ライトノベルとMSX
皆さんライトノベルは読んでますか?
MSXユーザーの世代だと「スレイヤーズ」「ロードス島戦記」あたりのシリーズが有名です。ロードスはMSX2版のゲームも出てましたね(IIは結局出ませんでしたが)。
さて時代も流れ、当時の読者世代が書き手になった結果、ボチボチとMSXネタを見かけることがあります。そんな理由でライトノベルに手を出すのは極めて不純と承知の上で、あえてご紹介したいと思います。まずはこちら。
「ベン・トー」(アサウラ・著、集英社スーパーダッシュ文庫)
副題「サバの味噌煮290円」。既刊3巻の1巻目です。2008年2月発行。
題名がなんとなく「ベン・ハー」を思わせますが、全然関係ありません。
テーマは「半額弁当争奪バトル」。中身は徹頭徹尾半額弁当の奪い合いのことばかり、そこに描かれる貧乏学生たちの妙なプライドを賭けた戦いぶりに味わいを感じられるかどうかで好みが分かれると思います。
既に社会人歴がソコソコの研究所長的にはいささか味付けが濃すぎの内容ですが、1巻序盤にある主人公とその母親の会話がMSXユーザー的に見逃せません。
-----
(P.26)
慌てた僕は即座に実家に電話する。出てきたのは母だった。
『洋にこれ以上金を送るくらいならMSXIIの純正ジョイパッドを買った方がいいとか何とか言っていたわよ。まったく何考えているのかしらね。
MSXIIならうちにあるセガ・マークIIのコントローラでもそこそこ使えるっていうのに。それに今なら公式エミュレーターがあるんだからわざわざ当時のマシンを起-』
-さらば母よ、僕はそう胸に呟(つぶや)きながら携帯の電話を切るほかなかった。
(※表記は原文ママ)
-----
集英社の本なのにアスキーの公式エミュレータに触れているのが偉いと言えば偉いですね。その他にもイロイロと突っ込みようはありますが、セガの昔のジョイパッドが「そこそこ」MSXでも使える、というマニアぶりも見どころです。
ちなみに「そこそこ」というのは2つあるボタンのうち片方しか使えない、ということなのですが、よく知ってますねこの作者。きっとセガとMSX、家庭用とパソコンとマイナー両巨頭の両方を持っていたに違いありません。実は私もそうだったクチなので、親近感がグッとアップしました。されても困るでしょうが。
さらに「あとがき」を見ると笑えないネタを「担当様」(原文ママ)にだいぶ削られたようなことが書かれており、じゃあなんでMSXはOKなのかという疑問が沸いてきます。担当様も密かにMSXユーザーだったりしたのでしょうか。
作者のサイトによると台湾版 もあるそうで、都度細かくついているという脚注も気になります。誰か台湾から買ってきてくれませんか?
さあ次行ってみましょう。
「パララバ」(静月遠火・著、電撃文庫)
第15回電撃小説大賞の金賞受賞作です。2009年2月発行。
電撃文庫はメディアワークスから出ておりましたが、アスキーがメディアワークスに吸収された結果、現在は「アスキー・メディアワークス」から発行されています。言わば今一番MSXに強いレーベルと言ってよいでしょう(強引)。
しかし本作にMSXは登場していません。今回注目すべきは作者インタビューとなります。
電撃小説大賞・金賞『パララバ -Parallel lovers-』の静月先生にインタビュー
内容について触れたところをスッ飛ばして後半部分、こんなのがあります。
-----
――作品の内容からは少し離れるんですが、普段ゲームってプレイされますか? 原稿の中にこれは『バイオハザード』の影響を受けているのでは? と思われる部分がありましたが……。
静月先生:しますよ。あの部分は高校生ならあぁいうことやると思って書いたんですが、やりませんかね(笑)。やらないかなぁ。私、運動神経はよくないのでアクションやシューティングはできないんですけど、従兄弟がオタクで、すごいディープなシューティングゲーマーなんですよ。しかもMSXユーザーなんです。自分では『ドラクエ』や『FF』など有名どころしかやったことがないんですけど、家に遊びに行ってよく見ていました。
-----
問題の箇所を抜き出してみましょう。
「従兄弟がオタクで、すごいディープなシューティングゲーマーなんですよ。しかもMSXユーザーなんです。」
静月先生、何ですか「しかもMSXユーザー」って。
文脈から判断するに、オタク<シューティングゲーマー<MSXユーザーの順に何かの症状が重くなっていくような印象があるのですが、一体彼女の目にはMSXがどのように映っていたのかすっごい気になります。
また残念ながら従兄弟から見せられたMSXのゲームのタイトルは全く書かれていませんが、そこは突っ込んで欲しかった!一般の需要はなさそうですが。しかしインタビュアーの方も触れているように「東亜プラン」という単語がサラリと出てくるあたりは只者ではなさそうです。
小説のほうは真っ当に面白いのですが、「しかも」なMSXユーザーとしては悔しいのであえて紹介しないでおきましょう。
いかがでしたでしょうか。友人にこの2点の話をしたら「よく見つけてくるねえ…」と微妙に呆れられましたが、別に探そうと思って探してたんじゃないんだよ!ホントだよ!
ライトノベルは膨大な量が発行され続けているので、とても所長一人ではカバーできません。他にもMSXの目撃情報があればぜひ情報をお寄せください。では。