ラブライブ!シリーズのₙC₅「Yup! Yup! Yup!」「POP TALKING」ほか | A Flood of Music

ラブライブ!シリーズのₙC₅「Yup! Yup! Yup!」「POP TALKING」ほか

 

はじめに

 

 自作のプレイリストからアーティストもしくは作品毎に5曲を選んでレビューする記事です。第4弾は【ラブライブ!シリーズ】を取り立てます。普通に読む分に理解の必要はありませんが、独自の用語(nの値やリストに係る序数詞)に関する詳細は前掲リンク先を参照してください。

 

 これまでに当ブログで同シリーズをメインとした記事は4本あり、何れも「今日の一曲!」なので網羅的なものは存在しません。内訳は無印が3本・サンシャインが1本で、前者からは作詞作曲編曲にバランス良く言及している記事を代表的に、後者は連載記事「2018年のアニソンを振り返る」の一環でニジガク含め複数楽曲にふれている特集的な性質に鑑みて、それぞれリンクカードを貼っておきます。

 

 

 

 加えて、楽曲レビュー記事ではありませんが有明ガーデン×ニジガクのコラボを堪能したプチ旅行記が作品愛の提示には有効かもしれないので、こちらも目立たせておくとしましょう。

 

 

 その他関連のある言及をした記事や単に名前を出しただけの記事も読みたいという方は、当ブログのID指定ありの検索結果ページを以下にリンクしておくので辿ってみてください。なお、本記事の選曲に於いては過去にレビュー済の楽曲をなるべく除く形にしました。

 

 

 前置きは以上で、ここからラブライブ!シリーズのₙC₅を書き始めます。現時点でのnの値は90/3[=30*3]、レビューするのは「Yup! Yup! Yup!」「POP TALKING」「繚乱!ビクトリーロード」「少女以上の恋がしたい」「もぎゅっと"love"で接近中!」の5曲です。スクミュだけ未だ音源に手が回っていないため、残る5作からそれぞれ1曲ずつを選ぶ構成にしました。

 

 

「Yup! Yup! Yup!」(2023)

 

 

 新しい作品から遡ることにしまして、1曲目は『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』から『夏めきペイン』(2023)収録の「Yup! Yup! Yup!」です。なお、蓮ノ空は音源には手を出しているもののリンクラを通じて活動を追っているわけではないので(本作に限らずVTuber系は無案内です)、世界観やキャラクター像に係る記述は殆ど出来ないことを断っておきます。キャラと声もいまいち一致していませんが、歌割りに関してだけは一応調べた上で以下の内容に反映させました。

 

 本曲の魅力はフロウの心地好さにあります。全体を通じてリズム重視のメロディラインが印象的で、顕著なのはAメロの前半部です。1番と2番で全く異なる音運びになっているラップ的な要素が、とりわけ2番のそれは何処を切り取ってもツボでした。先行する"今なら"が1番との違いを早々にマークし、果たして期待通りに新たなフロウが慈のあざと可愛いボイスで刻まれ、そのふわふわとしたラインが文字通り"反動"で俄に快活さを得て、畳み掛けの"I wanna"に煽られた先で元気いっぱいの瑠璃乃が"欲張りだけど 全部全部 宝物"を歌う。この一連の流れに展開される緩急と物語性が、聴く者に新鮮さと幼馴染の結び付きを感じさせます。"反動"と"全部全部 宝物"が歌詞を見ないと日本語に聞こえない歌い方なのも好きで、本来はモーラで考えるところをシラブルにするのも上質なフロウ形成に一役買っているとの理解です。

 

 その他のパートでもみらぱが絡むとリズムがなお生き生きとしており、サビでは"咲きたい 大期待/Let me, let me"および"錆ない パンチライン/Like it, like it"のキャッチーなライミングや、"最高だね 最高 最高だね!"および"負けないデス 負け 負けないデス!"のスクラッチっぽいリピートが、ラスサビ前のプレコーラスでは"高まる気持ち 嘘つかない"のハッピーでアッパーなエモさが「これぞラブライブ!」で堪りません。ここは楽想もテクニカルで、Cメロ+サビ後半という変わったコンビネーションです。見方を変えれば2番のサビは前半と後半に分かたれていて、その間にCメロがインサートされているとも言えます。2番サビが前半のみでCメロに入る、サビ後半をプレコーラスに使う。それぞれはそこまで珍しくない気がしますが、全部合わさると新鮮です。

 

 

「POP TALKING」(2022)

 

 

 2曲目は『ラブライブ!スーパースター!!』から「POP TALKING」を紹介します。両A面シングル『ビタミンSUMMER! / Chance Day, Chance Way!』(2022)の第8話盤c/w曲です(第6話盤には未収録なので注意)。本曲は過去に別作品のₙC₅にて名前を出したことがあり、作編曲を手掛けたYUU for YOUさんの多彩なトラックメイキング力が解る一曲として例示していました。正確を期すれば作曲はGiz Mo'(from Jam9)さんとの共作で、同じく両名の共作である他作品のナンバー「パステルカラー パスカラカラー」(2021)もお気に入りゆえ、個人的には鉄板のタッグだと思っています。

 

 本曲もまたリズム重視の楽曲で、ラップとポエトリーの中間ぐらいのテンションで以て、曲名と歌詞が示す通りに"自由気まま"な会話が繰り広げられるのが特徴です。ギズモさんがJam9に於いてラップとベース担当である点に照らすと氏の領分はヴァースで、フックをユウさんが書いたのかなと予想します。何にせよ低音が気持ち好いトラックなので、ベースラインのうねりに身を委ねているだけでも踊れて、更に言葉とリズムが噛み合えば尚の事ドープに仕上がるのは道理です。リリックを紡いだのは多作家の宮嶋淳子さんで、その内容というか着眼点には都度はっとさせられます。以下、順不同にここすきポイントの列挙と雑感です。

 

 "新発売になったのなに?/グミなのかなんだかちょい不明"

  → 「新感覚」と銘打った迷走菓子が結局何なのかわからないのわかる。

 

 "そーだ、昨日の曲/よくわからないけれどほんと夢中/タイトルは?/って知らないんだ?/さすがっすキミだやばー!(にぱー!)"

  → 最近で言えば猫ミームのチピチピチャパチャパとかね。笑

 

 "雨が降るって予報/けど晴れてるこの傘どうしよう/なんとかなる!/ってなんのハナシ?/さすがに適当すぎ!(えーっ?w)"

  → クゥすみいいぞ。ペイちゃんの歌い方がなんかツボ。

 

 "ノートのページがふやけてる/てか犯人 キミのペットボトル"

  → ここ青春解像度高い。

 

 "ねえもう何度 前髪きりすぎてんの?/でもセルフってオーダーメイド/理想をかなえる正攻法(えいえいおー!)"

  → 先にシャニマス楽曲にふれているついでに、「相合学舎」(2022)のひなまどパートっぽいやりとりでよき。ちなみに雛菜のソロ曲「あおぞらサイダー」(2021)もYUU for YOUさんの手に成ります。

 

 

「繚乱!ビクトリーロード」(2022)

 

 

 3曲目は『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』から、シングル『夢が僕らの太陽さ』(2022)のc/w曲「繚乱!ビクトリーロード」にフォーカスです。いわゆる自己紹介ソングで、ジュリテクならぬジュリアナEDMとでも形容したいバブリーなオケに乗せて、12人が順繰りにお立ち台に上るイメージが浮かびます。このシチュエーションには特に果林がキャラも歌詞も様になっていますね。

 

 本曲もまたまたリズム重視というか台詞中心の楽曲ですが、1曲目からずっと旋律性に乏しい選曲なのは敢えてです。というのも純粋にメロディが良い曲は無印で、加えて多様な編曲はサンシャインで通過してきているため、以降のシリーズでは新機軸となるラップめいた楽曲に惹かれる傾向にあります。…こう書くとニジガクSS蓮ノ空が作編曲の面で無印ラサに劣ると取られかねないので、本記事の後書きに「作編曲を重視した場合」のラインナップを載せました。

 

 閑話休題。本曲でいちばん好きなのはしずくのセクションです。"桜坂しずく 見参!"がイヤーワーム過ぎてよくリピート再生しています。テンポ良く"大きいリボンがトレードマーク/桜坂しずく"ときて、"見参!"が発声されるまでの僅かなブレイクにフロウの神髄が窺えるのと、「けぇ~んざんっ!」という譜割りの妙でしょうか。トリを飾る歩夢はさすがの好待遇で、各人によって微妙に変化するオケに於いて最も分かり易くキュートなサウンドが添えられています。

 

 「旋律性に乏しい」と表現しておいてなんですが、全体歌唱の部分は結構メロディアスです。"夢を追いかけてく/一人一人 抱きしめて"の美メロっぷりには耳を奪われますし、"今 虹の花を咲かせて"のスタンザに見られる百花繚乱な音運びはサビメロに相応しい強さを誇っています。トラックが最もアグレッシブになる[2:48~3:02]は実にクラブバンガーな趣で格好良く、フロア志向の中毒性が抜群なので爆音ヘビロテでハイになって楽しみましょう。

 

 

「少女以上の恋がしたい」(2017)

 

 

 3曲目までの流れを断ち切りまして、『ラブライブ!サンシャイン!!』から4曲目に据える「少女以上の恋がしたい」は、その充実の旋律性を高く評価しています。シングル『HAPPY PARTY TRAIN』(2017)c/w曲。シンプルなJ-POPの楽想を【AメロBメロサビ】の組み合わせとした場合、本曲も2回以上登場するメロディはそれぞれに当て嵌められるけれど、これとは別に1回しか登場しないメロディが3種類もあって最終的にEメロまで進む点でユニークです。当ブログに於けるメロディ区分のルールでは説明し難いケースで、直感的な理解("ときめきたいって"~をAメロとする)に反して冒頭の"知りたい"~をAメロと置くしかなく、同パートとサビ("見てよ"~)以外はアルファベットをひとつ戻して考えると擦り合わせ易いかもしれません。下記のDメロは直感的にはCメロといった具合です。

 

 中でも感情を見事に揺さぶられて好きなのはDメロ("ひとり想う"~)で、ソロとユニゾンの歌い分けが旋律の持つ切なさを浮き彫りにし、"ひとり"を重ねる度にどんどん"恋"への熱量が大きくなっていくのが解ります。巻き戻ってAメロも恋の幕開けに似合う覚醒的な進行が素敵で、祝福のストリングスと相俟って雄弁です。Eメロ("会いたいからきっと"~)のラインは序盤の間奏で先出しされているため([0:16~0:32])、新出であってその実既出という技巧性が光ります。〆の"あなたも恋に触れて"は、一歩を踏み込む愛おしさが滲んだメロディです。

 

 歌詞解釈をするなら「一歩を踏み込む」ではマイルドで、曲名が匂わせるように「一線を越えようとする」ちょっと過激な内容と言えます(ラブライブにしては)。"腹が立っちゃった/私がこんな激しい性格だと気づかないなんて/あなたを責めたい気分だ!"の理不尽な転嫁も、"見てよ見てよホンキで 傷つけたってかまわない/ただ普通の会話じゃつまんないよ/だってあなたを知りたい"の危険な好奇心も、"少女以上の恋がしたい"なら向き合わなければならないステップですよね。別けても攻めたなと感じる歌詞は、"なにもかもが素敵!は創作の世界にしかないね/だったらせめてスリルを求めようかな"で、フィクション作品の楽曲でこれを言って退けるのが翻って作品にリアリティを生んでいると絶賛します。

 

 

 
 

「もぎゅっと"love"で接近中!」(2012)

 

 

 5曲目のレビュー対象は初代『ラブライブ!』から「もぎゅっと"love"で接近中!」です。本曲に関しては『μ's Memorial CD-BOX「Complete BEST BOX」』(2019)での鑑賞を推奨します。シングルの音源は未所持なので比較出来兼ねますが、『ラブライブ!μ's Best Album Best Live! collection』(2013)に収録のそれはオケに粗があると感じるからです。シンセベースの帯域が干渉を起こしているような、またはキックが歪み過ぎているように聴こえます。BOXのは幾分マシです。

 

 上記はあくまで僕の耳と使用機器がそう捉えただけに過ぎないけれど、AV Watchのイヤモニレビューで本曲がまさかのリファレンスになっているのを発見したので、客観性担保のため以下にリンクカードで埋め込んでおきます。Westone・Wシリーズの当時最上位モデルW40を使用して、e-onkyo music配信のハイレゾ(DAPはAK120)で本曲を鑑賞したケースです。曰く「音が重なる部分でも、キャラクターの声と打ち込みの電子音がゴッチャにならず、質感の違いが丁寧に描写されている」で、やや文脈が異なりますが「音がぶつかっている」との所感は共通しています。ご存じの通りハイレゾにも色々あって(しかも本件は10年以上前の話なので)、各種聴き比べをしている方が「曲毎にベストの音源が違う」と主張するのもあるあるです。ゆえに安易にハイレゾは薦めず、取り敢えずリリース年の新しい音源(つまりBOX)に手を出してみてはとサジェストします。なお、編曲者であるA-beeさんのワークスは本曲以前から『POLYPHONIC CITY』(2008)にて馴染みがあり、同作に照らすと確かにその音作りにはラフな印象を受けるものの、ギラギラとした勢いが味になっていて決して不出来には感じていませんでした。従ってこちらも軽々にアレンジャーの責任とはせず、エンジニアとの相性もありますからねとフォローしておきます。

 

 

 いきなりニッチなところを攻めてしまいましたが、こういった音質論争的な話が出来るのも10年以上シリーズが続いているからこそと歴史に思いを馳せまして、続いては作曲面への言及です。本曲もまたメロディに惹かれての選出で、落ちサビ+ラスサビのセクションを殊更に好いています。サビメロはそれ単体でもポップで可愛く、ピコピコしたトラックに上手くマッチしてアイドルソングとして申し分ありません。ここに一層の奥行を生むのは歌詞にないバックコーラスのハートウォーミングなラインで、そのサラウンドな女神の歌声に「もぎゅっと」の距離感を覚えたならもう虜です。AメロもBメロも含めて歌い継ぎや掛け合いが徹頭徹尾上出来と言え、歌い手の多さを活かした曲作りの観点ではμ'sの楽曲が最も優れていると2024年になっても思います。

 

 

おわりに

 

 以上、ラブライブ!シリーズのₙC₅でした。「繚乱~」のところで後述とした「作編曲を重視した場合」に、蓮ノ空SSニジガクの選曲がどうなっていたかのifは次の通りです。蓮ノ空:「Dear my future」(2023)|SS:「Day1」(2021)|ニジガク:「PASTEL」(2022)。これらは再び本シリーズのₙC₅を書く機会が訪れたら選出される可能性が高いでしょう。

 

 さて、前回のₙC₅で「せめて一週間に一本は書き上げたい」と宣言したのが早速崩れたのをお詫びしまして、しかし閏日はアディショナルタイムなのでセーフの理論を展開しておきます。笑 …というか実は胃腸の不調が継続しているのが遅れの遠因になっているため、経過如何では今後も宣言を守れないかもしれません。