ミラー! (676)家族と過ごす年末
年末、いろいろな内示があった。僕の場合は少し給料UPしていた。海外派遣のことで査定が上がったみたいだ。冬のボーナスも思ったより良かった。
何とか無理いって、年末年始は休みが取れた。といっても大みそか前後の8日間。有給はまだまだ残っている。でも、東京へ戻ることができないという特典付き。なぜなら、どんな災害が起こるか分からないから、すぐに出勤できるところにいるようにと言われた。しょうがないから、家族を呼び寄せることにした。本来なら優希の年越し冬季講習があるんだけど、通わせている進学塾の系列校があったので、紹介してもらって冬期講習のみそちらへお世話になる。だから、子供たちが冬休みになるとすぐに、こちらへやってきてくれた。5人家族勢ぞろいなのはほんと久しぶり。
少し遅れた僕の誕生日を、クリスマスとともに祝う。一つ年をとって、どう変わったかわからないけれど、こうして子供たちと愛する妻がいて幸せだと思う。妻のおなかには順調に育っている赤ちゃん。あと3ヶ月半で生まれてくる。もちろん性別もわかっていて、女の子らしい。美紅なんて、自分の妹ができてとても喜んでいる。毎日のようにおなかの赤ちゃんへ声をかけているんだって。名前も僕らの一文字ずつ取って、「美希」と決めた。超音波画像のプリントを見ながら、誰に似ているか予想して楽しんだ。ほんと手足の長い女の子。ちょっと大きめだしね。僕と妻は標準よりも大きいからだろうね。ああ、春には4人のお父さんかあ…。ああ大変だ。
家で暇さえあれば、中学受験まであと1年に迫った優希の勉強の面倒を見る。第一志望は、慶應だってさ。本当は僕の母校である麻布が良かったみたいなんだけど、親戚中からの勧めがあって、大学まで付いている慶應。日程が重ならないところで有名中学をすべて受けるらしい。優希はやはり母親に似たのか、ケアレスミスが多い。よく優奈と勉強をして教えていたけれど、ケアレスミスが結構あってね。なんか優奈の勉強を見ているような感覚だった。優希は優奈と同じO型。なんかしっかりしてそうで大雑把というか…。
「ほんと春希さんがいてくれて助かるわ。私、受験向けの勉強見てあげられないから…。塾にまかせっきりで…。」
と美里が言った。そうだよね。美里は小学受験も中学受験もしていない。中学まで公立中学だし、高校は芸能科がある私立。その後、ずっと仕事していたしね。ちょっと最終学歴が高校だってことが気になっているみたい。だからと言って彼女は馬鹿じゃない。一般教養は身についているし、仕事柄英語などもちゃんと話せる。大学へ行かなかったのは仕事の都合だったしね。だから僕は全然気にしていない。気にしているのは、養父の後援会関係ぐらいかな。
「ほんとパパって天才だよね。パパに教えてもらったほうがわかりやすいかも。さすがずっと模試順位が一ケタだよね。僕とは大違いだよ。僕はいくら頑張っても3ケタだもんね…。」
ああきっと父さんやらが言ったんだね。全く。本当なら一緒に住んで毎日とは言わないけれど、こういうふうに優希の勉強を見てやりたいけれど、単身赴任中は無理。早く東京へ戻りたいなあなんて思いながら優希の勉強を見ていた。