39!SB69!!『SHOW BY ROCK!!』の音楽の魅力 ―アプリ終了によせて― Pt.1
【追記:2021.1.5】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:2019年のアニソンを振り返る】の第五弾です。【追記ここまで】
本記事の主旨はタイトルにある通り、2019年12月26日で約6年半の歴史に幕を下ろしたアプリ『SHOW BY ROCK!!』を惜しんで、その音楽を特集するものです。本題に入る前に、ゲームの思い出話を挟みます。
6年半のうち僕がプレイしていたのは2年半強となるので、初期勢の方々に比べれば哀しみの程度はまだマシですが、それでも翌日から起動するアプリがひとつ減った寂しさは拭いきれません。終了告知後は全開放されたブロマイド図鑑のスクショをしたり、必要素材数が全て1になったのを機に全バンドの成長ボードを4枚目まで開放したりして、電子の海に消えゆく定めのデータに想いを馳せていました。ログボでの大量メロディシアン配布とお祭り仕様になったガチャとの合わせ技も楽しく、異常なほどに排出されまくるLR/URで手持ちが日に日に豪華になっていく面白さと虚しさは、サ終決定後にしか味わえない感覚だったと言えます。おかげでアプリ内で読めた4コマに出てきた「ロージアちゃん染め」編成も、「リアルなカード█リボ払█すれ██メロ██…」することなく例示通りに揃えられました。笑
こうしたネタを放り込めるくらいに余裕があるのは、サンリオのプロジェクトとしては勿論、ゲームアプリとしても本IPには先の展開が控えているからです。早くも来年の1月には新作アニメ『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!』の放送がスタートしますし、同年中には次のアプリ『SHOW BY ROCK!! Fes A Live』がサービス開始予定となっているので、まだまだSB69の世界は広がりを見せていきます。次の10年に入るタイミングでの新たなチャレンジに一層の期待感を抱いて、更に多くのファンを獲得出来るような進化を遂げてくれなら嬉しいですね。
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さて、ここからが本題です。アプリのSB69が6年以上も支持され続けてきた要因のひとつとして、「音楽のクオリティの高さ」を挙げることに異論を唱える方は少ないでしょう。当ブログでも同作の音楽について語った記事を過去に5本アップしており、投稿順でリンクを貼れば以下のようになります。
① Monologue / BUD VIRGIN LOGIC
② 今日の一曲!BUD VIRGIN LOGIC「断罪のソリテュード」
③ 今日の一曲!プラズマジカ「青春はNon-Stop!」
④ 今日の一曲!クリティクリスタ「ビビビーチ♡ビビビビーチ!」
⑤ 今日の一曲!忍迅雷音「Ninja Fanka」【2018年振り返り・SB69編】
このうち①と⑤は、表題作ないし表題曲以外への言及も多く含まれている記事です。従って、関心のある方にはその二つを推奨参照先としておきますが、いずれも僕のSB69愛を述べたものとしては不十分な内容であると自認しています。…であるならば、ロックに託けて「6度目の正直」となる本記事こそが、その愛を存分に爆発させるに相応しいと考えた次第です。
作品愛の示し方には色々あるけれども、音楽レビューブログに於いては当然ながら、その音楽について熱く語るしかありません。そこで本記事では、ゲーム内で恒常で楽曲がプレイ出来た全バンド;数にして27組が奏でた音楽に、網羅的にふれることにしました。全曲を対象とすると250+で収集がつかなくなってしまうため、言及するのは一バンドあたり数曲となりますが、当該バンドの持ち曲から個人的なフェイバリットの上位にあるナンバーは、漏れなく紹介したいと思います。以下、いくつか留意点です。
掲載順はゲーム内のバンド選択画面に準じ、【プラズマジカ → シンガンクリムゾンズ …(中略)… Spectrenotes → Yokazenohorizon】のオーダーで書き進めていきます。ただし、一記事に27組分の文章を載せると字数制限の壁に阻まれてしまうので、Pt.1ではデモンズベノムまでの14組/Pt.2ではラボムンクからの13組といった具合で、全体を二記事に分割しました。バンドに関する作中設定(出典は基本的にゲーム内の「バンド情報」および「キャラクター図鑑」の文言)を簡単に解説した後に、その音楽性に対しての総評を記し、お気に入り楽曲のレビューに入るというテンプレートでお送りします。
なお、作中バンドの約半数は実在するミュージシャンをモデルとしており、その文脈下で元ネタを指す用語はバンド形態でなくても「タイアップバンド」で統一されているので、以降で「TB」と出てきたらこの略であるとご了承ください。また、当ブログでは普段曲名の後ろに楽曲のリリース年を表示するよう心掛けていますが、ゲーム内実装とCD音源化のタイミングに年単位の開きがある楽曲も存在するため、初出年の表示は全て省略とします。
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プラズマジカ / Plasmagica
作品の顔であるガールズバンド。主人公格だけあって成長性に重きが置かれており、良い意味で洗練されていない粗削りなトラックメイキングが印象的です。楽曲の傾向は大きく2パターンに分けられるとの理解で、切なさと疾走感を併せ持ったエモいサウンドを際立たせたスタイル、曲名で言えば「迷宮DESTINY」「流星ドリームライン」「絆エターナル」「My Resolution~未来への絆~」に代表されるような、多くの人が素直に良い曲と評するであろうタイプの楽曲群がまずあります。もうひとつは過去に①や③の記事でもふれている通り、アイドルソングやアニソンに顕著な要素である合いの手を巧くバンドアンサンブルに落とし込んだポップなスタイル、曲名で言えば「青春はNon-Stop!」「ドレミファPARTY」「青春はOn-Going!」「ハートをRock!!」を好例とするような、ガールズならではのキュートさが前面に来ていることで特に男性受けが良さそうなタイプの楽曲群です。
僕はどちらかと言えば後者のファンでして、この「隙あらば合いの手の精神」で勢い付いたロックへのアプローチは、二次元作品との親和性の観点からも最適解だと思います。後者群で総合的に最も好みの楽曲は前出した「ハートをRock!!」で、①の中にリンクしてある2016年のアニソン振り返り記事や③に於いても、曲名を出して同曲を気に入っている旨をアピールしていました。その際には語らなかったポイントを新たに掲げますと、同曲は根っこにきちんとロックンロールのスピリットが窺えるつくりであるのが素晴らしいとの認識です。独自研究の向きがあって不正確な表現になるかもしれませんが、今の時代は何の文脈も背景もなしに単に「ロック」と言ったならば、オルタナ的なサウンドを指している場合が多い気がするので、しっかり'and Roll'のイメージを残していると聴き解ける点に、源流へのリスペクトが垣間見えます。
なお、単純に合いの手を含むパートだけを比較して好みを決めるとなると、個人的には「ラブリー☆チューニング」のそれがいちばんのツボです。冒頭と各サビ後に表れるセクションのことを言っているのですが、合いの手のフロウの良さが効果的に機能して、鼓舞するようなラインの魅力が一段と増幅されていてアガります。"キュートが最高!(OK!)/エールがいっぱい!(Oh, Yeah!)/一緒にHappy(For you)/Cheering. Cheering."に宿る一連の高揚感は、プラズマジカらしいノリだと言えるでしょう。
バンド名義だけれどボーカルが一人のナンバー、もしくは各メンバー名義のソロ曲にも良曲が多くあります。最大のお気に入りはモアがメインボーカルを務める「Regret Breaker」で、宇宙人設定を解釈したのであろうエレクトロポップな音作りに、バンドサウンドとは異なる新鮮味を覚えて好感触でした。ドラマーが歌い手に回るということで自ずとビートメイキングが打ち込みになった面もあると推測しますが、モアのキャラクター性とCVを務めた佐倉綾音さんの可愛らしい歌声がプログラミングの介入を許しており、担当楽器(生ドラムの音)を排しても巧くまとまっている点を絶賛します。電子的な路線に傾倒したトラックの括りでは、レトリーのソロ曲「Love net Lady」もネットギークキャラを解釈した納得のつくりで、サイバネティック・ラブな雰囲気に浸りたいあなたに薦めたい名曲です。また、⑤の記事でも軽く言及したチュチュのメイン曲「檸檬と蜂蜜」も、上坂すみれさんの艶っぽい声質とチュチュの大人っぽいキャラとが相俟って、鍵盤を軸としたシネマティックな楽曲の方向性とのマッチを見せているため、これまたキャラソン的な解釈が上手だと評せます。
シンガンクリムゾンズ / ShinganCrimsonZ
同じく作品の顔と言えるボーイズバンド。公式曰くの「痛い中二病全開の、V系ロックバンド」に相応しい、邪気眼的なワードの数々が鏤められた歌詞と、ヴィジュアル系の世界観を提示するものとしての派手なパフォーマンスが特徴的です。V系はスタイルの形容であるとの前提に立ち、その音楽ジャンルを明らかにしようとすると、一義的なものを提示し難いのはWikipediaにも書いてある通りでしょう。ただ、昔から感じているV系バンド楽曲の構成要素のひとつに、僕は「メロディ性の希薄さ」があると認識しています。当ブログでこの類の表現(「メロディ性が薄い」や「メロディレス」など)をする場合には、ラップや台詞調のラインに対してだったり、アンビエントなトラックの輪郭を規定するための言及であったりするのですが、ここでは「楽器がなぞる旋律よりもボーカルの旋律が覚えにくい」もしくはシンプルに「口遊みにくい」といった、非キャッチーなところにフォーカスしているとご理解ください。
このように語ってはいるものの、僕自身は決してV系に明るいわけではないので、V系に一家言ある方は今「キャッチーさが売りのバンドだって存在するんだが?」と異論反論を抱いたことでしょう。しかし、言わんとしていることの肝はまさにこの齟齬にこそあると見ています。結果論だと前置きしたうえで、広く人気を得たようなV系バンド(厳密には「V系と目されたバンド」)は、それだけ楽曲自体にも大衆性があったと見受けられるため、そのサウンドは寧ろキャッチーであるほうが自然です。Wikipediaの同項目に例示されている有名バンドについても、その殆どを僕はV系だと認識したことがありませんでしたし、普通にロックバンドとして扱ってきた経験を含めていいのであれば、十分に聴いてきているとさえ言えます。V系認定を嫌がるミュージシャンやファンも一定数いるようなので、具体名は伏せざるを得なくて説得力に欠けるのはご容赦ください。
ともかく、ここまでの捉え方はV系を音楽性で評価したポジティブなもので、「中身が評価されている」という結果がV系の形容を撥ね退けているとまとめます。一方で、「楽曲が外見に負けている」といった侮蔑的な意味合いでV系の形容が当て嵌まってしまうバンドも確かに存在しており、その場合は前述した「メロディ性の希薄さ」によって、楽曲自体への評価が下しにくい(結果、外見にのみ焦点があってしまう)ことに原因があるとの理解です。敢えて煽情的な言葉を使うなら、後者はワナビーに多い特徴だと言え、V系に於ける外見的なファクターのほうを本質と誤認しているがゆえに、音楽性軽視を見透かされてしまうのだろうと推測出来ます。
この流れで語ると批判に映るかもしれませんが、シンガンクリムゾンズの楽曲の多くでは、上掲の「ワナビー感」が作中での設定上敢えて演出されていると主張したいです。演奏そのものは格好良いのに主旋律がどうにもキャッチーでないこと然り、現実にソングライティングを担っている面々の他のワークスに比べてメロディ性に乏しいこと然り、⑤の記事でもふれたエイプリルフール企画発の対存在・シンガンホワイティーズの「光ノTSUBASA」がやけにメロディアスなこと然り、根拠はこの辺りに求められます。これらは必ずしもディスになるわけではなく、なぜなら「これからのV系バンド」が持つリアリティを浮き彫りにするために、敢えてラフな楽曲づくりが意識されていたのだとすれば、完璧な仕事であると敬服するほかなくなるからです。とはいえ、個人的な嗜好ではやはりある程度の聴き易さはあってほしいと考えてしまうので、フックとなるような耳に残るラインを持っている「Falling Roses」や「Scarlet Eyes」に良曲認定を与えたくなります。
雫シークレットマインド
「音楽と水の都【ヴェニシリン】にある音楽学校の同級生」で結成されたインディーズバンド。だけあって、まず耳に飛び込んでくるサウンドは、流れる水を思わせるクリアなものとなっています。しかし、それよりも特筆したい点は①と⑤の記事でも言及してある通り、ブレイクビーツ然とした細やかなドラムスによるアプローチです。バンドスタイル(という設定)でこれに挑んでいるのが面白く、人力でそれは不可能だろうとツッコミが入りそうなアレンジでも、Dr.担当のシャボボンの設定「特殊な水のエネルギーで、叩いても割れない泡ドラムを自在に操る事ができる」および「ライブになるともの凄いスピードでビートを刻むことができる」と説明されてしまうと、納得するしかないのがニクいですよね。笑
どの楽曲も基本的には近しいアウトプットとなっており、前出した細やかに刻まれるドラムスの上を流麗なメロディラインが走っていき、ともするとミスマッチになりそうな両者の関係をウエンディの儚げなボーカル(歌い手はChihiroさん)が巧く取り持つという、確立されたトラックメイキングが披露されています。ゆえに悪く言えば、楽曲の多彩さには欠ける面があるかもしれないものの、このサウンドが好きだというリスナーには全てが名曲として刺さり、好意的に受け取っている僕はまさにこのタイプでした。それでもトップスリーを選べと迫られたなら、「Unicorn in the Blue」「Voyage」「Like a peony」を推します。
三曲ともメロディが纏っている美しさが一級品で、素直に音符だけを追っていてもラインの綺麗さに酔い痴れることが出来ますが、小刻みなビートによる疾走感が情緒的なパラメータを上昇させていて、殊更に旋律のエモさに拍車がかかっているところが素晴らしいのです。この妙味はサビメロが最もわかりやすく、僕はこの手の旋律を「巻き込み型」と表現しており(過去の使用例)、リンク先の文章を再掲して「旋律のポテンシャルに編曲が呼応する」ところに枢機があると述べれば、いくらか伝わるであろうと期待します。歌詞内容も考慮すると「Voyage」が最も好みで、特にサビの"奇跡や魔法が起こらなくたって/ドレスやスーツがたとえ無くたって/光に包まれてる/ボヤージュの心だけは/行き着く先を/知ってるから"は、芯の強さに甚く勇気付けられる名フレーズです。
ドーリィドルチ / DollyDolci
公式の謳い文句「ホイップクリームのように甘くて、レモンのようにすっぱい、恋の曲が得意な女の子バンド」が実に端的なスイーツ系ガールズバンド。SB69には可愛さを売りに出来るバンドが複数存在し、その代表格は後に紹介するクリティクリスタでしょうが、最初に紹介したプラズマジカに於けるキュートなタイプのナンバーに「男性受けが良さそう」と書いたことも含めて、その「売り」はどちらかと言えば対男性で効果を発揮するものであるとの認識です。ドーリィドルチも見た目は相当に可愛らしいので、上記のカテゴライズで同列に扱っても別に構わないものの、そのスタイルや音楽性がメインのターゲットとしているのは女性だと、とりわけゆめかわ系ファッションを好むような女子ではないかと分析可能な点で、その実性質は全く異なると見ています。僕はドーリィドルチも贔屓バンドのひとつにしていますが、それはクリティクリスタやプラズマジカの可愛さに男性として惹かれているのとは背景を違えており、自分の中にある少女趣味的な面が刺激されるからこそのお気に入りであるとの自認です。
最初に心を掴まれたナンバーは「恋とメリーゴーランド」で、①の記事でもふれているように同曲はアイドル歌謡的なエッセンスが窺える点がツボでした。当ブログ内を「アイドル歌謡」で検索すれば、僕がこの手の要素に弱いことを証明する記述をいくつか拾えます。このことと少女趣味とのつながりは複雑で、男性としてよりも女性としてアイドルになったほうが情緒纏綿なナンバーを多く歌えそうでいいなという、スター願望とTS志向が綯い交ぜになった思考が根底にあって、要するに女性が素直に同性のアイドルに憧れる構図で、自分はアイドル歌謡を好いているのではないかと考えているのです。自身の性的指向や性自認に困難を抱えているわけではないので、これは単なる妄想のひとつと受け取っていただければ幸いですが、このような機微を絶妙に突いてくる魔力が同曲にはあると主張します。キャッチーだけれどセンチメンタルなボーカルラインの王道っぷりと、感情の変遷を雄弁に語るアウトロのギターラインの格好良さに、見事に恋してしまったのです。
ドーリィドルチにこれ以上の名曲が誕生する日は訪れるのだろうかと神格化すらしていたのに、その座を脅かすほどのフェイバリットとなった「Cotton Candy Diary」には更に驚かされました。評価しているのは主にトラックメイキングで、細部にまで耳を澄ませばわかる通り、左右に細かく配されたバンドサウンドと、その隙間を埋める多彩な打ち込みが形作る立体的な音像は、同バンドどころか作品随一の凝ったアウトプットであると称えたいです。流石、Time Files, inc所属クリエイターによる鉄板クレジット【作詞:磯谷佳江/作曲:小野貴光/編曲:玉木千尋】の楽曲なだけはあります。コットンキャンディを冠した曲題に相応しい、"ふわふわしたり くるくるしたり/パステルカラーのまいにち"をそのままサウンドに起こしたような、ガーリーでエレクトロニックでロックなレイヤーに、自分の中の少女を覗き見た思いです。
すたっどばんぎゃっしゅ
「カッコカワイイスタイルと音楽性」でストレートに描写が可能なガールズバンド。個人的には最も邦楽ガールズバンドらしい存在だと認識していて、安定感のある魅力を放っていると評しています。バンド名はおそらく「スタッド/ズ + バンギャ(ル) + パンキッシュ」のかばん語で、キャラのファッションは確かにそっち系に寄せているなと感じますが、サウンドはそこまでトゲトゲしていません。
いちばんのお気に入り楽曲は「カケヒキモード」で、キャッチーなギターリフにオリエンタルなメロディラインに丁寧口調で挑発的な歌詞と、種々の要素に駆け出しの邦楽ガールズバンド的なセンスが込められていて微笑ましいです。"そこどこそこの相手の肯定"や"こころころころのままの関係"など、独特な言語感覚に根差した歌詞にも女性らしさがある気がします(作詞者の丸山だるまさんは男性のようですけどね)。Cメロの"雨ふってまた明日/その感じで逃げてきた/今日はきっと晴れてしまうから/完全円満最強のチャンスモード"は内容も好みですが、前半の旋律が醸す童謡っぽさが更に愛おしいです。
童謡をキーに言及を続けますと、次点のお気に入りである「CLOUD9」も歌詞に"鬼さんこちら"が印象的に登場する楽曲で、幼い頃の唱歌に纏わる原体験にアクセスしてくるセンスも、どちらかと言えば女性的な感性だと思っています。作詞者は異なりますが、同曲でもまたユニークな言葉繰りが披露されており、特に"虎の威をレンタる狐が心を見抜いて"と、"天真爛漫だって魅せるツインテ渦巻いて"にビビっときました。
忍迅雷音 / Ninjinriot
「未来からタイムスリップしてやってきた、サイバー忍者バンド」というニンジャスレイヤー的なキャッチがぴったりのバンド。その音楽性も設定を存分に活かしたものとなっており、歌詞やメロディに和の趣を感じさせる一方で、サウンドはロック+親和性の高いエレクトロテイストと、宛ら海外の創作者が想像するような未来の日本(香港とか台湾も混じっている系)のスケープで描かれています。
同バンド最大のフェイバリットトラックは「Ninja Fanka」で、その魅力は⑤の記事で存分に語ってあるため、詳細は冒頭に戻ってリンク先の内容をご確認ください。ただ、『SHOW BY ROCK!! BEST Vol.3』のリリースによって正式な歌詞がわかったことを踏まえて、ここでは補足として歌詞内容への言及をします。案の定歌詞カードを見なければ聴き取りも文字起こしも不可能な内容でして、造語的な"ビニコヌッパ ネルサロッパ ネコナデッパ"や、"タユタウラメシヤは去るござる獅子尾猿"などが聴き取れなかったのはともかく、教養不足で理解出来ていなかった"松羽目見顕し絶景のStage"には汗顔の至りです。表記にも感心してしまい、「パリパリヤ」が"宴宴夜"(cf.「パリピ」は"宴民")だとか「さいらいらいらいらい」が「再來雷磊Light」だとかは、センスの塊と言うほかありません。2番A(ラップ調のセクション)のメンバーの名前が鏤められている部分は、嵐と朧に関するフレーズはまだしも、燐と神威が出てくる"鼓膜に弾幕伝唄う赤燐火/天羽ばたく神は威を振るう陰火"は難解でしたね。あとは空耳で"Sweetie女子"は、ホログラム芸者的な意味合いで「3D女子」だと勘違いしていました。笑
⑤の記事では「手裏修羅雷」を同じくダサカッコいい路線での好みだと記し、対して「―BAKUEN― Dead or A live!!」と「水面の歌」を素直にクールなタイプの例示としていましたが、聴きまくっているうちに段々と両者の境界が曖昧となっていき、全曲ともストレートに格好良いのではないかと思えてきたところで、ようやくシュラライザーの一員になれたのかなという気がします。現状で最新の楽曲「忍情∞数歌」もTime Files, inc鉄板布陣による妙技が冴え渡った名曲で、摩天楼を駆ける忍者へのロマンを"Bin Bin"に刺激された次第です。嵐(廣瀬直也さん)のボーカル上の細かいツボを挙げると、"Burning Heart"の発音のセクシーさや、"今宵 一蓮托生 見てな"の余韻に残る頼もしさ、"決めろ 暗中飛躍 ∞を信じ抜くPride"での翳りの入れ方などがとりわけ素敵で、持ち曲が増える度に歌の表現力が向上していると思います。
トライクロニカ / Trichronika
「若手イケメンアーティストを多数擁する超大手レーベル【ジューダス】」所属の男性アイドルバンド。この背景設定が何を元ネタとしたものなのかは言わずもがなでしょう。元ネタのほうはユニットやグループごとに音楽性も様々なので、特に近年は一概に「This is 某事務所」と表せるようなサウンドはない気がしますが、トライクロニカの場合は一昔前の「男性アイドルと言えば爽やかさ第一主義」の向きを残したディレクションになっている気がします。まあ今でも王道と言えば王道ですけどね。
メインボーカルを務めるシュウ☆ゾーはCV・歌唱共に宮野真守さんの安定感で、そのボイスの甘さには定評以上の心地好さがあります。最も好きな楽曲は「今夜は星空ディスコティック☆」で、特にサビから伝ってくるエンディング感が素敵と言いましょうか、最高に盛り上がったライブでの熱量を維持したままクールダウンへと持ち込めるような、ライブ本編(アンコールを除くという意味)の終盤付近に据えるとより煌めきが増しそうなつくりがお気に入りです。
普段はサポートメンバーに徹しているツインズが主役のナンバーでは「ボクらのShiny Star☆」が好みで、ギターロックな部分とブロードウェイテイストな部分とのバランス感覚が絶妙であると評します。歌詞の"同じ夜空で輝やいてたい"もキャラ同士の設定に鑑みるとグッとくるものがあって、カイとリクが互いにと捉えても、双子対シュウ☆ゾーの関係性で捉えても機能するところに、尊みを見出してみるのも一興です。
バイガンバーV
「熱いハートと販売魂を持つ、スーパーヒーローバンド」の形容通りヒーローショー仕様にチューンされているバンド。従って、持ち曲の殆どは特撮モノの主題歌らしいヒロイックなアウトプットになっています。忍迅雷音も部分的には近いファクターを有しているバンドだと言えますが、そちらが闇夜に暗躍する存在であったのに対して、こちらは陽の下で堂々と正義を示す存在であるので、歌詞もメロディもサウンドもひたすらにポジティブ志向です。この点で例外的なのは「Sunset」ですが、これは曲題からしても得心がいきますよね。
総合的に気に入っているのは「俺たちのヒーロータイム」で、小刻みなブラスと激しいギタープレイによるスピード感が、即座に駆け付ける必要のあるヒーローに相応しいアレンジであると納得です。歌詞内容は「ヒーローへの憧れ」に基いており、序盤に"日曜日が始まる/粋なセリフで 立ち向かう背中/ガキのままでも かまわない/憧れたなら 嘘はつけないから"と、子供の頃からの視聴者目線を提示しておいて、終盤で"テレビの向こうの背中は/作りものと知ってるさ/だけど胸に宿る声は嘘じゃない/憧れた俺が 始まる!"と、現実を知ってもなお焦がれる姿勢を貫くプロットになっている構成は、作詞上美しいなと感心します。なお、同曲には「俺達」との表記揺れもあって、例えば『SHOW BY ROCK!! BEST Vol.2』では漢字になっていますが、ゲーム内の表記およびJASRACの正題では「俺たち」です。
少し変わった趣向から「ヒーローライン」を取り上げますと、サビメロを聴いてTVアニメ『セキレイ』の同名OP曲が頭を過り、マッシュアップ欲を掻き立てられた点で同曲は印象に残っています。これは何もパクリだとか類似性を指摘して悦に入りたいとかではなくて、OP主題歌に於けるマナーや美学に則ってソングライティングされているということの一例としての紹介です。これまで当ブログで「セキレイ」に言及したことはありませんが、その影響元として作編曲者から名前が挙げられている「御旗のもとに」ならレビューしたことがあります。こちらは最近新作が出て話題の『サクラ大戦シリーズ』の楽曲で、スタイルこそ違えど「悪を討つ部隊」が主人公格である点ではヒーローモノの要素があるので、「ヒーローライン」もやはり正義の旋律が展開されている楽曲のひとつだと補強する次第です。
徒然なる操り霧幻庵
「極東サウンドをMIDICITYに浸透させるため、日々音楽活動をしている」ガールズバンド。「日本」や「和」という言葉を使うと現実感が出てしまうからこその「極東」なのだと推測しますが、和楽器の音色を積極的に取り入れているバンドとの理解で相違ありません。雫シークレットマインドに対する解説と同様のことを記しますと、トラックメイキングのスタイルが確立されているがゆえに、近しいアウトプットを見せているナンバーが多いのは事実です。ゆえにどの曲についても「和のエッセンスが光っている」といった感想を排することが難しく、レビュー文が似通ってしまう可能性は否めません。しかし、この作中で唯一無二の世界観に魅せられたリスナーにとっては全てが神曲に違いなく、メタ的にも日本人には当然刺さりやすい音楽性であることも含めて、僕もご多分に洩れず虜になっています。
各曲のレビューに差異を生みやすくするため、もしくは日本語の響きの美しさにこだわってという文脈で、ここでは歌詞にフォーカスするとしましょう。個人的に最高傑作だと認識しているのは「浮世に舞ふは刹那の華」で、何処を切り取っても詞華が咲いている様は敬嘆に値すると絶賛します。幕開けの"色は匂へど 切なき心模様/嗚呼 悲願抱き 彼岸へ渡るは誰ぞ/水面に揺れる曼殊沙華のくれなゐに/ひらり―あれは蝶か咎人か"だけでも、天才的なフレージングであることは一目瞭然です。生死の対比も技巧的で、サビでひたすらに生への渇望が歌われているからこそ、前出の"嗚呼 悲願抱き 彼岸へ渡るは誰ぞ"に潜む遣る瀬無さや、"還らぬ人が笑みを浮かべ其処にゐる"の背景に係る重みが、一層鮮やかに琴線を鷲掴みにしていきます。同曲もまたTime Files, incの三名によるワークスで、良い仕事しかしないなと脱帽です。
先の"水面に揺れる曼殊沙華のくれなゐに"も好例ですが、「声に出して読みたい日本語」的な観点でも傑作が多く、実際に声に出すことが前提の歌詞にはお誂え向きの、優れた言葉繰りの数々にも心動かされます。名フレーズのオンパレードと太鼓判を捺せるのは「夜咲太鼓輝や打ち」で、その歌詞中からとりわけ響きが好みの一節を登場順に抜き出せば、"汗ばむ浴衣にざわめく/五穀豊穣 祭の音色"、"明くれば 祭は片付く/さも「宴はたけなわ」との声"、"否 遊び名手の手前/十八番 いま御覧じろ"、"此れぞ夢を語る夜咲太鼓/囃す音頭は輝や!"、"恋も夢も宝島/努々 老いぼれまいぞ"と、1番だけでもこれだけ列挙出来るほどです。抜粋にならない勢いで続けますと、2番Aの"おやおや こちらは強面/まさに職人気質の結び/星の子あやせぬ恵比須顔は/今日も夢を見ぬ/たくらみ 越後屋は笑う/弾く算盤の「ねがいましては」/商う銭も夢のひとつか/こちらも微笑む"は、丸々暗唱しても気持ちが好いことでしょう。
曲名からして難読な「十六夜ゐ雪洞唄」(いざよいぼんぼりうた)も語彙力が問われる歌詞内容で、"化作の迷い言葉 現世に紅をさす"、"鳴らす鬼太鼓のバチ乱れ/今宵 月は美な瞳瞳と"、"我が世ぞ 天元の常ならむ"、"御形 弁天の裾乱れ"あたりは、初見で全て自信を持って読めたなら相当に日本語が達者だとお見受けします。同曲でお気に入りのフレーズは"然らばあばよ 人は誰も/一人遊びの 独楽なれど"で、普遍且つ不変の孤独の描き出し方が粋です。
ウワサノペタルズ
「県立月里村高校軽音同好会」のメンバーで組まれた学生バンド。その肩書だけでは素人じみた音楽性かと思ってしまいそうですが、同時に「実力はかなりのモノで、多数のレーベルから契約オファーが来ている」と注釈がある通り、設定上の若さを窺わせないハイセンスな楽曲が売りです。⑤の記事にも書いたように、ゲーム部分にもこの背景が反映されているのか、全体的に譜面が難しい印象でした。
バンド屈指の名曲の座には⑤にも名前を出した「一秒の歌」を据えたく、その際はあまり詳しく語れなかったので、改めてその魅力を明らかにしていきます。立ち上がりの"これはわたしの中だけの 小さな恋のお墓の歌/千切る花に 見合うだけの/泣いて 泣いた 水をあげた歌"だけでも強く引き込まれるものがあり、"歌"につながる言葉として表題の「一秒」がどう関わってくるのだろうと、様々な想像を否応なしに喚起させられます。この世界観を冒頭の30秒以内で提示出来ている時点で、名曲でないわけがないだろうと確信を抱けたほどです。また、邦楽ロックに於けるメロディ構築のマナーで考えてみると、【王道のA → 変則的なB → 疾走感のあるサビ】の楽想によって生じる緩急が、"一秒"のスケールで見なければならない歌詞の儚さを際立たせているとも言えます。この狙いが効果的に機能しているのがBメロで、一語では「泣いてしまった」で済む情景描写を、歌詞では"容易く 涙は まぶたを 乗り越えてく/曲がって 折れてしまった"と、接写&スロースピードで視点を動かしていて、これはまさに「一秒の歌」に適したカメラワークです。肝心の"一秒"はこれに続く形で、"意味はない 答えもない/「一秒たって」思い出に変わった"と紡がれ、当該部の頭からじわじわと疾走感を帯び始めるアレンジが、後に控えるサビで時間のスケールが変わることを示唆しており、全て計算された楽想であるとの理解に至れます。
サビに関しても、よくぞここまで切ない歌詞が書けるなと、百瀬いおりさんの手腕に感動していて、"こなたとかなた 感情が壊れて はじけとぶ/頭悪いから 哀しいこと 忘れていけるよ/君はさ優しいから 嘘だってついてくれた/繕ってるなんていうなよ 分かってる上で嬉しかったから"は、気持ちがわかり過ぎるせいで訳がわからなくなってしまう類の、矛盾を抱えた悲哀が垣間見えて落涙必至です。2番の"私 弱いから 君のこと 分かってあげれない"も、その境地に辿り着いている時点で傍から見たら強いのになと、"私"に教えてあげたくなるいじらしさがあります。クロージングも実に完璧で、"これはわたしの中だけの 小さな恋の祈りの歌/生きる理由に 見合うだけの/泣いて 泣いた 花が咲きますように"と、循環を意識した締め方で永遠を演出している点が、ベタではあるけれどもやはり綺麗です。あとは細かいツボでラストの"中だけの"が、冒頭のそれとは微妙にメロディに変化が付けられて出てくるところも気に入っています。
その他の楽曲も基本的にはセンチメンタルな質感が強く、唯一「ハツコイノオト」は比較的ポップな仕上がりと言えますが、同曲を学生バンドらしい勢いをのせたソングライティングの集大成として、ディスコグラフィー上で以降のナンバー「永遠なんて嘘ばかりだった」「一秒の歌」「さよなら、僕らのラブソング。」を分析的に聴いてみると、いずれも表現力が豊かになってサウンドも垢抜けたものになっていると感じるので、この変遷に上京してきた(してこようとしている)バンドならではのリアリティがあると主張したいです。
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ここまでに紹介した10組は全てSB69オリジナルのバンドでしたが、ここからは冒頭で説明したように実在のミュージシャンをモデルとするバンドも含まれてきます(残り17組中13組が該当)。その場合は元ネタとなったTBの楽曲をそのままレビューすることになるわけですが、オリジナルとは異なり僕はゲームに提供された楽曲の全てを音源として所持していないため、フルバージョンへの言及になっていないケースも多いことをご了承ください。加えて、本記事で語る音楽性はあくまでも「モデルとするバンド」に対してなので、特に元よりTBのファンだという方にとっては的外れに映る記述もあるかもしれませんが、どうかお目溢しをば願いたく存じます。
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しにものぐるい
「妖怪ストリート」を縄張りとしている妖怪バンド。TBは植田真梨恵で、女性シンガーソングライター単体では形態がバンドにならないため、他に演奏陣として4名のキャラクターが新規に(モデル不在で)起こされています。この特殊性はしにものぐるいだけなので、要するに本作に於いてはSSW界隈への門戸を開いてくれている貴重な存在であるわけです。出典ありのWikipediaの記述を全面的に信頼しますと、影響を受けたもしくは憧れていたとしてそこに名前を挙げられている女性アーティストについては、僕が普段好んで聴いている人達も多く含まれていたので(e.g. 宇多田ヒカル、YUKI、椎名林檎)、植田さんには勝手に親近感を抱いています。
最も気に入っているナンバーは「ふれたら消えてしまう」で、確かな存在感を放っている植田さんの歌声が、表題の儚さを何とか留めておきたいといった歌詞内容と、互いに巧く噛み合っているところが素敵です。次点のフェイバリットは「サファイア!」で、とりわけ終盤に繰り返される"サファイア"の表情豊かな歌い分けに様々な想いを聴き取れ、歌手としての地力の高さが窺えます。
ガウガストライクス
「Shibuvalley」をメインフィールドとしているインディーズのボーイズバンド。他のバンドに比べてメンバーの種族に共通性が見出しにくく、デビル族・オオカミ族・宇宙かわうそ族・マウンテン族というユニークなフォーピースから放たれる音楽は、「様々なジャンルのサウンドを飲み込み」と評されていることにも得心がいく多様性が意識されたものです。TBはカフカ(KFK)で、残念ながら今年の4月に解散しています。
いちばん好みだった楽曲は「ニンゲンフシン」で、後向きな題材をゲームに擬えてキャッチーなアウトプットにしているところに、翻った切なさを感じてしまった次第です。この時期にぴったりの「Inside of Snowdome」もお気に入りで、エレクトロニックな要素をアクセントにした、グリッター且つハートウォーミングなサウンドに癒されます。
アリスビーンズ / AliceBeans
「アキバーンストリート」を中心に活動しているゾンビーズアイドルバンド。TBのアリス十番は公称通りのメタルアイドルユニットで、真に凄まじいのはパフォーマンス面での過激さだそうですが、その楽曲にもヘビーな要素は織り込まれています。アリス十番も所属している大型グループ・仮面女子という名義ならそこそこメジャーだと思うので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。ゲームに提供されている楽曲には、仮面女子名義でリリースされているものも含まれています。
サウンドはそこまでハードではないタイプながら中毒性があって好みなのは「恋の引金」で、特に"SLUMP SLUMP"のコーラスが入るセクションから滲むガールズバンド感が魅力的です。アイドルには定番のサマーソング「夏だね☆」も是非聴いてほしくて、水着PVを売りたいだけのよくあるやつかと思いきや、突如乱入してくるヘビメタ志向の重いギターとデスボイスの「デズドロ゙ー゙イ゙!」の落差に度肝を抜かれます。笑
デモンズベノム / DEMONSVENOM
「デーモンストリート」を拠点としている悪魔バンド。紹介文には「激しいメタルサウンド」とありますが、TBであるSILHOUETTE FROM THE SKYLITの音楽性はもう少し大衆性を備えたものである印象です。「Seek My Way Out」や「Unsheathed」のように聴いて一発で格好良いやつだとわかる洋楽テイストのナンバーもあれば、「ハリガネーゼ」のように独特の着眼点と方言詞が耳に残る邦楽らしいつくりのナンバーもあります。ゲームに実装されていない楽曲も言及の対象にしますと、後者のタイプでは「いいからテーピングだ。」がMVも含めてお気に入りです。
曲名の元ネタが少年漫画つながり…なのかどうかはともかく、実装曲の中で最も気に入っているのは「Emperor Time」で、サビの雄々しい"Woh!-oh-oh-oh Oh-oh-oh-oh!!"から伝わる万能感によって無敵の境地を味わえます。良い意味で妙に引っ掛かっている歌詞は"お前はそう言い切れますか?"で、ぞんざいな二人称から丁寧口調のギャップにはっとさせられるのを、狙って書いたのであれば技巧的です。
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始めに留意点として説明しておいた通り、一記事あたりの字数制限を回避するために、Pt.1はここまでの14組の紹介でおしまいとします。残りの13組については後続記事のPt.2で紹介するので、更新をお待ちください。なるべく年内までに…というか大晦日に放送される『SHOW BY ROCK!! 年末特番』の放送までには続きをアップしたいのですが、儘ならず年明けになってしまったらすみません。その場合は『ましゅまいれっしゅ!!』の放送前を期日とします。笑 Pt.2を更新しました。
本記事の主旨はタイトルにある通り、2019年12月26日で約6年半の歴史に幕を下ろしたアプリ『SHOW BY ROCK!!』を惜しんで、その音楽を特集するものです。本題に入る前に、ゲームの思い出話を挟みます。
6年半のうち僕がプレイしていたのは2年半強となるので、初期勢の方々に比べれば哀しみの程度はまだマシですが、それでも翌日から起動するアプリがひとつ減った寂しさは拭いきれません。終了告知後は全開放されたブロマイド図鑑のスクショをしたり、必要素材数が全て1になったのを機に全バンドの成長ボードを4枚目まで開放したりして、電子の海に消えゆく定めのデータに想いを馳せていました。ログボでの大量メロディシアン配布とお祭り仕様になったガチャとの合わせ技も楽しく、異常なほどに排出されまくるLR/URで手持ちが日に日に豪華になっていく面白さと虚しさは、サ終決定後にしか味わえない感覚だったと言えます。おかげでアプリ内で読めた4コマに出てきた「ロージアちゃん染め」編成も、「リアルなカード█リボ払█すれ██メロ██…」することなく例示通りに揃えられました。笑
こうしたネタを放り込めるくらいに余裕があるのは、サンリオのプロジェクトとしては勿論、ゲームアプリとしても本IPには先の展開が控えているからです。早くも来年の1月には新作アニメ『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!』の放送がスタートしますし、同年中には次のアプリ『SHOW BY ROCK!! Fes A Live』がサービス開始予定となっているので、まだまだSB69の世界は広がりを見せていきます。次の10年に入るタイミングでの新たなチャレンジに一層の期待感を抱いて、更に多くのファンを獲得出来るような進化を遂げてくれなら嬉しいですね。
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さて、ここからが本題です。アプリのSB69が6年以上も支持され続けてきた要因のひとつとして、「音楽のクオリティの高さ」を挙げることに異論を唱える方は少ないでしょう。当ブログでも同作の音楽について語った記事を過去に5本アップしており、投稿順でリンクを貼れば以下のようになります。
① Monologue / BUD VIRGIN LOGIC
② 今日の一曲!BUD VIRGIN LOGIC「断罪のソリテュード」
③ 今日の一曲!プラズマジカ「青春はNon-Stop!」
④ 今日の一曲!クリティクリスタ「ビビビーチ♡ビビビビーチ!」
⑤ 今日の一曲!忍迅雷音「Ninja Fanka」【2018年振り返り・SB69編】
このうち①と⑤は、表題作ないし表題曲以外への言及も多く含まれている記事です。従って、関心のある方にはその二つを推奨参照先としておきますが、いずれも僕のSB69愛を述べたものとしては不十分な内容であると自認しています。…であるならば、ロックに託けて「6度目の正直」となる本記事こそが、その愛を存分に爆発させるに相応しいと考えた次第です。
作品愛の示し方には色々あるけれども、音楽レビューブログに於いては当然ながら、その音楽について熱く語るしかありません。そこで本記事では、ゲーム内で恒常で楽曲がプレイ出来た全バンド;数にして27組が奏でた音楽に、網羅的にふれることにしました。全曲を対象とすると250+で収集がつかなくなってしまうため、言及するのは一バンドあたり数曲となりますが、当該バンドの持ち曲から個人的なフェイバリットの上位にあるナンバーは、漏れなく紹介したいと思います。以下、いくつか留意点です。
掲載順はゲーム内のバンド選択画面に準じ、【プラズマジカ → シンガンクリムゾンズ …(中略)… Spectrenotes → Yokazenohorizon】のオーダーで書き進めていきます。ただし、一記事に27組分の文章を載せると字数制限の壁に阻まれてしまうので、Pt.1ではデモンズベノムまでの14組/Pt.2ではラボムンクからの13組といった具合で、全体を二記事に分割しました。バンドに関する作中設定(出典は基本的にゲーム内の「バンド情報」および「キャラクター図鑑」の文言)を簡単に解説した後に、その音楽性に対しての総評を記し、お気に入り楽曲のレビューに入るというテンプレートでお送りします。
なお、作中バンドの約半数は実在するミュージシャンをモデルとしており、その文脈下で元ネタを指す用語はバンド形態でなくても「タイアップバンド」で統一されているので、以降で「TB」と出てきたらこの略であるとご了承ください。また、当ブログでは普段曲名の後ろに楽曲のリリース年を表示するよう心掛けていますが、ゲーム内実装とCD音源化のタイミングに年単位の開きがある楽曲も存在するため、初出年の表示は全て省略とします。
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プラズマジカ / Plasmagica
作品の顔であるガールズバンド。主人公格だけあって成長性に重きが置かれており、良い意味で洗練されていない粗削りなトラックメイキングが印象的です。楽曲の傾向は大きく2パターンに分けられるとの理解で、切なさと疾走感を併せ持ったエモいサウンドを際立たせたスタイル、曲名で言えば「迷宮DESTINY」「流星ドリームライン」「絆エターナル」「My Resolution~未来への絆~」に代表されるような、多くの人が素直に良い曲と評するであろうタイプの楽曲群がまずあります。もうひとつは過去に①や③の記事でもふれている通り、アイドルソングやアニソンに顕著な要素である合いの手を巧くバンドアンサンブルに落とし込んだポップなスタイル、曲名で言えば「青春はNon-Stop!」「ドレミファPARTY」「青春はOn-Going!」「ハートをRock!!」を好例とするような、ガールズならではのキュートさが前面に来ていることで特に男性受けが良さそうなタイプの楽曲群です。
僕はどちらかと言えば後者のファンでして、この「隙あらば合いの手の精神」で勢い付いたロックへのアプローチは、二次元作品との親和性の観点からも最適解だと思います。後者群で総合的に最も好みの楽曲は前出した「ハートをRock!!」で、①の中にリンクしてある2016年のアニソン振り返り記事や③に於いても、曲名を出して同曲を気に入っている旨をアピールしていました。その際には語らなかったポイントを新たに掲げますと、同曲は根っこにきちんとロックンロールのスピリットが窺えるつくりであるのが素晴らしいとの認識です。独自研究の向きがあって不正確な表現になるかもしれませんが、今の時代は何の文脈も背景もなしに単に「ロック」と言ったならば、オルタナ的なサウンドを指している場合が多い気がするので、しっかり'and Roll'のイメージを残していると聴き解ける点に、源流へのリスペクトが垣間見えます。
なお、単純に合いの手を含むパートだけを比較して好みを決めるとなると、個人的には「ラブリー☆チューニング」のそれがいちばんのツボです。冒頭と各サビ後に表れるセクションのことを言っているのですが、合いの手のフロウの良さが効果的に機能して、鼓舞するようなラインの魅力が一段と増幅されていてアガります。"キュートが最高!(OK!)/エールがいっぱい!(Oh, Yeah!)/一緒にHappy(For you)/Cheering. Cheering."に宿る一連の高揚感は、プラズマジカらしいノリだと言えるでしょう。
バンド名義だけれどボーカルが一人のナンバー、もしくは各メンバー名義のソロ曲にも良曲が多くあります。最大のお気に入りはモアがメインボーカルを務める「Regret Breaker」で、宇宙人設定を解釈したのであろうエレクトロポップな音作りに、バンドサウンドとは異なる新鮮味を覚えて好感触でした。ドラマーが歌い手に回るということで自ずとビートメイキングが打ち込みになった面もあると推測しますが、モアのキャラクター性とCVを務めた佐倉綾音さんの可愛らしい歌声がプログラミングの介入を許しており、担当楽器(生ドラムの音)を排しても巧くまとまっている点を絶賛します。電子的な路線に傾倒したトラックの括りでは、レトリーのソロ曲「Love net Lady」もネットギークキャラを解釈した納得のつくりで、サイバネティック・ラブな雰囲気に浸りたいあなたに薦めたい名曲です。また、⑤の記事でも軽く言及したチュチュのメイン曲「檸檬と蜂蜜」も、上坂すみれさんの艶っぽい声質とチュチュの大人っぽいキャラとが相俟って、鍵盤を軸としたシネマティックな楽曲の方向性とのマッチを見せているため、これまたキャラソン的な解釈が上手だと評せます。
シンガンクリムゾンズ / ShinganCrimsonZ
同じく作品の顔と言えるボーイズバンド。公式曰くの「痛い中二病全開の、V系ロックバンド」に相応しい、邪気眼的なワードの数々が鏤められた歌詞と、ヴィジュアル系の世界観を提示するものとしての派手なパフォーマンスが特徴的です。V系はスタイルの形容であるとの前提に立ち、その音楽ジャンルを明らかにしようとすると、一義的なものを提示し難いのはWikipediaにも書いてある通りでしょう。ただ、昔から感じているV系バンド楽曲の構成要素のひとつに、僕は「メロディ性の希薄さ」があると認識しています。当ブログでこの類の表現(「メロディ性が薄い」や「メロディレス」など)をする場合には、ラップや台詞調のラインに対してだったり、アンビエントなトラックの輪郭を規定するための言及であったりするのですが、ここでは「楽器がなぞる旋律よりもボーカルの旋律が覚えにくい」もしくはシンプルに「口遊みにくい」といった、非キャッチーなところにフォーカスしているとご理解ください。
このように語ってはいるものの、僕自身は決してV系に明るいわけではないので、V系に一家言ある方は今「キャッチーさが売りのバンドだって存在するんだが?」と異論反論を抱いたことでしょう。しかし、言わんとしていることの肝はまさにこの齟齬にこそあると見ています。結果論だと前置きしたうえで、広く人気を得たようなV系バンド(厳密には「V系と目されたバンド」)は、それだけ楽曲自体にも大衆性があったと見受けられるため、そのサウンドは寧ろキャッチーであるほうが自然です。Wikipediaの同項目に例示されている有名バンドについても、その殆どを僕はV系だと認識したことがありませんでしたし、普通にロックバンドとして扱ってきた経験を含めていいのであれば、十分に聴いてきているとさえ言えます。V系認定を嫌がるミュージシャンやファンも一定数いるようなので、具体名は伏せざるを得なくて説得力に欠けるのはご容赦ください。
ともかく、ここまでの捉え方はV系を音楽性で評価したポジティブなもので、「中身が評価されている」という結果がV系の形容を撥ね退けているとまとめます。一方で、「楽曲が外見に負けている」といった侮蔑的な意味合いでV系の形容が当て嵌まってしまうバンドも確かに存在しており、その場合は前述した「メロディ性の希薄さ」によって、楽曲自体への評価が下しにくい(結果、外見にのみ焦点があってしまう)ことに原因があるとの理解です。敢えて煽情的な言葉を使うなら、後者はワナビーに多い特徴だと言え、V系に於ける外見的なファクターのほうを本質と誤認しているがゆえに、音楽性軽視を見透かされてしまうのだろうと推測出来ます。
この流れで語ると批判に映るかもしれませんが、シンガンクリムゾンズの楽曲の多くでは、上掲の「ワナビー感」が作中での設定上敢えて演出されていると主張したいです。演奏そのものは格好良いのに主旋律がどうにもキャッチーでないこと然り、現実にソングライティングを担っている面々の他のワークスに比べてメロディ性に乏しいこと然り、⑤の記事でもふれたエイプリルフール企画発の対存在・シンガンホワイティーズの「光ノTSUBASA」がやけにメロディアスなこと然り、根拠はこの辺りに求められます。これらは必ずしもディスになるわけではなく、なぜなら「これからのV系バンド」が持つリアリティを浮き彫りにするために、敢えてラフな楽曲づくりが意識されていたのだとすれば、完璧な仕事であると敬服するほかなくなるからです。とはいえ、個人的な嗜好ではやはりある程度の聴き易さはあってほしいと考えてしまうので、フックとなるような耳に残るラインを持っている「Falling Roses」や「Scarlet Eyes」に良曲認定を与えたくなります。
雫シークレットマインド
「音楽と水の都【ヴェニシリン】にある音楽学校の同級生」で結成されたインディーズバンド。だけあって、まず耳に飛び込んでくるサウンドは、流れる水を思わせるクリアなものとなっています。しかし、それよりも特筆したい点は①と⑤の記事でも言及してある通り、ブレイクビーツ然とした細やかなドラムスによるアプローチです。バンドスタイル(という設定)でこれに挑んでいるのが面白く、人力でそれは不可能だろうとツッコミが入りそうなアレンジでも、Dr.担当のシャボボンの設定「特殊な水のエネルギーで、叩いても割れない泡ドラムを自在に操る事ができる」および「ライブになるともの凄いスピードでビートを刻むことができる」と説明されてしまうと、納得するしかないのがニクいですよね。笑
どの楽曲も基本的には近しいアウトプットとなっており、前出した細やかに刻まれるドラムスの上を流麗なメロディラインが走っていき、ともするとミスマッチになりそうな両者の関係をウエンディの儚げなボーカル(歌い手はChihiroさん)が巧く取り持つという、確立されたトラックメイキングが披露されています。ゆえに悪く言えば、楽曲の多彩さには欠ける面があるかもしれないものの、このサウンドが好きだというリスナーには全てが名曲として刺さり、好意的に受け取っている僕はまさにこのタイプでした。それでもトップスリーを選べと迫られたなら、「Unicorn in the Blue」「Voyage」「Like a peony」を推します。
三曲ともメロディが纏っている美しさが一級品で、素直に音符だけを追っていてもラインの綺麗さに酔い痴れることが出来ますが、小刻みなビートによる疾走感が情緒的なパラメータを上昇させていて、殊更に旋律のエモさに拍車がかかっているところが素晴らしいのです。この妙味はサビメロが最もわかりやすく、僕はこの手の旋律を「巻き込み型」と表現しており(過去の使用例)、リンク先の文章を再掲して「旋律のポテンシャルに編曲が呼応する」ところに枢機があると述べれば、いくらか伝わるであろうと期待します。歌詞内容も考慮すると「Voyage」が最も好みで、特にサビの"奇跡や魔法が起こらなくたって/ドレスやスーツがたとえ無くたって/光に包まれてる/ボヤージュの心だけは/行き着く先を/知ってるから"は、芯の強さに甚く勇気付けられる名フレーズです。
ドーリィドルチ / DollyDolci
公式の謳い文句「ホイップクリームのように甘くて、レモンのようにすっぱい、恋の曲が得意な女の子バンド」が実に端的なスイーツ系ガールズバンド。SB69には可愛さを売りに出来るバンドが複数存在し、その代表格は後に紹介するクリティクリスタでしょうが、最初に紹介したプラズマジカに於けるキュートなタイプのナンバーに「男性受けが良さそう」と書いたことも含めて、その「売り」はどちらかと言えば対男性で効果を発揮するものであるとの認識です。ドーリィドルチも見た目は相当に可愛らしいので、上記のカテゴライズで同列に扱っても別に構わないものの、そのスタイルや音楽性がメインのターゲットとしているのは女性だと、とりわけゆめかわ系ファッションを好むような女子ではないかと分析可能な点で、その実性質は全く異なると見ています。僕はドーリィドルチも贔屓バンドのひとつにしていますが、それはクリティクリスタやプラズマジカの可愛さに男性として惹かれているのとは背景を違えており、自分の中にある少女趣味的な面が刺激されるからこそのお気に入りであるとの自認です。
最初に心を掴まれたナンバーは「恋とメリーゴーランド」で、①の記事でもふれているように同曲はアイドル歌謡的なエッセンスが窺える点がツボでした。当ブログ内を「アイドル歌謡」で検索すれば、僕がこの手の要素に弱いことを証明する記述をいくつか拾えます。このことと少女趣味とのつながりは複雑で、男性としてよりも女性としてアイドルになったほうが情緒纏綿なナンバーを多く歌えそうでいいなという、スター願望とTS志向が綯い交ぜになった思考が根底にあって、要するに女性が素直に同性のアイドルに憧れる構図で、自分はアイドル歌謡を好いているのではないかと考えているのです。自身の性的指向や性自認に困難を抱えているわけではないので、これは単なる妄想のひとつと受け取っていただければ幸いですが、このような機微を絶妙に突いてくる魔力が同曲にはあると主張します。キャッチーだけれどセンチメンタルなボーカルラインの王道っぷりと、感情の変遷を雄弁に語るアウトロのギターラインの格好良さに、見事に恋してしまったのです。
ドーリィドルチにこれ以上の名曲が誕生する日は訪れるのだろうかと神格化すらしていたのに、その座を脅かすほどのフェイバリットとなった「Cotton Candy Diary」には更に驚かされました。評価しているのは主にトラックメイキングで、細部にまで耳を澄ませばわかる通り、左右に細かく配されたバンドサウンドと、その隙間を埋める多彩な打ち込みが形作る立体的な音像は、同バンドどころか作品随一の凝ったアウトプットであると称えたいです。流石、Time Files, inc所属クリエイターによる鉄板クレジット【作詞:磯谷佳江/作曲:小野貴光/編曲:玉木千尋】の楽曲なだけはあります。コットンキャンディを冠した曲題に相応しい、"ふわふわしたり くるくるしたり/パステルカラーのまいにち"をそのままサウンドに起こしたような、ガーリーでエレクトロニックでロックなレイヤーに、自分の中の少女を覗き見た思いです。
すたっどばんぎゃっしゅ
「カッコカワイイスタイルと音楽性」でストレートに描写が可能なガールズバンド。個人的には最も邦楽ガールズバンドらしい存在だと認識していて、安定感のある魅力を放っていると評しています。バンド名はおそらく「スタッド/ズ + バンギャ(ル) + パンキッシュ」のかばん語で、キャラのファッションは確かにそっち系に寄せているなと感じますが、サウンドはそこまでトゲトゲしていません。
いちばんのお気に入り楽曲は「カケヒキモード」で、キャッチーなギターリフにオリエンタルなメロディラインに丁寧口調で挑発的な歌詞と、種々の要素に駆け出しの邦楽ガールズバンド的なセンスが込められていて微笑ましいです。"そこどこそこの相手の肯定"や"こころころころのままの関係"など、独特な言語感覚に根差した歌詞にも女性らしさがある気がします(作詞者の丸山だるまさんは男性のようですけどね)。Cメロの"雨ふってまた明日/その感じで逃げてきた/今日はきっと晴れてしまうから/完全円満最強のチャンスモード"は内容も好みですが、前半の旋律が醸す童謡っぽさが更に愛おしいです。
童謡をキーに言及を続けますと、次点のお気に入りである「CLOUD9」も歌詞に"鬼さんこちら"が印象的に登場する楽曲で、幼い頃の唱歌に纏わる原体験にアクセスしてくるセンスも、どちらかと言えば女性的な感性だと思っています。作詞者は異なりますが、同曲でもまたユニークな言葉繰りが披露されており、特に"虎の威をレンタる狐が心を見抜いて"と、"天真爛漫だって魅せるツインテ渦巻いて"にビビっときました。
忍迅雷音 / Ninjinriot
「未来からタイムスリップしてやってきた、サイバー忍者バンド」というニンジャスレイヤー的なキャッチがぴったりのバンド。その音楽性も設定を存分に活かしたものとなっており、歌詞やメロディに和の趣を感じさせる一方で、サウンドはロック+親和性の高いエレクトロテイストと、宛ら海外の創作者が想像するような未来の日本(香港とか台湾も混じっている系)のスケープで描かれています。
同バンド最大のフェイバリットトラックは「Ninja Fanka」で、その魅力は⑤の記事で存分に語ってあるため、詳細は冒頭に戻ってリンク先の内容をご確認ください。ただ、『SHOW BY ROCK!! BEST Vol.3』のリリースによって正式な歌詞がわかったことを踏まえて、ここでは補足として歌詞内容への言及をします。案の定歌詞カードを見なければ聴き取りも文字起こしも不可能な内容でして、造語的な"ビニコヌッパ ネルサロッパ ネコナデッパ"や、"タユタウラメシヤは去るござる獅子尾猿"などが聴き取れなかったのはともかく、教養不足で理解出来ていなかった"松羽目見顕し絶景のStage"には汗顔の至りです。表記にも感心してしまい、「パリパリヤ」が"宴宴夜"(cf.「パリピ」は"宴民")だとか「さいらいらいらいらい」が「再來雷磊Light」だとかは、センスの塊と言うほかありません。2番A(ラップ調のセクション)のメンバーの名前が鏤められている部分は、嵐と朧に関するフレーズはまだしも、燐と神威が出てくる"鼓膜に弾幕伝唄う赤燐火/天羽ばたく神は威を振るう陰火"は難解でしたね。あとは空耳で"Sweetie女子"は、ホログラム芸者的な意味合いで「3D女子」だと勘違いしていました。笑
⑤の記事では「手裏修羅雷」を同じくダサカッコいい路線での好みだと記し、対して「―BAKUEN― Dead or A live!!」と「水面の歌」を素直にクールなタイプの例示としていましたが、聴きまくっているうちに段々と両者の境界が曖昧となっていき、全曲ともストレートに格好良いのではないかと思えてきたところで、ようやくシュラライザーの一員になれたのかなという気がします。現状で最新の楽曲「忍情∞数歌」もTime Files, inc鉄板布陣による妙技が冴え渡った名曲で、摩天楼を駆ける忍者へのロマンを"Bin Bin"に刺激された次第です。嵐(廣瀬直也さん)のボーカル上の細かいツボを挙げると、"Burning Heart"の発音のセクシーさや、"今宵 一蓮托生 見てな"の余韻に残る頼もしさ、"決めろ 暗中飛躍 ∞を信じ抜くPride"での翳りの入れ方などがとりわけ素敵で、持ち曲が増える度に歌の表現力が向上していると思います。
トライクロニカ / Trichronika
「若手イケメンアーティストを多数擁する超大手レーベル【ジューダス】」所属の男性アイドルバンド。この背景設定が何を元ネタとしたものなのかは言わずもがなでしょう。元ネタのほうはユニットやグループごとに音楽性も様々なので、特に近年は一概に「This is 某事務所」と表せるようなサウンドはない気がしますが、トライクロニカの場合は一昔前の「男性アイドルと言えば爽やかさ第一主義」の向きを残したディレクションになっている気がします。まあ今でも王道と言えば王道ですけどね。
メインボーカルを務めるシュウ☆ゾーはCV・歌唱共に宮野真守さんの安定感で、そのボイスの甘さには定評以上の心地好さがあります。最も好きな楽曲は「今夜は星空ディスコティック☆」で、特にサビから伝ってくるエンディング感が素敵と言いましょうか、最高に盛り上がったライブでの熱量を維持したままクールダウンへと持ち込めるような、ライブ本編(アンコールを除くという意味)の終盤付近に据えるとより煌めきが増しそうなつくりがお気に入りです。
普段はサポートメンバーに徹しているツインズが主役のナンバーでは「ボクらのShiny Star☆」が好みで、ギターロックな部分とブロードウェイテイストな部分とのバランス感覚が絶妙であると評します。歌詞の"同じ夜空で輝やいてたい"もキャラ同士の設定に鑑みるとグッとくるものがあって、カイとリクが互いにと捉えても、双子対シュウ☆ゾーの関係性で捉えても機能するところに、尊みを見出してみるのも一興です。
バイガンバーV
「熱いハートと販売魂を持つ、スーパーヒーローバンド」の形容通りヒーローショー仕様にチューンされているバンド。従って、持ち曲の殆どは特撮モノの主題歌らしいヒロイックなアウトプットになっています。忍迅雷音も部分的には近いファクターを有しているバンドだと言えますが、そちらが闇夜に暗躍する存在であったのに対して、こちらは陽の下で堂々と正義を示す存在であるので、歌詞もメロディもサウンドもひたすらにポジティブ志向です。この点で例外的なのは「Sunset」ですが、これは曲題からしても得心がいきますよね。
総合的に気に入っているのは「俺たちのヒーロータイム」で、小刻みなブラスと激しいギタープレイによるスピード感が、即座に駆け付ける必要のあるヒーローに相応しいアレンジであると納得です。歌詞内容は「ヒーローへの憧れ」に基いており、序盤に"日曜日が始まる/粋なセリフで 立ち向かう背中/ガキのままでも かまわない/憧れたなら 嘘はつけないから"と、子供の頃からの視聴者目線を提示しておいて、終盤で"テレビの向こうの背中は/作りものと知ってるさ/だけど胸に宿る声は嘘じゃない/憧れた俺が 始まる!"と、現実を知ってもなお焦がれる姿勢を貫くプロットになっている構成は、作詞上美しいなと感心します。なお、同曲には「俺達」との表記揺れもあって、例えば『SHOW BY ROCK!! BEST Vol.2』では漢字になっていますが、ゲーム内の表記およびJASRACの正題では「俺たち」です。
少し変わった趣向から「ヒーローライン」を取り上げますと、サビメロを聴いてTVアニメ『セキレイ』の同名OP曲が頭を過り、マッシュアップ欲を掻き立てられた点で同曲は印象に残っています。これは何もパクリだとか類似性を指摘して悦に入りたいとかではなくて、OP主題歌に於けるマナーや美学に則ってソングライティングされているということの一例としての紹介です。これまで当ブログで「セキレイ」に言及したことはありませんが、その影響元として作編曲者から名前が挙げられている「御旗のもとに」ならレビューしたことがあります。こちらは最近新作が出て話題の『サクラ大戦シリーズ』の楽曲で、スタイルこそ違えど「悪を討つ部隊」が主人公格である点ではヒーローモノの要素があるので、「ヒーローライン」もやはり正義の旋律が展開されている楽曲のひとつだと補強する次第です。
徒然なる操り霧幻庵
「極東サウンドをMIDICITYに浸透させるため、日々音楽活動をしている」ガールズバンド。「日本」や「和」という言葉を使うと現実感が出てしまうからこその「極東」なのだと推測しますが、和楽器の音色を積極的に取り入れているバンドとの理解で相違ありません。雫シークレットマインドに対する解説と同様のことを記しますと、トラックメイキングのスタイルが確立されているがゆえに、近しいアウトプットを見せているナンバーが多いのは事実です。ゆえにどの曲についても「和のエッセンスが光っている」といった感想を排することが難しく、レビュー文が似通ってしまう可能性は否めません。しかし、この作中で唯一無二の世界観に魅せられたリスナーにとっては全てが神曲に違いなく、メタ的にも日本人には当然刺さりやすい音楽性であることも含めて、僕もご多分に洩れず虜になっています。
各曲のレビューに差異を生みやすくするため、もしくは日本語の響きの美しさにこだわってという文脈で、ここでは歌詞にフォーカスするとしましょう。個人的に最高傑作だと認識しているのは「浮世に舞ふは刹那の華」で、何処を切り取っても詞華が咲いている様は敬嘆に値すると絶賛します。幕開けの"色は匂へど 切なき心模様/嗚呼 悲願抱き 彼岸へ渡るは誰ぞ/水面に揺れる曼殊沙華のくれなゐに/ひらり―あれは蝶か咎人か"だけでも、天才的なフレージングであることは一目瞭然です。生死の対比も技巧的で、サビでひたすらに生への渇望が歌われているからこそ、前出の"嗚呼 悲願抱き 彼岸へ渡るは誰ぞ"に潜む遣る瀬無さや、"還らぬ人が笑みを浮かべ其処にゐる"の背景に係る重みが、一層鮮やかに琴線を鷲掴みにしていきます。同曲もまたTime Files, incの三名によるワークスで、良い仕事しかしないなと脱帽です。
先の"水面に揺れる曼殊沙華のくれなゐに"も好例ですが、「声に出して読みたい日本語」的な観点でも傑作が多く、実際に声に出すことが前提の歌詞にはお誂え向きの、優れた言葉繰りの数々にも心動かされます。名フレーズのオンパレードと太鼓判を捺せるのは「夜咲太鼓輝や打ち」で、その歌詞中からとりわけ響きが好みの一節を登場順に抜き出せば、"汗ばむ浴衣にざわめく/五穀豊穣 祭の音色"、"明くれば 祭は片付く/さも「宴はたけなわ」との声"、"否 遊び名手の手前/十八番 いま御覧じろ"、"此れぞ夢を語る夜咲太鼓/囃す音頭は輝や!"、"恋も夢も宝島/努々 老いぼれまいぞ"と、1番だけでもこれだけ列挙出来るほどです。抜粋にならない勢いで続けますと、2番Aの"おやおや こちらは強面/まさに職人気質の結び/星の子あやせぬ恵比須顔は/今日も夢を見ぬ/たくらみ 越後屋は笑う/弾く算盤の「ねがいましては」/商う銭も夢のひとつか/こちらも微笑む"は、丸々暗唱しても気持ちが好いことでしょう。
曲名からして難読な「十六夜ゐ雪洞唄」(いざよいぼんぼりうた)も語彙力が問われる歌詞内容で、"化作の迷い言葉 現世に紅をさす"、"鳴らす鬼太鼓のバチ乱れ/今宵 月は美な瞳瞳と"、"我が世ぞ 天元の常ならむ"、"御形 弁天の裾乱れ"あたりは、初見で全て自信を持って読めたなら相当に日本語が達者だとお見受けします。同曲でお気に入りのフレーズは"然らばあばよ 人は誰も/一人遊びの 独楽なれど"で、普遍且つ不変の孤独の描き出し方が粋です。
ウワサノペタルズ
「県立月里村高校軽音同好会」のメンバーで組まれた学生バンド。その肩書だけでは素人じみた音楽性かと思ってしまいそうですが、同時に「実力はかなりのモノで、多数のレーベルから契約オファーが来ている」と注釈がある通り、設定上の若さを窺わせないハイセンスな楽曲が売りです。⑤の記事にも書いたように、ゲーム部分にもこの背景が反映されているのか、全体的に譜面が難しい印象でした。
バンド屈指の名曲の座には⑤にも名前を出した「一秒の歌」を据えたく、その際はあまり詳しく語れなかったので、改めてその魅力を明らかにしていきます。立ち上がりの"これはわたしの中だけの 小さな恋のお墓の歌/千切る花に 見合うだけの/泣いて 泣いた 水をあげた歌"だけでも強く引き込まれるものがあり、"歌"につながる言葉として表題の「一秒」がどう関わってくるのだろうと、様々な想像を否応なしに喚起させられます。この世界観を冒頭の30秒以内で提示出来ている時点で、名曲でないわけがないだろうと確信を抱けたほどです。また、邦楽ロックに於けるメロディ構築のマナーで考えてみると、【王道のA → 変則的なB → 疾走感のあるサビ】の楽想によって生じる緩急が、"一秒"のスケールで見なければならない歌詞の儚さを際立たせているとも言えます。この狙いが効果的に機能しているのがBメロで、一語では「泣いてしまった」で済む情景描写を、歌詞では"容易く 涙は まぶたを 乗り越えてく/曲がって 折れてしまった"と、接写&スロースピードで視点を動かしていて、これはまさに「一秒の歌」に適したカメラワークです。肝心の"一秒"はこれに続く形で、"意味はない 答えもない/「一秒たって」思い出に変わった"と紡がれ、当該部の頭からじわじわと疾走感を帯び始めるアレンジが、後に控えるサビで時間のスケールが変わることを示唆しており、全て計算された楽想であるとの理解に至れます。
サビに関しても、よくぞここまで切ない歌詞が書けるなと、百瀬いおりさんの手腕に感動していて、"こなたとかなた 感情が壊れて はじけとぶ/頭悪いから 哀しいこと 忘れていけるよ/君はさ優しいから 嘘だってついてくれた/繕ってるなんていうなよ 分かってる上で嬉しかったから"は、気持ちがわかり過ぎるせいで訳がわからなくなってしまう類の、矛盾を抱えた悲哀が垣間見えて落涙必至です。2番の"私 弱いから 君のこと 分かってあげれない"も、その境地に辿り着いている時点で傍から見たら強いのになと、"私"に教えてあげたくなるいじらしさがあります。クロージングも実に完璧で、"これはわたしの中だけの 小さな恋の祈りの歌/生きる理由に 見合うだけの/泣いて 泣いた 花が咲きますように"と、循環を意識した締め方で永遠を演出している点が、ベタではあるけれどもやはり綺麗です。あとは細かいツボでラストの"中だけの"が、冒頭のそれとは微妙にメロディに変化が付けられて出てくるところも気に入っています。
その他の楽曲も基本的にはセンチメンタルな質感が強く、唯一「ハツコイノオト」は比較的ポップな仕上がりと言えますが、同曲を学生バンドらしい勢いをのせたソングライティングの集大成として、ディスコグラフィー上で以降のナンバー「永遠なんて嘘ばかりだった」「一秒の歌」「さよなら、僕らのラブソング。」を分析的に聴いてみると、いずれも表現力が豊かになってサウンドも垢抜けたものになっていると感じるので、この変遷に上京してきた(してこようとしている)バンドならではのリアリティがあると主張したいです。
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ここまでに紹介した10組は全てSB69オリジナルのバンドでしたが、ここからは冒頭で説明したように実在のミュージシャンをモデルとするバンドも含まれてきます(残り17組中13組が該当)。その場合は元ネタとなったTBの楽曲をそのままレビューすることになるわけですが、オリジナルとは異なり僕はゲームに提供された楽曲の全てを音源として所持していないため、フルバージョンへの言及になっていないケースも多いことをご了承ください。加えて、本記事で語る音楽性はあくまでも「モデルとするバンド」に対してなので、特に元よりTBのファンだという方にとっては的外れに映る記述もあるかもしれませんが、どうかお目溢しをば願いたく存じます。
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しにものぐるい
「妖怪ストリート」を縄張りとしている妖怪バンド。TBは植田真梨恵で、女性シンガーソングライター単体では形態がバンドにならないため、他に演奏陣として4名のキャラクターが新規に(モデル不在で)起こされています。この特殊性はしにものぐるいだけなので、要するに本作に於いてはSSW界隈への門戸を開いてくれている貴重な存在であるわけです。出典ありのWikipediaの記述を全面的に信頼しますと、影響を受けたもしくは憧れていたとしてそこに名前を挙げられている女性アーティストについては、僕が普段好んで聴いている人達も多く含まれていたので(e.g. 宇多田ヒカル、YUKI、椎名林檎)、植田さんには勝手に親近感を抱いています。
最も気に入っているナンバーは「ふれたら消えてしまう」で、確かな存在感を放っている植田さんの歌声が、表題の儚さを何とか留めておきたいといった歌詞内容と、互いに巧く噛み合っているところが素敵です。次点のフェイバリットは「サファイア!」で、とりわけ終盤に繰り返される"サファイア"の表情豊かな歌い分けに様々な想いを聴き取れ、歌手としての地力の高さが窺えます。
ガウガストライクス
「Shibuvalley」をメインフィールドとしているインディーズのボーイズバンド。他のバンドに比べてメンバーの種族に共通性が見出しにくく、デビル族・オオカミ族・宇宙かわうそ族・マウンテン族というユニークなフォーピースから放たれる音楽は、「様々なジャンルのサウンドを飲み込み」と評されていることにも得心がいく多様性が意識されたものです。TBはカフカ(KFK)で、残念ながら今年の4月に解散しています。
いちばん好みだった楽曲は「ニンゲンフシン」で、後向きな題材をゲームに擬えてキャッチーなアウトプットにしているところに、翻った切なさを感じてしまった次第です。この時期にぴったりの「Inside of Snowdome」もお気に入りで、エレクトロニックな要素をアクセントにした、グリッター且つハートウォーミングなサウンドに癒されます。
アリスビーンズ / AliceBeans
「アキバーンストリート」を中心に活動しているゾンビーズアイドルバンド。TBのアリス十番は公称通りのメタルアイドルユニットで、真に凄まじいのはパフォーマンス面での過激さだそうですが、その楽曲にもヘビーな要素は織り込まれています。アリス十番も所属している大型グループ・仮面女子という名義ならそこそこメジャーだと思うので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。ゲームに提供されている楽曲には、仮面女子名義でリリースされているものも含まれています。
サウンドはそこまでハードではないタイプながら中毒性があって好みなのは「恋の引金」で、特に"SLUMP SLUMP"のコーラスが入るセクションから滲むガールズバンド感が魅力的です。アイドルには定番のサマーソング「夏だね☆」も是非聴いてほしくて、水着PVを売りたいだけのよくあるやつかと思いきや、突如乱入してくるヘビメタ志向の重いギターとデスボイスの「デズドロ゙ー゙イ゙!」の落差に度肝を抜かれます。笑
デモンズベノム / DEMONSVENOM
「デーモンストリート」を拠点としている悪魔バンド。紹介文には「激しいメタルサウンド」とありますが、TBであるSILHOUETTE FROM THE SKYLITの音楽性はもう少し大衆性を備えたものである印象です。「Seek My Way Out」や「Unsheathed」のように聴いて一発で格好良いやつだとわかる洋楽テイストのナンバーもあれば、「ハリガネーゼ」のように独特の着眼点と方言詞が耳に残る邦楽らしいつくりのナンバーもあります。ゲームに実装されていない楽曲も言及の対象にしますと、後者のタイプでは「いいからテーピングだ。」がMVも含めてお気に入りです。
曲名の元ネタが少年漫画つながり…なのかどうかはともかく、実装曲の中で最も気に入っているのは「Emperor Time」で、サビの雄々しい"Woh!-oh-oh-oh Oh-oh-oh-oh!!"から伝わる万能感によって無敵の境地を味わえます。良い意味で妙に引っ掛かっている歌詞は"お前はそう言い切れますか?"で、ぞんざいな二人称から丁寧口調のギャップにはっとさせられるのを、狙って書いたのであれば技巧的です。
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始めに留意点として説明しておいた通り、一記事あたりの字数制限を回避するために、Pt.1はここまでの14組の紹介でおしまいとします。残りの13組については後続記事のPt.2で紹介するので、