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熱塩循環、停止の兆し無し

 熱塩循環、というものがあります。

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図1 熱塩循環模式図。大西洋北部で海水が深海に潜り込み、インド洋や太平洋北部で海面に湧き上がり、再度北大西洋に戻る大循環が存在する。NASA HPより。

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 この循環により、地球の気温はずいぶんと穏やかなものになっています。特にヨーロッパでは恩恵が大きく、世界の同緯度地域に比べ温暖な一因になっています。地理の時間に習ったメキシコ湾流や北大西洋海流も、実はこの熱塩循環の発現に他ならないのです。

 ところで、なぜ、このような循環が存在するのでしょうか?


 実は、大西洋は太平洋に比べ平均塩分濃度が高くなっています。理由は大雑把には2つ。

・中緯度地域では偏西風が吹いています。太平洋上を吹き抜ける湿った偏西風は、アメリカ大陸に到達するとロッキー山脈やアンデス山脈に衝突します。そこで雲をつくり雨となり、また太平洋に帰っていきます。一方、大西洋上を吹き抜ける湿った偏西風は、ヨーロッパやアフリカ西岸に到達しますが、そこには高い山がありません。水蒸気は大陸の奥深くにまで到達し、大西洋に帰ってくる水は多くはありません。

・一方、低緯度では貿易風(東風)が卓越します。大西洋上を吹く貿易風は、中米の狭い陸橋をすり抜け太平洋に到達し、そこで雨を降らせます。一方、インド洋からの貿易風は、アフリカ東岸の山地に衝突し雨となるので、水蒸気が大西洋に到達する量は減ります。

 大西洋は、太平洋やインド洋に比べ塩分濃度が高い。また、大西洋北部では海水温が低い。この2つを主因として、北大西洋では海水の比重が高くなり、表層の水が深海に向け沈み込み、海水の大循環の駆動力となっているのです。

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図2 海洋表層の塩分濃度。大西洋は太平洋に比べ塩分濃度が高い。wikipedia より

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 しかし、ここに一つ、不安要因があります。グリーンランドの氷が急速に融解していることを先日紹介しました 。氷河の氷はほぼ淡水です。グリーンランド氷床の融解水により北大西洋が「希釈」され、塩分濃度が低下するのではないか、ひいては熱塩循環の鈍化または停止を招くのではないか、というものです。私は見たことがありませんが、映画「デイ・アフター・トゥモロー 」は、このシナリオを元にして作られたのだそうです。

 ただ、IPCC報告では、その可能性はおそらく低く、そう簡単に熱塩循環は停止しないだろうとされていました。 今回のNASAの報告 でも、幸いにも今のところその兆候は見られないようです。衛星や海上のブイや船舶による測定からは、2002年と2009年を比較すると、循環の強さはほとんど変化がないと報告されました。


 むろん、これは今後も熱塩循環鈍化や停止が起きないことを保証するものではありません。グリーンランド氷床の融解は確実に加速しています。今後、さらに塩分濃度が薄まり、これに伴って熱塩循環が予想以上に早期に鈍化する可能性は、やはりあります。今後の重要な観測課題となることでしょう。

テルマエ・ロマエ


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 テルマエ・ロマエ (THERMAE ROMAE) 。世界でも指折りの風呂好き民族・古代ローマ人が、同じく世界でも指折りの風呂好き民族・現代日本人の社会にタイムスリップ。古代ローマと現代日本を行き来しつつ、ローマ風呂に革命をもたらす?物語。


 古代ローマ好き(と言ってもローマ人の物語ガリア戦記 くらいしか読んでないですが)としては気になっていたこのマンガ。このたび目出度く2009年マンガ大賞受賞とのことで読んでみました。

 いやおもしろかった。基本、ギャグマンガです。風呂ごときに真剣になる登場人物が最高です。温泉に行きたくなりました。

レイアウト

 動画を埋め込んだら、レイアウトが崩れてしまったようです。常用ブラウザその1のSleipnirなら正常に見られますが、常用ブラウザその2のchromeだと変な表示になります・・・。

 とりあえずIEで最適化したレイアウトにしておきます。IE系以外の方申し訳ないです、いずれ原因究明します。


 firefoxとかoperaとかだと、どう見えてるのかなあ・・・。


追記:どうも、Chromeだけ崩れているみたいです。なんでだろう。

グリーンランド氷床融解、加速

 アラスカ南極ヒマラヤと、氷河の融解が進んでいることを示す記事を取り上げてきましたが、今度はグリーンランドの報告です。
 これまでもグリーンランド南部では氷床融解が進んでいましたが、今回、北西部でも融解が加速しているとの報告がコロラド大およびデンマーク国立工科大学の共同研究により示されました。
 元論文はdoi:10.1029/2010GL042460です。GRL全文を読める環境にないので、abstractおよびハイライトしか見ていませんが・・・。
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 今回の報告に先立つNASAの調査結果を示す動画。2005年頃に南部海岸線で急速に融解し始めた氷床が、2008年にかけて北西岸でも融解が広がり始めていることを示す。
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 そして、今回の報告では、2009年になってもその傾向は止まらず、さらに拡大していることが示されています。コロラド大の動画を見ると、北西部どころか北端にまで融解範囲が及んでいることが見て取れます。
 氷床の融解量観測法は、衛星観測およびGPSによる地面の隆起量計測の組み合わせが基礎になっているようです。
GPS:グリーンランドを覆う分厚い氷は、その重さのため、氷の下の大地を押し下げています。ところが、重りになっていた氷が解けると大地はゆっくりと隆起を始めます(アイソスタシー)。たとえば、グリーンランド北西部にあるチューレ空軍基地では、2005年以降で約4cm隆起したとのことです。隆起量から氷床の流出量を推測できます。
衛星:重力の変化を捉える衛星GRACEにより、氷床の変化を見積もっています。氷が融けるとその分質量が減少しますが、それに伴う重力変化を捉えるのです。ヒマラヤでも用いられていましたが、氷河全体のバランスを見るにはこれが最も多用されているように感じます。

 GPSとGRACEを組合わせたのが今回のミソのようですが、ちょっと本文を読まないと詳細は分からないですね。
 いずれにせよ、2002年~2009年にかけ、グリーンランド全体で約90立方キロメートルの氷床が失われ、これにより世界の海面を0.5mm/年上昇させた計算になる、とのことです。これは数年前の見積もりより遥かに深刻な値です。2007年のIPCC AR4では、グリーンランド氷床の海面上昇への寄与は0.14~0.28mm/年程度の寄与と見積もられていて(WG1 Chap.4, Table4.6)、その2~3倍の速度ということになります。今後もこの氷床融解は加速するだろう、とされています。
 本当に、氷床の融解については「良くない」報告が続いています。



3/28追記 NASAのHPでも紹介されました。

Nature by Numbers

 「忘却からの帰還」さんのHPのつぶやきに上がっていた「Nature by Numbers」の動画が美しすぎたので私も紹介します。まずは何も考えずに映像美をご覧ください。できればフルスクリーン、sound onで。









全く蛇足ですが説明を。

0'00"~0'25":フィボナッチ数列を示しています。0,1,1,2,3,5,8,13,21・・・と続く数列をフィナボッチ数列と言います。どの項も前の2つの項の和、という、単純な数列です。

0'25"~0'40":フィボナッチ数の各項を一辺の長さとする正方形を並べ、その頂点を滑らかに結ぶと、渦巻き模様が描かれます。

0'40"~1'25":この渦巻きは対数螺旋と呼ばれ、オウムガイの殻の構造と一致します。余談ですが、銀河の渦巻き模様とも一致すると言われます。

1'25"~1'40":オウムガイの殻に外接する一辺の長さaの正方形を描きます(別に外接しなくてもいいのですが)。底辺の中点から対角点に線を引き、それを倒して円弧を描き、底辺と円弧の交点までの長さをbとすると、

a/b=(a+b)/a=1.61803・・・

となる長方形が描かれます。この1.61803・・・こそが「黄金比」です。

1'40"~1'45":この時のa+bを円周の長さとする円を描きましょう。すると、円弧aと円弧bの2つの接点がなす角度は約137.5°となります。

1'45"~2'05":137.5°ごとに点をどんどん打っていくとある模様が見えてきます。

2'05"~2'30":それは、ヒマワリの花びら、がく、種の配列と同じものです。実は、137.5°という値は、上から見たとき葉の重なり合いが最も小さくなる角度(=太陽光を最も効率よく受けられる角度!)になります。

これはヒマワリに限りません、松ぼっくりやカリフラワーなど多くの植物に登場します。

2'30"~2'45":3点を通る円を次々描いていくと、六角形の模様が現れますが、これはハチの巣のような正六角形ではありません。

2'45"~2'55":六角形の中心と頂点を結ぶ線分の中点を取り、中点を中心にして線分を90°回転すると・・・

2'55"~3'10":トンボの羽根の模様が浮かび上がってきます・・・!

3'10"~3'20":一方、トンボの複眼はハチの巣同様、正六角形の連なりです。


 現代の数秘術のようにも見えますが、一見複雑そのものの自然界も、ある数学的秩序に確かに従っているということの一例と考えるべきでしょう。

 とはいえ、余計なことは考えずこの美しい映像に見入るべきなのかもしれません。




参考HP:

忘却からの帰還

http://transact.seesaa.net/

岐阜県教育委員会

http://gakuen.gifu-net.ed.jp/~contents/museum/golden/page62.html

科学的逍遥

http://mshi.no.coocan.jp/pukiwiki/?%B8%A6%B5%E6%BC%BC%2F%A5%D5%A5%A3%A5%DC%A5%CA%A5%C3%A5%C1%BF%F4%A4%C8%BF%A2%CA%AA

MathematiciansPicturees.com

http://www.mathematicianspictures.com/FIBONACCI/Fibonacci.htm