2023年に観た映画の個人的ベスト20です。
映画館で観た新作映画に絞っています。配信やテレビなどで観たものは含んでいません。映画館でリバイバル上映された旧作も含んでいません。
2023年、映画館で観た新作映画の本数は97本でした。昨年より減ってしまった。
観てない映画の方がずっと多いです。世間で話題になった映画、ヒットした映画も、観てないのが多くあると思います。なので、全然客観的なランキングではないです。あくまでも個人の好みによる、たぶん別の時にはまたガラッと変わってしまいそうなベストです。ご了承願います。
20位 オオカミの家
アートアニメの表現もやり尽くされて、もう斬新な表現はない…と思っていましたが。まだまだ、アイデア次第でびっくりするような映像が創れるものですね。
本当に見たことのない表現に驚かされる映画。テーマの上でも、現代日本の問題にズバリつながってくるのが鋭いです。
19位 君は放課後インソムニア
震災のニュースを見て、思い出したのはこの映画でした。石川県七尾市の高校生たちの駆け抜ける青春を、美しい能登の自然をバックに描いた瑞々しい青春恋愛映画。
この映画に描かれたような美しい風景、暮らしが、いち早く戻ることを祈ります。
18位 ノベンバー
エストニア映画というのも初めてですが、本当に一言で要約できない、めくるめく美しい夢のような、悪夢のような、マジックリアリズム映画です。
安心して楽しめるハリウッド映画もいいけれど、生まれてこのかた見たことのない世界を垣間見せてくれるような、独創的な映画に出会えると、映画を観続けていてよかった…と思えますね。
17位 レッド・ロケット
クズのポルノ俳優のどうしようもないクズっぷりをドライな笑いの中で描いて、とことんクズでしかないのになぜか面白い。これまた、一種独特な独自性を持った映画です。
ショーン・ベイカー監督の前作「フロリダ・プロジェクト」は2018年の個人的ベスト映画でした。ダメな状況の中で自らダメな行動を選んで、自業自得でますますダメになっていく人々を描くのはこれも同じなのだけど、感情移入できるのは人間の描き方が確かだから…なのでしょうね。
16位 ファルコン・レイク
少年の成長、通過儀礼を描く青春映画と、ホラー映画はなぜか相性がいいものです。
カナダの湖畔での少年と少女の「一夏の体験」を描く本作は、強烈にムズムズ、みぞみぞする展開を抑えながら、最後切なくも怖いホラー的な着地を果たします。
映画ってやっぱり、瞬間を永遠に刻印するものだからね。こういうテーマは、映画らしい映画になるんですよね。
15位 愛にイナズマ
なぜか同時期に公開された「月」も強烈だった石井裕也監督の、笑えるけどシビアでハードなラブコメディ。松岡茉優と窪田正孝をはじめ、出演陣はみんな実に魅力的です。
本作はお仕事と家族をテーマにした喜劇でありつつ、アフターコロナの時代を描いた時事的な作品であり、日本映画界のパワハラ・搾取体質など、様々な問題に切り込んだ作品でもあります。2023年の日本を描いているという点では、もっとも意欲的な映画と言えるんじゃないかな。
14位 ノースマン 導かれし復讐者
「ライトハウス」の異才ロバート・エバース監督による、古代北欧バイキングの血みどろ復讐劇。
ある種、現代的な流行りとかトレンドとかに背を向けて、趣味的な古代神話の世界を深堀りしていく、マニアックな映画ではありますね。
出演者がアメリカ人で英語が話されることは残念ではあるのだけど、非常に深いこだわりを持って現代の常識とかけ離れたバイキングの世界が再現されています。これもある種、「初めて知る世界」を見せてくれる映画です。
13位 フェイブルマンズ
スピルバーグの初めての自伝的作品。エキセントリックな母親との関係を軸に、映画に自己のアイデンティティを見出していく青年の物語に仕立てているのは見事です。
創作論としても、勉強になることがいっぱい。それも、押し付けがましくないのがいいですね。
粋な映画なんですよね。単にテクニック的に上手い映画はあるのだけど、観ていて思わず惚れ惚れしちゃうような「粋さ」はさすがスピルバーグと思わせます。
12位 FALL/フォール
これは意外な拾い物! 「高所恐怖映画」としては、ちょっと並ぶ作品は当分ないんじゃないでしょうか。
観てる間中ずっと、お尻がぞわぞわする。本当に何回も画面から目を背けたし、純粋に「怖かった」という点ではこれは最強のホラー映画かもしれません。観る人の「高いところ苦手度合い」によるかもしれないけど。
11位 リバー、流れないでよ
ヨーロッパ企画による、アイデアを尽くしたタイムループ映画。京都貴船の旅館を舞台に、2分間という映画史上でも最も短いループが繰り返されます。
本当に、アイデアと情熱次第で、いくらでも面白い映画が作れるんだなあ…と思わされる。いいなあ…と思うとともに、羨ましいなあ、こんなん作れたらなあ…なんて思ってしまう映画です。