1月14日に投稿したなう

ミラー! (677)うれしはずかし・・・
家族が単身赴任先へきてくれてから毎日のように、美里は僕のためにお弁当を作ってくれる。ま、それはあたりまえなんだけど、できたての温かいお弁当を保温機能の付いたお弁当箱へ入れて、小さな子供たちとともに散歩がてらに駐屯地まで届けてくれる。家を出る前にメールを入れてくれて、昼休みが始まってすぐに僕は駐屯地の西門で待ち構える。ここのところ毎日だから、警衛の隊員たちも微笑みながら見ている。初めのころは照れくさくてたまらなかったけれど、なんだかんだ言ってまだまだ新婚家庭。毎日の楽しみになっている。単身赴任だからこういう時しか夫婦らしいことができないからね。
駐屯地西門のところで、美里と未来、美紅が来るのを待つ。大体3人が来るのがわかる。だって、未来と美紅がキャッキャいいながらやってくるものだから、わかるのだ。声が聞こえたあたりで、僕は警衛の隊員へIDを見せ門の外へ出る。僕の姿を見た未来と美紅が車に気をつけながら、走ってやってくる。
「パパ!」
といい、二人同時に僕へ飛びつく。
「今日ね、美紅。ママと卵焼き作ったよ。ね、未来くん。」
「うん。僕はね。御飯入れてふりかけかけたよ。」
と言ってにこにこ話している時にやっとお弁当を持った美里が僕のそばへやってくる。そしてカバンから僕のお弁当を取り出して渡してくれた。
「今日は、春希さんが好きなビーフシチューだから早く帰ってきてね。」
と言ってにこにこ。美里の煮込み料理は最高。アツアツを食べるのはほんと久しぶり。
「今日ちょっと遅くなるかもしれないけれど、できるだけ早く帰るようにするよ。」
「うん。待ってる。職場を出る前にメール頂戴ね。」
と言って手を振り別れる。
再び警衛の隊員へIDを見せ駐屯地内へ。
「遠藤3佐、いいですね。羨ましいです。」
と、ちょうど警衛だった衛生隊の3曹に声をかけられた。
「期間限定だよ。年が明けたらまた一人だから。」
「遠藤3佐の奥様、順調そうですね。」
「ま、そうだね。あと3カ月で生まれてくるし…。ちょっと大きめなんだよね。」
「女の子だそうですね。」
「んん。妻はとても喜んでいるんだよ。女の子が欲しかったみたいだから。じゃ、警衛頑張って。」
といって敬礼し、おなかすいたなあ…と思いながら、衛生隊へ向かって足早に歩いた。
ミラー! (676)家族と過ごす年末
年末、いろいろな内示があった。僕の場合は少し給料UPしていた。海外派遣のことで査定が上がったみたいだ。冬のボーナスも思ったより良かった。
何とか無理いって、年末年始は休みが取れた。といっても大みそか前後の8日間。有給はまだまだ残っている。でも、東京へ戻ることができないという特典付き。なぜなら、どんな災害が起こるか分からないから、すぐに出勤できるところにいるようにと言われた。しょうがないから、家族を呼び寄せることにした。本来なら優希の年越し冬季講習があるんだけど、通わせている進学塾の系列校があったので、紹介してもらって冬期講習のみそちらへお世話になる。だから、子供たちが冬休みになるとすぐに、こちらへやってきてくれた。5人家族勢ぞろいなのはほんと久しぶり。
少し遅れた僕の誕生日を、クリスマスとともに祝う。一つ年をとって、どう変わったかわからないけれど、こうして子供たちと愛する妻がいて幸せだと思う。妻のおなかには順調に育っている赤ちゃん。あと3ヶ月半で生まれてくる。もちろん性別もわかっていて、女の子らしい。美紅なんて、自分の妹ができてとても喜んでいる。毎日のようにおなかの赤ちゃんへ声をかけているんだって。名前も僕らの一文字ずつ取って、「美希」と決めた。超音波画像のプリントを見ながら、誰に似ているか予想して楽しんだ。ほんと手足の長い女の子。ちょっと大きめだしね。僕と妻は標準よりも大きいからだろうね。ああ、春には4人のお父さんかあ…。ああ大変だ。
家で暇さえあれば、中学受験まであと1年に迫った優希の勉強の面倒を見る。第一志望は、慶應だってさ。本当は僕の母校である麻布が良かったみたいなんだけど、親戚中からの勧めがあって、大学まで付いている慶應。日程が重ならないところで有名中学をすべて受けるらしい。優希はやはり母親に似たのか、ケアレスミスが多い。よく優奈と勉強をして教えていたけれど、ケアレスミスが結構あってね。なんか優奈の勉強を見ているような感覚だった。優希は優奈と同じO型。なんかしっかりしてそうで大雑把というか…。
「ほんと春希さんがいてくれて助かるわ。私、受験向けの勉強見てあげられないから…。塾にまかせっきりで…。」
と美里が言った。そうだよね。美里は小学受験も中学受験もしていない。中学まで公立中学だし、高校は芸能科がある私立。その後、ずっと仕事していたしね。ちょっと最終学歴が高校だってことが気になっているみたい。だからと言って彼女は馬鹿じゃない。一般教養は身についているし、仕事柄英語などもちゃんと話せる。大学へ行かなかったのは仕事の都合だったしね。だから僕は全然気にしていない。気にしているのは、養父の後援会関係ぐらいかな。
「ほんとパパって天才だよね。パパに教えてもらったほうがわかりやすいかも。さすがずっと模試順位が一ケタだよね。僕とは大違いだよ。僕はいくら頑張っても3ケタだもんね…。」
ああきっと父さんやらが言ったんだね。全く。本当なら一緒に住んで毎日とは言わないけれど、こういうふうに優希の勉強を見てやりたいけれど、単身赴任中は無理。早く東京へ戻りたいなあなんて思いながら優希の勉強を見ていた。
ミラー! (675)チビたちの進路
少し時間が戻る。11月のことなんだけど、東京の養父母から電話が入った。
「未来のことなんだけど、小学校は慶応に決まったから。」
え?って感じで僕は固まってしまった。小学校の受験なんて一切聞いてなかった。もちろん慶応は自宅から歩いて通える距離にあって、送り迎えとかあまりしなくていいよねって養父母たちが言ってた記憶がある。
「未来の学費に関しては、うちがすべて出してあげるよ。もちろん美濃もそのほうがいいっていうし…。美紅なんだけど、今補欠結果待ちなんだよ。一応兄弟として優遇があったみたいなんだけど…。ま、美紅は期待していない。」
「どうして勝手に受験させたわけ?今の学校だって大学付いているし…。そりゃ、父さんも死んだ優奈も慶大出てるし…。」
「実力テストがわりに受けさせたら、受かったんだよ。早実も受けさせて、未来は受かったんだけれど、やはり通学を考えると、慶応がいいと思って。優希には悪いけど、未来は優希よりも頭がいいよ。いい環境で育ったほうがいい。慶大は、未来がなりたいって言っている医学部もあるし。未来が慶応受かったのを聞いて、優希のいい刺激になったみたいだよ。一生懸命志望校合格に向けて頑張っているし…。」
本当にうちの両親は勝手なんだから。合格発表の後、即手続きしちゃって、未来もわけがわからないままみたいだ。そして入学式は養母が責任を持って行くって言い出してね。あとは美紅の補欠の結果待ち。女の子は募集が少ないからね。ま、諦めモードに入っているのは声からわかる。はあ…。
もちろん美里にも電話をかける。美里もうちの両親に押し切られた状態で未来が今と系列校から別の学校へ行くことに関して了解してしまったみたい。可哀そうなのは美紅で、未来と別の学校かもしれないということで悲しんでいるみたいだ。もちろん心優しい未来は、せっかく決まった小学校へ行きたくないっていうんだけど…。
数日後、何とかギリギリで美紅の合格が決まって、即日両親は手続きをした。ま、これでうちのちびたち一緒に同じ小学校への入学が決まって安心なんだけど、この僕に相談なしに決めちゃうってことにちょっといらついた。
ま、あそこの教育方針は嫌いじゃない。体がちょっと弱い未来にとってもいい刺激になっていいんじゃないかな?今のところ順調に体もなおってきているし…。
実はあの小学校に中高時代の同級生が先生をしていたりするんだけど…。内緒にしておこう。入学式へ行けるかな?行けるといいな…。
ミラー! (674)念願の甥っ子
12月1日。朝早く春斗から電話が入る。
「おはよう!起きてるか?」
「ん?今起きたとこ。何?朝早く。」
「あのさ、雅美産気づいてなぁ、今から病院へ行く。春希、今日休みか?」
「あ、まあ…休みだけど?」
と、無理矢理病院へ呼び出される。まあ、今まで順調だったんだし、大丈夫だよね…と思いながら、着替えて朝食を済ませ、いつものように自転車で以前非常勤で居た自衛隊病院へ向かう。あ、IDを忘れないようにしないと、いろいろ面倒だ。そういや今日、出産予定日だ。そして、雅美の誕生日。こういう記念日って重なるよね。あ、あと半月で僕も誕生日だ。
最近ますます寒くなって、息が白い。もう春斗たちは病院へ着いたみたいで、まだかまだかとメールが入っている。なんで僕がいかないといけないんだろう。生まれてからでもいいのにさ。
病院の正門で、IDカードを見せて入る。外来の駐輪場へ自転車を置き、病院へ入る。今日は平日だから、制服を着た隊員たちが、外来開始を待っていた。受付のあたりで、春斗と遭遇。
「ごめんごめん。春希を呼びだしてすまんかったね。今日代休やったんやろ?」
「まあね…。でも何でこの僕を呼びだすわけ?雅美のご両親は呼んだ?」
「ああ、呼んだ。近所だから、生まれそうになったら連絡するようにしているんや。」
「ならなんでこの僕を早く呼ぶわけ?僕は産婦人科医じゃないし。小児科医だよ一応。」
「雅美のご指名や。やはりいろいろ不安なんやって。玲奈のことあるし。」
ああ、そういうこと?玲奈ちゃんの障害のこととかあるから?でも生まれてすぐにはわからないと思うけどね。ま、この僕がいると安心するらしい。春斗だけじゃダメらしくって。
去年まで、ここにいたからか、顔見知りの看護師や医官に声をかけられる。もちろん僕は元気です。やはり春斗と一緒に歩くと、目立つ。今二人とも同じくらいの短髪で、見分けがつかない。前髪の分け目で見分けがつくんだけど。同じ顔で同じ背丈の二人が歩いているわけだから、知らない人は驚くだろうね。もちろん春斗は、この僕に間違えられたみたい。ま、お互い慣れっこだから何とも思わないんだけど。
雅美のいる陣痛室へ入る。一応僕も白衣来て、消毒して中へ。
「雅美どう?」
「え?痛いに決まっているでしょ?」
「あ、そうだね。今どれくらい?」
「6センチくらいって。遠藤、来てくれてありがとう。」
「んん。せっかくの代休だったけどね。いいよ。かわいい姉さんだしね。」
やはり陣痛中は顔をしかめる。横で手を握りながら汗を拭いている春斗。ほんと僕の出番はない。
「遠藤がここの小児科医だったらなあ…。生まれた子を任せるんだけど…。」
「残念だったねえ…。診るくらいなら診るけど?心臓専門だけどいい?」
と僕は少しでも空気を和ませようと、冗談混じりで言ってみる。時折助産師が様子を伺いに来る。そして内診もする。
「あとどれくらい?もうほんとつらいんだけど…。間隔も短いし…。」
と雅美が助産師さんに問いかける。あ、そういや雅美はここの産婦人科医。忘れてたよ。
「ずいぶん進みましたね。あとほんとにもう少しですので、先生を呼んできます。」
と、いい、先生を呼びに行った。春斗は雅美の実家へ電話を入れた。僕は、退散退散。待合室で生まれるのを待つことにする。
待っている間、担当の小児科医を聞いてみる。研修医上がりの新人小児科医。もちろん僕の防医大後輩で知っていることは知っているけれど、なんかあまりいい印象はない。ちょっと心配だよね。
待合室で待っていると、雅美のご両親がやってきた。そしてお祖母ちゃんまで。ドキドキしながら、春斗と雅美の子供が生まれるのを待つ。
「本当に男の子でしょうね。」
と心配そうにしているお祖母ちゃん。もちろん超音波写真からみて男の子であることは確認済。分娩室に入ってから結構経つのになかなか産声が聞こえない。ついには例の小児科医まで駆け込んでくる始末。
「森君、どうかした?」
「遠藤先輩。なんでもないです。」
でもそんなことないよね?小児科医が駆け込んでくるなんて。
心配になったお祖母ちゃんが、この僕に行くようにせかす。行ってもいいものかどうか分からないけれど…。少し離れたところで、後輩を問いただす。無事に生まれたけれど、弱々しい産声で、少しおかしいというので、呼び出されたらしい。自信なさげな後輩。新生児の処置がとても苦手らしい。まあ僕は、心臓か新生児か悩んだくらい好きな分野だから、後輩の指導ということで中へ入る許可を得た。ま、ここに勤務していた時に何度もこういうことは経験している。
とりあえず新生児室へ運んで僕が診察してみた。心雑音と呼吸の乱れなどなど。まあこれくらいなら、転院しなくても大丈夫そうだ。とりあえず点滴をし、様子を見ることにする。まあ産科に聞いたら、へその緒が何重にも巻きついてたとか、色々あったけど・・・。心雑音に関しても、心配するほどじゃない。一時的なことだと思う。僕がここの医師なら、ずっと見てやりたいけれど、それはできない。
ミラー! (673)久々の代休
観閲式を終え、所属駐屯地へ戻ってきた。関東へ行ったといっても、家族とあまり会えなかったのが心苦しいけれど、家族の時間が持てたのは良かったと思う。
海外派遣から戻ってきて、はじめてもらう代休。連休を貰ったわけだけど、東京へは戻らなかった。行事を終えるとほんと体が疲れていたのか、ダウン気味。久しぶりに自宅で一日中のんびり暮らす。もうちょっとで、今年も終わりだなあと、カレンダーを見つめながらため息をついた。
今年の年末は自宅へ戻ることができるんだろうか。あと、春の美紅と未来の入学式へは行きたいと思うんだけど、休めるんだろうかと先に思ってしまう。だって、順調な美里の出産予定は4月初め。それも帝王切開決定だから、できるだけそばにいてやりたいと思うわけ。もし休めないようだったら、忙しい両親に任せないといけないのかな?それとも美里のご両親に。ほんと単身赴任のおかげで、家族の行事というものになかなか行けないのが現状だ。きっと子供たちさみしい思いをしているんだろうね。
先日、いつものことだけど、転属願を出してきた。もちろん行先は関東地方。病院勤務あるいは衛生隊勤務。市ヶ谷でもいい。隊長は難色を示していたけれど、受理はしてくれた。ま、今の部署へ移ってきてから1年経っていないんだけどね。できるだけ早く東京へ戻りたい。もちろん今いるところは嫌いじゃない。居心地はいいけれど、やはり家族のことを思うと、関東へ行きたい。どうしてもできないのであれば、辞めるという手もあるけれど、中途半端なことはしたくない。それでなくても優秀な医官が辞めていくという現状。一応小児科医だけど、僕だって役に立つと思うし。でも、最近医官らしいことは災害派遣以外はしていないように思う。学会というものにも最近行けてない。案内は来ているけれど、予定が合わなくて、出席できない。
最近、お世話になった東京の大学病院から引き抜きの電話がかかってきているけれど、なんとなく気が進まなくていい返事をしていない。もちろん今いる地方の病院からもあるにはあるけれど、東京へ戻れないからお断りしている。僕って何がしたいんだろう…。ほんとマジで思う。
なんとなく11月も過ぎる。ほんと平和で、週1回の民間病院の派遣が唯一の医者らしいこと。朝から夕方まで、かわいい患者さんたちの相手をしながら、診察。もう結構長い事ここの非常勤として働いているなあと思う。もちろんここの病院からも、常勤にならないかと、声をかけていただいている。ありがたいけれど、あくまでも、僕は東京へ戻りたいと思っている。
ほんと、暇さえあればなんか悩んでいるような気がするんだよね。たぶん優柔不断なんだろう。これって思う勇気があれば、さっさと辞めて東京へ戻っているんだろうけれど…複雑。
11月24日に投稿したなう(BlogPet)
なお^さんの投稿したなうそろそろミラー!の更新もせなあかんね。
11/248:03>>もっと見る
*このエントリは、ブログペットの「こうさぎ」が書きました。