動いている球が偶然に人,動物,外的影響に当たる(11.1a)

2019年2月2日

2023年11月9日改正

1 規則11.1aは,「動いているプレーヤーの球が偶然に人,動物,外的影響に当たった場合」を規定しています。球が列記したものに当たっただけの場合を規定し,球が列記した物の上に止まった場合とパッティンググリーンからプレーされた場合等についての球の処置は,規則11.2b⑴と11.2b⑵に規定されています。

 

2 規則11.1aの「動いている球が偶然に人や外的影響に当たる」の規定は,旧ゴルフ規則の定義48ラブオブザグリーンと,旧ゴルフ規則19-1のa. 及びb. 19-5のa. 及びb.の規定に対応する規定です。

  以上の旧ゴルフ規則の規定は,局外者を,①同伴競技者等の局外者,②局外者である球,③そして,その余の全部の局外者の三種類に分類し,その上に,動いている局外者,生きている局外者について特別に規定し,挙句の果てに動いている競技者の球が,パッティンググリーン上でストロークされたのか,それ以外の所でストロークされたのか。更に,パッティンググリーン上で球が衝突した場合,当てられた球が止まっていたか,動いていたか。両球が動いていた場合打順を守っていたか否かまで規定されていたのです。

  頭の良し悪しにかかわらず,その組み合わせを理解するのは不能です。私は,旧ゴルフ規則19-1,同19-5の規定が,その妥当性・合理性について,50年いや100年近くも検討されることなく,延々と引き継がれてきたことに最大の原因があると指摘しました。

更に,局外者の定義自体に理解を困難にする一因があることを指摘し,私は「風や水をなぜ局外者としないか」と主張しました。

  以上の旧ゴルフ規則の規定だけを見ても,R&Aの底意が見え見えで,この規定が理解出来ない者は,ゴルフ規則について,がたがた言うなと世界中のゴルファーを脅迫し,煙に巻こうとしていたのです。とうとうR&Aは,委員たちも理解不能に陥って,規則11.1aに落ち着いたものと思います。

  すなわち,ラブオブザグリーンと局外者という定義も説明も困難な概念を規則の中で使用することを断念し,定義からも消し去ることにしたものです。

  その結果,規則11.1aの「動いてるプレーヤーの球が偶然に人や外的影響に当たった場合」のうち,11.1aは,旧ゴルフ規則のラブオブザグリーンとパッティンググリーン上でプレーされた球が止まっている球に当たった場合に対応し,11.1bは,旧ゴルフ規則の19-1と19-5に概ね対応する規定となっています。

 

3 新しい規則は,たった2頁に要約したのですが,これで十分と思います。次にその内容を検討しましょう。規則11.1aを分解し,いくつか注意すべき点をあげると,

  *プレーヤーが何処からプレーしたかを問題にしていません。

  *偶然にということで,故意に行った場合は含みません。

  *如何なるものに当たっても,ある例外を除いてすべてのものに適用されます。

  *どのプレーヤーにも罰はありません。

 

(1)    11.1a.は,プレーヤーが何処からプレーしたかを問題にしていません。ティーインググラウンド,バンカー,パッティンググラウンド上を問いません。

 

(2)    偶然にということで,故意に行った場合は含みません。

 

(3)    如何なるものに当たっても11.1aの例外を除いて全てのものに適用されます。これについて規則は次のように規定しています。

「・このことは,球がプレーヤー,相手,他のプレーヤー,またはそのキャディーや用具に当った場合でも同じである。」

  なんとも不思議な規定です。動いているプレーヤーの球が偶然に当たる可能性のあるものは何か。「人」とありますからプレーヤー自身も当然含まれます。プレーヤー自身以外の全てのものは,外的影響以外の何物でもない気がします。とするなら,2段目の「・このことは,・・・・」以下の規定は全く無意味な規定ということになります。なぜ,注意書のようなものをわざわざ規定したのか。その理由は,外的影響の定義にあるのです。

  外的影響Outside Influence〉の定義を見てください。

プレーヤーの球,用具,コースに起きることに影響を及ぼす可能性のある次の人や物:とし,「すべての人,ただし,プレーヤー,またはそのキャディーを除く。」としているのです。

  確かに,球をストロークしたプレーヤー自身を外的影響というのはおかしいかもしれません。しかし,それは理屈の上ではそうでしょうということです。外的影響を以上のとおり定義したために,人間であればすべてを含む概念である「人」と規定しているにもかかわらず,わざわざ「・このことは,球がプレーヤー,相手,他のプレーヤー,またはそのキャディーや用具に当った場合でも同じである。」とプレーヤー自身に当たっても罰はないと注意を喚起しているのです。

  これはもう,「外的影響」などという馬鹿げた用語を選択したことが誤りであることは明白です。すなわち,「動いているプレーヤーの球が偶然に,人,動物,物,自然条件に影響された場合:」とすれば,十分なのです。

  因みに,外的影響の定義の最後に「すべての自然物,ただし自然の力を除く。」と定義しております。これも,「風や水をなぜ局外者としないか」の題目で批判したとおり,全く理屈の上でそうしているだけです。

  このような屁理屈を捏ねて得意になっているのはいいかげんにすべきです。

  なお,2度打ちに罰がなくなったことは10.1aに明確な規定がありますが,この規定からも導き出せます。

 

(4)  どのプレーヤーにも罰はありません。ここで再度注意しますが,どのプレーヤーにも罰はないとしているだけで,プレーした球についてどう処置するかは,規則11.2b⑴と11.2b⑵に規定されています。

 

4 「規則11.1a どのプレーヤーにも罰はない」の例外について検討します。

  規則11.1a

  例外― 「ストロークプレーで,パッティンググリーンでストロークされた球:プレーヤーの動いている球がパッティンググリーンに止まっている別の球に当たり,そのストロークの前にその両方の球がパッティンググリーンにあった場合は,プレーヤーは一般の罰(2罰打)を受ける。」

  ホールの先にある他のプレーヤーの止まっている球に衝突すると有利になる場合があること,また,マナー上もよろしくないので,この例外を残したのは妥当と思います。

  注意すべきは,「パッティンググリーンでストロークされた球」,「パッティンググリーンに止まっている別の球」となっていますが,これは誤訳と思います。英語版は,

 「Exception – Ball Played on Putting Green in Stroke Play: If the player’s ball in motion hits another ball at rest on the putting green and both balls were on the putting green before the stroke, the player gets the general penalty (two penalty strokes).」となっております。

 いずれも「on Putting Green」,「on the putting greenとなっており,パッティンググリーン上の間違いです。そうでないと,フリンジに接地し,パッティンググリーンにオーバーハングしている球は,コースエリアとしてのパッティンググリーンにある球(規則2.2c,マークして拾い上げられない13.1a,13.1b参照)ですからその球もこの例外の適用を受けることになってしまいます。

以上