今日の一曲!日高のり子・島津冴子・小桜エツ子・井上喜久子・鷹森淑乃「御旗のもとに」 | A Flood of Music

今日の一曲!日高のり子・島津冴子・小桜エツ子・井上喜久子・鷹森淑乃「御旗のもとに」

 【追記:2021.1.4】 本記事は「今日の一曲!」Ver. 2.0の第二弾です。【追記ここまで】

 本日の出目は【7, 9, 5, 4,】だったので【1stの961番】の楽曲、日高のり子・島津冴子・小桜エツ子・井上喜久子・鷹森淑乃の「御旗のもとに」を紹介します。

サクラ大戦3 御旗のもとに/花の巴里/エイベックス・トラックス

¥1,296
Amazon.co.jp

 この「御旗のもとに」(2001)はゲーム『サクラ大戦3~巴里は燃えているか~』のOP曲です。5人の声優により歌われており、記事タイトルでは字数制限のため入り切りませんでしたが、キャラ名で書くとエリカ・フォンティーヌ、グリシーヌ・ブルーメール、コクリコ、ロベリア・カルリーニ、北大路花火による楽曲となります。巴里華撃団(花組)のメンバーですね。


 この曲を知った経緯はちょっと複雑で、まずはじめに言っておくべきなのは、僕は『サクラ大戦シリーズ』に関してはゲームもアニメも舞台もほとんどよく知らないということです。人気作だということは知っていますが、他には「宝塚っぽい世界観?」「ロボット?が出てくる」「メインヒロイン?の名前は真宮寺さくら」「金髪幼女はアイリス」「もう一人居る幼女はコクリコ」…あたりがなんとか脳内から絞り出せた知識です。笑

 子供の頃に好きだった別のアニメ(関連があるので後述)のために数冊のアニメ専門雑誌を当時買ったことがあり、それらをぱらぱらめくっていて得た知識が8割。残りの2割はこれも当時たまたまTVで観たアニメ版のOP曲が凄く格好良いと思って少しだけ調べたことがあるというレベルなので、いち作品として楽しんだ経験はないという意味で「ほとんどよく知らない」のです。


セガコン ~THE BEST OF SEGA GAME MUSIC~ VOL.2/SME・ビジュアルワークス

¥3,600
Amazon.co.jp

 そんな僕がどうやってこのゲーム主題歌「御旗のもとに」に辿り着いたかと言うと、このアルバム『「セガコン -THE BEST OF SEGA GAME MUSIC-」VOL.2』(2001)がきっかけとなります。最初に埋め込んだシングルは実は持っていません。

 このベスト盤には先述のアニメ版のOP曲(厳密にはVer.が違うみたい)も収録されているのでそれが目当てと思われるかもしれませんが、僕が欲しかったのは『ナップルテール』(通称)というゲームの挿入歌?である「Folly Fall」という曲でした。このゲームも全く知らないのですが、当時既に坂本真綾から菅野よう子に興味を持ち始めていたので、レア曲蒐集の一環で手にしました。

 とはいえ「サクラ大戦の曲も入っている」というのは購入の後押しにはなったので、「檄!帝国華撃団」はよく聴いていましたね。他には『ROOMMANIA#203』の楽曲「僕のマシュ…」と「勇気のでる歌」もお気に入りでした。あと、せがた三四郎と湯川専務の曲も好きだったな。笑


 他の曲まで出して何が言いたいのかというと、僕は買ってから暫く「御旗のもとに」を歯牙にもかけていなかったということです。一応サクラ大戦関連の曲はちゃんと聴いてみようと思って一通り聴いた筈なのですが、まだ幼く音楽的に未成熟だったためか琴線にはふれなかったんですよね。「檄!帝国華撃団」のようなわかりやすいキャッチーさしか受け取れない耳でした。

 それから数年経って、正直きっかけは覚えていないのですが、何かでこの「御旗のもとに」がとても良い曲だということを知り、「そういやセガのゲームのベスト持ってたな」と思って曲目を確認したところ、収録されていたので改めて聴いてみることにしました。そして思う…「なんだこの神曲!」と。笑


 クレジットを見て納得です。「作詞:広井王子、作曲:田中公平」だけでも充分にビッグネームなのですが、個人的に何よりも驚いたのは「編曲:根岸貴幸」にでした。ついこの間アップしたこの記事の中でも好きなアニメ劇伴作家のひとりとして紹介したばかりの根岸さんですが、何を隠そう先述の「子供の頃に好きだった別のアニメ」とは『カードキャプターさくら』のことを指していたのです。

 つまり、良さに気付いたのには段階があるとはいえ、根岸さんのアレンジが僕にとっては子供の頃から堪らなくツボだったということを補強する形になったわけですね。上掲の記事もそうですが、クレジットまで詳細に気を配れるようになったのはある程度大人になってからなので、小学生かそこらで存在を知った曲について後から思わぬ神経衰弱で驚かされるということがよくあります。笑



 ということでここからは曲自体を見ていきましょう。根岸さんの編曲の妙については前掲の記事にて散々語っているので参考にして欲しいのですが、「御旗のもとに」も管弦楽アレンジが冴え渡る楽曲のため、褒め称えるポイントは似通ってしまうかと思います。歌モノであるというのは大きな違いですけどね。

 ドラムロールと共に目の覚めるような金管が勢いよく放たれる冒頭の数秒、この段階で既にこの曲がとてつもないエネルギーとポテンシャルを秘めているであろうことが予見出来ます。イントロは続き、「弦も木管も(鍵盤)打楽器も居るよ!」とアピールするかのように其々が動静を巧みに切り替えながら進んでいくので、流麗で素敵だと言うほかありません。編成を紹介するという意味でも親切なイントロだと思います。


 そして歌唱開始。エリカ(日高さん)の可憐でしかし力強い歌声がオケと非常に良くマッチしています。イントロから続くオケは徐々に緊張感をはらんでそのままAメロへと突入するので、旋律もそれに合わせてか勇壮と悲壮が混在しているとでも表現したくなるような覚悟のメロディの趣が感じられ、歌声とアレンジとメロディが三位一体となって完璧な状態を作り上げていると言えます。

 歌詞も素敵で、特に最初の"立ていざ立ち上がれ"は繰り返しが鮮やかだと思いました。"いざ立ち上がれ"と言うなら最初の"立て"は要らない気がしますし、音数を合わせなければいけないならば普通は「さあ」「すわ」あたりをチョイスしそうなものだと、最初は安易にそう捉えていました。

 しかし繰り返しを厭わずに"立て"という命令形を頭に据えることで、掛け声の言葉を使うよりも一層鼓舞する感覚が強調されていますし、音の響き的にも"立て"が最も据わりがいいと思うので、文字通り「上手い立ち上がり」だと絶賛するに至ります。


 Bメロは実にBメロらしいというか、つなぎの役割を見事に果たしていますね。張り詰めたAから華やかなサビへとスムーズに移行するために、悲しみと喜びを同時に背負うことになった切ない旋律だと思います。しかし歌詞は未来を見据えているため、全体としては安心して聴き続けることが出来る頼もしいパートだという印象です。

 ラストの"集う 乙女たち"のパートに宿る「来るぞ…!」と思わせる力も相当のものだと思います。金管とコーラスの入りによるところが大きいと分析しますが、サビへの期待が一気に高まる至高のバトンパスではないでしょうか。


 そんな華麗なバトンを受け取る肝心のサビですが、全く非の打ちどころがありません。全てが華やかとしか言いようがなく、作品自体は何も鑑賞したことのない自分ですら、"花の都"パリに迷い込んでしまったかのような錯覚を起こします。メロディの何と美しいこと。

 加えて"ああ マロニエに 歌を口ずさみ/花の都に 咲く勇姿"という歌詞。これ以上この曲に合うものはないと断言出来るくらい美しい言葉の連なりに心震えずにいられるだろうか。2番の"ああ シャンゼリゼ あの歌が響く"とあわせて、人並みには持っているであろうパリへの憧憬心が揺さぶられます。


 そんな打ち震えた状態で間奏に突入するのですが、そこに出てくるのがアコーディオンソロだというパーフェクトっぷりにも根岸さんの巧みさが窺えます。しっかりとパリを演出しつつ、クールダウンの役割を持たせるには最適の楽器ですよね。

 そこからまた厳しい曲調に瞬時に引き戻されるところに戦いの過酷さが見える気がしますが、「御旗のもとに」はこのメリハリがとてつもなく鮮やかな楽曲だとまとめることが出来ます。ゲームソングと侮るなかれ、この曲は万人に受ける普遍的な名曲です。語り継がれていくべきだと思います。