シネマゲーム完全読本「ゲームになった映画たち」

さてこの本はナニモノかというと、タイトルの通り「映画から作られたゲーム」に関する本、ということになります。
まず映画ありき、という作品です。
MSXですぐに思い浮かぶのは、「グーニーズ」とか「ランボー」でしょうか。
この本が出たのは2008年5月、割と最近の本ですが、MSX版もありました、とちょっとマイナーなところにも触れている…などというものではなく、例えば「ランボー」ならMSX版をやり込んだ挙げ句にスタローンにMSX版のことを聞きに行っているくらいのコダワリぶりです。私はこの本を読んで少なからず感動しました。もちろんMSXが出てくるのは全体のごく一部なんですが、CSK発売のPC-8801版「仁義なき戦い」からPS3版「スパイダーマン」まで、古今東西の記事の密度にムラがない。信じられません。
話題になった物事を、内容よりも鮮度だけを重視して3週間くらいで出してしまうお手軽な企画ばかりがまかり通るこのご時世に、20年以上かけて築き上げた知識と考察だけでなく、インタビュー類まで充実させてお値段たったの1890円。もはや、これを読まなきゃMSXユーザーとして男がすたるくらいの勢いです。
その濃さの一端をお見せしますと、「ランボー」ならこんな感じ。

とにかくこの本図版使いまくり。ヌルい本にありがちな文章だけなんてことはなく、必要とあらば惜しげもなく箱からゲーム中の写真から、バンバン載っています。
MSXユーザー的に注目すべきあたりを拡大すると…。

左右の柱にはパッケージの写真、詳細なデータが押さえられ、本文中ではたった一行のキャッチコピーの解説に裏面全掲載ですよ。
これが「ランボー」みたいな大物だけならいざ知らず、タイトルごとの扱いの大小こそあれど掲載タイトル全て同じ作りです。バーチャルボーイ版の「ウォーターワールド」の箱なんて、この本が無かったら見なかっただろうなぁ…。結構大判の本なのですが、この値段で元が取れたのでしょうか。
さらに俳優へのインタビューでは、スタローンがMSX版をちゃんと遊んでいたという衝撃の事実も。しかも「僕自身もハマった思い出が」とコメントを!ついでにMSX2版「スーパーランボースペシャル」は知らなかった、というあたりまで…。
すっかりお約束の小島監督インタビューもありますが、もちろんMSX時代も語りまくり。インタビュアーの腕なのか、この本でしか見られないMSX版「メタルギア」シリーズに関するコメントも多くあります。MSX版の2作目がなぜ「ソリッドスネーク」と言うのか、なんてのは(たぶん)この本でしか読めません。
以下に、この本に取り上げられているMSXのソフトを紹介します。
グーニーズ(コナミ)
バック・トゥ・ザ・フューチャー(ポニー)
ランボー(パック・イン・ビデオ)
スーパーランボースペシャル(パック・イン・ビデオ)
ポリス・ストーリー(ポニー)
プロテクター(ポニー)
プロジェクトA(ポニー)
プロジェクトA2 史上最大の標的(ポニー)
エイリアン2(スクウェア)
マニア的には「プレデター」のMSX2版がないとか言えなくもないですが、それはこの本の完成度の前にはヤボってもんでしょう。というか、この本を読まないのはMSXマニアとしてありえないというくらいの本です。買え、そして読め!話はそれからでも遅くはないぜ。
「ゲームになった映画たち」(Amazon)
「ゲームになった映画たち」(楽天ブックス)
「MSX同人ソフト紹介」の現状
・サークル数:152(不明2を含む)
・タイトル数:392
・タイトル数のうち、公開(2007年3月)後に寄贈を受けたタイトル数:159
自分でも驚きました。
いや、開設時に確か200タイトルくらいだったのは覚えているんですが、開設から2年余りでこんなに追加したっけ?というか頂きましたっけ?というキモチです。
個人的にはまだまだ抜けが多いと思っているくらいなのに。ごく最近に寄贈を頂いたものを合わせれば、400タイトル越えは確実です。
しかし、このリストこれからどうしようかなぁと思うことが増えました。
手に入らないソフトをいくら並べても、それ以上の意味はないんですよね…。
誰かが「遊んでみたい」と思ったらすぐ手に入る、それこそかつてのソフトベンダーTAKERUのオンライン版みたいなのができたらいいなあ、とは思っていたものの、せいぜいかMSXマガジン永久保存版(1~3)にタイトルを推薦したくらいしかできていません。あれこれ動いてはみたのですが、結果としては残せていません。
それとは別に、そろそろMSX同人ソフトの歴史や特徴といったものをまとめるべきかな、とも思い始めています。
しかし、それ自体がただ読み物として消化されて終わり、というのではあまりに寂しい。やっぱり面白いと思ったソフトは遊んでみてほしいなあ、と思うことしきりです。
何か手段はないものか。Mマガ永久保存版も最後の3号を出してからはや4年、1チップMSXが出てからも2年、MSXを巡る情勢もすっかり盛り下がっています。
そのへんをほっぽり出して自分の作りたい同人ソフトリスト作りに精を出していたのがマズかった、と言われたらそれまででございますが。
ちなみにこれら同人ソフト、当時のサークルの方からデータの形で提供されたものを除くと実物を全て所持しているので、フロッピーディスク、および取説の類も凄まじい量になっています。クリアファイルに綴じているので、紙のほうはそれほどかさばりませんけども、ぶっちゃけ市販ソフトと違って一つ一つの金銭的価値は限りなくゼロのため、僕が死んだらホントに粗大ゴミです。今度写真を撮って載せてみるかな。
とりあえず、「国立メディア芸術総合センター(仮称)についてアイディアを募集します。 」にはとりあえず個人の意見を送っておきました。同人ソフトのことではなく、市販も含めた全般のことを。磁気メディアはあと10年が勝負だなあ…。
MSXと新型インフルエンザ
日本もかつてスペイン風邪に襲われながらも、その記憶が極めて薄いようです。まあそれも仕方のない話で、当時の最後の流行ですら1919年、すなわち90年も経過していることが第一にあります。それでも、わずか4年後の関東大震災(1923年)の惨禍に比べた時に、39万人も亡くなっているにも関わらずマイナー感のぬぐえない出来事になってしまっています。このことを考えた時に、どうやらあまり有名な人が亡くならなかったというのが背景にはあるような気がしてなりません。
Wikipediaの当該項目を読んでみても、比較的有名な人は辰野金吾と島村抱月くらいでしょうか。今回は強引に前者にスポットを当ててみましょう。
さて、辰野金吾と聞いて「ああ、あの人ね」と思い当たる人はそれほどはいないでしょう。もしピンと来たら、貴方は建築に興味がありませんか?この方は東京駅の設計をしたことで名高い、建築史の偉人です。
じゃあなんでこの人がMSXに関係あるんだよ、とお思いの方も多いでしょう。実は辰野金吾をモデルにした人物の登場するMSXのゲームがあるのですね。
それは「琥珀色の遺言」(リバーヒルソフト・1988年発売)です。

「藤堂龍之介 探偵日記」とあるように、本作は探偵物のアドベンチャーゲームです。ちなみに辰野金吾がモデルの人はズバリこの人。


※国立国会図書館の「近代日本人の肖像」より転載。
名字はまんまだし、「金吾」に対して「銀蔵」という名前がシブいですね。
ゲーム中では殺人事件の真相を知るべく、龍之介に依頼してきた人ということになっています。
ちなみに名作と名高い1920シリーズの「琥珀色の遺言」は最近でもニンテンドーDS版が出ていたりします。

ちなみにゲームの方は1921年の9月の設定なので、金吾さんのほうはもう亡くなられています。もちろん金吾さんが実は死んだフリをして執事として身を隠していたとかいう超展開ではありませんので、ご安心を…。
というわけで、新型インフルエンザの話題が出たら「東京駅の設計した人も亡くなったんだってね」と、軽いウンチクを垂れる程度の役には立つでしょう。銀蔵さんのほうは濃いめのマニアの集いででも…。
ライトノベルとMSX
皆さんライトノベルは読んでますか?
MSXユーザーの世代だと「スレイヤーズ」「ロードス島戦記」あたりのシリーズが有名です。ロードスはMSX2版のゲームも出てましたね(IIは結局出ませんでしたが)。
さて時代も流れ、当時の読者世代が書き手になった結果、ボチボチとMSXネタを見かけることがあります。そんな理由でライトノベルに手を出すのは極めて不純と承知の上で、あえてご紹介したいと思います。まずはこちら。
「ベン・トー」(アサウラ・著、集英社スーパーダッシュ文庫)
副題「サバの味噌煮290円」。既刊3巻の1巻目です。2008年2月発行。
題名がなんとなく「ベン・ハー」を思わせますが、全然関係ありません。
テーマは「半額弁当争奪バトル」。中身は徹頭徹尾半額弁当の奪い合いのことばかり、そこに描かれる貧乏学生たちの妙なプライドを賭けた戦いぶりに味わいを感じられるかどうかで好みが分かれると思います。
既に社会人歴がソコソコの研究所長的にはいささか味付けが濃すぎの内容ですが、1巻序盤にある主人公とその母親の会話がMSXユーザー的に見逃せません。
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(P.26)
慌てた僕は即座に実家に電話する。出てきたのは母だった。
『洋にこれ以上金を送るくらいならMSXIIの純正ジョイパッドを買った方がいいとか何とか言っていたわよ。まったく何考えているのかしらね。
MSXIIならうちにあるセガ・マークIIのコントローラでもそこそこ使えるっていうのに。それに今なら公式エミュレーターがあるんだからわざわざ当時のマシンを起-』
-さらば母よ、僕はそう胸に呟(つぶや)きながら携帯の電話を切るほかなかった。
(※表記は原文ママ)
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集英社の本なのにアスキーの公式エミュレータに触れているのが偉いと言えば偉いですね。その他にもイロイロと突っ込みようはありますが、セガの昔のジョイパッドが「そこそこ」MSXでも使える、というマニアぶりも見どころです。
ちなみに「そこそこ」というのは2つあるボタンのうち片方しか使えない、ということなのですが、よく知ってますねこの作者。きっとセガとMSX、家庭用とパソコンとマイナー両巨頭の両方を持っていたに違いありません。実は私もそうだったクチなので、親近感がグッとアップしました。されても困るでしょうが。
さらに「あとがき」を見ると笑えないネタを「担当様」(原文ママ)にだいぶ削られたようなことが書かれており、じゃあなんでMSXはOKなのかという疑問が沸いてきます。担当様も密かにMSXユーザーだったりしたのでしょうか。
作者のサイトによると台湾版 もあるそうで、都度細かくついているという脚注も気になります。誰か台湾から買ってきてくれませんか?
さあ次行ってみましょう。
「パララバ」(静月遠火・著、電撃文庫)
第15回電撃小説大賞の金賞受賞作です。2009年2月発行。
電撃文庫はメディアワークスから出ておりましたが、アスキーがメディアワークスに吸収された結果、現在は「アスキー・メディアワークス」から発行されています。言わば今一番MSXに強いレーベルと言ってよいでしょう(強引)。
しかし本作にMSXは登場していません。今回注目すべきは作者インタビューとなります。
電撃小説大賞・金賞『パララバ -Parallel lovers-』の静月先生にインタビュー
内容について触れたところをスッ飛ばして後半部分、こんなのがあります。
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――作品の内容からは少し離れるんですが、普段ゲームってプレイされますか? 原稿の中にこれは『バイオハザード』の影響を受けているのでは? と思われる部分がありましたが……。
静月先生:しますよ。あの部分は高校生ならあぁいうことやると思って書いたんですが、やりませんかね(笑)。やらないかなぁ。私、運動神経はよくないのでアクションやシューティングはできないんですけど、従兄弟がオタクで、すごいディープなシューティングゲーマーなんですよ。しかもMSXユーザーなんです。自分では『ドラクエ』や『FF』など有名どころしかやったことがないんですけど、家に遊びに行ってよく見ていました。
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問題の箇所を抜き出してみましょう。
「従兄弟がオタクで、すごいディープなシューティングゲーマーなんですよ。しかもMSXユーザーなんです。」
静月先生、何ですか「しかもMSXユーザー」って。
文脈から判断するに、オタク<シューティングゲーマー<MSXユーザーの順に何かの症状が重くなっていくような印象があるのですが、一体彼女の目にはMSXがどのように映っていたのかすっごい気になります。
また残念ながら従兄弟から見せられたMSXのゲームのタイトルは全く書かれていませんが、そこは突っ込んで欲しかった!一般の需要はなさそうですが。しかしインタビュアーの方も触れているように「東亜プラン」という単語がサラリと出てくるあたりは只者ではなさそうです。
小説のほうは真っ当に面白いのですが、「しかも」なMSXユーザーとしては悔しいのであえて紹介しないでおきましょう。
いかがでしたでしょうか。友人にこの2点の話をしたら「よく見つけてくるねえ…」と微妙に呆れられましたが、別に探そうと思って探してたんじゃないんだよ!ホントだよ!
ライトノベルは膨大な量が発行され続けているので、とても所長一人ではカバーできません。他にもMSXの目撃情報があればぜひ情報をお寄せください。では。
BCNニュースのMSX記事が熱い?!
WebBCN
http://www.computernews.com/
ここの記事がいつの頃からか過去の記事も含めて検索できるようになっていて、MSX関連の記事も大量に見つかります。それも発表当初の1983年から、没落していく1993年頃までバッチリとカバーされています。
ちなみに上のURLだとちょっと遅いようです。こちらのURLのほうが体感上速いですね。
http://www.computernews.com/bcninfo/simen.htm
MSXのビジネス記事なんぞに興味のない方も多いでしょうが、さにあらず。今見ると興味深いデータがゴロゴロ出てきます。
「松下電器産業 MSXターボRが品薄 」
1990年の年末はturboRがバカ売れだった!…というのは言い過ぎですが、初代turboR「FS-A1ST」が3万台強の出荷見込みだったというのが分かります。この数字、ゲーム機としてはショボショボに見えますが、定価で87,800円もする商品なので一概に比較はできません。
「<ゲーム ソフトハウス見聞録> 89 コナミ 」
なんと「ハイパーオリンピック」のMSX版は30万本も売れていた!
その他のソフトにも10万本クラスのヒットがいくつもあったらしい。当初のMSXの勢いが想像以上であったことが分かります。
「<アングル'93>出版業界で展開されるフロッピーの付録問題(下) 」
当時MSX・FANが3.5インチフロッピーを付録につけるために雑誌からムックに変更した経緯が分かります。(当時は金属が露出した付録をつけられなかった)
注目すべきは、山森氏の「MSX FANの場合、月刊誌当時、7万部に対して40%近い返本率だった。しかし、FDを添付したことによって、5000部発行部数を落としたが、返本率は16・6%。実質1万1000部多く売れた。定価も従来の2倍となる980円に値上げ、売り上げも増えた。」という発言でしょう。FDをつけた当初はかなりイケてたんですね。ちなみに末期は1万部そこそこだったとか。
「MSX 出荷台数大幅に減少 」
先程の「ターボR品薄」と対照的ですが、これは二代目turboR「FS-A1GT」の出荷直後の話です。7000台というのはGT単体の数字とは言い切れませんが、近い数と言えましょう。「FS-A1ST」は初の16ビットということで注目されましたが、そのキャッチコピーに実態がついて来なかった、ということか…。
「MSX 累計出荷が400万台を突破 」
これは良く知られている、1990年時点におけるMSXの出荷累計数のニュースです。珍しいのは海外への出荷実績が書かれていることで、「欧州53万台、アジア・オセアニア78万台、中東36万台、北・南米地区35万台」と書かれています。またソフトウェアについても「MSX対応ソフトが、100社から1500種、累計500万本が出荷されていることも明らかにした。」とあります。
他にも大量のニュースがあり、ビジネス記事だけあって数値の裏付けがあるのが最大の特長と言えましょう。これらの記事を読み込むだけでも、これまで漠然としか語られてこなかった実体が分かるかもしれません。MSX以外PCの記事も多くあるので、今後の分析に期待したいところです。
ちなみに誤字も結構あるので、そのへんは注意しながら読みましょう。「MSX」が「MXS」になっているなんて朝飯前、特にワケわからんのがこれです。
「MSX ハート電子 MSX用心ち開発 」
「心ち」。一体何があったのでしょうか。文脈からすると「BASICコンパイラ」らしいのですが…。
同人ソフトに思いを馳せるということ
[同人イベント] 90年代の同人ソフトに思いを馳せる
[同人イベント] 90年代の同人ソフトに思いを馳せる(2)
[同人イベント] 90年代の同人ソフトに思いを馳せる(3)
これは珍しい、パソケットのカタログ表紙を多数見ることができます。
さて同人ソフトというのはまず研究が全然進んでいない分野で、それどころか現物の収集・保存すらもおぼつかないというのが現状です。
情報をまとめたWebページというものも少なく、Windows95時代より前の国産PC時代のものとしては、当研究室の「MSX同人ソフト紹介 」以外では「PC-8801同人ソフトギャラリー 」しかないと言ってよいでしょう。
PC-9801、X68000といった機種でも多数出ていたようですが、これらの機種についてまとめられたWebページは存在を確認できていません。
それも道理で、同人ソフトというのは元々大して売れないものです。今でこそ「ひぐらしのなく頃に」のような数万単位で出るような大ヒット作も出てきていますが、例外中の例外です。実際、MSXで言えば100本売れれば大ヒット、下手すりゃ3本なんてのも珍しくありません。記録では1000本近く売れたものが最高ランクです。
意外に思われるかもしれませんが、90年代始めにおいて同人ソフトはあまりお金のかからない趣味という側面がありました。パソコン本体は高いですし、ソフトそのものを作るのもそれなり以上に大変ですが、高価なツール類もなかった時代(CGツールも高くて1万円くらいだし、MSXは本体に標準でついてました)なので、開発そのものにはあまりお金がかかりませんでした。必要なのはお金より努力と根性、いくばくかのセンスでした。
何より有利なのは生産面で、ひとたびソフトができてしまえば単価の安い(90年当時でも1枚100円程度)フロッピーディスクに1枚単位でコピーすればよく、生産量も自由に調整できます。オフセット印刷のようにイニシャル費用が数万円も必要ということがなかったので、ビンボーな学生にとってピッタリだったのです。ローリターンですが、ローリスクでもある表現のフィールドだったと言えます。
手元にはMSXに限って400種ほどの同人ソフトがあるものの、これとても一部に過ぎないことはよく分かっています。分かってはいるんですが、市販ソフトと違って同人ソフトは装丁も簡単なのであまり大切に保管されず、散逸は進む一方です。
>同人ソフトだって、貴重な文化資料には違いないんだから、きっちり保護してもらいたい。
>同人ソフトの場合は図書館じゃなくて、PC上でエミュレータとかで同人ソフトミュージアム!とか実現可能だよね。そういう方向でやってくれないかなぁ。と妄想してみる。
一部については、MSXマガジン永久保存版 /2 /3 (2002年~2005年)などに十数本を収録させて頂きましたが、今のところそれが精一杯の活動です(数本を除いて全部当研究所からマスターを提供しています)。
同人ソフトは特にMSXにとっては重要なファクターというのはそれなりに出版社(アスキー)にも理解されているのですが、市販ソフトに比べるとハッキリと読者からのウケは悪いです。出た数が少ない=知っているユーザー数が少ないので、当然っちゃ当然なんですが。
それだけではなく、同人ソフトは製作元の連絡先不明が非常に多くて、MSXマガジン永久保存版ですらも収録を断念したソフトが多数あります。あと、作者に断られる(「恥ずかしい」というのが圧倒的に多い)という事態はもうどうしようもなくて、何度涙を飲んだことか!もちろん版権的にアウト(音楽がコピー)とか、ソフト内に作者の住所氏名が丸分かりで書いてある(笑)など、再度世に問うのは案外と技術的な問題以外のところのほうが難しいのです…。
カシオMSX・オールスターズ

そう、カシオ計算機から出ていたMSXソフトです。
カシオのMSXと言えば先日の少年ジャンプの裏表紙にもあったPV-7、消しゴムキーボードで知られるMX-10などハードウェア面が有名ですが、ソフトもこれだけリリースしていたのです。とはいえMSX界でもほとんどゴミ扱いだったので、一時期(2000年頃)は非常に安く買えました。
ゲームソフトに限ると全部で32本あり、一応全部存在することは確認しています。しかしものによってはかなりレアで、コンプリートは極めて困難です。ある意味「コナミMSX全ソフト収集」のほうが金にあかして買い集められるだけ簡単でしょう。そう、カシオはゴミゆえに集まらないという宿命があるのです。
見れば分かる通り、結構抜けています。それらだけ列挙すると…。
5番:サーカスチャーリー(コナミ)
7番:フラッピー(デービーソフト)
9番:ヴォルガード(デービーソフト)
10番:モピレンジャー(コナミ)
11番:王家の谷(コナミ)
19番:シンドバッド7つの冒険(カシオ計算機)
22番:魔城伝説(コナミ)
とまあ、抜けている物のほとんどが他社のOEM版なんですね。魔城伝説は確か持っていたような気がするんですが、忘れてしまいました。
OEM版を除けばカシオのゲームは全体に安いです。相場は全部1000円と言ってよいでしょう。コナミには及びませんが、素朴に面白いので私は好きです。
ただ、よく言われることですがどの作品も何かのパクリっぽいので一般的な評価は低めです。一番凄いのは18番の「カーファイター」でしょう。率直に言ってコナミの「ロードファイター」の劣化移植なんですが、16番に「ロードファイター」があるのに名前からしてパクっているという豪快さがたまりません。
さてそんなカシオゲームズの中で唯一プレミアがついているのが、19番「シンドバッド7つの冒険」です。箱説付きは1万超え確実というレアソフトなんですが、どうしてレアなのか誰にも分からないのも気味が悪いです。Yahoo!オークションにも過去一度(正確には二度)出たっきりで、他と比べるともう全然見かけません。
私は遊んだことがないのですが、「説明書を見ないことには何をしていいのかも分からない」という評価しか聞いたことがありません。なんじゃそりゃ?!
他にも21番の「イーガー皇帝の逆襲」にはなぜか大きな箱のバージョンがあったり、26番が「スペランカー」だったりと、カシオにまつわる謎は限りがありません。全部集めると願いが何でも叶ってしまいそうです。ええ、そうですね、その時はぜひギャルのパンティを所望したいですね。
アレスタ2の謎
予備知識として「アレスタ(1)」についてはコチラ 。
「アレスタ2」とは1989年に発売されたコンパイル製MSX2用シューティングゲームでして、MSXにおける縦スクロールシューティングの最高峰と呼ばれています。しかし出荷数が少なかったのか、横スクロールシューティングの最高峰「スペースマンボウ」と共にパッケージ版はプレミア化(1万円くらい)していたりします。アレスタ2はソフトベンダーTAKERUでは3000円という低価格で長期間売られていたので、入手そのものは難しくなかったのが幸いですが…。

タイトル画面に出てくる女の子が今作の主人公エリノア・ワイゼンです。前作「アレスタ」の主人公レイ・ワイゼンの娘であります。レイは今作で出撃し未帰還となっておりまして、エンディングでもエリノアが海に花束を投げるシーンがあります。南無三。


しかし、君は知っていたか!実はレイは生きていたということを。MSXマニアの間ですらほとんど知られていないので、先頃友人の間ですっかり狼少年呼ばわりされてしまいました。悔しいので根性で証明してみせてやるぜ!
とは言えあまり知られていないのにはワケがあります。以下がその条件です。
(1)裏技により難易度を「鬼」にする。
(2)エンディング直前のディスク入れ換えの際、これまた裏技で「テキスト版エンディング」を表示する。
と、2重に裏技を使う必要があるのです。そしてただでさえ難しいこのゲームの難易度を上げてクリアするのは猛烈に大変で、冷静に考えてみるとどうしてこんなものを見つけられたのか自分でも分からないのでありました。

(1)のやり方。まずゲームディスク1をSELECTキー(MSXPLAYerの場合はPageDownキー)を押しながら立ち上げます。上下で難易度「鬼」を選択し、左右で「NUMBER SELECT」を0にしてゲームを起動します。
(2)ラスボスを倒し、「デモディスクを入れてトリガをおしてください」と出たら、SELECTキーを押します。すると…。


え?ボカシが入ってる?はっはっは、肝心なところを見せたらつまらないでしょう!というわけで、頑張ってクリアしてね!(今回はMSXPLAYerのステートセーブを使いまくってクリアしたチキンが偉そうにすみません)
テキスト表示の裏技は中間デモでも使えます。また、テキストデモを見た後で普通のデモを見られます。でも「鬼」でも普通のエンディングは何も変わらないのでした。まあ設定資料集のレイは37歳とは思えないくらい老けているので、出て来なくてよかったかもしれません。
「ものがたりはまだ、おわっていないのかもしれない。」とありますが、アレスタ2の続きは出なかったのでこれっきりになってしまいました。まあ裏技だからいいよね!
コミケ74・MSX的レポート
以下が戦利品です。

上段左から右へ
「Heartful DISK 増刊号 どやさ VOL.2」(TAKO-SYSTEM)
「Heartful DISK 増刊号 どやさ VOL.3」(TAKO-SYSTEM)
「SPHERE」(TPM.CO SOFT WORKS)
下段左から右へ
「Unofficial 1978」(流線堂)
「TAKO-SYSTEM VIDEO SELECTION」(TAKO-SYSTEM)
「MSXを10倍楽しむディスク」(WOODSOFT)
●内容紹介
「どやさ」…TAKO-SYSTEMのディスクマガジンです。「Heartful DISK」以後はこちらの形態で出ています。ボリューム的には控えめです。VOL.3は本日初売りで、各300円/MSX2/2DD×1。
「SPHERE」…いわゆる詰めペンゴ(今は通じないか?)。「一度押すと物に当たるまで止まらない荷物を縦または横に3つ揃える」パズルゲームで、「ゲルヒェスタンダードディスク vol.3」からのスピンアウト作品のようです。1チップMSXの購入者などから好評だったので独立させたとか。こちらも本日初売り。300円/MSX1/2DD×1。
「Unofficial 1978」…これは純粋な研究系同人誌です。「スペースインベーダー」30周年を記念して、いろんな角度からインベーダーゲームという現象を分析した本です。考察の深さでは定評のある流線堂の本だけに、バグ技の分析など他では見られない内容が山盛りです。そういや、流線堂の本はほとんど毎回買ってます。確か500円。
「TAKO-SYSTEM VIDEO SELECTION」…MSXイベントに合わせて作ったTAKO-SYSTEMプロモーションビデオ等の総集編です。新作も入っているらしい?1000円。
「MSXを10倍楽しむディスク」…トールケースの中の音楽CDがメイン。その名の通りMSX関連のアレンジ曲が満載。フレイの曲に歌が付いているのが凄すぎます(○音ミクとかではなく、ホントに女性が歌ってる)。価格は失念。
上に乗ってるのはオマケで貰った2DDフロッピーです。これがコミケ会場限定とかで、釣られて会場に行ってしまいました。中身はMuSICAやSCMDのデータです。これにしか入ってない曲もあるみたい…。
本来は開催前にサークルスペースを調べてまとめておきたかったのですが、事後報告になってしまいました。すみませぬ。
しかし今回は人の密度が高くて暑かった…。入場にも45分程度かかった上、西から東ホールへ移動するのも行列に混じってノロノロ歩かねばならず、いくつか回れない場所がありました。その間汗がドンドン出るので、帰ってきたら1kg減ってましたよ!水を飲んだら元通りでしたけど。
ファミコンとMSXの狭間
えー、MSXがとうとう25周年を迎えてしまいました。おめでたいと言うべきか、往生際が悪いと言うべきか悩みますが、一般的におめでたいということにしておきましょう。
さて25周年記念として、「MSXvsファミコン」をお届けしたいと思います。
MSXは他のパソコン群と違い、やたらとファミコンと比較されがちです。確かにパソコンとしては価格が安いということもありますが、そもそも「製品としての性質が全く違うのに、なんでこうも比較されるのか」という疑問を抱いておりました。
そんな折、手に入れたのが1985年の週刊少年ジャンプです。
1985年4・5合併号、定価190円です。実際の発売は1984年末だったようです。
表紙には当時の代表作である「北斗の拳」、そしてデカデカと「発行部数403万部達成!!」と書いてある通り、部数を飛躍的に伸ばしていた頃ですね。ぶっちゃけ、既に300万部を切っている今より売れているというのが切ないですが。
そんな400万部雑誌を裏返すと…。
僕らのMSXが!しかもよりによってカシオのPV-7!
ここまで来ればなんとなく分かると思いますが、少年ジャンプには執拗なくらいMSXの広告が載っていたのです。このカシオPV-7を皮切りに、同じカシオのPV-16、パナソニックFS-A1、ソニーのHB-F1、HB-F1XDJ、確認できた限りではFS-A1WSX(MSX2+)の頃まで裏表紙にドドンと載っておりました。FS-A1の頃はグラビアページの近くに見開き2連発(4ページ)広告など、物凄い力の入れようでした。
特に松下は大広告主だったのか、MSX以外の電化製品や自転車(ナショナル自転車)の広告が毎号のように入っておりました。そりゃ、ファミコンの近所にこれだけMSXが露出していれば自然と比較されようというものです。
ところが、少年ジャンプにはファミコンそのものの広告はほとんど出てきません。そらそうです、この頃はまだ任天堂ごときが松下やソニーといった家電大連合が推し進めていたMSX陣営に資金面で勝てるはずがありませんでした。この号にはナムコやハドソンによるファミコンソフトの広告こそ出ていますが、読者プレゼントは「スーパーカセットビジョン(2名)」。泣けます。
「ファミコンがMSXに勝った」とはあまり言われず、「MSXがファミコンに負けた」とされる背景とは、「MSXがファミコンの市場に食い込もうとしてMSXから乗り込んで行って勝手に負けた」というニュアンスが感じられます。まさにその通りだったんですね。わっはっは。
「北斗の拳」に描かれた北斗神拳と南斗聖拳の戦いの影に、ファミコン神拳とMSX聖拳(アチョー)の戦いがあった、と考えるとちょっぴり感慨深いのでありました。
おまけ。
この号は「ドラゴンボール」の連載開始直後で、其の五が載っています。
ナイスミドルに化けたウーロンにブルマが一目惚れして「は はじめまして わたしブルマといいます 16歳でーっす」と言って出てきた直後の会話が上の図なんですが…。
ウーロン「ほお…バ バストのサイズは い いくつかな…」
ブルマ「85!!!」
ウーロン「は 85か… い いいな パ…パフパフができるな…」
お前ら初対面で何言ってるんだ。
ドラゴンボールにおける「ぱふぱふ」と言うと、後にブルマに化けたウーロン(バニーガール姿)が亀仙人に炸裂させるシーンがつとに有名ですが、実はこの号が初出なのです。もちろん、ドラゴンクエストよりも前です。
ところで「これが なさけない パフパフだ!!」の絵、よく見ると服を着てません。亀仙人にする際にも事前にバニー服をはだけていたので、鳥山先生には「パフパフは生に限る」という持論でもあったのでしょうか。