ミラー! (677)うれしはずかし・・・
家族が単身赴任先へきてくれてから毎日のように、美里は僕のためにお弁当を作ってくれる。ま、それはあたりまえなんだけど、できたての温かいお弁当を保温機能の付いたお弁当箱へ入れて、小さな子供たちとともに散歩がてらに駐屯地まで届けてくれる。家を出る前にメールを入れてくれて、昼休みが始まってすぐに僕は駐屯地の西門で待ち構える。ここのところ毎日だから、警衛の隊員たちも微笑みながら見ている。初めのころは照れくさくてたまらなかったけれど、なんだかんだ言ってまだまだ新婚家庭。毎日の楽しみになっている。単身赴任だからこういう時しか夫婦らしいことができないからね。
駐屯地西門のところで、美里と未来、美紅が来るのを待つ。大体3人が来るのがわかる。だって、未来と美紅がキャッキャいいながらやってくるものだから、わかるのだ。声が聞こえたあたりで、僕は警衛の隊員へIDを見せ門の外へ出る。僕の姿を見た未来と美紅が車に気をつけながら、走ってやってくる。
「パパ!」
といい、二人同時に僕へ飛びつく。
「今日ね、美紅。ママと卵焼き作ったよ。ね、未来くん。」
「うん。僕はね。御飯入れてふりかけかけたよ。」
と言ってにこにこ話している時にやっとお弁当を持った美里が僕のそばへやってくる。そしてカバンから僕のお弁当を取り出して渡してくれた。
「今日は、春希さんが好きなビーフシチューだから早く帰ってきてね。」
と言ってにこにこ。美里の煮込み料理は最高。アツアツを食べるのはほんと久しぶり。
「今日ちょっと遅くなるかもしれないけれど、できるだけ早く帰るようにするよ。」
「うん。待ってる。職場を出る前にメール頂戴ね。」
と言って手を振り別れる。
再び警衛の隊員へIDを見せ駐屯地内へ。
「遠藤3佐、いいですね。羨ましいです。」
と、ちょうど警衛だった衛生隊の3曹に声をかけられた。
「期間限定だよ。年が明けたらまた一人だから。」
「遠藤3佐の奥様、順調そうですね。」
「ま、そうだね。あと3カ月で生まれてくるし…。ちょっと大きめなんだよね。」
「女の子だそうですね。」
「んん。妻はとても喜んでいるんだよ。女の子が欲しかったみたいだから。じゃ、警衛頑張って。」
といって敬礼し、おなかすいたなあ…と思いながら、衛生隊へ向かって足早に歩いた。