
今日の一曲!Le☆S☆Ca「Room Light」~約5年半ぶりのナナシス記事~
レビュー対象:「Room Light」(2023)

今回取り上げるのは、曾て当ブログでいちばん熱く語っていたと言っても過言ではないアプリゲーム『Tokyo 7th シスターズ』の楽曲です。別けてもLe☆S☆Caの楽曲に対しては思い入れが強く、単独記事は「Behind Moon」(2015)および「ひよこのうた」(2019)のものがあります。何方とも神懸り的な名曲であるとの評価は今でも変わっていません。
他に音楽大全本発売記念記事のPart.1では「YELLOW」(2015)に加えて再度のビハムン語りを、Part.2では「タンポポ」(2016)のレビューを行っています。更に『THE STRAIGHT LIGHT』の記事には「トワイライト」(2016)への短評と「ひまわりのストーリー」(2018)への絶賛評を書いており、僕がいかにそのアーティスト像(ユニットの世界観)と音楽性そして歌詞世界に惚れ込んでいたかの証左となるでしょう。
…が、今から記すのはあまりポジティブでない振り返りなので閲覧注意でお願いします(レスカへの批評ではありません)。そんなの目にしたくないよという方はこの 【スキップ用リンク】 で読み飛ばしてください。まあまあの文章量を誇るため、早く楽曲の話に入ってくれと望む方にもスキップをお勧めします。
ナナシス記事が約5年半ぶりとなった背景
この熱の入れ様が嘘のように;もっと言えばゲームもプロジェクトも依然継続中にも拘らず、当ブログにナナシスの記事を立てるのは上掲記事以来約5年半ぶりと驚きのブランクです。メインストーリーに照らすとEPISODE5.0 -Fall in Love-までは言及を終えているも、堂々の完結編であるEPISODE6.0 FINAL -Someday, I'll walk on the Rainbow...-の感想は?劇場アニメは観たのか?と、折々で拙ブログの存在を気に留めていた支配人様がもしいらしたならば、疑問に思われても仕方ないと長らくの間ばつの悪さを感じていました。
遅蒔きに状況を明かすとEp.6.0は勿論読破しましたしアニメも鑑賞済みで、その内容には概ね満足しています。このタイミングで茂木伸太郎総監督の卒業発表があり、一区切りを付けるには絶好であったため2021年の春にゲームからは引退しました。しかし中核を成す人物を欠いて音楽性がどう変わるのか、ある意味怖いもの聴きたさで音源にだけは暫く手を出し続けていて、フィジカルでのリリースがあった『恋セヨ乙女』(2021)から『悠久の輪廻』(2022)までの13枚は全てCDを揃えています。
原理主義者がキャラクター性を抜きにして音楽のみに向き合った限定的な立脚地からとエクスキューズしておきますが、「恋をして」(2021)と『Re:SONANCE』(2022)以外には辛口の所感です。その後の音源リリースは完全に配信へとシフトし、なるべく現物主義者で在りたい僕は幾つかのエムカードで蒐集を続けていたけれど、いずれは物理的にアルバムが出るであろうと信じて単作・単曲で追うのも止めました。従って、2022年秋から今日にかけての楽曲については殆ど未知の状態にあります。
以上が茂木後を語らない&語れない理由だとして、在任中のEp.6.0と映画をスルーしている理由にはなっていなくない?との問いには、よりイデオロジカルな答えを返さなくてはなりません。前述の通りEp.6.0も映画も内容には概ね満足しているので、その出来に納得がいかなくて口を噤んでいたのとは違います。寧ろナナシスは僕の中で神格化されている作品であるため、下手に言葉を紡げなくて避けてしまっている心理のほうが優勢なくらいです。
ならば真相は何かと言うと、発端は『t7s ORIGINAL SOUNDTRACK 3.0 -The Things She Treasured-』(2020)に付属の対談ブックレットにあります。具体的なことは敢えて申し上げませんが、僕はその内容を残念に思いました。対談時期は2020年2月で発売は同5月ということでその場の誰もが延いては読み手である自分もコロナ禍初期の不安の煽りを受けて荒んでいた面や、本来は会議室で行う予定だったものがドライブ中の録音即ちリラックスの場に変更されたことで饒舌になった面もあるのかもしれません。ともかく何にせよ読了後にナナシスへの熱がやや冷めてしまったのは個人的な事実です。
改めて読み返すと確かに引っ掛かりこそあれ「当時は何をそんなに憤っていたのだろう」と流せる程度のものでしたし、同様の対談小冊子が付属すると知って3年以上買うのを躊躇っていた『t7s ORIGINAL SOUNDTRACK 4.0 -The Things She Always Loves-』(2021)の内容に関してはニュートラルに読み進められました。結果として今あの時の残念は僕のイデオロギーが変化したことで瑣事となっていますが、映画の劇伴は出羽さんだったから係るバイアスに囚われずに観に行けたなとか、また対談の内容が受け付けないかもだからサントラ4.0に金を落とすのは二の足を踏んじゃうなとか、僕の消費行動に影響を与えたのもまた事実です。
以上が当ブログに於けるナナシス記事が約5年半前で途切れていた理由となります。誤解のないようフォローしておきますと、サントラ3.0も4.0も音楽的な評価では良盤との認識です。加えて当座のコンテキストでは僕の抱えていたイデオロギーが恐らく特殊なので(反転アンチとまではいきませんが、こじらせた厄介信者のそれですので)、上記を受けて対談者の発言内容に非があるような捉え方は事実に反するためしないでいただけると助かります。そも何一つ発言内容に関してふれていませんからね。大多数の読み手にとっては興味深い制作秘話やコンテンツに込めた想いの大きさを窺い知れる面白い対談に相違ありません。
さて、先の「いずれは物理的にアルバムが出るであろうと信じて」がこんなに未来になるとは予想していなかったけれど、明後日遂にTHREE SEVEN RECORDSからのコレクションアルバム『The Sound of Sister's Step』(2025)が発売されます。上掲リンクカードの受注生産盤は既に売り切れていますが、「Side 2034」と「Side 2053」のそれぞれは購入可能です。
これからレビューする「Room Light」は「Side 2034」のDisc 1に収められるみたいなので、多少なりともタイムリーな言及になると思って今般筆を執ることにしました。約5年半の沈黙を破るのには好都合だったと時宜に感謝します。
収録先:『グローイング』(2023)
本曲の収録先はレスカの2ndミニアルバム『グローイング』です。1stライブと同じタイトルを冠しており、これの開催に先駆けての新曲が収められています。最も感性に刺さったのは「Room Light」だけれど、以外の4曲も自作のプレイリストに於いて3rd(上位90曲)までには登録してあるため、コンパクトながら平均的に質が高く侮れない作品です。レスカの持つ世界観を正しく拡張しようといった狙いが感じられました。
歌詞(作詞:Irodori Kaoru)
本曲の歌詞世界は「ひよこのうた」のそれに通ずるものがあります(だから好きだということの根源的な説明はリンク先に丸投げで)。つまりはアイドルの文脈から外れて甚く現実的な内容が描かれていて、ある程度社会人としてやって来れたからこその葛藤に陥っていた「ひよこ~」に比べると、まだ学生気分が抜け切っていない時分にフォーカスしているような未熟さを窺わせる内容です。
"あぁ、あれも買い忘れた あぁ、洗濯もしなきゃ/あぁ、こんな時間だな 今日も... みたいなエンドレス"と折り重なる些細なToDoに圧し潰されそうになる感覚や、"あぁ、休みって休めないな... あぁ、ニュースも見なくちゃ/あっ、...という間に誕生日だな みたいなエブリデイ"と仕事の皺寄せが日常を浸食してくる余裕の無さに、まだ上手くオンオフを切り替える術が身に付いていなかったあの頃を思い出します。
そんな中で唯一心安らぐ区切りを見せてくれるのが表題の"Room Light"で、一日の終わりに"ルームライトをつけて ため息だって 溶けてゆけ/悪くないよ今日だって 3000ケルビン ほっとさせて"と、ささやかな自己肯定感アップで我が身を労わるのは大人への大事なステップです。
続く"ルームライトひとつで 街の夜景に溶け込んで"は非常に愛おしいフレーズで、後の"ビルの窓 ひとつひとつの光は 誰かの今日の物語"にも繋がる視座ですが、きちんと帰宅して自宅の電気を点けるというただそれだけの行為が傍目には確かな営みの証として映る事実に、社会の一員として許されているような気になることへの安堵と虚しさを共時に感じられます。
"親孝行とか(形だけじゃない)/ちゃんとしなきゃな(心から)/「ありがとう」も「ごめんね」も もう言えるから"はベタだけれどこの状況下に放り込まれると涙腺に来るものがあり、実家のルームライトは今日もきちんと点いただろうかと見守り電球(家電)に"ねぇ"と尋ねて安心したいです。
メロディ(作曲:シバサキユウキ)
リフ的な役割を持った"Room Light Good Night 今日のわたし"のセクションは語源通り(諸説あり)リフレインの綺麗な旋律であるのと同時に、それが意味するところの「同じことの繰り返し」が歌詞内容にマッチしていて完璧だと絶賛します。それでも"Good Luck 明日のわたし"と永遠に今日に囚われてはいないので、螺旋階段を上って行くような漸次変化のループです。
感嘆詞から始まるビハインドのAメロは倦んだ進行でアンニュイに、焦りを隠せないBメロはリズミカルに急く音運びで足早に、俄に電球色(3000K)が満ちるサビメロはやや上向きに弾むラインでマイルドに、ふと去来する万感に決意を促されるCメロは意志固く声の重なりが意識されて多層的にと、言葉の持つ力をメロディがしっかりとガイドしてその意味を伝え易くしているところが親切で、端的に"わたし"に寄り添った旋律であるとまとめます。
アレンジ(編曲:シバサキユウキ)
軽く聴いた感じでは優しく切ない音遣いのキーボードが耳に残るけれど、本曲の肝はその実スラップサウンドでしょう。根底にずっとパーカッシブなグルーヴが鳴り響いており、打ち込みのドラムスよりもリズムの主導権を握っているのが予想外の聴き心地に寄与しています。
この意外とロックなファクターに意識を向けていると、Cメロ後間奏で泣きのギターが入ってくることにも違和感がなく、ここだけ90年代のB'zっぽい感じがして個人的なツボにグッときました。空間処理が絶妙ですよね。
ブランク後の色々を並べてみました
「ナナシス記事が約5年半ぶりとなった背景」の項に記した諸々が嘘でないことの証明です。サントラ3.0および4.0、『恋セヨ乙女』から『悠久の輪廻』までの13枚(『New Age』と『Re:SONANCE』は置き順を間違えました)、『グローイング』と『Live and let "Live"』のエムカード、映画『Tokyo 7th シスターズ -僕らは青空になる-』関連で来場者特典のミニ色紙(最推しのモモカを神引き)、パンフレットの限定豪華版、ブルーレイの豪華版となっております。ちなみに下に引いているのはC90の耐水ポスター「Le☆S☆Ca(ビーチボール)」です。飾れるように100均で買った大きいハンガーにクリップで留めてあります。他にC88のSiSHのとWITCH NUMBER 4のも所持。