「近代化されたゴルフ規則の研究」ブログ開設のお知らせ

2017年8月12日

 

 R&AとUSGAは,2019年1月1日をもって,近代化されたゴルフ規則が適用されると発表しました。現在は旧ゴルフ規則が適用されております。旧規則について,これ以上解説や批判をしても意味がないので,平成29年3月末日をもって,「ゴルフ規則 (ストロークプレー個人競技用メモ帳)」のブログを停止しました。

 そこで,「近代化されたゴルフ規則の研究」と題して,新たなブログを開設し2019年版のゴルフ規則等について批判を続けようと思います。近代化されたゴルフ規則が発表され次第作業を開始致します。   以上

 

 

アウトオブバウンズ・コースの境界・コースエリア

2018年12月26日

 

「近代化されたゴルフ規則」の製本されたものを,施行を間近にしてやっと手に入れることができました。全部を理解するのはとても無理ですので,近代化されたゴルフ規則(以下規則という)において改訂された,問題のありそうなテーマを順次取りあげて検討してみたいと思います。

 2018年までの旧ゴルフ規則(以下旧ゴルフ規則という)には,球がコースの何処にあるか判定する規則が極めて複雑でした。規則が新しくなっても,重要な事実であることに変わりません。

 以下規則の最初のテーマとして,規則2の「コースの境界とアウトオブバウンズ」と「定義されたコースエリア」の意味を検討したいと思います。

 

1 旧ゴルフ規則はコースについて,委員会が定めた境界の内側全域と定義していただけでした(旧ゴルフ規則定義15)。

新しい規則は,アウトオブバウンズとコースの境界を明確にしました。そして,コースを次のとおり定義しています(定義:コース)。

  委員会が設定した境界の縁の内側のすべてのプレーエリア:

   ・境界の縁の内側のすべてのエリアはインバウンズであり,コースの一部である。

   ・境界の縁の外側のすべてのエリアはアウトオブバウンズであり,コースの一部ではない。

   ・境界の縁は地面の上方と,地面の下方の両方に及ぶ。

三段目の「・境界の縁は地面の上方と,地面の下方の両方に及ぶ。」が意味するものは,この位置に規定されていることからして,インバウンズとアウトオブバウンズの境界だけについて規定しているものと思います。

 

2 規則は,以上の定義コースに続いて,5つのコースエリアを定義しています(定義:コースエリア)

   ・ジェネラルエリア。

   ・ティーイングエリア。

   ・ペナルティーエリア。

   ・バンカー。

   ・パッティンググリーン

  しかし,以上のコースエリアの定義には「・境界の縁は地面の上方と,地面の下方の両方に及ぶ。」という規定がありません。5つのコースエリアの境界の縁が地面の上方と,地面の下方の両方に及ぶか否かについては,該当する各規則に委ねる趣旨と思います。

 

3 次に,アウトオブバウンズもコースの各エリアを区切る線も,コース上に塗られた線で示されることがあります。そうなると,帯状の線の両端のいずれ側か,すなわち帯自体はいずれのエリアかという問題があります。

  規則は,アウトオブバウンズについて,

  「杭やフェンスによって定められる場合,境界線はその杭やフェンスポストのコース側を地表レベルで結んだ線によって定められ,………… 。」とし,

  「地面に塗られた線によって定められる場合,境界縁はその線のコース側の縁となり,その(帯状の)線自体はアウトオブバウンズである(定義:アウトオブバウンズ)。」としています。

  「止まっている球全体がコースの境界の縁の外にある場合にのみ,その球はアウトオブバウンズとなる(18.2a ⑵ )。」と明解に規定しております。

  ところが,ペナルティーエリアについて規則は「地面上に塗った線で定める場合,そのペナルティーエリアの縁は,その線の外側(コース側)の縁となり,線自体はそのペナルティーエリア内である。」と規定しております(定義:ペナルティーエリア)。そして規則17.1aは,球の一部がペナルティーエリアの縁や,ペナルティーエリアの日かの部分の上にある場合,その球はペナルティーエリアにあるとしています。救済を受ける場合注意しなければならない点です。

 

4 以上のとおり,アウトオブバウンズや各コースエリアの境界の縁は線ですから,当然球の一部が各エリアの両方に掛かっている場合が生じます。

  規則は,「球の一部がジェネラルエリアと特定のコースエリアの両方にある場合…………… 。」さらに,「球の一部が2つの特定のコースエリア(の両方)にある場合………… 。」と規定しております(2.2c)。

  この「両方にある場合」というのは,平易で且つ適切と思いますが次のような問題があります。

  球が地面にある場合は上から見て,あるいは,球が木の上にあるような場合は横から見ただけで、いずれのコースエリアにあるか,あるいは2つのコースエリアの両方に掛かっているかを判断して良いのでしょうか。

球は地面に置いた場合,地面との接点は球の直径より通常少ない面積となります。球が両方にある場合の頻度が高いジェネラルエリアと特定のコースエリアの境界の縁は,地面の上方と,地面の下方の両方に及ぶか否かということを問題にしなくて良いのでしょうか。

 

5 以上の問題をさて置けば,規則は球の所在について明解に規定しております。

 ⑴ 球の一部がジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアの「両方にある場合」は,その球は特定のコースエリアにあるものとして扱うということです(2.2c)

 ⑵ さらに球の一部が2つの特定のコースエリアの「両方にある場合」は,その球は次の順番で特定のコースエリアにあるものとして扱うということです(2.2c)。

 ペナルティーエリアとバンカーは,ペナルティーエリアにあるものとして扱う。

② ペナルティーエリアとパッティンググリーンは,ペナルティーエリアにあるものとして扱う。

  バンカーとパッティンググリーンは,バンカーにあるものとして扱う

  お気づきと思いますが,2.2cは,「球の一部がジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアのいずれかと」と規定しているにもかかわらず,ティーイングエリアがありません。

  規則は,ティーイングエリアとジェネラルエリアの両方に球がある場合は有り得るがティーイングエリアとペナルティーエリアなどの両方に球がある場合は通常有り得ないと考えて省いたのでしょうか。しかし,通常有り得なくても物理的にあり得る以上,読者はなぜティーイングエリアがないのか混乱します。R&A,USGAは余計なお世話をしてくれたのではないでしょうか。

  注意しなければならないのは,以上の規則は,球がアウトオブバウンズか,あるいは定義されたコースエリアのいずれにあるかということを明解にしただけということです。つまり,「球は常に1つのコースエリアにだけあるものとして扱う:(規則2.2c)」としているために,アウトオブバウンズや各コースエリアの境界の縁という観点から,球の所在を明確にしただけなのです。

 6 コースを構成する5つのコースエリアは,ジェネラルエリアと4つ特定のコースエリアがあるとし(2.2a),「特定の規則はジェネラルエリア以外の4つのコースエリアに特別に適用する:」としています(2.2b)。

4つ特定のコースエリアにどのような特定の規則が適用されるかというと,

   ・ティーイングエリアは,規則6.2

   ・ペナルティーエリアは,規則17

   ・バンカーは,規則12

   ・パッティンググリーンは,規則13

と規定されています(2.2b)。

  ここで注意しなければならないのは,「特定の規則は,4つのコースエリアに特別に適用する(2.2b)。」という文言です。これを不用意に読むと,前記2.2cは,「球があるコースエリアの決定」として明確にしているのですから,例えば,球が4つのコースエリアの内パッティンググリーンにあれば,当然規則13の認める,球をマークする,拾い上げる,ふくことなどが全て出来ると思います。しかし,それは大間違いなのです。

  球が,4つの特定のコースエリアにあるか否かと,4つの特定のコースエリアにおいて特定の規則が適用出来るか否かとは全く要件が違うのです。

 

7 例をあげてみましょう。

  規則13.1aは,次のとおり規定しています。

次の場合,球はパッティンググリーン上にある:

   ・球の一部がパッティンググリーンに触れている,または,

   ・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。

   ・球の一部がパッティンググリーン上とほかのコースエリアの両方にある場合は2.2c参照。

とあります。よく見てください「次の場合,球はパッティンググリーン上にある:」と規定されているのです。すなわち,規則は,特定のコースエリアであるパッティンググリーンに球があるか否かと,パッティンググリーン上に球があるか否かを峻別しているのです。球は特定のコースエリアのパッティンググリーンにあるが,パッティンググリーン上にはないという状況がたくさんあるのです。

  規則13の認める,球をマークする,拾い上げる,ふくことができるのは,特定のコースエリアであるパッティンググリーンに球があるだけでは適用はなく,球がパッティンググリーン上にある場合にのみ適用されるのです。

 

8 規則13.1a の1段目,2段目の要件については後日検討します。ここでは,3段目についてのみ,皆様に検討をお願いするところです。私は明らかな誤りと思っております。是非コメントを頂きたいと思います。

3段目の「・球の一部がパッティンググリーン上と他のコースエリアの両方にある場合は,規則2.2c参照。」との規定についての疑問です。規則2.2cは,1段目が「・球の一部がジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアのいずれかと両方にある場合,」。2段目が,「・球の一部が2つの特定のコースエリアにある場合,」について規定しています。つまり,「球は常に1つのコースエリアにだけあるものとして扱う:(規則2.2c)」としているために,球が5つのコースエリアの何処にあるかを確定させる規則です。

ところが,規則13.1a の3段目の規定は,「球の一部がパッティンググリーンと他のコースエリアの両方にある場合は,規則2.2 c参照。」としているのです。

If part of the ball is both on the putting green and in another area of the course, see Rule 2.2c. 〉

既に,規則13.1a の1段目,2段目の要件に該当するから,当然球は「パッティンググリーン上にある」と判断されているのです。そうであるなら,もう規則2.2cを参照する意味も必要も全くありません。英語版が間違っていて,翻訳者がそれに気付いていないものと思います。

3段目の規定はなくても当然の解釈です。多分親切のつもりで,球の一部がコースエリアとしてのパッティンググリーンにある場合,例えば,フリンジ上に球が接地しているが,パッティンググリーンには触れておらず,球がオーバーハングしている場合を想定してください。

   「球の一部がパッティンググリーンと,ほかのコースエリア(フリンジはジェネラルエリア)の両方にある場合に該当する。従って,その球(全部)が,コースエリアとしてのパッティンググリーンにあることを規則2.2cを参照して先に確定し,それから,その球がパッティンググリーン上にあるか否か判断しなさい。」

と規定すべきところを間違えたものと思います。

もし,規則が誤りであるなら,コースエリアとしてのパッティンググリーンとパッティンググリーン上という「上」が付くか否かで全く意味の違う用語としたことに誤りの原因があるとしか思えません。

事実,規則12.1には,「球の一部がバンカーと別のコースエリアの両方にある場合は規則2.2c参照。」と規定され,規則17.1aには,「球の一部がペナルティーエリアと別のコースエリアの両方にある場合は規則2.2c参照。」と正しく規定されています。

 

9 球がパッティンググリーン上にあるか否かだけでなく,球がバンカー内にあるか否かにおいても問題となります。さらに,球が修理地にあるかについても検討の余地があります。この規定方法は旧ゴルフ規則でもほぼ同じでした。改善することが出来なかったのは残念です。

R&A,USGAは,2017年3月1日「規則の近代化への新しい取り組みの概略:として,

・すべてのゴルファーによってより容易に理解され,適用され,

・より一貫性があり,シンプルで、公正なものであり,

・より直観的で学習し易いコンセプト,手続き,結果を用い,

・プレーヤーに「罰の罠」を作り出すかもしれない不必要なコンセプトや例外を避け

  と発表していました。

  以上のような規則制定の手法,すなわち,類似し,且つ混乱し易い用語を使用したことは,果たして規則の近代化への新しい取り組みの使命を全うしたといえるでしょうか。

  私は,最初のテーマとして,この問題を順次検討していきたいと思います。

   以上

 

パッティンググリーン上に球があると

コースエリアのパッティンググリーンに球がある

2019年1月1日

訂正2024年1月11日

 規則は,定義された5つのコースエリアがあるとし(2.2),ジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアを明確に定義しました。今回は,コースエリアのパッティンググリーンに球がある場合と,パッティンググリーン上に球がある場合について検討したいと思います。

 

1 旧ゴルフ規則は,「球が一部でもパッティンググリーンに触れているときは,その球はパッティンググリーン上にある球である(旧ゴルフ規則定義45)。」としておりました。しかし,区域としてのパッティンググリーンについて詳細な定義はなく,更にその上下の限界については規定すらありませんした。

新しい規則は,パッティンググリーンについて詳細に定義し(定義:パッティンググリーン),コースエリアとしてのパッティンググリーンに球がある場合について明確に規定しました(2.2c)。

 

2 まず,規則2.2cが規定する,球がコースエリアとしてのパッティンググリーンにある場合について検討してみます。

 

 ⑴ 「パッティンググリーンの縁は特別に作られたエリアが始まると見て分かる所によって定める(定義:パッティンググリーン)。」とされています。

通常パッティンググリーンの縁には,フリンジといわれるパッティンググリーン面より長めで帯状に刈った芝があります。このフリンジは,コースエリアとしてはジェネラルエリアと解釈すべきでしょう。

 

 ⑵ 規則2.2cは,球があるコースエリアの決定として,

   「球は常に1つのコースエリアにだけあるものとして扱う:」とし,

   「球の一部がジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアのいずれかと両方にある場合,その球はその特定のコースエリアにあるものとして扱う。」とし,

   「球の一部が2つの特定のコースエリアにある場合,球は次の順番で最初となる特定のエリアにあるものとして扱う:ペナルティエリア,バンカー,パッティンググリーン。」と規定しております。

  各エリアを区切るのは線です。したがって,球が地面にある場合は上から見て,球が木の上にあるような場合は横から見て、いずれのエリアにあるか,あるいは2つのエリアの両方に掛かっているかを判断すべきと言っているのではないでしょうか。この「両方にある場合」という文言を平易,且つ適切に解釈すれば当然と思います。

  以上の結論は,特定のコースエリアであるパッティンググリーンの縁は,地面の下方は兎も角,少なくとも上方に及ぶということを意味していると思います。

球は地面に置いた場合,通常地面との接点は球の直径より少ない面積となります。球がフリンジに乗っていて,パッティンググリーン面にオーバーハングしているとか,その逆の場合がしばしばあります。いずれも球の一部がジェネラルエリアであるフリンジと特定のコースエリアであるパッティンググリーンの両方にある場合ということになり,その球は特定のコースエリアであるパッティンググリーンにあるものとして扱うことになります。

 

3 次に,規則13.1aが規定する球がパッティンググリーン上にある場合について検討します。

 

 ⑴ なぜ,規則は球が特定のコースエリアであるパッティンググリーンにあるだけの場合と,球がパッティンググリーン上にある場合の2つの状況を規定する必要があったのか考えてみます。この手法は旧ゴルフ規則も同じでした。

   新しい規則は,特定のコースエリアとしてのパッティンググリーンを明確に定義し,且つそのエリアに球の一部があることを前提にして,次に球がパッティンググリーン上にあるか否かを判断することにしたのだと思います。

   そして,プレーヤーがプレーしているホールのパッティンググリーンにおいては,規則13を特別に適用するとし(2.2b),球がパッティンググリーン上にある場合に出来ること,またはパッティンググリーン上で認められる改善行為など,パッティンググリーン上とは何を意味するのか,その状況を明確に導き出すために,特定のコースエリアであるパッティンググリーンという概念を明確にしたものと思います。

 

 ⑵ 規則13.1aは,「球がパッティンググリーン上にある場合〈When Ball Is on Putting Green〉」とし,「次の場合,球はパッティンググリーン上にある:〈 A ball is on the putting green when any part of the ball:〉」としています。

   「・球の一部がパッティンググリーンに触れている。または,」

   「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。」

  と規定しています。

   1段目は,旧ゴルフ規則定義45に規定された文言と同じです。2段目は,新しく規定されたものです。

「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって」とは,通常球の一部が,球を上から見てパッティンググリーンとジェネラルエリアであるフリンジの両方に掛かっている場合のことでしょう。

「物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。」とは,球の一部が特定のコースエリアであるパッティンググリーンにあれば,木の葉や飛んできた菓子袋の上などに乗っていて,球がパッティンググリーンに直接触れていなくても,パッティンググリーンに触れていると看做すということではないでしょうか。

 

 ⑶ 旧ゴルフ規則でも,パッティンググリーンに限らず球が菓子袋の中や上などにあれば,動かせる障害物として取り除く事が出来ました。しかし,球がパッティンググリーンで桑の葉の上に乗っていた場合,球はパッティンググリーンに直接触れていないし,桑の葉はルースインペディメントですから,何ら救済はなく教条的に言えばそのままパッティングすべきということになります。しかし,旧ゴルフ規則においてもそうは解釈していませんでした。2段目の規則は,念のためそれを明確にしたということでしょう。

 

 ⑷ 分かり易く説明すると,2段目の規則は次のことを明確にしています。

 

  ① 球の一部が,パッティンググリーンに触れていればパッティンググリーン上の球である。

   (球がパッティンググリーンの真ん中にあろうが,フリンジに寄りかかっていようが,球が直接パッティンググリーンに触れている。)

 

  ② 球全部がパッティンググリーンにあり,且つ球が落ち葉や菓子袋の上にあって,球がパッティンググリーンに直接触れていなくても,パッティンググリーン上の球である。

   (菓子袋は,動かせる障害物として救済を受け(15.2 a ⑶),もしくは,13.1aによって,菓子袋を取り除けば,球が直接パッティンググリーンに触れる。)

   (落ち葉は,13.1aによって,落ち葉を取り除けば,球が直接パッティンググリーンに触れる。)

 

  ③ 球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあり,且つ球が落ち葉や菓子袋の上にあって,球がパッティンググリーンに直接触れていなくてもパッティンググリーン上の球である。

(球の一部が,パッティンググリーンの縁の内側にある場合でも,球の最下部が落ち葉や菓子袋を挟んで,フリンジの上にある場合もあります。つまり,パッティンググリーンに球がオーバーハングしている場合です。その場合,落ち葉や菓子袋を取り除いてドロップする箇所は,球があった真下(15.2 a ⑶)ですから球の最下部はフリンジ上となり,球はパッティンググリーンに直接触れず,パッティンググリーンにオーバーハングしている状態です。つまり,菓子袋や落ち葉がなかったなら,その状態では,球はパッティンググリーンにあるがパッティンググリーン上の球ではないのです。それなのにパッティンググリーン上の球であると看做しているのは,菓子袋なら動かせる障害物として救済を受けられますが,桑の葉はルースインペディメントですから動かせる障害物として拾い上げることが出来ず,桑の葉の上の球をそのままパッティングしなければならないということになります。そこで,球がパッティンググリーンにオーバーハングしている場合に限り,ルースインペディメントでも取り除けるようにしたのだと思います。)

 

 ⑸ 規則13.1aの2段目の規定が複雑なのは,状況が同じだからと言って全く救済方法が異なる,動かせる障害物とルースインペディメントを一文で規定したことに無理があるのです。

 

4 コースを構成する5つのコースエリアは,ジェネラルエリアと4つ特定のコースエリアがあるとし(2.2a),「特定の規則はジェネラルエリア以外の4つのコースエリアに特別に適用する:」としています(2.2b)。

4つ特定のコースエリアにどのような特定の規則が適用されるかというと,

   ・ティーイングエリアは,規則6.2

   ・ペナルティーエリアは,規則17

   ・バンカーは,規則12

   ・パッティンググリーンは,規則13

と規定されています(2.2b)。

  ここで注意しなければならないのは,「特定の規則は,4つのコースエリアに特別に適用する(2.2b)。」という文言です。これを不用意に読むと,前記2.2cは,「球があるコースエリアの決定」として明確にしているのですから,例えば,球が4つのコースエリアの内パッティンググリーンにあれば,当然規則13の認める,球をマークする,拾い上げる,ふくことなどが全て出来ると思います。しかし,それは大間違いなのです。

  球が,4つの特定のコースエリアにあるか否かと,4つの特定のコースエリアにおいて特定の規則が適用出来るか否かとは全く要件が違うのです。

 

5 例をあげてみましょう。

  規則13.1aは,次のとおり規定しています。

次の場合,球はパッティンググリーン上にある:

   ・球の一部がパッティンググリーンに触れている,または,

   ・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。

   ・球の一部がパッティンググリーン上とほかのコースエリアの両方にある場合は2.2c参照。

とあります。よく見てください「次の場合,球はパッティンググリーン上にある:」と規定されているのです。すなわち,規則は,特定のコースエリアであるパッティンググリーンに球があるか否かと,パッティンググリーン上に球があるか否かを峻別しているのです。球は特定のコースエリアのパッティンググリーンにあるが,パッティンググリーン上にはないという状況がたくさんあるのです。

  規則13の認める,球をマークする,拾い上げる,ふくことができるのは,特定のコースエリアであるパッティンググリーンに球があるだけでは適用はなく,球がパッティンググリーン上にある場合にのみ適用されるのです。

 

追記 私は最近になり,球は「パッティンググリーン上にある」というのは,球の拾い上げが出来るということだけで,ルースインペディメンとを取り除いた後球をリプレースすべき箇所は,球のあった真下ではないか(フリンジであったらドロップとなる)と考えています。

 

6 球がパッティンググリーン上にあるか否かだけでなく,球がバンカー内にあるか否かにおいても問題となります。さらに,球が修理地にあるかについても検討の余地があります。この規定方法は旧ゴルフ規則でもほぼ同じでした。改善することが出来なかったのは残念です。

R&A,USGAは,2017年3月1日「規則の近代化への新しい取り組みの概略:として,

・すべてのゴルファーによってより容易に理解され,適用され,

・より一貫性があり,シンプルで、公正なものであり,

・より直観的で学習し易いコンセプト,手続き,結果を用い,

・プレーヤーに「罰の罠」を作り出すかもしれない不必要なコンセプトや例外を避け

  と発表していました。

  以上のような規則制定の手法,すなわち,類似し,且つ混乱し易い用語を使用したことは,果たして規則の近代化への新しい取り組みの使命を全うしたといえるでしょうか。

  私は,最初のテーマとして,この問題を順次検討していきたいと思います。

以上

 

 

目的外グリーンから救済を受けなければならない

2019年1月8日

1 規則13.1fの⑴の全文を次に引用します。

 ⑴ 目的外グリーンによる障害の意味。この規則に基づく障害は次の場合に存在する:

  ・ プレーヤーの球の一部が目的外グリーンに触れている場合,またはその球の一部が目的外グリーンの縁の内側にあって,物(例えば,ルースインペディメンとや障害物)の上や中にある。 または,

  ・ 目的外グリーンがプレーヤーの意図するスタンスや意図するスイング区域の物理的な障害となる場合。

    後段の要件は,球の所在は関係なく,例えばスタンスだけが目的外グリーンに掛かる場合などでも該当します。従って,稀有な例ですが,球がバンカー内にあり,スタンスが目的外グリーンに乗る場合もあり得ます。

 

2 規則13.1fの⑴の前段は,球が目的外グリーン上にあれば,プレーヤーが障害と思うか否かは関係なく,この規則に基づく障害が存在すると看做しているのです。

  問題は,規則13.1fの⑴の後段についてです。

  目的外グリーンの存在が,プレーヤーの意図するスタンスをとった場合,あるいはプレーヤーの意図する方法でスイングをした場合,当該プレーヤーにとって物理的な障害が発生する場合は,目的外グリーンによる障害が存在するというのです。

  規則13.1fの⑴の前段は,球が何処にあるかという客観的な事実です。

  ところが,規則13.1fの⑴の後段は,なんとなく曖昧です。当該プレーヤーがどう思うかは関係なく障害となるという意味ですが,プレーヤーの主観的判断を求めているようにも思えるのです。

 

3 R&A・USGAの示す2019年版ゴルフ規則109頁,図13.1f:目的外グリーンからの罰なしの救済のイラストを見てください。

  イラストの下にある解説文に「球Aの完全な救済のニヤレストポイントはP1となり,元の球が止まった同じコースエリアでなければならない(この場合,ジェネラルエリア)。」とあります。

  後段は,前段より「または,」で接続しているので,球の所在は関係なく,目的外グリーンがプレーヤーの意図するスタンスや意図するスイング区域に入っていれば障害が存在すると看做しているのです。

  そのことは,規則13.1fの末尾に「委員会の措置,セクション8;ローカルルールひな形D-3(委員会は意図するスタンス区域が障害となるだけでは目的外グリーンからの救済を認めないローカルルールを採用することができる)参照。」とあることからも間違いなさそうです。

 

4 そもそも,障害という以上,何か不都合な事象のことです。プレーヤーにとって球が目的外グリーン上にあっても,通常,球のライにもスタンスにも不都合なことなど何もなく,プレーに障害などありません。この規則の趣旨は,ジェネラルエリアである目的外グリーン(定義:目的外外グリーン)において,ジェネラルエリアにおいて認められるストロークを許すと目的外グリーンに対し,重大な被害をもたらすからではないでしょうか。

  ゴルフ規則は従前から,ある事象が生じた場合,何々による障害が生じたとし,いわゆる看做し規定の形式をとっていました。ある事象の存在をもって個々のプレーヤーにとって障害か否かを問わず,障害が生じたと看做し,場合によって救済を受けるか否かをプレーヤーの任意としていたのです。

  例えば,規則16.1aの⑴は,「異常なコース状態による障害の意味。次の場合,障害が生じている:」としています。しかし,規則16.1aの⑴の異常なコース状態による障害と規則13.1fの⑴の目的外グリーンによる障害とは決定的に規定の意味とその効果が違います。

  異常なコース状態による障害があっても,プレーヤーが不都合はないと判断すれば,救済を受ける義務などないのです。ところが,目的外グリーンによる障害が生じたら救済を受けないと罰打が課されるのです。規則はそのことを全く考慮していないのです。例えば,目的外グリーンに菓子袋が落ちていてその上に球が止まった場合,球の一部も目的外グリーンに触れていませんが,「その球の一部が目的外グリーンの縁の内側にあって,物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。」の規定により障害が発生しているため,完全な救済のニヤレストポイントからの救済を受けなければならないのです。

 

5 旧ゴルフ規則は,25-3目的外のパッティンググリーンのa.障害の規定で,「球が目的外のパッティンググリーン上にある場合,目的外のパッティンググリーンによる障害が生じたという。プレーヤーのスタンスや意図するスイングの区域が妨げられても,それだけでは規則25-3にいう障害には当たらない。」と規定していました。旧ゴルフ規則は,新しい規則の委員会の措置,セクション8;ローカルルールひな形D-3が例示しているローカルルールをゴルフ規則にしていたのです。

  新しい規則は,旧ゴルフ規則が,それだけでは規則25-3にいう障害には当たらないとした事象を,今度は障害になるとしたのです。

それならば,目的外グリーンがプレーヤーの意図するスタンスや意図するスイング区域に掛かるという客観的事象があれば,物理的な障害が発生したと看做して,二義を許さない規定にしなければならないのです。

  新ゴルフ規則は,「完全な救済のニヤレストポイント」と改訂し定義しました。旧ゴルフ規則が「救済のニヤレストポイント」の定義に,「・・・障害がなくなる所。」としていたのを改め,更に「完全な」を頭にかぶせることにより,如何なる障害もなくなる所を意味しようとしたのではないでしょうか。

しかし,目的外グリーンが,プレーヤーの意図するスタンスや意図するスイング区域に入っていれば障害が存在すると看做すのだという明文がないのに,そう解釈しろというのはあまりにも強引で,言葉を無視しています。

 

 規則13.1fの規定は,プレーヤーにとっては,障害でもなんでもない事象が生じたというだけです。その実態はプレーの禁止です。障害だの救済だのという文言は,伝統的に使用していた為に残したものと思いますが,実態と大きく乖離した極めて不適切な用語なのです。よって,スイングプレーンが目的外グリーンの上空に掛かっても救済を受けなければならないと解釈しなければならないのです。救済のニヤレストポイントは,「完全な」救済のニヤレストポイントでなければならないからです。

  旧ゴルフ規則が,それだけでは規則25-3にいう障害には当たらないとした事象を,新しい規則は何の説明もなく今度は障害になるとしたのです。改正されても規則の連続性を全く無視することは出来ません。規則を改正した委員の考えが及んでいないことも然ることながら,R&Aは,このような改正について,世界中のゴルファーが従っているのですから,誠実にその理由について説明すべきです。そもそも「物理的な障害」という一般的な概念にゴルフ規則だけに通用する意味を持たせることが問題なので,別の用語を使用すべきです。

   以上

 

ストロークと距離の救済を受ける場合

2019年1月14日

1プレーヤーが任意でストロークと距離の救済を受ける場合

 

  規則18.1は,「ストロークと距離の罰に基づく救済はいつでも認められる」と規定し,「いつでもプレーヤーは,1罰打を加え,直前のストロークが行われた場所から元の球か別の球をプレーすることによって,ストロークと距離の救済を受ける事が出来る。」と説明しております。

  「ストロークと距離の罰の救済」と言われても即座に理解できません。ここで言うストロークの罰とは,1罰打を加算するということです。そして距離の罰とは,直前のストロークをしたところから,球が飛んで行って止まったところまでの距離のことで,それを無効とするということです。

  このストロークと距離の救済(Stroke and Distance)を受けるについて,いくつかの注意書が続いています。具体的な例を挙げ,重要だがうっかりすると気付かない事項だけを取り上げたいと思います。

 

⑴   いつでもの意味

  いつでもといっても,あるホールにおいて,球が一度もインプレーになっていない場合は,Stroke and Distanceは認められません。規則6.aは,ティーイングエリアの外からストロークした場合,ホールをスタートしたことにはなるが,球は一度もインプレーになっていないとしています。この場合は,規則6.1b ⑵に従って誤りを訂正しなければなりません(ストロークプレーに限る)。

  球が何処にあっても,球の所在確認も必要なく,球筋や球の位置が気に入らなくても救済が受けられます。Stroke and Distanceは,他の救済処置が認められていてもその選択をしないで,いつでもStroke and Distanceを選択できるということです。

  これも誤解されやすいことですが,「直前のストロークが行われた場所から次のストロークを行うこと」とされている直前のストロークの1打は当然ストローク数に算入します。後は「1罰打のもとに直前のストロークが行われた場所から次のストロークを行うこと」ができるということです。

  これは私が経験したことですが,同伴プレーヤーが,残り150ヤード程のストロークで,グリーン手前の池に入れてしまったのが納得いかなかったのか,ここでもう一回打ちますと言って,見事グリーンに乗せました。後でその同伴プレーヤーの申告打数がおかしいと気付いたので,打数をどのように計算をしたか伺ったのです。案の定,その同伴プレーヤーは,池に入れた球についてペナルティエリアの救済を受けるときの1罰打を加算して、その上で1罰打のもとに直前のストロークが行われた場所から次のストロークを加算していました。Stroke and Distanceは,直前のストロークの1打は,当然ストローク数に算入しますが,その球がペナルティエリアに入ろうが,アウトオブバウンズになろうが,紛失しようがその罰打はないことに注意してください。Stroke and Distanceを選択したこと自体に1罰打が付いて次のストロークを行うだけです。

  ゴルフ規則は,救済処置がとれる場合,必ず第1にStroke and Distanceの処置がとれると記載しています。しかし,Stroke and Distanceは,当該救済処置,例えば球がペナルティーエリアに入ったから,あるいは球がO.B.や紛失になったから生じた権利(O.B.と紛失は義務となる。本稿2参照)ではなく,前記のとおり何の理由もいらないのです。したがって,ペナルティーエリアの救済を受けているのではありませんから,その罰打はありません。その根拠は規則18.1に「ストロークと距離の罰に基づく救済はいつでも認められる」の規定にあるのです。規則は恰もある救済を受けられる事実が生じた場合,第1にStroke and Distanceの処置がとれるかのように規定していますが,救済を受けられる事実の発生とは何の関係もないことです。R&Aは親切のつもりで記載しているのでしょうが,誠にもってゴルファーを混乱させる規定です。

 

⑵ 直前のストロークが行われた場所からの意味

  新ゴルフ規則は,必要な文言の違いは別として,「直前のストロークが行われた場所から次のストロークを行うこと(規則14.6,同18.1)。」と統一しました。

  直前のストロークが行われた場所から球をストロークするといっても,これがかなり面倒臭いのです。球をストロークするには,まず球をインプレーにする処置が必要です。

  規則18.1は,「直前のストロークが行われた場所から元の球か別の球をプレーすること」と言っているだけで,球をインプレーにする処置については,「規則14.6参照」としか規定しておりません。球をインプレーにしなければならない場合は,Stroke and Distanceだけではないので,規則の構成上別の条項になるのは致し方のないことですが十分な注意が必要です。

  規則は,「図14.6: 直前のストロークを行った場所から次のストロークを行う」としてイラストで紹介しています。すなわち,ドロップとプレースの処置です。

  主な改正点は,ジェネラルエリア,バンカー,ペナルティーエリアのドロップ箇所について,その直前のストロークを行った箇所を基点とし,1クラブレングスと明確にしました。旧ゴルフ規則が使用していた「特定の箇所にできるだけ近い所」という曖昧な概念を廃止し,「直前のストロークが行われた箇所が分からない場合は推定しなければならない。」としました。基点から1クラブレングス以内としたこと,推定すること,いずれも極めて妥当な改正です。

  但し,これは球をドロップする場合の規定で,球をリプレースする場合は,「球は元の箇所にリプレースしなければならない(14.2 c)。」,「元のライに最も近く,最も似ていて(14.2 d⑵」などとされているので気を付けなければなりません。これについては,「規則14.6」の検討を後日致します。

  ここで,注意してほしいことは,パー3などでよく見かけますが,球がペナルティーエリアに入った場合,もう一回ティーイングエリアで打ちますと宣言するプレーヤーがおります。これは,元の球がペナルティーエリアに入った場合の規則17.1d⑵の救済を受けているものではないことがほとんどです。

  元の球がそのペナルティーエリアの縁を最後に横切った地点とホールを結ぶ後方線上が,たまたまティーイングエリア上になることもあるかもしれません。その場合は規則17.1d⑵の救済ですが,ほとんどの場合後方線上は,ティーイングエリアを大きく外れるでしょう。それでも,もう一回ティーイングエリアで打ちますと言えるのは,17.1d⑵の後方線上の救済ではなく,規則14.6aのStroke and Distanceの救済処置を選択しているのです。救済の方法は似ていてしかも罰打も同じですが,救済を受ける根拠条文は全く違います。

  更に注意すべきことは,通常ストロークと距離の救済を受ける場合,プレーヤーは,一度インプレーとなった球を元の場所にドロップして,再度インプレーにしなければなりません。ところが,直前のストロークをティーイングエリアから行った場合に限り,球を元の場所にドロップしてインプレーにする必要がないのです。

  即ち,ゴルフ規則6.2aは,規則6.2bの⑴から⑹までの規則は,プレーヤーにティーイングエリアからプレーすることを認める場合は,何時でも適用されるとしているからです。例えば,ティーイングエリア内であれば元の場所でなくてもよく,ティーアップが出来(6.2bの⑵),ティーイングエリアを改善して良く(6.2bの⑶),更に球が一度インプレーになったら,アウトオブプレーになった球をドロップ・プレースした瞬間に球はインプレーになるのが通常ですが,ティーイングエリアの規則が適用されるので,ストロークをするまでその球はインプレーとはならない(6.2bの⑸)としているのです。

  ティーイングエリア以外で受けるストロークと距離の救済とは,その方法と効果が大きく異なっているのです。

 

2 プレーヤーが義務としてストロークと距離の救済を受けなければならない場合(紛失とOB.の場合)

 

  規則18.2は,球が紛失またはアウトオブバウンズとなった場合,「ストロークと距離の救済を受けなければならない」と規定しました。

  旧ゴルフ規則が,27-1 b. c. と紛失・アウトオブバウンズの処置をそれぞれ規定していたものを「ストロークと距離の救済」の規定を準用して,その処置を義務としたものです。

  ストロークと距離の救済は,歴史的には球が紛失した場合の処置として規定されていたようです。公正で極めて汎用性の高い規則であるため,それをさらに進化させ,適用する要件を大幅に緩め,「ストロークと距離の救済」を独立した規則としたものと思います。

  しかしながら,「ストロークと距離の救済」の処置を紛失球とアウトオブバウンズに準用し,その処置を義務とすれば明解になるのに,歴史や伝統に過度に縛られたゴルフ規則は,大昔からあった規定を削除することが出来なかったのです。そのことが,旧ゴルフ規則27-1 a. b. c. 更に27-2.の暫定球の相互関係の理解を困難にしていたのです。

 

3 暫定球とストロークと距離の救済の関係

 

  規則18.3は,暫定球の場合,「ストロークと距離の罰に基づき暫定的に別の球をプレーすることができる。」と規定しました。暫定球が認められる要件があっても,暫定球としないでStroke and Distanceの選択をするのはプレーヤーの任意です。

  暫定球が認められる要件で,旧ゴルフ規則と違うのは,「球がペナルティーエリアで紛失したかもしれないが,コース上の他のどこかで紛失している可能性もある。」場合にも暫定球を認めることにしたことです。ペナルティーエリアがかなり先にある場合,紛失場所の推定は困難ですから妥当な改正であったと思います。   以上

 

Stroke数はスコアに入れないの規定について

2019年1月15日

 

1 旧ゴルフ規則は,ストローク数や罰打について,カウントすべきか否か,その処理を次のように規定しておりました。

 ⑴ *Stroke数と罰打の無視〈disregarded〉

① 処置について疑問があり2つの球をプレー(3-3b.注3:)

② 誤所からのプレーで第2の球をプレー(20-7c.注2:)

③ 暫定球を放棄した場合(27-2c.)

 

 ⑵ *Stroke数はスコアに入れない〈do not count〉

④ Teeing G.の外でプレー(11-4b.)

⑤ 誤球(15-3b.)

 

 ⑶ *罰の追加はない〈no additional〉

⑥18の末尾 規則18の違反の罰の,なお書

⑦20-7c.注3:

 

 ⑷ *Strokeの取消〈cancelled〉

⑧球の分割(5-3)

⑨旗竿の付添い(17-2末尾なお書)

⑩P.G.上での球の衝突(19-1b.)

 

  ストローク数や罰打の処理は全く同じなのに,以上のとおり,10箇所にわたり,四つの文言を使い分けて規定していたのです。

  新しいゴルフ規則は,前記①~⑩のすべてを次のとおり「カウントしない。」〈do not count〉と文言を統一しました。

 

  番号   ゴルフ規則の番号   規則書の頁     備考

  ①   20.1c⑷      188    カウントしない

  ②   14.7b⑶      134       〃

  ③   18.3c⑶      176       〃

  ④   6.1b⑵       55        〃

  ⑤   6.3c⑴       61        〃

  ⑥   9.4b末尾 1.3c⑷ 82と16     〃

  ⑦  14.7b⑶       134       〃

  ⑧  4.2b         36        〃

  ⑨              110        削除

  ⑩  11.1b      95     カウントしない

 

 Stroke and Distanceの規定の変更とdo not countに統一した二つの改正について

 ⑴ 球が紛失した場合。球がアウトオブバウンズとなった場合,暫定球をプレーする場合の処置は,ストロークと距離の罰に基づく処置と全く同じです。異なるのは,その処置を,プレーヤーの任意の選択か,プレーヤーの義務か,一定の要件がある場合プレーヤーが任意に選択できるかだけです。

  ある事項について定められている規定を,それとは異なるが,本質的には類似する他の事項について,必要な変更を加えた上で働かせようとする場合には,条文の体裁,読む人の理解のし易さを考慮し,新しい規則のように準用するのが規則制定のイロハです。

  今回の改正でやっと以上のような構成で規定されました。

  旧ゴルフ規則は,規則27-1 a. b. c. 更に27-2.は,ストロークと距離の罰に基づく処置,球の紛失,アウトオブバウンズ,暫定球の項目に,同じような規定を羅列していたのです。

 

 ⑵ 更に,旧ゴルフ規則は,ストローク数や罰打について,カウントすべきか無視すべきか,それを処理する文言を,

 * Stroke数と罰打の無視〈disregarded〉。

 * Stroke数はスコアに入れない〈do not count〉

 * 罰の追加はない〈no additional〉

 * Strokeの取消〈cancelled〉

 と使い分けていたのです。それを,新しい規則は上記のとおり,「カウントしない。〈do not count〉」とすべて統一しました。旧ゴルフ規則において,文言を使い分けたことは,多分同じ用語を連続して使うことを嫌う英語圏の文化に従ったものと思います。しかし,ゴルフ規則は世界中の文化圏のゴルファーが従わなければならない規則です。R&Aは世界中のゴルファーを混乱させていたことにもっと早く気付くべきでした。

 

 ⑶ R&Aという組織は,ゴルフ規則の制定者という権利を振り回し,50年,いや100年近くも,世界中に数千万人いるゴルファーを翻弄し続けた,極めて悪質な小人達の集団であったことを,今回の規則改正により計らずも証明してします。

   R&Aは,歴史的背景だの伝統だのとこじつけて,独自の観念でゴルフ規則を捏ねくりまわし,一般のゴルファーどころか,プロゴルファー,プロキャディー,レフリーにすら理解不能となるまで破綻させたのです。そして,R&Aとその委員の利権に汲々とし,このゴルフ規則を了解できない者は,R&Aに近寄るなとメッセージを出し続けていたのです。

   R&Aだけでなく,世界各国のゴルフ団体もその体質は全く同じです。R&A版のゴルフ規則を翻訳するだけで,ほとんどゴルフ規則の内容に立ち入った提言・要求・抗議などをR&Aにしていなかったのです。この怠慢の責任は重大です。   以上

 

動いている球が偶然に人,動物,外的影響に当たる(11.1a)

2019年2月2日

2023年11月9日改正

1 規則11.1aは,「動いているプレーヤーの球が偶然に人,動物,外的影響に当たった場合」を規定しています。球が列記したものに当たっただけの場合を規定し,球が列記した物の上に止まった場合とパッティンググリーンからプレーされた場合等についての球の処置は,規則11.2b⑴と11.2b⑵に規定されています。

 

2 規則11.1aの「動いている球が偶然に人や外的影響に当たる」の規定は,旧ゴルフ規則の定義48ラブオブザグリーンと,旧ゴルフ規則19-1のa. 及びb. 19-5のa. 及びb.の規定に対応する規定です。

  以上の旧ゴルフ規則の規定は,局外者を,①同伴競技者等の局外者,②局外者である球,③そして,その余の全部の局外者の三種類に分類し,その上に,動いている局外者,生きている局外者について特別に規定し,挙句の果てに動いている競技者の球が,パッティンググリーン上でストロークされたのか,それ以外の所でストロークされたのか。更に,パッティンググリーン上で球が衝突した場合,当てられた球が止まっていたか,動いていたか。両球が動いていた場合打順を守っていたか否かまで規定されていたのです。

  頭の良し悪しにかかわらず,その組み合わせを理解するのは不能です。私は,旧ゴルフ規則19-1,同19-5の規定が,その妥当性・合理性について,50年いや100年近くも検討されることなく,延々と引き継がれてきたことに最大の原因があると指摘しました。

更に,局外者の定義自体に理解を困難にする一因があることを指摘し,私は「風や水をなぜ局外者としないか」と主張しました。

  以上の旧ゴルフ規則の規定だけを見ても,R&Aの底意が見え見えで,この規定が理解出来ない者は,ゴルフ規則について,がたがた言うなと世界中のゴルファーを脅迫し,煙に巻こうとしていたのです。とうとうR&Aは,委員たちも理解不能に陥って,規則11.1aに落ち着いたものと思います。

  すなわち,ラブオブザグリーンと局外者という定義も説明も困難な概念を規則の中で使用することを断念し,定義からも消し去ることにしたものです。

  その結果,規則11.1aの「動いてるプレーヤーの球が偶然に人や外的影響に当たった場合」のうち,11.1aは,旧ゴルフ規則のラブオブザグリーンとパッティンググリーン上でプレーされた球が止まっている球に当たった場合に対応し,11.1bは,旧ゴルフ規則の19-1と19-5に概ね対応する規定となっています。

 

3 新しい規則は,たった2頁に要約したのですが,これで十分と思います。次にその内容を検討しましょう。規則11.1aを分解し,いくつか注意すべき点をあげると,

  *プレーヤーが何処からプレーしたかを問題にしていません。

  *偶然にということで,故意に行った場合は含みません。

  *如何なるものに当たっても,ある例外を除いてすべてのものに適用されます。

  *どのプレーヤーにも罰はありません。

 

(1)    11.1a.は,プレーヤーが何処からプレーしたかを問題にしていません。ティーインググラウンド,バンカー,パッティンググラウンド上を問いません。

 

(2)    偶然にということで,故意に行った場合は含みません。

 

(3)    如何なるものに当たっても11.1aの例外を除いて全てのものに適用されます。これについて規則は次のように規定しています。

「・このことは,球がプレーヤー,相手,他のプレーヤー,またはそのキャディーや用具に当った場合でも同じである。」

  なんとも不思議な規定です。動いているプレーヤーの球が偶然に当たる可能性のあるものは何か。「人」とありますからプレーヤー自身も当然含まれます。プレーヤー自身以外の全てのものは,外的影響以外の何物でもない気がします。とするなら,2段目の「・このことは,・・・・」以下の規定は全く無意味な規定ということになります。なぜ,注意書のようなものをわざわざ規定したのか。その理由は,外的影響の定義にあるのです。

  外的影響Outside Influence〉の定義を見てください。

プレーヤーの球,用具,コースに起きることに影響を及ぼす可能性のある次の人や物:とし,「すべての人,ただし,プレーヤー,またはそのキャディーを除く。」としているのです。

  確かに,球をストロークしたプレーヤー自身を外的影響というのはおかしいかもしれません。しかし,それは理屈の上ではそうでしょうということです。外的影響を以上のとおり定義したために,人間であればすべてを含む概念である「人」と規定しているにもかかわらず,わざわざ「・このことは,球がプレーヤー,相手,他のプレーヤー,またはそのキャディーや用具に当った場合でも同じである。」とプレーヤー自身に当たっても罰はないと注意を喚起しているのです。

  これはもう,「外的影響」などという馬鹿げた用語を選択したことが誤りであることは明白です。すなわち,「動いているプレーヤーの球が偶然に,人,動物,物,自然条件に影響された場合:」とすれば,十分なのです。

  因みに,外的影響の定義の最後に「すべての自然物,ただし自然の力を除く。」と定義しております。これも,「風や水をなぜ局外者としないか」の題目で批判したとおり,全く理屈の上でそうしているだけです。

  このような屁理屈を捏ねて得意になっているのはいいかげんにすべきです。

  なお,2度打ちに罰がなくなったことは10.1aに明確な規定がありますが,この規定からも導き出せます。

 

(4)  どのプレーヤーにも罰はありません。ここで再度注意しますが,どのプレーヤーにも罰はないとしているだけで,プレーした球についてどう処置するかは,規則11.2b⑴と11.2b⑵に規定されています。

 

4 「規則11.1a どのプレーヤーにも罰はない」の例外について検討します。

  規則11.1a

  例外― 「ストロークプレーで,パッティンググリーンでストロークされた球:プレーヤーの動いている球がパッティンググリーンに止まっている別の球に当たり,そのストロークの前にその両方の球がパッティンググリーンにあった場合は,プレーヤーは一般の罰(2罰打)を受ける。」

  ホールの先にある他のプレーヤーの止まっている球に衝突すると有利になる場合があること,また,マナー上もよろしくないので,この例外を残したのは妥当と思います。

  注意すべきは,「パッティンググリーンでストロークされた球」,「パッティンググリーンに止まっている別の球」となっていますが,これは誤訳と思います。英語版は,

 「Exception – Ball Played on Putting Green in Stroke Play: If the player’s ball in motion hits another ball at rest on the putting green and both balls were on the putting green before the stroke, the player gets the general penalty (two penalty strokes).」となっております。

 いずれも「on Putting Green」,「on the putting greenとなっており,パッティンググリーン上の間違いです。そうでないと,フリンジに接地し,パッティンググリーンにオーバーハングしている球は,コースエリアとしてのパッティンググリーンにある球(規則2.2c,マークして拾い上げられない13.1a,13.1b参照)ですからその球もこの例外の適用を受けることになってしまいます。

以上

 

 

球が人,動物,動いている外的影響の上に止まった場合並びに

パッティンググリーンからプレーされ球が,偶然,人や外的影響に当たった場合

(11.1b⑴,同⑵)

2023年8月8日

(2023年11月24日加筆)

 

1 規則11.1b⑴は,プレーヤーの動いている球が偶然に人や外的影響に当たっただけでなく,球が人や外的影響の上や中に止まった場合,そして,規則11.1b⑵は,パッティンググリーンからプレーされた球が,偶然人や外的影響に当たった場合の処置について規定しています。

  当然,全てのコース上からプレーされた球が人や外的影響に当たっただけで,球が人や外的影響と離れて止まった場合があります。その場合の処置は,規則11.1aに規定されています。

  しかし,以上の規定の仕方はとても複雑です。もう少し論理的で誰もが覚えやすい規定を考えられないのでしょうか。これ以上文句を言ってもしょうがないので先に進めます。

  順序としては,このブログ内の

「ゴルフ規則:動いている球が偶然に人,動物,外的影響に当たる(11.1a)」

https://ameblo.jp/modernizedgolfrules2019/entry-12541652653.html

 を先に参照して頂いた方が良いと思います。

 

 規則11.1b⑴

   パッティンググリーン以外の場所からプレーされた球が偶然,人や外的影響に当たった場合,その球は通常あるがままにプレーする。

 しかし,その球が,人,動物,動いている外的影響の上に止まった場合,プレーヤーはその球をあるがままにプレーしてはならず,次の救済を受けなければならない。

  ・ 止まった球がパッティンググリーン(上)以外の場所にいる人,動物,動いている外的影響の上に止まった場合:プレーヤーは球を救済エリアにドロップしなければならない。

    基点: 基点から計測する救済エリアのサイズ: 救済エリアの場所に関する制限については規則を参照してください。

    とんぼが球の下敷きになっていたら正にこの場合です。〈Animal〉は生きているものが語源のようで,赤とんぼが死んでいた場合,動物とは言えないようです。

  ・ 止まった球がパッティンググリーン(上)にいる人,動物,動いている外的影響の上に止まった場合,プレーヤーはその球が人,動物,動いている外的影響の上に最初に止まっていた場所の真下と推定する箇所に球をリプレースすることになります。

 

 規則11.1b.⑵

   球がパッティンググリーンからプレーされた場合。

   パッティンググリーンからプレーされて動いているプレーヤーの球が偶然,人や外的影響に当たった場合,その球は通常あるがままにプレーする。

   しかし,動いているその球が,パッティンググリーン次のどれかに当たったことが分かっているか,事実上確実な場合,プレーヤーは,そのストロークはカウントせず,元の箇所に球をリプレースし,再度ストロークをすることになります。

   以上の次のどれかが,誠にもって理解しがたいのです。

   良く起こりそうな例だけを書き出しますが詳細は,規則11.1b ⑵を確認してください。

   ≫プレーヤー以外の人

   ≫動かせる障害物

   ≫止まっている球

   ≫ルースインペディメントとして定義されている昆虫(ミミズ,蟻など)以外の動物

  プレーヤーの動いている球が偶然に人や外的影響に当たって止まった場合,原則としてあるがままにプレーするのですが,以上のとおり例外を規定したのです。世界中のゴルファーが100年近く翻弄された,旧ゴルフ規則19-1のa. 及びb. 19-5のa. 及びb.の規定が改正されたものです。

 

    重要な変更があるので一覧すると,

  ① 偶然に当たる〈Accidentally Hits〉。

  ② パッティンググリーン上の人〈Any Person, on Putting Green〉。

  ③ パッティンググリーン上の動物。〈Any Animal, on Putting Green〉

  ④ パッティンググリーン上の動かせる障害物(動いている別の球を含む)。

  注意すべきは,パッティンググリーン上の動かせる障害物ですから,プレーヤー自身のクラブやヘッドカバーのように動いていないものも含まれるということです。プレーヤー自身のクラブやヘッドカバーに当たった場合まで「カウントせず,元の箇所に球をリプレースし,そこから再度ストロークをしなさい」ということには,多くのプレーヤーが疑問と思うでしょう。これを例外にすると規則がまた複雑になるからです。

 

4 R&A,USGAは,よくここまで改正したと思います。

   パッティンググリーンからプレーされた球が〈When Ball Played from Putting Green〉,偶然を要件にして,パッティンググリーン上の〈on Putting Green問題になりそうな全てのものに当たった場合,再プレーをしなければならないとしたのです。(但し,止まっている球とボールマーカーについては,異なる取り扱いで,下記⑷のとおりです。)

   まず,①は偶然ですから,故意の場合は規則11.2になります。②の要件は,ストロークした本人も「人」ですから含みます。③は動物ですから,ミミズ,カナブン,蟻などその大小は問いません。2019年の改正ではこのとおりでした。しかし2023年の改正でルースインペディメントとして定義されている昆虫などは除くことになりました(規則11.1b⑵の末尾)

④は,パッティングリーン上に止まっている球とボールマーカーについて,下記⑵のとおりです。

 

⑴   2019年に改正されたとき,ミミズやカナブンに当たった場合についてまで再ストロークと言うのは,やり過ぎではないかという意見もありました。その点はさすがに2023年に再度改正されましたが,プレーヤー自身のクラブやヘッドカバーに当たった場合でも,再ストロークというのは有利になり過ぎないかという意見もあるでしょう。しかし,そんなことはめったにないことなのです。

   かえって,旧ゴルフ規則のように,ミミズや虫は除くとか,動いている球はどうで,止まっている球はこうだ,他の競技者はどうで,自分のキャディーならこうだなどと分類し,どちらが先にストロークを開始したかまで規定したらとても覚えきれません。そもそも罰打を含め違う処置を求める意味などないということです。

 

⑵   規則11.1a例外-はプレー中によく起こるので説明しますが,

ストロークプレーで,パッティンググリーンでプレーされた球:プレーヤーの動いている球がパッティンググリーン上に止まっている別の球にあたり,そのストロークの前にその両方の球がパッティンググリーンにあった場合は,そのストロークはカウントし,その球はあるがままにプレーしなければならない。」再プレーはないということです。そして,止まっている球に当たった場合ストロークプレーにおける罰打は,2罰打となっています(ボールマーカーに当たった場合罰はなく,再プレーもない)。これだけは,旧ゴルフ規則の規定を承継しています。

以上

 

関連記事

ゴルフ規則:球をあるがままにプレーしてはならない

https://ameblo.jp/modernizedgolfrules2019/entry-12692647289.html

 

 

球をあるがままにプレーしてはならない

(規則11.1b⑴,同⑵)

2023年8月8日

 

1 球をあるがままにプレーしてはならない場合は,ゴルフ規則にたくさん規定されています。ここでは,ゴルフ規則11.1bの「動いている球が偶然に人,動物,物に当たる」に限定して解説したいと思います。

  この規定は,本当に理解が困難です。規則11.1aの「動いているプレーヤーの球が,人や外的影響にあたった場合」誰にも罰はないとする本文は当然のことを規定したもので,その例外の

  「ストロークプレーで,パッティンググリーン(上)でプレーされた球: プレーヤーの動いている球がパッティンググリーン(上)に止まっている別の球に当たり,そのストロークの前にその両方の球がパッティンググリーン(上)にあった場合は,プレーヤーは一般の罰(2罰打)を受ける。」

 に意味があります。この規定は旧ゴルフ規則も全く同じでした。ここまでは分かるのですが,問題は次の規則11.1bです。なぜ球をあるがままにプレーしてはならないのか,ゴルフ規則にその理由が記載されていないのです。

 

2 (発生した事実)その1  規則11.1b⑴

  パッティンググリーン以外の場所からプレーされた球が ①人 ②動物 ③または動いている外的影響の上に止まった場合: この事実を分解してどのような例があるか考えてみます。

  ① 球が人の上に止まるとは,キャディーや観戦者などの上に止まるということでしょう。

  ② 球が動物の上に止まるとは,ミミズやトンボの上に止まることで,動物という以上生きていることが条件でしょう。

  ③ 球が動いている外的影響の上に止まるとは,外的影響はゴルフ規則の巻末に定義されています。全ての人(注:外的影響の定義では,プレーヤーとそのキャディーを除くとしていますが,①で人としているので,ここでは全ての人です。)全ての動物,全ての自然物,人工物やその他の物とされています。

 

 ⑴ 前記①②③で発生した事実を前提にして,次の条件は,球がパッティンググリーン以外の場所に止まっている場合の処置方法です。

    »基点:その球が人,動物,動いている外的影響の上に最初に止まっていた場所の真下と推定する地点

    »救済エリアのサイズ:1クラブレングス ドロップ

    »救済エリアの制限:基点と同じコースエリア ホールに近づかない

 

 ⑵ ①②③で発生した事実を前提にして,次の条件は,球がパッティンググリーン(上)に止まっている場合の処置方法です。

    »その球が人,動物,動いている外的影響の上に最初に止まっていた場所の真下と推定する箇所に リプレース

 

 ⑶ 動いているプレーヤーの球が,人や外的影響にあたった場合誰にも罰はない。原則として球はあるがままにプレーしなければならないとする理由は理解できます。しかし,その球が止まった後,(発生した事実)パッティンググリーン以外の場所からプレーされた球が ①人 ②動物 ③または動いている外的影響の上に止まった場合,球をあるがままにプレーしないで,しかるべき処置をとらなければならないことについて,ゴルフ規則は何もその理由を明らかにしていません。勝手に推測する以外ないのですが,検討してみます。

  ・球が①の人の上に止まったままプレーするとキャディーや観戦者などが大怪我をすることになるからでしょう。

  ・球が②の動物の上に止まったままプレーするとミミズやトンボの殺傷は免れないでしょう。西洋人もあまり殺生は好まないようですね。

  ・以上二つの処置をとることは,プレーヤーの任意ではありません。記載する処置をとらずプレーして,ミミズやトンボを木っ端微塵にした場合2罰打です。人であるなら加えて傷害罪にもなります。

  ・球が③の動いている外的影響の上に止まった場合というのが理解できないのです。動いている外的影響で全ての人工物やその他の物というのは,作業車両などでしょうか。確かに動いている作業車両が走り去ったら規則9.6が適用されないとこの規定がなかったら紛失と言うことになり兼ねません。

    しかし,動いている外的影響で全ての自然物で,その上に球が止まる可能性のあるものと言うのは,ちょっと頭に浮かびません。どういう場合を想定しているのでしょうか。カラスによる球の移動などは規則9.6にあります。いくら自然物でも揺れている立木の上に乗った球は,あるがままにプレーすると解釈されていますから該当しません。

 

3 (発生した事実)その2  規則11.1b⑵

  パッティンググリーンからプレーされた球が偶然に ①パッティンググリーン上の人 ②動物 ③動かせる障害物(動いている別の球を含む)に当たった場合:パッティンググリーン上の前記①②③に当たったことだけが要件で,その球がパッティンググリーン上に残っていることは要件ではありません。分解してその例を挙げると,

  ① 偶然にパッティンググリーン上の人に当たるとは,プレーヤーのキャディーや他のプレーヤーでしょう。

  ② 偶然にパッティンググリーン上の動物に当たるとは,2023年の改正で,ルースインペディメントとして定義されているミミズ,トンボ,カナブンなどは除かれることになりました。

  ③ 偶然にパッティンググリーン上の動かせる障害物(動いている別の球を含む)に当たるとは,クラブや置いてある旗竿などでしょうか。(「動いている別の球を含む」となっていますが,止まっている別の球は,11.1a例外―に該当するので2罰打です。)

 

 ⑴ 前記①②③の発生した事実を前提にして,球をあるがままにプレーせず,その後の処置を検討します。

   そのストロークはカウントせず,元の箇所(分からない場合は推定しなければならない)に球をリプレースしなければならない。すなわち,再ストロークをするということです。

 

 ⑵ そのストロークはカウントせず,再ストロークをしなさいとした理由についても,ゴルフ規則は何も明らかにしていません。勝手に推測する以外ないのですが,検討してみます。

  ・①の偶然にパッティンググリーン上の人に当たるとは,プレーヤーのキャディーや他のプレーヤーに当たった場合と思いますが,プレーヤーはパッティングをするとき目の下にある自分の球に集中しているので,パッティングラインに人が侵入してきたことに気付かないことがあるからでしょうか。パッティンググリーン上という狭い範囲と偶然性を条件に,カウントせず,再ストロークとしたものと思います。

  ・②の偶然にパッティンググリーン上の動物に当たるとは,リスや鳥などでしょう(ミミズ,トンボ,カナブン等は除く)。これらもプレーヤーが気付かないうちにパッティングラインに侵入してくることがあるからと思います。

  ・③の偶然にパッティンググリーン上の動かせる障害物(動いている別の球を含む)に当たるとは,クラブや置いてある旗竿などでしょうが,重要なのは,動かせる障害物(動いている別の球)なのです。

   以上のそのストロークはカウントせず,再ストロークをしなさいとした規定に対し,相当な違和感を持つ方もおられると思います。人や動物が予期せずパッティングラインに侵入してくることがあるかもしれませんが,プレーヤーの持ち物や置いてある旗竿に当たった場合までカウントせず,というのはプレーヤーの不注意を免除し,且つ再ストロークをしなさいというのは,プレーヤーに有利にならないかという疑問です。確かにそのとおりだと思います。

   しかしながら,旧ゴルフ規則は,パッティンググリーン上の人や物に球が当たった場合,ミミズや虫は除くとか,動いている球はどうで,止まっている球はこうだ,他の競技者はどうで,自分のキャディーならこうだなどと分類し,どちらが先にストロークを開始したかまで規定し,世界中のゴルファーを100年近く翻弄してきたのです(旧ゴルフ規則19-1のa. 及びb. 19-5のa. 及びb.)。

   近代化されたゴルフ規則は,多少の問題はあっても,パッティンググリーンからプレーされた球であること,パッティンググリーン上で当たったこと,そして偶然性を条件に,カウントせず再ストロークをすると誰にでも容易に理解できるよう統一したのです。しかし,私もこの規定の趣旨が十分に理解できていません。いつの日か,もっと分かり易く改正されることを望みます。

以上

 

救済を完了した球が動き出す(規則14.3cの⑴ )

             (2023年版規則9.3例外2)

2019年2月4日

追記 2023年7月24日

 

救済エリアに球をドロップ(プレース)することについて,参考となる事例が発生したので急遽取り上げたいと思います。

 

1 2019年2月3日米国男子 ウェイストマネジメント・フェニックスオープン・最終日 TPCスコッツデール(アリゾナ州) 7261yd(パー71)のことです。雨が降っている最中に,11番においてリッキー・ファウラーが3打目で30ヤードのアプローチをグリーン奥の池に入れました。そこで1罰打でドロップの救済を受けました。次は5打目となるはずでした。ところが,ドロップした球はかなり傾斜のあるライであったのに,ファウラーは土手を駆け上がりグリーンを確認に行ったのです。その間に風雨の影響もあったのでしょう,再び球が動き出し池に入ってしまったのです。

  私がゴルフを始めたころ,砲台グリーンのバンカー上の傾斜した芝草に,球がかろうじて止まっている状況がありました。同伴していた先輩が,バンカーの顎は,歩くと振動するから,そっと近づいて,方向も距離も関係なく,ともかく早くグリーンに乗せることだ。もたもたしていると球がバンカーに落ちるぞ,とアドバイスをいただきました。忠告を守ったので事なきを得ました。先輩は,いつまでもあると思うな親と金(球)と言っておりました。

 

2 それにしても,5打リードでトップを走っていたファウラーの行為は迂闊であったと言うしかありません。風雨の激しい中,不安定なライと危険な箇所にある球を放置したまま,土手を駆け上がったのです。グリーン上を確認している場合ではありません。

  私が問題にしたいのは,ファウラーの行為ではありません。ファウラーは,再度のドロップをして,6打目でグリーに乗せ,1パット7打でホールアウトしました。7打目のパットには,すごい気迫が感じられました。

 

3 私は2月4日早朝のゴルフ専門チャンネル ゴルフネットワークで以上を観戦していました。実況アナウンサーは,田中雄介氏,解説は内藤雄士氏でした。

  田中雄介氏は2度目のドロップ後のストロークについて,「え!,これはもしかしたら6打目になるのでしょうか。5打目ではないのでしょうか。」と言って,新しいゴルフルールの多分9.4aの規定,もしくはパッティンググリーン上の規定などを持ち出して,このトリプルボギーはもう確定したものなのでしょうかとも言っておりました。ファウラ―に起きたことが余りにも不運で,気の毒と感じたからと思いますが,内藤雄士氏の解説も同じようなものでした。

止まっている球が,雨や風の自然の力で動き出した場合,球はあるがままでプレーすることは,旧ゴルフ規則も,新ゴルフ規則も変更などありません。例えば,パッティングググリーン上に止まった球が,風によって動き出しホールドしたら,最後のストロークでホールドしたことになるのは当然です。しかし,ゴルフ規則9.3の例外―,及び13.1d ⑵に唯一,「パッティングググリーン上ですでに拾い上げてからリプレースしていた球について,外的影響ではなく,自然の力が球を動かしたとしてもその球は元の箇所にリプレースしなければならない。」という旧ゴルフ規則とは違う考えの基に,今までになかった規則が規定されました。この規則が新設された趣旨などについては後日詳論します。

 

4 実況アナウンサー田中雄介氏や著名なレッスンプロ内藤雄士氏までが,なんで以上のような疑問を持ったのでしょうか。以下順を追って説明したいと思います。

 

 ⑴ 規則9.3は,自然の力が動かした球について,

自然の力(例えば,風や水)が止まっているプレーヤーの球を動かす原因となった場合:

・罰はない。そして,

・その球を新しい箇所からプレーしなければならない。」

としています。旧ゴルフ規則にはこの規定すらなかったのです。

 それでは,3打目で30ヤードのアプローチをグリーン奥の池に入れて,そこで1罰打でドロップの救済を受けた球は,規則上どういう状態であったか検討すると,規則14.3cの⑴に何時救済が完了したか規定があります。

「球を正しい方法でドロップし,救済エリアに止まったときにプレーヤーは救済を完了したことになる。

・球が救済エリアに止まった場合,プレーヤーは救済を完了したことになり,その球をあるがままにプレーしなければならない。」

 つまり,最初に1罰打でドロップの救済を受けた球は,救済エリアに止まったときにインプレーの球になるのです。その球が再度自然の力(例えば,風や水)で池に落ちたのですから,規則9.3が規定するとおり,その球を新しい箇所,即ち池の中,もしくは2度目の救済を受けてプレーしなければならないのは当然です。

ここで注意しなければならないのは,風や雨によって木の葉や枝が飛んできて球を動かした場合です。

規則9.6は外的影響がプレーヤーの球を拾い上げたり,動かしたことが分かっている,または事実上確実な場合

・罰はない。そして

・その球を元の箇所にリプレースしなければならない。

   としています。そこで,外的影響の定義には「すべての自然物」とあります。

西部劇によく出てくる回転草(タンブルウィード)は,アメリカのゴルフ場にもよく現れるそうですが,回転草は明らかに自然の力で動いていますが,回転草という自然物によって止まっている球が動かされたとしているのです。つまりブルーシートが飛んできた場合と同じと解釈しているのです。

 

 ⑵ アナウンサー田中雄介氏や内藤雄士氏が,混乱したのはなぜでしょうか。私はその原因はゴルフ規則にあると思います。

   外的影響〈Outside Influence〉の定義を見てください。

「プレーヤーの球,用具,コースに起きることに影響を及ぼす可能性のある次の人や物:

  ・すべての人,ただし,プレーヤー,またはそのキャディーを除く。

  ・すべての動物。そして

  ・すべての自然物,人工物やその他の物。ただし,自然の力を除く。」

  とあります。

   確かに,球をストロークしたプレーヤーやそのキャディー自身を外的影響というのはおかしいかもしれません。更に,ストロークした球に影響を及ぼすのが当然な,風や水に当たることを,わざわざ球が外的影響に偶然に当たったとして,誰にも罰はないと規定したら,お前は馬鹿かといわれるでしょう。野球のことはよく知りませんが,「追い風に煽られてスタンドに入った球でも,同じくホームランである。」という野球規則があったら間違ってはいないが,何を馬鹿なことをと思いませんか。

 

 ⑶ ゴルフ規則は原理原則を過度に重視しているのです。プレーヤー自身やそのキャディーを外的影響というのはおかしいかもしれませんが,風や水に至っては,外的影響以外の何物でもないのに,外的影響の定義から,「ただし,自然の力を除く。」としているのです。その理由は,風や水そのものの影響で止まっている球が動かされた場合と,風や水によって飛ばされたブルーシートや木の葉や枝が止まっている球に当たって止まっている球が動かされた場合の処置を同一にできないからです。

   「球が自然の力(例えば,風や水)の影響を受けても誰にも罰はない。その球を新しい箇所からプレーしなければならない。」ということは,スポーツの本質で,もしそれを規定したら,「追い風に煽られてスタンドに入った球でも,同じくホームランである。」と規定したのと同じことなのです。それゆえ,ゴルフ規則は,理屈の方を優先し,自然の力(例えば,風や水)は,外的影響ではないとしているのです。

   理論上はそのとおりでしょう。しかし,他の球技においては,球やボールが常に動いているのに,ゴルフ競技は,球が停止している時間の方がはるかに長いのです。球が停止している間に,実にたくさんのことが起こり,規則はそれらの事象について,処置が異なり,罰打の対象となることもあるのです。

   球が飛翔している間に風雨の影響を受けた場合については,誰でも無意識に理解しています。こと,ゴルフは球が止まっている間に自然の力の影響を受けそれが問題となる場合が,野球やサッカーと比べるとずっと多いのです。したがって,「球が動いていようが止まっていようが,自然の力(例えば,風や水)の影響を受けても誰にも罰はない。その球は新しい箇所(最後に止まった箇所)からプレーしなければならない。」という,当然すぎる規則が必要なのです。

 

 ⑷ 即ち,ゴルフ規則は,プレーヤーは外的影響ではないと定義していますが,同じゴルフ規則で,プレーヤーに球が当たっても外的影響に当たった場合と処置は同じで,何の罰もないことになっています(2019年改正)。つまり,理論どおりでは不都合なことになってしまうので,同じゴルフ規則の中で補正しているのです。

また,自然の力(例えば,風や水)は,外的影響ではないと定義していますが,風や水によって動かされた人工物(ブルーシート)や自然物(木の葉や枝)はまさに外的影響で,それらが球に当たって止まっている球が動かされた場合は,9.6によってリプレースすることになります。

 

 ⑸ これは規則をもっと分かり易く改正する以外ありません。ゴルフ競技は,球が飛翔している時間より停止している時間の方がはるかに長く,球が停止している間にたくさんのことが起こり,規則は,それらゴルフ特有の事象を十分考慮して改正すべきと思います。

 

5 今回の件は,幸いにもリッキー・ファウラ―自身は,再度のペナルティーが当然と理解していたようで,レフリーに対しても何ら抗議などはしていなかったように思います。もし,規則を誤解して,これはおかしいなどとレフリーと遣り合っていたら,7打目のかなり長いパットをねじ込むことは出来なかったのではな

いでしょうか。

余談ですが,「いつまでもあると思うな親と金」には,「いつまでもないと思うな運と災難」という下の句があるそうです。            以上

 

追記:

 2023年の改正でドロップ,リプレースした後に,止まっている球がコースの他のエリアやO.B.に移動した場合,その球を無罰で元の位置にリプレースできることになりました(2023年版規則9.3例外2)。ここで注意しなければならないのは,ドロップ,リプレースした後に止まっている球が「コースの他のエリアやO.B.に移動した場合」だけです。例えば,ジェネラルエリアにプレースした球が,ペナルティエリアに入った,バンカーに入った,パッティンググリーンに入った場合などです。同じコースエリア内で移動してもリプレースできないということです。

 また,パッティンググリーン上でリプレースされた球については,規則9.3例外1によります。

池の周りにドロップする場合,ボールが不安定な停止状態になることが多いので妥当な改正と思います。正に先に述べたリッキー・ファウラーの事例がそれにあたります。