今日の一曲!エドガー・サリヴァン「今夜ステキになって」 | A Flood of Music

今日の一曲!エドガー・サリヴァン「今夜ステキになって」

 【追記:2021.1.5】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:2019年のアニソンを振り返る】の第三弾です。【追記ここまで】


 今回の「今日の一曲!」は、エドガー・サリヴァンの「今夜ステキになって」(2019)です。1st EP『NEWS』収録曲。

NEWSNEWS
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 11月も下旬となって2019年も終わりが近付いてきたので、ぼちぼち恒例のアニソン振り返り記事(2018年分のまとめはこちら)のための音源収集を強化している最中なのですが、その過程でアニソンとしてではなく一般枠でレビューしたいフェイバリットに出逢ってしまったため、先んじて単独記事を立てることにしました。未だ全ての作品に手を出してはいないので、ブログテーマは取り敢えず「その他」にすることをご容赦ください。

 僕の琴線にふれたのは、当ブログでは初登場となるエドガー・サリヴァンです。元々はTVアニメ『みだらな青ちゃんは勉強ができない』のOP曲に起用された「WONDERFUL WONDER」が目当てで、同曲は打ち込みのチープさとメロディラインのポップさがお気に入りポイントでした。この場合のチープは誉め言葉というか、敢えてそうしたのであろうとの分析で、シンセのプリセットにあるドラムキットの音だけで構築されたようなリズムセクションに、軽快な妙味があるところを高く評価しています。アニメで最初の一音を聴いただけで「好き」の判定を下してしまったほどには、このチープさが愛おしいです。




 同曲は5曲入りのEPへの収録だったので、当然ながら他に4曲が鑑賞の対象になったわけですが、01.「今夜ステキになって」で仰けから意表を突かれました。既知の楽曲が03.「WONDERFUL WONDER」しかなく、個人なのかグループなのか判然としないアーティスト名であることも手伝って、てっきり女性ボーカルをメインに据えてポップスをやりたい存在なのかなと予想していたら、まさかの切ないギターが印象的なバンドサウンドが飛び出してきたので、俄然興味が湧いたのです。それでいて、プログラミングおよびシンセサイザーとのバランス感覚も絶妙で、個人的なツボに合致しないわけがありませんでした。

 メンバーのプロフィールも含めて楽曲のクレジットにあたってみたところ、得心のいく要素がたくさんあって驚きです。以下、Wikipediaの記述を全面的に信用して書き進めます。第一にボーカルの佐々木萌さんがフジファブリック好きであることは、同じくファンとして共感を抱けましたし、延いてはアウトプットにも影響があると推測されるので、共通の良さを感じ取ったとしても自然なことでしょう。第二にギターの坂本遥さんがex. THEラブ人間であることは、確かなキャリアの証明にほかならず、道理で個性的なギタープレイなわけだと納得が出来ます。第三に本曲にはバンドサポートが迎えられていて、二人組ユニットにしてはしっかりとしたアンサンブルが披露されている理由にも合点が行きました。

 第四にサウンドプロデュース・アレンジ・打ち込みをagehasprings所属の大西省吾さんが担っていることは、上述した「バランス感覚も絶妙」の答えたりえます。同プロダクションの名前を出した言及ならば、過去にこの記事この記事がありますし、このうち後者には「所属クリエイターの名前(e.g. 蔦谷好位置, 飛内将大, 田中ユウスケ)で検索すればより多くの記事がヒットします」と記してあるように、元より多大な信頼を置いているからです。大西さんの名前は未だ出したことがありませんでしたが、レビュー済みの作品ではこの記事の11.に参加なさっているのは把握していますし、やなぎなぎや『アイカツ!シリーズ』の楽曲でも、そのワークスにふれてきています。第五にクリエイティブディレクターである箭内道彦さんとの交流があることは、本曲ないしユニット自体が醸しているシティ感を補強する事実です。嘗てこの記事この記事で述べている通り、僕にとっての箭内さんの代表作は東京メトロのCMなので、氏の目に留まったエドサリもまた、都会的なアイコンとしての魅力に満ちているのだと言えます。




 外周をなぞるタイプのレビューになっていて恐縮ですが、純粋にトラックの出来栄えだけで判断しても、出色の一曲であることに疑いの余地はありません。再度主張したいのはギターの素敵さで、あらゆるセンチメンタルを内包したかのような音作りと演奏に、僕の中の機微が強く反応します。最近は表現に困るとすぐに「エモい」という言葉に逃げたくなってしまう向きがあって、自戒しなくてはいけないと考えてはいるものの、本曲のギタープレイには「エモい」を適用したいです。

 佐々木さんの手に成るメロディセンスにも美点が窺え、キャッチー且つポップなアウトラインは維持しつつも、フックとなり得る翳りをインサートするのが巧いなと思いました。本曲を初めて聴いた際にまず耳に留まった旋律は、"今夜ステキになって/ネオンを縫って"の跳ね感から、"繰り出したいのさ"でダウナーにふれる部分だったので。繰り返し聴いていると、もはやこの進行以外は違和感があると印象が上書きされてしまうため、何が良い意味で引っ掛かったのかが曖昧になっていきますが、ファーストインプレッションの時には確かに意外性を覚えたのだという、瞬間的な感想を文章化してみました。

 歌詞に関しては、上掲動画の説明欄に記載されているライナーノーツの文章が綺麗に纏まっているので、そこをご覧いただければ僕が態々語ることもないのですが、具体性のあるロケーションの提示は、現実に根差した楽しみ方を可能とするので大好物です。本曲は必ずしもラブソングの解釈を取らなくてもいいとは思うものの、仮に夜の東京をデートする内容だとシンプルに解した場合には、僕の恋愛観と共にレビューした別アーティストの記事で述べたことに似た、幸福な記憶が思い起こされます。語弊のある言葉選びかもしれないと断っておく必要はあれど、こういったセカイ系ランデブーな世界観に弱いみたいです。