パッティンググリーン上に球があると

コースエリアのパッティンググリーンに球がある

2019年1月1日

訂正2024年1月11日

 規則は,定義された5つのコースエリアがあるとし(2.2),ジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアを明確に定義しました。今回は,コースエリアのパッティンググリーンに球がある場合と,パッティンググリーン上に球がある場合について検討したいと思います。

 

1 旧ゴルフ規則は,「球が一部でもパッティンググリーンに触れているときは,その球はパッティンググリーン上にある球である(旧ゴルフ規則定義45)。」としておりました。しかし,区域としてのパッティンググリーンについて詳細な定義はなく,更にその上下の限界については規定すらありませんした。

新しい規則は,パッティンググリーンについて詳細に定義し(定義:パッティンググリーン),コースエリアとしてのパッティンググリーンに球がある場合について明確に規定しました(2.2c)。

 

2 まず,規則2.2cが規定する,球がコースエリアとしてのパッティンググリーンにある場合について検討してみます。

 

 ⑴ 「パッティンググリーンの縁は特別に作られたエリアが始まると見て分かる所によって定める(定義:パッティンググリーン)。」とされています。

通常パッティンググリーンの縁には,フリンジといわれるパッティンググリーン面より長めで帯状に刈った芝があります。このフリンジは,コースエリアとしてはジェネラルエリアと解釈すべきでしょう。

 

 ⑵ 規則2.2cは,球があるコースエリアの決定として,

   「球は常に1つのコースエリアにだけあるものとして扱う:」とし,

   「球の一部がジェネラルエリアと4つの特定のコースエリアのいずれかと両方にある場合,その球はその特定のコースエリアにあるものとして扱う。」とし,

   「球の一部が2つの特定のコースエリアにある場合,球は次の順番で最初となる特定のエリアにあるものとして扱う:ペナルティエリア,バンカー,パッティンググリーン。」と規定しております。

  各エリアを区切るのは線です。したがって,球が地面にある場合は上から見て,球が木の上にあるような場合は横から見て、いずれのエリアにあるか,あるいは2つのエリアの両方に掛かっているかを判断すべきと言っているのではないでしょうか。この「両方にある場合」という文言を平易,且つ適切に解釈すれば当然と思います。

  以上の結論は,特定のコースエリアであるパッティンググリーンの縁は,地面の下方は兎も角,少なくとも上方に及ぶということを意味していると思います。

球は地面に置いた場合,通常地面との接点は球の直径より少ない面積となります。球がフリンジに乗っていて,パッティンググリーン面にオーバーハングしているとか,その逆の場合がしばしばあります。いずれも球の一部がジェネラルエリアであるフリンジと特定のコースエリアであるパッティンググリーンの両方にある場合ということになり,その球は特定のコースエリアであるパッティンググリーンにあるものとして扱うことになります。

 

3 次に,規則13.1aが規定する球がパッティンググリーン上にある場合について検討します。

 

 ⑴ なぜ,規則は球が特定のコースエリアであるパッティンググリーンにあるだけの場合と,球がパッティンググリーン上にある場合の2つの状況を規定する必要があったのか考えてみます。この手法は旧ゴルフ規則も同じでした。

   新しい規則は,特定のコースエリアとしてのパッティンググリーンを明確に定義し,且つそのエリアに球の一部があることを前提にして,次に球がパッティンググリーン上にあるか否かを判断することにしたのだと思います。

   そして,プレーヤーがプレーしているホールのパッティンググリーンにおいては,規則13を特別に適用するとし(2.2b),球がパッティンググリーン上にある場合に出来ること,またはパッティンググリーン上で認められる改善行為など,パッティンググリーン上とは何を意味するのか,その状況を明確に導き出すために,特定のコースエリアであるパッティンググリーンという概念を明確にしたものと思います。

 

 ⑵ 規則13.1aは,「球がパッティンググリーン上にある場合〈When Ball Is on Putting Green〉」とし,「次の場合,球はパッティンググリーン上にある:〈 A ball is on the putting green when any part of the ball:〉」としています。

   「・球の一部がパッティンググリーンに触れている。または,」

   「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。」

  と規定しています。

   1段目は,旧ゴルフ規則定義45に規定された文言と同じです。2段目は,新しく規定されたものです。

「・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって」とは,通常球の一部が,球を上から見てパッティンググリーンとジェネラルエリアであるフリンジの両方に掛かっている場合のことでしょう。

「物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。」とは,球の一部が特定のコースエリアであるパッティンググリーンにあれば,木の葉や飛んできた菓子袋の上などに乗っていて,球がパッティンググリーンに直接触れていなくても,パッティンググリーンに触れていると看做すということではないでしょうか。

 

 ⑶ 旧ゴルフ規則でも,パッティンググリーンに限らず球が菓子袋の中や上などにあれば,動かせる障害物として取り除く事が出来ました。しかし,球がパッティンググリーンで桑の葉の上に乗っていた場合,球はパッティンググリーンに直接触れていないし,桑の葉はルースインペディメントですから,何ら救済はなく教条的に言えばそのままパッティングすべきということになります。しかし,旧ゴルフ規則においてもそうは解釈していませんでした。2段目の規則は,念のためそれを明確にしたということでしょう。

 

 ⑷ 分かり易く説明すると,2段目の規則は次のことを明確にしています。

 

  ① 球の一部が,パッティンググリーンに触れていればパッティンググリーン上の球である。

   (球がパッティンググリーンの真ん中にあろうが,フリンジに寄りかかっていようが,球が直接パッティンググリーンに触れている。)

 

  ② 球全部がパッティンググリーンにあり,且つ球が落ち葉や菓子袋の上にあって,球がパッティンググリーンに直接触れていなくても,パッティンググリーン上の球である。

   (菓子袋は,動かせる障害物として救済を受け(15.2 a ⑶),もしくは,13.1aによって,菓子袋を取り除けば,球が直接パッティンググリーンに触れる。)

   (落ち葉は,13.1aによって,落ち葉を取り除けば,球が直接パッティンググリーンに触れる。)

 

  ③ 球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあり,且つ球が落ち葉や菓子袋の上にあって,球がパッティンググリーンに直接触れていなくてもパッティンググリーン上の球である。

(球の一部が,パッティンググリーンの縁の内側にある場合でも,球の最下部が落ち葉や菓子袋を挟んで,フリンジの上にある場合もあります。つまり,パッティンググリーンに球がオーバーハングしている場合です。その場合,落ち葉や菓子袋を取り除いてドロップする箇所は,球があった真下(15.2 a ⑶)ですから球の最下部はフリンジ上となり,球はパッティンググリーンに直接触れず,パッティンググリーンにオーバーハングしている状態です。つまり,菓子袋や落ち葉がなかったなら,その状態では,球はパッティンググリーンにあるがパッティンググリーン上の球ではないのです。それなのにパッティンググリーン上の球であると看做しているのは,菓子袋なら動かせる障害物として救済を受けられますが,桑の葉はルースインペディメントですから動かせる障害物として拾い上げることが出来ず,桑の葉の上の球をそのままパッティングしなければならないということになります。そこで,球がパッティンググリーンにオーバーハングしている場合に限り,ルースインペディメントでも取り除けるようにしたのだと思います。)

 

 ⑸ 規則13.1aの2段目の規定が複雑なのは,状況が同じだからと言って全く救済方法が異なる,動かせる障害物とルースインペディメントを一文で規定したことに無理があるのです。

 

4 コースを構成する5つのコースエリアは,ジェネラルエリアと4つ特定のコースエリアがあるとし(2.2a),「特定の規則はジェネラルエリア以外の4つのコースエリアに特別に適用する:」としています(2.2b)。

4つ特定のコースエリアにどのような特定の規則が適用されるかというと,

   ・ティーイングエリアは,規則6.2

   ・ペナルティーエリアは,規則17

   ・バンカーは,規則12

   ・パッティンググリーンは,規則13

と規定されています(2.2b)。

  ここで注意しなければならないのは,「特定の規則は,4つのコースエリアに特別に適用する(2.2b)。」という文言です。これを不用意に読むと,前記2.2cは,「球があるコースエリアの決定」として明確にしているのですから,例えば,球が4つのコースエリアの内パッティンググリーンにあれば,当然規則13の認める,球をマークする,拾い上げる,ふくことなどが全て出来ると思います。しかし,それは大間違いなのです。

  球が,4つの特定のコースエリアにあるか否かと,4つの特定のコースエリアにおいて特定の規則が適用出来るか否かとは全く要件が違うのです。

 

5 例をあげてみましょう。

  規則13.1aは,次のとおり規定しています。

次の場合,球はパッティンググリーン上にある:

   ・球の一部がパッティンググリーンに触れている,または,

   ・球の一部がパッティンググリーンの縁の内側にあって物(例えば,ルースインペディメントや障害物)の上や中にある。

   ・球の一部がパッティンググリーン上とほかのコースエリアの両方にある場合は2.2c参照。

とあります。よく見てください「次の場合,球はパッティンググリーン上にある:」と規定されているのです。すなわち,規則は,特定のコースエリアであるパッティンググリーンに球があるか否かと,パッティンググリーン上に球があるか否かを峻別しているのです。球は特定のコースエリアのパッティンググリーンにあるが,パッティンググリーン上にはないという状況がたくさんあるのです。

  規則13の認める,球をマークする,拾い上げる,ふくことができるのは,特定のコースエリアであるパッティンググリーンに球があるだけでは適用はなく,球がパッティンググリーン上にある場合にのみ適用されるのです。

 

追記 私は最近になり,球は「パッティンググリーン上にある」というのは,球の拾い上げが出来るということだけで,ルースインペディメンとを取り除いた後球をリプレースすべき箇所は,球のあった真下ではないか(フリンジであったらドロップとなる)と考えています。

 

6 球がパッティンググリーン上にあるか否かだけでなく,球がバンカー内にあるか否かにおいても問題となります。さらに,球が修理地にあるかについても検討の余地があります。この規定方法は旧ゴルフ規則でもほぼ同じでした。改善することが出来なかったのは残念です。

R&A,USGAは,2017年3月1日「規則の近代化への新しい取り組みの概略:として,

・すべてのゴルファーによってより容易に理解され,適用され,

・より一貫性があり,シンプルで、公正なものであり,

・より直観的で学習し易いコンセプト,手続き,結果を用い,

・プレーヤーに「罰の罠」を作り出すかもしれない不必要なコンセプトや例外を避け

  と発表していました。

  以上のような規則制定の手法,すなわち,類似し,且つ混乱し易い用語を使用したことは,果たして規則の近代化への新しい取り組みの使命を全うしたといえるでしょうか。

  私は,最初のテーマとして,この問題を順次検討していきたいと思います。

以上