今日の一曲!Aqours「ホップ・ステップ・ワーイ!」【2018年振り返り・ラブライブ!編】 | A Flood of Music

今日の一曲!Aqours「ホップ・ステップ・ワーイ!」【2018年振り返り・ラブライブ!編】

 【追記:2021.1.5】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:2018年のアニソンを振り返る】の第四弾『ラブライブ!シリーズ』編です。【追記ここまで】





 メインで取り上げる「今日の一曲!」はAqoursの「ホップ・ステップ・ワーイ!」(2018)で、同曲は『Aqours CLUB CD SET 2018』に含まれる形のシングル作品としてリリースされました。「Aqours Hop! Step! Jump! Project!」と題された企画のテーマソングです。

 今年中に発売された『ラブライブ!シリーズ』の楽曲の中では、本曲がいちばんのお気に入りとなりました。




 解放感のあるメロディラインと、"決めよう 次にしたいこと"という未来志向の歌詞によって、冒頭にのみ登場するセクションが一層の輝きを放っている;シンプルに言えば「ワクワクする立ち上がり」である点をまず評価します。当ブログ的には「フック始まり」と区分されるタイプですが、こういった展望の明るい楽曲には効果的ですね。

 ここのバックアレンジは後のBメロ裏に出現するものと共通ですが、μ'sの「baby maybe 恋のボタン」(2010)のオケを彷彿させるというか、マッシュアップが出来そうだなと思いました。


 続くAメロの旋律が本曲の中で最もツボです。特に後半の"だから叶った夢の先は あたらしい夢"の部分が、流麗且つキャッチーな変化を見せていて心地好い。

 Bは歌詞的には"もちろん僕らも、だよ!"だけと短いですが、先述の「baby~」を思わせる裏のアレンジがメロディアスなので、実質的にはオケがプレコーラスを担っていると分析可能なところが地味に技巧的です。

 メロディの変化量的にBは「静」のパートと言ってよく、ゆえにバックトラックに意識が傾くわけですが、ここは大きな動作に移る前のチャージ段階として、プロジェクト名あるいは曲名にある「ステップ」に相当し得るものとして機能していますよね。楽想的に言えば、「サビに入る前のタメ」として優秀だという意味です。


 そして満を持してサビへ。力強いキックと疾走感のあるシーケンスフレーズにのせて、気持ちの好い伸び感を纏ったメロディが駆けて行くという構成は、冒頭で予見した「ワクワク」をしっかりと引き継いでいるなと嬉しくなります。主観的な表現ですみませんが、「アンセムらしさ」があって素敵です。

 歌詞はストレートな良さが光っていて、あまり解釈を捏ね繰り回す系ではありませんが、ここまでに記したような作編曲に於けるスピーディーな要素を考慮すると、"いそがないと置いてくよ?"にも説得力が生まれ、言葉と音楽との結び付きが強いところには特筆性があると言えます。

 Cメロ後のギターソロもそれ単体で素晴らしくエモーショナルですが、"始まるよ 始まりたがる みんな一緒だ!"の後に続くと、歌詞と呼応して雄弁に語り始めるので、納得の編曲であると言う外ありません。全ての要素が上手く噛み合っているからこそ、心に響く良曲たりえているのだとまとめます。




 ここからは特典曲と限定CDを除く、その他のリリースに言及するセクションです。いずれも長く書こうと思えばそう出来ますが、「今日の一曲!」に対する比重は小さくしました。まずはアクアの楽曲から。




 「WATER BLUE NEW WORLD」(2018)はTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』(第2期)の挿入歌で、アニメ関連シングルとしての5thに両A面のうちの一曲として収録されています。こちらを「今日の一曲!」にしようかと考えていたくらいには、本曲もかなりのフェイバリット・ナンバーです。

 実は過去に別アニメの記事の中で一度曲名を出していて、それは作編曲者が共通であるといった理由からですが、そこに記した内容が本曲のレビューにも都合がいいため、以下にセルフ引用した後に本文に入ります。


 作編曲者は佐伯高志さん。個人的には『ラブライブ!』シリーズの楽曲にて存じ上げていた方で、とりわけ「Dancing stars on me!」(2014)と「WATER BLUE NEW WORLD」(2018)はお気に入りです。キャッチーとセンチメンタルを両立させることに長けていらっしゃるなと感じます。

 …ここで取り立てたいのは「キャッチーとセンチメンタルを両立」という箇所です。聴けば瞭然だろうと丸投げしますが、「WBNW」のとりわけサビに宿っている「泣きたくなるような感覚」は、佐伯さんの手腕が発揮されたポイントであると絶賛します。

 歌詞の"MY NEW WORLD/新しい場所 探すときがきたよ"もシンプルながら涙腺にくるものがあり、旋律の切なさと勢いに引き摺られて、一段と「行かなくちゃならない」向きが強められているところが好きです。"ずっとここにいたいと思ってるけど/きっと旅立ってくって分かってるんだよ"や、"夢は夢のように過ごすだけじゃなくて/痛みかかえながら求めるものさ"などの現実にフォーカスしたフレーズも、成長譚の描き方としては素直に鮮やかで、流石畑亜貴さんによる作詞だと言えます。





 もう一方のA面曲「WONDERFUL STORIES」(2018)も同じくアニメの挿入歌です。最終話に使用されただけはあって、前作(無印)も含めた歴代ED曲と近しいエッセンスを持った、切なさを抑えて明るく締めくくるのに適したナンバーだと思います。





 4thライブのテーマソングを収めたシングル『Thank you, FRIENDS!!』(2018)は、表題曲もc/wの「No.10」も「ファンへの感謝」に主眼が置かれていて、歌唱・歌詞・メロディ・アレンジの全てが優しく寄り添ったつくりになっている点が好みです。特に「Thank~」は、聴けば聴くほどに旋律の美しさとストリングスの妙が際立って来て、6分半近くある割には間延びのしないリスニングが出来ます。






 シリーズ全体を振り返るなら、今年の重大イベントとして「虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のデビュー」は外せないでしょう。グループの発表自体は去年の出来事ですが、音楽を中軸として作品を楽しんでいる僕のような人間にとっては、CDの発売によって漸く虹の9人を身近に感じられるようになってきました。

 アルバムでのデビュー、ソロ曲が中心、歌詞に必ずしも畑さんがタッチするわけではない…などの要素も新鮮で、『ラブライブ!シリーズ』でありながらも、新規IPの作品に手を出した時のようなフロンティア感があって良かったです。




 推しというか好きなキャラクター上位3名を挙げろと言われたら、かすみ・愛・果林となるのですが、この贔屓目をなるべく排除して冷静に音楽に向き合おうとしても、『TOKIMEKI Runners』(2018)の収録曲でお気に入りをリストアップすると、03.「ダイアモンド」・06.「めっちゃGoing!!」・05.「Starlight」の順になってしまうという事実に自分で笑ってしまいました。


 03.はかすみのあざとさが全開のキュートなポップソングで、中でも"‥ってああ!!"の台詞部分は神懸かり的なあざとい発声に感動すら覚えたのですが、サビでは少しセンチメンタルな趣が顔を覗かせるところに、かすみの心根というか弱さが見えた気がして、このギャップにやられた次第です。

 06.は90年代っぽいメロディラインとアレンジがツボで、このノリの良さには思わず身体が動いてしまいます。2018年の音楽にしては古めのアウトプットというのもある意味ギャップでしょうが、ギャル系の外見からまさかの隙あらばダジャレを放つキャラである愛らしいと言えば、相応しい音解釈かもですね。

 05.もダンサブルな点では06.と同じですが、こちらはサウンドが完全に現代寄りです。エッジィなシンセとハイポテンシャルなクラップがひたすらに格好良く、果林の冷静と情熱を併せ持ったボーカルを華麗に引き立てていると評します。ちなみにですが、初回封入のプロフカードは果林のでした。サインが意外と可愛らしい。


 歩夢のソロ曲・02.「夢への一歩」もなかなかに好みで、実に教科書的というか王道のメロディ運びに安心します。歌詞もさり気無く上手く、"ジンセイってタイヘンだ"を表現するのに、目に見えた障害に言及するのではなく"段差もなく転んだり"としたり、時代を鑑みて「地図」ではなく"MAPを見ても迷ったり"とアプリを意識したであろう語彙選択がなされていたりと、少しひねっている点が高評価です。"諦めなければ夢は逃げない"も、「叶う」だと陳腐&無責任、「近づく」でも疑いの余地を残してしまうところに、"逃げない"は絶妙なワードチョイスだと思いました。

 唯一のグループ曲で表題曲の01.「TOKIMEKI Runners」も悪くないですが、サビを聴いていると別作品の楽曲「雨上がりのミライ」(2010)が乱入してきて気になってしまいます。笑




 年が明けてすぐには『ラ!サ!!』の劇場版が公開されますし、流石に『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバルALL STARS(スクスタ)』も配信になる…というかならなきゃ色々まずいと思うので、2019年のリリースにも期待したいです。


■ 同じブログテーマの最新記事