Monologue / BUD VIRGIN LOGIC
BUD VIRGIN LOGICの1stミニアルバム『Monologue』のレビュー・感想です。『SHOW BY ROCK!!』の5周年を記念したリリースの第一弾で、今月下旬には第二弾としてARCAREAFACTのミニアルバムが出る予定になっています。
「SHOW BY ROCK! ! 」BUD VIRGIN LOGIC 1st Mini alb.../BUD VIRGIN LOGIC

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何の前置きもないと知らない人にとってはなんのこっちゃなので以降暫く説明パートを続けます。また、当ブログにおいても単独記事は初の作品となるので(部分的にはこの記事でふれましたが)、個人的な遍歴と嗜好についても併せて書いていきます。
かなり長いので、レビュー(BVLに関する記述)だけが読みたいという方はここをクリックしてスキップしてください。
【追記:2020.1.3】
後年に『SHOW BY ROCK!!』の総括的なエントリーをアップしたため、作品解説パートに関してはリンク先の内容をおすすめします。
【追記ここまで】
まずは簡単な説明から。『SHOW BY ROCK!!』はサンリオによるプロジェクトのひとつでして、名前から察せる通り「バンド」をテーマとしているのが特徴です(ロックに限定しているわけではありません)。メインはスマホ向けのアプリゲームですが、短編も含めるとこれまでに3度アニメ化されているので人気と知名度は高いと思われます。
本記事で紹介する作品も当然関連楽曲でして、数多く用意されている作中バンドのうちの一組・BUD VIRGIN LOGICによるミニアルバムという形でリリースされたディスクです。詳しくはレビューに入る前の段階になったら再度説明します。
略称が色々あってややこしいのですが、以降では最もポピュラーであろう『SB69』という表記を使って進めていきますね。作中バンドの名前についても2回目以降はなるべく略称を使うことで文字数を節約します。また、普段は曲名の後にリリース年を表示するのをルールとしているのですが、ゲーム内実装時とCD収録時のどちらを基準にすべきか迷うので、本記事では申し訳ないですが省略とします。
TVアニメ「SHOW BY ROCK!!#」OP主題歌「ハートをRock!!」/ポニーキャニオン

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ここからは遍歴紹介(『SB69』との出会いについて)。最近このブログのプロフィール欄を大幅に改訂しまして、音楽関連だけではなく好きなアニメのリスト等を追記したのですが、その中でも「関連楽曲のクオリティが高く音楽だけに注目しても好き」という旨のもとで特筆した作品群にはきちんと『SB69』の名前を連ねておきました。つまり大変気に入っているということです。
…と言いつつ実はハマったのはだいぶ後発であることを白状せねばなりません。確か2016年春クールだったと思いますが、アニメ1期の再放送を観て「音楽を含めて良い作品だな」と思ったのが僕のファーストコンタクトです。サンリオアニメでハマったのは『おねがいマイメロディ』以来。笑
同年秋には2期が控えており、それまでのつなぎとして夏には短編アニメが放送されていたのですが、この夏の間に30曲入りのベストが2枚発売となったので「これは好機」と思って手を出しました。同時にアニメ版のCDシングルにもぼちぼち手を出し始めたのですが、楽曲のクオリティの高さと多様性はすぐに理解出来たので、本格的に好きになるのにそんなに時間はかかりませんでした。
そうして迎えたアニメ2期。正直それ自体(主に脚本)の出来には「うーん…」と思ってしまったのですが、楽曲のクオリティはむしろ向上していると感じたのでますます好きに。ということで暫くは音楽自体を楽しんで過ごしていました。
で、これは個人的なことですが今年に入ってから化石スマホを新調したので、遅きに失しているとは思いつつも漸くアプリゲームをインストールしました。ところが予想に反してそこまで頑張らなくてもイベントで報酬が貰える順位に入れるし(URが貰えればそれでいい)、リズムゲーム部分もかなり易しい(特に判定が)ので気軽に楽しめています。
そして現在では、タイアップバンド(実在のミュージシャン及び楽曲がモデルになっているバンド…以降「TB」と表記します)の曲にも良いものが多いので集めようかなとまで思うようになりました。実際シロラクロスカ?(=カラスは真っ白)のアルバムには数作手を出しちゃったし。
アニメを観て関連CDを揃えただけではTBの楽曲について詳しく知ることは出来なかったからこその今更感なのですが、どこまでもダイバーシティが尊重されているところが流石世界のサンリオだという気がします。
TVアニメ「SHOW BY ROCK!!」挿入歌 「Yes!アイドル宣言」/ポニーキャニオン

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ラストは企業賛美になってしまいましたが遍歴は以上で、ここからは嗜好についてです。最終的にはBVLに繋げるので他バンドへの脱線を許してください。前述の通り『SB69』には数多くのバンドが用意されておりゲーム内では都合26バンドの楽曲が常時プレイ可能となっていますが、TBを除く13バンドの中ではクリティクリスタが最もお気に入りです。
…いや、違うんです。決してロージアちゃんのあざと学にやられたわけではないしロ○コンでもドルヲタでもないんです。ただ音楽好きとして純粋に楽曲だけを比較した時、全体的なクオリティが最も高いと思ったバンドはクリクリであるという個人的な事実から導き出した結論なのです。笑
例えば、しっかりとしたバンドサウンドが「疾走感のあるシークエンス+弾むようなピアノ+ビートを刻むストリングス」で彩られ、曲名の通りループするキュートな歌詞と相俟って心地好いグルーヴを生み出している「ループしてる」。上に埋め込んだのは公式にあったインストVer.ですが、オケだけでも充分に格好良いとわかると思います。
他にも、あざとさ全開のサマーアイドルロックチューンの皮の下に、プラズマジカへのあてつけのようなパロディ心と唐突なハワイアンアレンジをぶっこむというプログレッシブさが潜んでいるのが堪らない「ビビビーチ♡ビビビビーチ!」や、ポップなタイトルとは裏腹に歌われているのは切ない恋心、それがこの上ない美メロにのせて放たれるためキュンとくること必至の「放て!どどどーん!」など、言わば「本気のあざとさ」が楽曲自体の精錬にも繋がっているというのがクリクリが圧倒的だと思う所以です。
TVアニメ「SHOW BY ROCK!!」旅路宵酔ゐ夢花火/Ba&Vo.吽(松井恵理子),Dr&Vo.ダル太夫(潘めぐみ)] 徒然なる操り霧幻庵[Vo&Gt.阿(早見沙織)

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合いの手をバンドスタイルに落とし込むのが巧いと思うプラマジも流石主人公バンドだけあって楽曲が多彩なので好きですし、極東(≒和)のサウンドを丁度好い塩梅でミックスして独自路線を貫いている徒然なる操り霧幻庵にも日本人としては強く心動かされます。
「恋とメリーゴーランド」に代表されるようにアイドル歌謡の要素を取り入れることで何処か懐かしいガーリーなイメージを演出することに成功しているドーリィドルチもハイセンスだと思いますし、ブレイクビーツが印象的でバンドスタイルとしては不思議な艶っぽさを醸し出している雫シークレットマインドにもお気に入りの楽曲が多いです。
TVアニメ「SHOW BY ROCK!!#」シンガンクリムゾンズ double A-side .../ポニーキャニオン

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…え?ガールズバンドばっかり?確かに個人的な好みで選んでしまうとこういうラインナップになってしまうのは事実です。ボーイズのほうでは例えばシンガンクリムゾンズはかなり女性人気が高いと思いますし準主役バンドだけあってキャラとしては全員好きなのですが、音楽的には僕のストライクではないんですよね。
TBを除くと敵対バンドですがARCAREAFACTがいちばん好みです。「ステイリアル」くっそ格好良い。というかボーイズはむしろTBのに好みが集中しているかも。フカシギミック、テケバキツ荘、04Tobizbitsあたりはもっと楽曲を聴いてみたいなと思っています。
…え?BVLは好きじゃないのか?確かに今回レビューするにもかかわらず上掲のラインナップに名前が無いのは不自然ですよね。勿論BVLも好きは好きなんですよ。ただ、その「好きのタイプ」が上掲のものとは異なるの別枠なのです。他にすたっどばんぎゃっしゅやラペッジオートも僕の中では同じカテゴリなので、以下まとめてこの点について説明を加えます。
ここに挙げた3バンドの楽曲に関してですが、正直「ガツンときた一曲」というのは無いんです。これが上掲のお気に入りバンドとは異なる点なのですが、「全体的な楽曲の質は高い」と思えるのが評価をややこしくしています。
これはつまり裏を返せば「ピンとこない曲は無い」ということなので、バンドの音楽そのものを評価しているということになります。詳しい分野ではないので正しい比喩かわかりませんが、「推しメン(=曲)はいないけど箱推し(=バンドの音楽性)では応援したくなる」といった類のカテゴリだと表現するのがわかりやすいかもしれません。
さて、ぼちぼちレビューに入りたいので長い前置きはここまでとし、BUD VIRGIN LOGICに話を絞っていきます。先述した「箱推しの理論」を踏まえると、今回レビューするBVLの『Monologue』という作品がシングルではなくミニアルバムという形態でリリースされたことは僥倖と言えます。収録曲数が多くまとめて聴けるということですから。
『SB69』は関連CDが多岐に亘るので誤解していたら申し訳無いのですが、ミニとはいえ「アーティスト名義によるアルバム」という言わば普通のスタイルで作品がリリースされたのは今回が初めてですよね?ディスコグラフィーのほとんどはシングルですし。
アルバムなら過去にベストが2枚発売されていますが、これは当然複数のバンドによるものなので表記的にはV.A.とすべきものでしょう。アニメのサントラ2枚も形態としてはアルバムですが、これも複数アーティストによるディスクですしね。あと当たり前ですがラジオCDとTBのアルバムもここでは除外して話をしていますよ。
これまでにBVLの楽曲でCDに収録されていたのはベスト2枚目の「Forbidden」と、唯一のシングル(両A面)である「×旋律-Schlehit Melodie-」および「断罪のソリテュード」だけでしたが、ゲーム内には他の曲も存在するのでてっきりいつかシングルでリリースされるのだろうと思っていました(配信については先行販売的なものという認識でいたので)。
こうしてCD化されたので配信盤が先行販売というのもあながち間違いではなくなったような気がしますが、ともかくまさかのアルバム形態での発売ということにまず驚き、しかもそれが特定の楽曲よりもバンドの音楽全体を評価しているBVLのものだと知ったら、「これは買うしかない」となるのは個人的には必然であり思いがけない朗報だったというわけです。
レビューに入る前に一応バンド紹介。埋め込んだのは本作に収録されていない曲のものなのですが、YouTube上で公式にアップされている動画でメンバー全員が映っているのがこれしかないので代用として。「ハカナイトメア」のPVもあったのですがこれは特殊なので後ほどふれます。
動画サムネ左から、ハンドレッコ(Dr.)、ペイペイン(Ba.)、アイレーン(Vo.+Gt.)の3人組バンドで、ボーカルを務めているのはキャラのCVでもある野口瑠璃子さんです。公式の動画といってもこれはポニーキャニオンのですし、『SB69』のアニメ公式chでもサンリオの公式chでも存在が秘匿されている気がするのはバンドの特性ゆえなのか…
公式サイトの記述を一部引用しますが「所属不明、目的不明、正体不明」というふれこみなので、それを意識してか本作のジャケットや歌詞カードにも一切キャラの絵(人型)は描いておらず、ミューモンのシルエットがあるのみです。最初に埋め込んだ本作のAamazonリンクも[no image]なので裏には版権絡みの事情があるのかもしれませんが、とりあえず演出のひとつとポジティブに受け取っておきます。笑
サウンドについては以降で具体的にふれていきますが、帯の「跪け下民共!闇の旋律でみんな地獄行きなのだ♪」という有難いお言葉からわかるように、苛烈と可憐が共存しているのがBVLサウンドの特徴だと思います。
01. ソラウソ
配信シングルでも1曲目に据えられていたのでバンドの顔となるような代表的なナンバーという認識でいるのですが、BVLの曲の中ではある意味異質だとも思っています。人間味があるというか、ここまでエモい感じを出しているのは珍しい気がするので。
本音で歌っていると換言しても良いのですが、それらを"嘘"や"嘯く"という言葉でカバーしているのが実にBVLらしくて好みです。ちなみにタイトルは漢字で書けば"空嘯"となり、辞書にもきちんと載っている言葉でした。
歌詞は解釈が割れそうですが、僕は光と闇の狭間で揺らいでいる人のストーリーだと受け取りました。厳密に言えば闇側に居る人間にとっての光についての歌だと思うのですが、最終的にどうしたのかということについては"空嘯を吹く"という言葉で濁されているので、聴き手に判断を委ねているのだと思います。
歌詞を具体的に見ていくと、A・Bメロは闇(=嘘や現実)について歌われているのに対し、サビは光(=真実や理想)に満ちた内容になっていますよね。しかし前述の通りそれは"空嘯"なので、安易な励ましソングで終わらせていないところを評価したいです。応援歌ではあると思うけど遠回しなのが素敵。
ラスサビの歌詞が最も好きで、"しなやかな微痛に身を委ね/愛というカタチなき 希望を歌うから"からは「闇の旋律」を扱うバンドらしからぬ奥に秘めた光が感じられますし、"もう二度と君を離しはしないって/嘘でも言ってくれたなら 答えにするけど"からはいじらしさが感じられてとても乙女だなと思います。
ラブソングとしても解釈出来そう…というか素直に受け取ったら愛の歌だという趣の方が強い気がします。"君とふたり"を文字通りに解釈すれば独り善がりの歌ではないでしょう。僕はこの"君"というのは光側の自分のことだと思っているので上記のような解釈になりましたが、ともかくアイレーンの精神世界の提示としては完璧ではないでしょうか。
サウンドに関しては冒頭で「エモい」という言葉を使いましたが、それは主にサビに対してで全体としては緩急がしっかりしている曲という印象です。闇に相当するA・Bメロ部は鍵盤が中心の切ないアレンジでありながら、サビで一気にロック全開となり感情の発露が起こるという展開は眩しい光そのものに思えます。
02. オヤスミパラノイア
前置きの中で書いたことと矛盾するかもしれませんが、目当てを一曲挙げろと言われればこの「オヤスミパライノイア」を推すだろうというくらいには好きな曲です。
まずなんといってもイントロが格好良すぎる。玩具箱をひっくり返しただけでは飽き足らず四方八方に投げつけるかのような狂気的で衝動的なサウンドにド肝を抜かれました。このダークでフェティッシュ(原義の呪物的な意味)な音楽こそBVLの真骨頂だと思います。
とはいえメロディはとてもキャッチーなので聴きやすいですね。ライミングの巧い歌詞との相乗効果でスピード感もある。2番Aの"視界眩暈破壊媚態飽きたら/洗いざらい謡い自問自供"が韻律としても意味的にもお気に入りです。"洗いざらい"に対して「話す」ではなく「謡う」、「自問自答」ではなく"自問自供"とひねっているところにこだわりを感じます。
サビの歌詞は勘違いをしていました。"愛憎ギットギトに"は「あいつをギットギト」にかと思っていた。笑 いや、そんなラーメン屋じゃないんだからとは思いましたが、ギッタギタのようなものかと思って深く考えていなかった。とはいえ"論理"と"Lonely"の掛け言葉が存在するような歌詞なので、空耳もあながち的外れではないのではと言い訳&妄想しておきます。
03. Monologue
タイトル曲。作詞者も作曲者も編曲者も01.「ソラウソ」と同じですし(というかこのアルバムは2組の楽曲制作陣によるトラックが交互に収録されている)、01.の歌詞"愛というカタチなき 希望"に対してこちらは"カタチのない哀しみ"から始まるということで、何かしらの関連を思わせるナンバーです。
しかしこちらはタイトルが「モノローグ」であることからもわかるように、01.と違いあくまでも独りの世界が歌われているという印象です。歌詞に"ふたり"は登場しますがそれは記憶の中のお話という感じですし、ストレートに捉えれば別れの歌なのではないかと思う。或いは世界に対する個としての歌。
"まだ死んでいない"という逼迫した歌詞から始まるサビが印象的ですが、この勢いのある旋律に合う言葉はこれしかないと思えるくらいピタッとはまっていて流石だと思います。メロディの激しさに引きずられて"死"という言葉が飛び出したようにすら感じる。A・Bメロでの着実な積み重ねがあるからこそサビの旋律が一層激情的に響く。
歌詞では特に2番が別離の表現が鮮やかで好きです。"いつか止んだ雨といつか消えた何か"や、"もう此処にはない感情が/突き刺さるのを/感傷だと切り捨てて片付けないで"などは非常にリアルな表現だと思います。言葉で上手く説明出来ない感情があるということを言葉で説明するのが上手なフレーズであると自己矛盾的な文章でもって高く評します。
2番はサビ終わりの歌詞も格好良い。"愚鈍な大人に告ぐ/正義なんて傲慢なモノ/壊してあげるから"。"正義"云々のとことは正直表現としてはありふれていると思いますが、"愚鈍な大人"としっかり対象を狙い定めて宣戦布告しているところに痺れました。この辺りの歌詞を考慮すると世界vs個の歌のようにも思えるんですよね。
しかし最も衝撃を受けた歌詞は、Cメロの"虚ろに巡る季節の/葬列にただ並ぶかつての希望"です。アニソンで"葬列"という字面を見るとは思いませんでしたが…いや、アニソンでなくとも椎名林檎かALI PROJECT(の非アニメ曲)でしか見たことない気がしますが、他ではV系バンドの歌詞にて登場しうる言葉だというイメージなので、世界観が一部では共通していると思うBVLの楽曲にこうして出てきても特に違和感がないあたり流石ですね。
04. Albidus
タイトルは「白い」や「淡白色の」を意味する形容詞。アルビノですね。英語にもなっているようですが学名でよく使われているようなので元はラテン語でしょう。歌詞に"真っ白な肌"や"I'm Snow white"というフレーズが出てくるのでそこからきているのだと思います。
打ち込みサウンドが目立つナンバーで新機軸という感じです。あとは英語が多いのも特徴。"Dance Dance with my pain."という一節からもわかるように、これはBVL流のダンスチューンですね。
しかしきちんとロックも忘れていません。特に英語パート後の間奏のハードなギターが素敵過ぎる。偏見ですが「2番後のトランスのクールダウンパートにありそうなシークエンス→エフェクトのかかった歪んだ英語ボーカル→ハードでストイックなギター」という流れは実にオタク好みだなと思います。笑 ライブで盛り上がるとこと必至のアゲ展開。
05. Forbidden
『SHOW BY ROCK!! BEST Vol.2』にも収録されていた曲なのでCDとしては再録になります。BVLはゲーム内実装が遅かったからかベストに収録されている曲もこの「Forbidden」だけだったので、他の曲より知名度が高いのではないかと思います。
ベストに選ばれただけあって良曲です。過剰な装飾の無いアレンジは正統派のバンドサウンドとして評価出来ますし、艶っぽく突き刺さるような旋律とロックとの相性も抜群で素直に格好良いです。特にラスサビから英語パートに雪崩れ込むところが素晴らしい。
タイトルはその英語パートに登場する"Forbidden fruit"からで、つまり「禁断の果実」ですね。ゆえに"原罪"という単語も歌詞に登場します。旧約聖書の『創世記』からの引用として有名ですが、それを意識しているのかその前に"Good old days come flooding back"と洪水を意識させる熟語を登場させているのが上手いと思います。『創世記』つながりで「ノアの方舟」(洪水神話)を連想しますよね。
実際"come flooding back"というのは「(記憶や思い出などが)一気に蘇る」という意味のイディオムに過ぎないのですが、このように'flood'という語は「洪水」という第一の意味から派生した使い方が出来るので好きです。だって当ブログのタイトル『A Flood of Music』もそうですから。笑 まあ日本語の「洪水」にも似たような意味はありますし(e.g. 情報の洪水)、「洪水のように」という比喩は難なく成立していると思いますけどね。
06. ハカナイトメア
ラストを飾るこの曲はボーナストラック扱いです。『SB69』スピンオフアニメ『Ailane the Dark witch-劇場版』の主題歌。公開は2069年の冬なので未来に生きるショウバイロッカーの皆さんは当然ご覧になりましたよね?
…はい、ということで公式によるエイプリルフールネタのためだけに書き下ろされたのがこの「ハカナイトメア」です。笑 こんな予告編まで作っちゃってもう。BUD VIRGIN LOGIC Trilogy(三部作)がじわじわくる。
バンドサウンドの曲というよりは04.「Albidus」のように打ち込みのビートが目立つトラックです。作編曲者が同じなので当然といえば当然なのですが、ダンスチューン全開だった04.とは異なりこちらはBVLらしい妖しさや貴さが健在なのでバランスが良いと思います。きちんと劇場版らしいというか、物語性を感じさせる奥行きのあるアレンジ。
メロディ展開も御伽噺の場面転換のように自在だなと思います。Aメロ("閉ざした"~)は1番でしか出てこないし、Cメロ("続きを"~)は1番と2番の間に挿入されるし、普通Cが据えられる位置にはDメロ("a do Nia"~)があるしでなかなかプログレッシブ。しかし個人的にはBメロ("終焉へ"~)が最も美しいと思う。キャッチーな前半と流麗な後半のギャップが鮮やかなサビの旋律も素敵だけどね。
07.~12.は各曲の「-Instrumental-」です。
以上インスト除いて全6曲でした。予想以上に良かったです。ゲームのおかげで事前に曲を詳しく把握出来ていたというのもありますが、フルだとより作り込まれているのがわかるので二度美味しい思いをした気分です。配信では何も購入していないので「Forbidden」以外全て新鮮にフルを堪能出来たのも良かった。
あとは歌詞がかなり練り込まれているとわかったのも収穫でした。ゲームをプレイしている時はあまり歌詞に意識がいっていないので(どのリズムゲーでもだいたいそうですが)、何となくBVLらしい世界観の言葉で構成されているな程度にしか思っていなかったものの、きちんと解釈出来るというかむしろ解釈し甲斐のある深みのある歌詞が多くて読みごたえがありました。
前置きで書いた通りの理屈でいけば全曲お気に入りと表現すべきですし実際そうなのですが、敢えて個人的トップ3を挙げるなら、02.「オヤスミパラノイア」、05.「Forbidden」、01.「ソラウソ」がお気に入りです。
それにしても自分って男のくせに結構なサンリオっ子かもしれない。幼い頃はけろけろけろっぴとバッドばつ丸が好きだったし、第一次アニヲタ期では好きなアニメのひとつに『おねがいマイメロディ』を挙げられるし、こうしてここにレポがある通り大学生の頃にはMEGのパーティでサンリオピューロランドに赴いたし、第二次アニヲタ期では『SB69』にハマっているというね。『サンリオ男子』だったのか。笑
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【追記:2020.1.3】
後年に『SHOW BY ROCK!!』の総括的なエントリーをアップしたため、作品解説パートに関してはリンク先の内容をおすすめします。
【追記ここまで】
まずは簡単な説明から。『SHOW BY ROCK!!』はサンリオによるプロジェクトのひとつでして、名前から察せる通り「バンド」をテーマとしているのが特徴です(ロックに限定しているわけではありません)。メインはスマホ向けのアプリゲームですが、短編も含めるとこれまでに3度アニメ化されているので人気と知名度は高いと思われます。
本記事で紹介する作品も当然関連楽曲でして、数多く用意されている作中バンドのうちの一組・BUD VIRGIN LOGICによるミニアルバムという形でリリースされたディスクです。詳しくはレビューに入る前の段階になったら再度説明します。
略称が色々あってややこしいのですが、以降では最もポピュラーであろう『SB69』という表記を使って進めていきますね。作中バンドの名前についても2回目以降はなるべく略称を使うことで文字数を節約します。また、普段は曲名の後にリリース年を表示するのをルールとしているのですが、ゲーム内実装時とCD収録時のどちらを基準にすべきか迷うので、本記事では申し訳ないですが省略とします。
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…と言いつつ実はハマったのはだいぶ後発であることを白状せねばなりません。確か2016年春クールだったと思いますが、アニメ1期の再放送を観て「音楽を含めて良い作品だな」と思ったのが僕のファーストコンタクトです。サンリオアニメでハマったのは『おねがいマイメロディ』以来。笑
同年秋には2期が控えており、それまでのつなぎとして夏には短編アニメが放送されていたのですが、この夏の間に30曲入りのベストが2枚発売となったので「これは好機」と思って手を出しました。同時にアニメ版のCDシングルにもぼちぼち手を出し始めたのですが、楽曲のクオリティの高さと多様性はすぐに理解出来たので、本格的に好きになるのにそんなに時間はかかりませんでした。
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…いや、違うんです。決してロージアちゃんのあざと学にやられたわけではないしロ○コンでもドルヲタでもないんです。ただ音楽好きとして純粋に楽曲だけを比較した時、全体的なクオリティが最も高いと思ったバンドはクリクリであるという個人的な事実から導き出した結論なのです。笑
例えば、しっかりとしたバンドサウンドが「疾走感のあるシークエンス+弾むようなピアノ+ビートを刻むストリングス」で彩られ、曲名の通りループするキュートな歌詞と相俟って心地好いグルーヴを生み出している「ループしてる」。上に埋め込んだのは公式にあったインストVer.ですが、オケだけでも充分に格好良いとわかると思います。
他にも、あざとさ全開のサマーアイドルロックチューンの皮の下に、プラズマジカへのあてつけのようなパロディ心と唐突なハワイアンアレンジをぶっこむというプログレッシブさが潜んでいるのが堪らない「ビビビーチ♡ビビビビーチ!」や、ポップなタイトルとは裏腹に歌われているのは切ない恋心、それがこの上ない美メロにのせて放たれるためキュンとくること必至の「放て!どどどーん!」など、言わば「本気のあざとさ」が楽曲自体の精錬にも繋がっているというのがクリクリが圧倒的だと思う所以です。
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「恋とメリーゴーランド」に代表されるようにアイドル歌謡の要素を取り入れることで何処か懐かしいガーリーなイメージを演出することに成功しているドーリィドルチもハイセンスだと思いますし、ブレイクビーツが印象的でバンドスタイルとしては不思議な艶っぽさを醸し出している雫シークレットマインドにもお気に入りの楽曲が多いです。
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…え?ガールズバンドばっかり?確かに個人的な好みで選んでしまうとこういうラインナップになってしまうのは事実です。ボーイズのほうでは例えばシンガンクリムゾンズはかなり女性人気が高いと思いますし準主役バンドだけあってキャラとしては全員好きなのですが、音楽的には僕のストライクではないんですよね。
TBを除くと敵対バンドですがARCAREAFACTがいちばん好みです。「ステイリアル」くっそ格好良い。というかボーイズはむしろTBのに好みが集中しているかも。フカシギミック、テケバキツ荘、04Tobizbitsあたりはもっと楽曲を聴いてみたいなと思っています。
…え?BVLは好きじゃないのか?確かに今回レビューするにもかかわらず上掲のラインナップに名前が無いのは不自然ですよね。勿論BVLも好きは好きなんですよ。ただ、その「好きのタイプ」が上掲のものとは異なるの別枠なのです。他にすたっどばんぎゃっしゅやラペッジオートも僕の中では同じカテゴリなので、以下まとめてこの点について説明を加えます。
ここに挙げた3バンドの楽曲に関してですが、正直「ガツンときた一曲」というのは無いんです。これが上掲のお気に入りバンドとは異なる点なのですが、「全体的な楽曲の質は高い」と思えるのが評価をややこしくしています。
これはつまり裏を返せば「ピンとこない曲は無い」ということなので、バンドの音楽そのものを評価しているということになります。詳しい分野ではないので正しい比喩かわかりませんが、「推しメン(=曲)はいないけど箱推し(=バンドの音楽性)では応援したくなる」といった類のカテゴリだと表現するのがわかりやすいかもしれません。
さて、ぼちぼちレビューに入りたいので長い前置きはここまでとし、BUD VIRGIN LOGICに話を絞っていきます。先述した「箱推しの理論」を踏まえると、今回レビューするBVLの『Monologue』という作品がシングルではなくミニアルバムという形態でリリースされたことは僥倖と言えます。収録曲数が多くまとめて聴けるということですから。
『SB69』は関連CDが多岐に亘るので誤解していたら申し訳無いのですが、ミニとはいえ「アーティスト名義によるアルバム」という言わば普通のスタイルで作品がリリースされたのは今回が初めてですよね?ディスコグラフィーのほとんどはシングルですし。
アルバムなら過去にベストが2枚発売されていますが、これは当然複数のバンドによるものなので表記的にはV.A.とすべきものでしょう。アニメのサントラ2枚も形態としてはアルバムですが、これも複数アーティストによるディスクですしね。あと当たり前ですがラジオCDとTBのアルバムもここでは除外して話をしていますよ。
これまでにBVLの楽曲でCDに収録されていたのはベスト2枚目の「Forbidden」と、唯一のシングル(両A面)である「×旋律-Schlehit Melodie-」および「断罪のソリテュード」だけでしたが、ゲーム内には他の曲も存在するのでてっきりいつかシングルでリリースされるのだろうと思っていました(配信については先行販売的なものという認識でいたので)。
こうしてCD化されたので配信盤が先行販売というのもあながち間違いではなくなったような気がしますが、ともかくまさかのアルバム形態での発売ということにまず驚き、しかもそれが特定の楽曲よりもバンドの音楽全体を評価しているBVLのものだと知ったら、「これは買うしかない」となるのは個人的には必然であり思いがけない朗報だったというわけです。
レビューに入る前に一応バンド紹介。埋め込んだのは本作に収録されていない曲のものなのですが、YouTube上で公式にアップされている動画でメンバー全員が映っているのがこれしかないので代用として。「ハカナイトメア」のPVもあったのですがこれは特殊なので後ほどふれます。
動画サムネ左から、ハンドレッコ(Dr.)、ペイペイン(Ba.)、アイレーン(Vo.+Gt.)の3人組バンドで、ボーカルを務めているのはキャラのCVでもある野口瑠璃子さんです。公式の動画といってもこれはポニーキャニオンのですし、『SB69』のアニメ公式chでもサンリオの公式chでも存在が秘匿されている気がするのはバンドの特性ゆえなのか…
公式サイトの記述を一部引用しますが「所属不明、目的不明、正体不明」というふれこみなので、それを意識してか本作のジャケットや歌詞カードにも一切キャラの絵(人型)は描いておらず、ミューモンのシルエットがあるのみです。最初に埋め込んだ本作のAamazonリンクも[no image]なので裏には版権絡みの事情があるのかもしれませんが、とりあえず演出のひとつとポジティブに受け取っておきます。笑
サウンドについては以降で具体的にふれていきますが、帯の「跪け下民共!闇の旋律でみんな地獄行きなのだ♪」という有難いお言葉からわかるように、苛烈と可憐が共存しているのがBVLサウンドの特徴だと思います。
01. ソラウソ
配信シングルでも1曲目に据えられていたのでバンドの顔となるような代表的なナンバーという認識でいるのですが、BVLの曲の中ではある意味異質だとも思っています。人間味があるというか、ここまでエモい感じを出しているのは珍しい気がするので。
本音で歌っていると換言しても良いのですが、それらを"嘘"や"嘯く"という言葉でカバーしているのが実にBVLらしくて好みです。ちなみにタイトルは漢字で書けば"空嘯"となり、辞書にもきちんと載っている言葉でした。
歌詞は解釈が割れそうですが、僕は光と闇の狭間で揺らいでいる人のストーリーだと受け取りました。厳密に言えば闇側に居る人間にとっての光についての歌だと思うのですが、最終的にどうしたのかということについては"空嘯を吹く"という言葉で濁されているので、聴き手に判断を委ねているのだと思います。
歌詞を具体的に見ていくと、A・Bメロは闇(=嘘や現実)について歌われているのに対し、サビは光(=真実や理想)に満ちた内容になっていますよね。しかし前述の通りそれは"空嘯"なので、安易な励ましソングで終わらせていないところを評価したいです。応援歌ではあると思うけど遠回しなのが素敵。
ラスサビの歌詞が最も好きで、"しなやかな微痛に身を委ね/愛というカタチなき 希望を歌うから"からは「闇の旋律」を扱うバンドらしからぬ奥に秘めた光が感じられますし、"もう二度と君を離しはしないって/嘘でも言ってくれたなら 答えにするけど"からはいじらしさが感じられてとても乙女だなと思います。
ラブソングとしても解釈出来そう…というか素直に受け取ったら愛の歌だという趣の方が強い気がします。"君とふたり"を文字通りに解釈すれば独り善がりの歌ではないでしょう。僕はこの"君"というのは光側の自分のことだと思っているので上記のような解釈になりましたが、ともかくアイレーンの精神世界の提示としては完璧ではないでしょうか。
サウンドに関しては冒頭で「エモい」という言葉を使いましたが、それは主にサビに対してで全体としては緩急がしっかりしている曲という印象です。闇に相当するA・Bメロ部は鍵盤が中心の切ないアレンジでありながら、サビで一気にロック全開となり感情の発露が起こるという展開は眩しい光そのものに思えます。
02. オヤスミパラノイア
前置きの中で書いたことと矛盾するかもしれませんが、目当てを一曲挙げろと言われればこの「オヤスミパライノイア」を推すだろうというくらいには好きな曲です。
まずなんといってもイントロが格好良すぎる。玩具箱をひっくり返しただけでは飽き足らず四方八方に投げつけるかのような狂気的で衝動的なサウンドにド肝を抜かれました。このダークでフェティッシュ(原義の呪物的な意味)な音楽こそBVLの真骨頂だと思います。
とはいえメロディはとてもキャッチーなので聴きやすいですね。ライミングの巧い歌詞との相乗効果でスピード感もある。2番Aの"視界眩暈破壊媚態飽きたら/洗いざらい謡い自問自供"が韻律としても意味的にもお気に入りです。"洗いざらい"に対して「話す」ではなく「謡う」、「自問自答」ではなく"自問自供"とひねっているところにこだわりを感じます。
サビの歌詞は勘違いをしていました。"愛憎ギットギトに"は「あいつをギットギト」にかと思っていた。笑 いや、そんなラーメン屋じゃないんだからとは思いましたが、ギッタギタのようなものかと思って深く考えていなかった。とはいえ"論理"と"Lonely"の掛け言葉が存在するような歌詞なので、空耳もあながち的外れではないのではと言い訳&妄想しておきます。
03. Monologue
タイトル曲。作詞者も作曲者も編曲者も01.「ソラウソ」と同じですし(というかこのアルバムは2組の楽曲制作陣によるトラックが交互に収録されている)、01.の歌詞"愛というカタチなき 希望"に対してこちらは"カタチのない哀しみ"から始まるということで、何かしらの関連を思わせるナンバーです。
しかしこちらはタイトルが「モノローグ」であることからもわかるように、01.と違いあくまでも独りの世界が歌われているという印象です。歌詞に"ふたり"は登場しますがそれは記憶の中のお話という感じですし、ストレートに捉えれば別れの歌なのではないかと思う。或いは世界に対する個としての歌。
"まだ死んでいない"という逼迫した歌詞から始まるサビが印象的ですが、この勢いのある旋律に合う言葉はこれしかないと思えるくらいピタッとはまっていて流石だと思います。メロディの激しさに引きずられて"死"という言葉が飛び出したようにすら感じる。A・Bメロでの着実な積み重ねがあるからこそサビの旋律が一層激情的に響く。
歌詞では特に2番が別離の表現が鮮やかで好きです。"いつか止んだ雨といつか消えた何か"や、"もう此処にはない感情が/突き刺さるのを/感傷だと切り捨てて片付けないで"などは非常にリアルな表現だと思います。言葉で上手く説明出来ない感情があるということを言葉で説明するのが上手なフレーズであると自己矛盾的な文章でもって高く評します。
2番はサビ終わりの歌詞も格好良い。"愚鈍な大人に告ぐ/正義なんて傲慢なモノ/壊してあげるから"。"正義"云々のとことは正直表現としてはありふれていると思いますが、"愚鈍な大人"としっかり対象を狙い定めて宣戦布告しているところに痺れました。この辺りの歌詞を考慮すると世界vs個の歌のようにも思えるんですよね。
しかし最も衝撃を受けた歌詞は、Cメロの"虚ろに巡る季節の/葬列にただ並ぶかつての希望"です。アニソンで"葬列"という字面を見るとは思いませんでしたが…いや、アニソンでなくとも椎名林檎かALI PROJECT(の非アニメ曲)でしか見たことない気がしますが、他ではV系バンドの歌詞にて登場しうる言葉だというイメージなので、世界観が一部では共通していると思うBVLの楽曲にこうして出てきても特に違和感がないあたり流石ですね。
04. Albidus
タイトルは「白い」や「淡白色の」を意味する形容詞。アルビノですね。英語にもなっているようですが学名でよく使われているようなので元はラテン語でしょう。歌詞に"真っ白な肌"や"I'm Snow white"というフレーズが出てくるのでそこからきているのだと思います。
打ち込みサウンドが目立つナンバーで新機軸という感じです。あとは英語が多いのも特徴。"Dance Dance with my pain."という一節からもわかるように、これはBVL流のダンスチューンですね。
しかしきちんとロックも忘れていません。特に英語パート後の間奏のハードなギターが素敵過ぎる。偏見ですが「2番後のトランスのクールダウンパートにありそうなシークエンス→エフェクトのかかった歪んだ英語ボーカル→ハードでストイックなギター」という流れは実にオタク好みだなと思います。笑 ライブで盛り上がるとこと必至のアゲ展開。
05. Forbidden
『SHOW BY ROCK!! BEST Vol.2』にも収録されていた曲なのでCDとしては再録になります。BVLはゲーム内実装が遅かったからかベストに収録されている曲もこの「Forbidden」だけだったので、他の曲より知名度が高いのではないかと思います。
ベストに選ばれただけあって良曲です。過剰な装飾の無いアレンジは正統派のバンドサウンドとして評価出来ますし、艶っぽく突き刺さるような旋律とロックとの相性も抜群で素直に格好良いです。特にラスサビから英語パートに雪崩れ込むところが素晴らしい。
タイトルはその英語パートに登場する"Forbidden fruit"からで、つまり「禁断の果実」ですね。ゆえに"原罪"という単語も歌詞に登場します。旧約聖書の『創世記』からの引用として有名ですが、それを意識しているのかその前に"Good old days come flooding back"と洪水を意識させる熟語を登場させているのが上手いと思います。『創世記』つながりで「ノアの方舟」(洪水神話)を連想しますよね。
実際"come flooding back"というのは「(記憶や思い出などが)一気に蘇る」という意味のイディオムに過ぎないのですが、このように'flood'という語は「洪水」という第一の意味から派生した使い方が出来るので好きです。だって当ブログのタイトル『A Flood of Music』もそうですから。笑 まあ日本語の「洪水」にも似たような意味はありますし(e.g. 情報の洪水)、「洪水のように」という比喩は難なく成立していると思いますけどね。
06. ハカナイトメア
ラストを飾るこの曲はボーナストラック扱いです。『SB69』スピンオフアニメ『Ailane the Dark witch-劇場版』の主題歌。公開は2069年の冬なので未来に生きるショウバイロッカーの皆さんは当然ご覧になりましたよね?
…はい、ということで公式によるエイプリルフールネタのためだけに書き下ろされたのがこの「ハカナイトメア」です。笑 こんな予告編まで作っちゃってもう。BUD VIRGIN LOGIC Trilogy(三部作)がじわじわくる。
バンドサウンドの曲というよりは04.「Albidus」のように打ち込みのビートが目立つトラックです。作編曲者が同じなので当然といえば当然なのですが、ダンスチューン全開だった04.とは異なりこちらはBVLらしい妖しさや貴さが健在なのでバランスが良いと思います。きちんと劇場版らしいというか、物語性を感じさせる奥行きのあるアレンジ。
メロディ展開も御伽噺の場面転換のように自在だなと思います。Aメロ("閉ざした"~)は1番でしか出てこないし、Cメロ("続きを"~)は1番と2番の間に挿入されるし、普通Cが据えられる位置にはDメロ("a do Nia"~)があるしでなかなかプログレッシブ。しかし個人的にはBメロ("終焉へ"~)が最も美しいと思う。キャッチーな前半と流麗な後半のギャップが鮮やかなサビの旋律も素敵だけどね。
07.~12.は各曲の「-Instrumental-」です。
以上インスト除いて全6曲でした。予想以上に良かったです。ゲームのおかげで事前に曲を詳しく把握出来ていたというのもありますが、フルだとより作り込まれているのがわかるので二度美味しい思いをした気分です。配信では何も購入していないので「Forbidden」以外全て新鮮にフルを堪能出来たのも良かった。
あとは歌詞がかなり練り込まれているとわかったのも収穫でした。ゲームをプレイしている時はあまり歌詞に意識がいっていないので(どのリズムゲーでもだいたいそうですが)、何となくBVLらしい世界観の言葉で構成されているな程度にしか思っていなかったものの、きちんと解釈出来るというかむしろ解釈し甲斐のある深みのある歌詞が多くて読みごたえがありました。
前置きで書いた通りの理屈でいけば全曲お気に入りと表現すべきですし実際そうなのですが、敢えて個人的トップ3を挙げるなら、02.「オヤスミパラノイア」、05.「Forbidden」、01.「ソラウソ」がお気に入りです。
それにしても自分って男のくせに結構なサンリオっ子かもしれない。幼い頃はけろけろけろっぴとバッドばつ丸が好きだったし、第一次アニヲタ期では好きなアニメのひとつに『おねがいマイメロディ』を挙げられるし、こうしてここにレポがある通り大学生の頃にはMEGのパーティでサンリオピューロランドに赴いたし、第二次アニヲタ期では『SB69』にハマっているというね。『サンリオ男子』だったのか。笑