生なんだから・・・・。そしてお父さんも自衛官なんだから。
制服フェチ(笑)の私にとって嬉しい限りなんですが・・・・。ここんとこ毎日書いていると私も飽きてきてしまっていつもと構図が同じことに書き終えてから気づく・・・。あほとしか言いようがない。自分で自分の首を絞めてますよ私は・・・。冒険心のない私・・・。そして大雑把でまあいっか性格のO型人間・・・。典型的かなあ・・・。
飾り緒を装着しようとしたんですが、防大入校式は国の公式行事ではないので(いくら国、防衛省管轄の大学校としても)最高の礼装(飾り緒、帯剣)はおかしいということで、通常礼装飾り緒無しに・・・。
肩の部分に金色のものをつけるんですよね・・・。
こういうときにカラーだとわかりやすいんですけど・・・このためにカラーを書く画力はありません^^;
バックの写真は中部方面総監部伊丹駐屯地西門です。
私がこの辺を夕方うろついています(笑)←買い物でですよ!!!怪しい人じゃありません。
50代の人を書くのは未だ苦手です。
影でなんとかしてみてもだめ。
描き方というものを見ながら描くと私の絵じゃなくなってしまうしねぇ・・・。
難しい限りで・・・。
一応主人公のお父様は中部方面総監部幕僚長の陸副将設定ですので、肩の階級章は☆2個です。全身描いてもいいんですけど、描いてしまうと顔がわからなくなってしまうんですよね・・・。ちっちゃいイラストになるしねぇ・・・。
あと男の子の髪型ってどう描くの???前髪をたらすのはいいんだけど・・・オールバックとか、スポーツ刈りとか・・・。あといろいろ・・・。だから私の書く防大生はみな長めの髪型^^;にしておきましょう。現実には短髪なんですよ・・・。描けませんから^^;フィクションですからご勘弁を・・・。
四神降臨 第1章 予言 総集編(1)
短い文章が11に分かれて発表しておりましたので、1章が終わるごとに総集編という形でまとめておきたいと思います。
ホント書いていて呆れるくらい文章力のなさに泣きそうになっています。あと挿絵の画力のなさにもねぇ・・・。
四神降臨
時は戦乱絶えない日本。武士が台頭し、日本統一を目指す武士達が全国で戦をしている。
もうこの頃の帝は形ばかりの帝であった。
戦乱の日本を鎮めるために、正親町帝は一番かわいがっていた女二の宮を伊勢斎宮とした。しかしその斎宮は伊勢へ向かう途中の鈴鹿山脈の峠で戦に巻き込まれて行方不明となった。
斎宮が行方不明となって1年が経ち、唯一の東宮が病に倒れた。そして都中の民達が原因不明の病でバタバタと倒れていったのである。
都中はなんともいえない空気に包まれ、夜毎物の怪が大路をうろつく。もちろん都のものたちは都を怖がり、出て行こうとするものもいる始末。検非違使の者達も怖がり、都の警備が疎かになっている。
帝は何とかならないものかと神仏に祈願したが、いっこうに良くもならず、気が滅入ってしまい、帝自身も寝込みがちになった。
ある日、床に臥している帝の前に、中務卿宮が現れる。
「主上、陰陽寮からこのような書状が届いております。」
「んん・・・。」
帝は侍従から書状を受け取り読み出す。
『春、花が咲く頃現われし皇子。国を助けるべき神を呼び寄せる。国乱れし時に表れし四神なり。』
「主上、どうかなされましたか?」
「中務卿宮・・・四神とは?」
「四神とは四方を守っております、神と聞いております。青龍、玄武、白虎、朱雀・・・。」
帝は考え込むと中務卿宮に言う。
「陰陽頭安倍をこちらへ・・・。」
「御意・・・。」
帝は考えながら、清涼殿の東庭に陰陽頭を呼びつける。
陰陽頭は平伏し、帝の言葉を待った。
「陰陽頭殿、先程のこの書状の意味を問いたい。」
「御意・・・。私もよく存じ上げませんが、朝急に筆が動き出し紙にこのようなものが書かれていたのでございます。私の式神に神の言葉を伝える役目のものがございます。多分その式神の力かと・・・。」
「春・・・あと半年先だな・・・。どのような皇子が現れるというのだ。そして四神とどのように関わるのだろうか・・・。」
帝はこの予言のおかげか、気力を取り戻したのである。
あの予言から半月後のこと、帝にある報告が入る。
「申し上げます。」
「んん・・・。」
「大津、瀬田の唐橋あたりで伊勢斎宮と思われし姫君が発見されました。」
「何!?女二の宮が???」
「ただいま斎宮様の乳母君が大津へ向かって確認をしております。」
「おお!そうか!!!女二の宮であれば、すぐにでもこちらに連れてまいれ!!」
「御意!」
伊勢斎宮とは一年前に戦乱に巻き込まれ、行方知れずになった帝最愛の姫宮である。この報告に帝は心を躍らせ、伊勢斎宮の乳母君の報告を心待ちにする。
そして帝は眠れないまま朝を迎える。この日はなんといい空をしているのか。いつもはどんよりとした曇り空であったが、この日に限っては快晴であった。朝の四方拝を済ませると、昼の御座に座り、伊勢斎宮の乳母からの知らせを待った。
ほんの一刻がなんと長いことか・・・。帝は立ち上がると、清涼殿内をうろうろするのである。
「主上・・・落ち着きなされませ。きっと見つかったのはわが姫宮怜子に違いありませんわ。」
と、帝の正室が帝の申し上げる。
「しかしもし姫宮であれば、今までどこに居ったというのだ?無事であろうか・・・。」
その時、早馬で清涼殿に使いが来る。帝は御簾から飛び出し、使いの者に問いただす。
「瀬田で見つかった姫はわが姫宮であったか?どうした早く申せ!」
「御意・・・。確かに伊勢斎宮様でございました・・・・ただ・・・。」
「ただ?何だ?」
「身重なのでございます。」
「姫が身重だと?」
「はい、確かに・・・。」
「とりあえず姫宮をここに連れてまいれ・・・。いいな、早く!」
「御意!」
帝にとって姫宮が身重であることに関してはどうでもよかったのである。ただ早く最愛の姫宮をこの目で見たい。この腕に抱きたいと思って使者をせかしたのである。
冷静になった帝は疑問に思う。
姫宮のお腹の子の父は誰であるかということを・・・。
大津の瀬田から姫宮が戻ってきた。姫宮は痩せているわけでもなく今までと同じ美しい姫のままであった。姫宮は清涼殿の御簾の前に座り、頭を下げる。何も話そうとしない姫宮を見て、帝は御簾から飛び出し、姫宮を抱きしめた。
「お父様・・・?」
「姫宮・・・今までどこの居ったのか?」
「それは・・・。私にもよくわかりません・・・。」
また姫宮は黙り込んだ。帝は姫宮を御簾の中に入れ、母君と対面させる。
「まあ、怜子。元気そうで何よりでした・・・。懐妊されていると聞きましたが?」
「はい・・・。春ごろ生まれるかと・・・。」
「お相手は?」
姫宮は黙り込み下を向く。すると帝が言う。
「下々のわけのわからないものであろう・・・。」
「いえ!お父様、違います。このお腹の子の父君は・・・。お父様もお母様も、きっと信じていただけないと思います。私もはじめは理解できなかったのです。でもその方は私を大切にしてくださって、ご寵愛くださいました。」
姫宮はお腹の子の父について話し出す。
お付きの者達が切り殺されていく中、姫は輿の中でいつ自分が見つかり辱めにあうのかと怖がりながら、守り刀を握り締め、震えていた。もちろん見つかればただではすまないであろう。きっと連れて行かれて辱めにあうのはわかっている。そうなった時には自害しようと思ったのである。
しかし、輿の外から手が伸び、姫宮の腕を掴まれ外に引っ張り出されようとした瞬間、雷鳴が轟き、残党に降り注いだ。もちろん残党は倒れ、姫宮のみが助かった。
姫宮の視線の先には若い男の姿・・・。
その男は光を放ち、姫宮のほうを見つめていた。姫宮は引き寄せられるようにその男の元へ近づく。
「あなたが助けてくださったのですか?」
「はい・・・。危ないところでした・・・。」
「わたくしは今上帝の二の姫宮斎宮怜子と申します。あなたは?」
「私は龍王龍希。あなたのような人間ではございません。」
「龍希さま?」
「ここにいては危ない。とりあえず私の国へ参りましょう。」
姫宮と竜王は眩い光に包まれ姿が消える。
深く木の生い茂る樹海の中。姫宮は龍王に部屋を与えられ、当分お世話になることになった。
総集編その2へ続く
四神降臨 第1章 予言 (11)玄武の姫君
『泉の湧き出(いずる)側。玄武の選ばれし幼き姫君に宿る。その者、生と霊を兼ね備える姫君なり。』
ある冬の日、神の声を書き記す式神によって知らされる。
陰陽頭はいつものように中務省に報告する。中務卿宮は首をかしげ、考える。
「湧き水の出る泉?その近くにいるという姫とは・・・。」
「たったひとつ都にございます。」
「どこ?」
「清水が湧き出る泉を持つ邸が・・・。何度か清水を頂きに参ったことが・・・。それは五摂家関白近衛殿の一条邸・・・。」
「そういえば近衛殿には御歳三歳の姫君がいたね・・・。確か・・・。麻耶姫。これで三神揃ったわけか・・・。あと一神。」
「いえ、陰陽道では五行・・・。言い伝えでは四神揃った後に四神の長、黄龍が現われ乱れを封じ込めると・・・。」
近衛家唯一の姫君麻耶姫が庭先で遊んでいる。まだ幼き3歳の麻耶姫。小春日和の温かい日差しを受けて、伸び伸びと育っている。
可愛らしいその姫君は清水が湧き出る泉の側で遊んでいた。ふとした拍子にその姫君は泉の中に落ちてしまった。
「キャ~~麻耶様!!!」
着ている着物が水分を吸いずんずん重くなる。そしておぼれる姫君・・・。そして沈んでいったのである。
お付きの者たちや警備の者たちは姫君を助けようと必死になるが見つからず、諦めかけた頃、泉が光り気を失った姫君が現れる。
獣の背中に乗せられた姫君。その獣の姿はこの世のものとは思えないものであった。亀のようであり蛇のようである。その獣は姫君をそっと地面に寝かすと、姫君の顔を覗き込んだ。
ゴ~~~~~!!
獣はなんとも言えない声で吠える。そして姫君の体の中へ消えていくのである。
姫君の胸には黒の勾玉。この不思議な現象に驚く邸の者たち。姫君の父、関白は姫君に駆け寄り姫君を抱く。
「麻耶!」
冷たくなった体が徐々に温かくなり、顔色がよくなってくる。姫君は気がつき、何がなんだかわからない表情で父君にしがみついた。
「父さま・・・。」
「今の獣はなんだったのか・・・。あれはもしや・・・。」
関白は玄武神社の祠に使いを出し、あれはもしや玄武ではないかと、真意を確かめる。
従者が持ち帰ったお札に書かれた玄武の絵はまさしく先ほど姫君の体内に消えていった獣そのものであった・・・。
つづく・・・。
第1章 予言 (完)
制服シリーズ(笑)~今まで書いた制服さん
これはカタログ見て描いたんだなあ^^;
平安時代の従三位以上の黒の武官束帯です^^;
17日に藤原紀香さんと陣内さんが結婚する時に束帯着用だそうですが、スポーツ新聞に載っていたのはあれはと束帯じゃありません・・・。あれは神職が着用するものです^^;
束帯はあまりレンタルされないようですねぇ^^;烏帽子もおかしい。本当なら冠ですよ。
小説の設定上ねぇ^^;
身分は陸二佐設定でした。
陸上自衛隊最高の幕僚長設定でした。
肩のバッチは星4つ。
これも小説の挿絵から・・・。
これもそう・・・。
見ると私は制服フェチなんだと思います^^;
制服は書きやすいしねぇ^^;
絵もやはり変わってきているのお分かりですか?
私の制服画の歴史でした^^;
ちゃんちゃん・・・。