A5の小さなサイズ。オールカラー、40ページ。900円。

表紙と裏表紙は折り込みがあって、ワイドに開くようになってます。開いた見返しに、映画冒頭の壁画が入っています。

 

このパンフレットの最大の特徴は、各ページが紙をちぎり取ったようなラフな作りに(わざと)なっていること。

これは劇中に登場する「ルビ・ラダーの書」を模しているんでしょうね。

なんかこの加工で値段が跳ね上がっちゃってる気はしますが、しかしこういう遊び心は嫌いじゃないです。内容の見辛さにつながってないのもいいですね。

 

映画の魅力はカラフルで美しいアーティスティックな映像ですが、グラビアページが入っていてとてもきれいなパンフレットになっています。

映画のシーンだけでなく、映画に登場する壁画の絵柄も収録していて、見応えがあります。

サイズが小さいのは、ちょっと残念ですけどね。前作「ヘレディタリー」のパンフレットは非常にオーソドックスな作りでしたが、今回はアート映画寄りの作りになりました。

 

アリ・アスター監督の来日時のインタビュー。

今回、「スウェーデンの夏至祭を訪れたアメリカ人が悲劇に巻き込まれる民間伝承を基にしたスリラー映画」という大枠は、外から持ち込まれたものだったんですね。

ちょうど失恋していたアリ・アスター監督が、そこに自身の感情を結びつけるアイデアを思いついた。失恋とこの枠組みを結びつけちゃうのが、すごいなあと思います。

 

白夜の環境を舞台にしたのは、「時間の感覚がない場所を創ることに惹かれた」から。「この村にいると2日経ったのか、3日経ったのか分からなくなってくる」

ならば、いっそ暗くなるシーンを入れなければよかったのに…と少し思いました。暗くなるシーンが合間合間に入るので、割と普通に日が暮れているように見えるんですよね。(通常の映画でも、眠る夜は時間的には飛ばしがちなので、結果的にはあんまり普通と区別がつかない)

本当にずーっと明るい状態にしてしまえば、1日の区切りが観ている側にもつかなくて、より混乱状態が増したと思うんだけど。それはリアリティ的に無理だったのかな…。

 

「あの村はわずか2ヶ月で、すべてゼロから作ったんだ」とのこと。

村の壁画を描いたのはスウェーデン人の画家たちで、ラグナー・パーソンという人が中心人物だそうです。

ラグナー・パーソン(Ragnar Persson)は1980年生まれで、スウェーデンでは3冊の画集を出版しています。日本で個展もやってたりします。

 

こんな絵がありました。少女とクマですね。

 

「僕はメロドラマが好きで、メロドラマの伝統を愛している。メロドラマは表現主義と結びついている部分があると思うんだ。僕が映画で描きたいのは、映画で描かれる外側の世界と、登場人物の内側の世界が完全にマッチすること」

クライマックスの「儀式」とダニーの内面の感情がシンクロするのは、そこから意図されたところですね。

 

町山智浩氏のコラム、「生と死の儀式に隠された、破れた恋のトラウマ」。

アリ・アスター監督が参考にしたという今村昌平監督「神々の深き欲望」(1968)や、「野蛮な儀式に巻き込まれホラー」の「食人族」(1980)「グリーン・インフェルノ」(2015)、色彩の参考にしたという18世紀アルメニアを描いたセルゲイ・パラジャーノフ監督「ざくろの色」(1969)、「ヘレディタリー」の参考にした「家族が崩壊していく映画」「普通の人々」(1980)などについて解説しています。

 

小林真里氏による「ミッドサマー完全解析」。これは「ヘレディタリー」のパンフレットと同趣向ですね。

いろいろと参考になります。僕のネタバレ解説で触れなかった点としては、「悪魔のいけにえ」(1974)との比較やサイケデリックなドラッグ・ムービーの系譜があります。

この解説は、公式ホームページの「観た人限定完全解析ページ」でも見ることができます。

 

話題を呼んだ2種類の日本版ポスターの画像が収録されています。

1点は猫のイラストで有名な画家のヒグチユウコ氏の作品。「ネタバレ解説1」の画像に使いました。

ラストに登場する「花ドレスダニー」をモチーフにしつつ、木の枝の腕も追加してさらに死装束風味になってます。美しいけど、かなりダークなイラストレーション。

 

もう1点はデザイナー大島依提亜氏による写真を使ったポスター。「ネタバレ解説2」で使ってます。このパンフレット自体のデザインも同氏です。

黒とゴールドのビジュアルに、黄色い三角がデザインされています。

 

しばらくずーっと、「ミッドサマー」の記事ばかり書いてきましたが…。

御察しの通り、このところ映画館に行っていないです。安心して映画館にも行けない世の中、いやですね。早く収まって欲しいものです。

ホラーは映画の中だけのことであって欲しい!

 

しばらくは見る本数は減ると思うので、新作映画のレビューは控えめになると思います。旧作レビューとか、ネタバレ解説とか、思案中です!

 

「ミッドサマー」レビューはこちら。

「ミッドサマー」ネタバレ解説1はこちら。

「ミッドサマー」ネタバレ解説2はこちら。

「ミッドサマー」ネタバレ解説3はこちら。

「ミッドサマー」ネタバレ解説4はこちら。

「ミッドサマー」ネタバレ解説5はこちら。

「ミッドサマー」ネタバレ解説6はこちら。

 

「ヘレディタリー/継承」レビューはこちら。

「ヘレディタリー/継承」パンフレット情報はこちら。

 

 

 

 

 

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Ragnar Perssonの作品集、こんなんありました。