公式・軍縮会議日本政府代表部…japan.go.jp
もうすぐ原爆忌そしてNPT-PC開催中
今年の夏は例年に比べ、異質の暑さになるとの予想が出ていますが、暑さ寒さも彼岸までとのことば通りなら。
残り2週間強の期間を耐えれば、少しずつ楽な暮らしへと落ち着くのでしょうか。
7月の広島は午後4時を過ぎると気温がやや落ち着き始め、午後7時頃には夕涼みが楽しめる感じで、その分、例年よりは気持ち楽な気がします。
ただ、暑さの本番はこれからで、8月ともなれば熱帯夜が続く季節となり、それは想像するだけで絶望にも匹敵します。
さてヨーロッパではパリオリンピックが開催され、熱い戦いを繰り広げていますが、もう1つジュネーブではNPT 第2回準備委員会が開催されています。
NPTとは核拡散防止条約のことで、1970(昭和45)年に発効し、191ヶ国と地域が加盟する国際条約機関です。
NPTは核兵器廃絶を求めるものではなく、アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国に核兵器の保有を認める代わりに、核軍縮の交渉義務を課しているものです。
事実上の核保有国であるイスラエル・インド・パキスタンは未加盟で、北朝鮮は2003年に脱退を表明しました。
原則5年毎に再検討会議を開き、核軍縮や不拡散の取り組みを盛り込んだ、最終文書の合意を目指すことが目的です。
基本的に3年前から準備委員会を毎年開催することとなっており、昨年に続き今年は第2回となっています。
準備委員会は各国の取り組みや方向性を持ち寄って、国際条約としての方向性を定めるために擦り合わせをするのが目的で、第3回となる来年が準備委員会として最終回となります。
昨年のNPTではイラン・シリア・中国・ロシアなどの拒絶によって、討議内容をまとめた議長総括を公式文書に残せず、加盟国の分断が浮き彫りとなりました。
今回の準備委員会では、昨年の10月から続くパレスチナ自治区ガザでの、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が、影を落としています。
核兵器を持つイスラエルはNPTに加盟しておらず、中東諸国からの不満が根強く。
圧倒的な軍事力を背景にガザ地区への殺戮-・破壊を断続的に継続しており、それぞれの後ろ盾となっているアメリカと中東諸国が、準備委員会で対立する恐れが懸念されています。
ガザの戦闘を巡っては、イスラエルの閣僚やアメリカ合衆国下院議員から、ケースによっては核兵器の使用の必要性を示唆する問題発言もありました。
ロシアによる対ウクライナではなく、ウクライナを支援する各国への核攻撃を発言するプーチン大統領の態度とも相まって、ヒロシマでは「近年最も核兵器使用が危ぶまれる事態」との懸念が上がっています。
準備委員会は会議の閉幕に合わせて、論点を整理した議長名の総括文書を出すのが慣例で、これは決議文ではないため全会一致を前提としていないものの、前述の通り昨年は取り下げとなって異例の幕切れとなっています。
あくまで準備委員会の総括文書なので、その効力はそもそも無いものの、議論が深まることに意義があるとする、公文書として記録を残せないことへの腰の引けた考えを示す国もあることは問題です。
深まった議論が何も生み出さない可能性があり、NPTが有名無実化するその瓦解の最初となる危険性を、見て見ぬふりをしているに過ぎません。
本会議であるNPT再検討会議は2015(平成27)年に、イスラエルの非核化を念頭にした中東非核地帯構想、2022(令和6)年はウクライナ情勢を巡って決裂しています。
NPT体制そのものに機能不全を指摘する声も多く、既に空中分解は始まっているとの声も出てきているようです。
日本政府は昨年の広島市での先進7ヶ国首脳会議 = G7サミットでまとめた核軍縮文書「ヒロシマビジョン」をベースに、核軍縮の機運を高めるとの姿勢を誇示しての参加。
ただヒロシマビジョンに対しては、核兵器の保有を前提にした核抑止力を、事実上肯定しているとの批判も強くあります。
広島で7歳の時に被爆した日本被団協の児玉三智子事務局長は、今回の準備委員会において、従姉妹を看取った体現を証言しました。
「二度と被爆の犠牲者を生まないため、政府は核抑止を乗り越える取り組みを打ち出して欲しい」と、求めています。
準備委員会は8月2日まで開かれ、児玉三智子さんのことばは世界へ届くのか、そして各国の歩みよりはあるのか、その答えに未来の希望を感じられるのか、議長総括文書を待ちたいと思います。
さて、間もなく今年も広島平和記念日を迎えます。
2024(令和6)年の広島平和宣言では、一昨年に逝去された元 ソビエト連邦共和国大統領 ミハエル・ゴルバチョフ氏の言葉を引用することになっています。
ゴルバチョフ氏は旧ソ連の最後の書記長であり、ロシアの民主化を目指した最初で最後の大統領、そして東西冷戦を終結に導いてノーベル平和賞を受賞された偉人です。
国際情勢の悪化から国家間の疑心暗鬼が深まる昨今、核抑止力や軍事力に頼る為政者が決意を持って対応すれば、どんな危機も打破できる一例として訴えるようです。
広島地元紙 中国新聞によると、平和宣言ではロシアによるウクライナ侵攻の長期化や、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの攻撃に言及するとのこと。
その上で、核戦争の危機を遠ざけた東西融和の立役者として、ラストプレジデント ゴルバチョフの言葉を引きます。
複数の世界的な著名人の候補と中から、松井一実市長が自ら選んだのだそうです。
ゴルバチョフ氏はソ連共産党独裁体制を立て直すペレストロイカ = 改革を推進し、1987(昭和62)年にアメリカ合衆国 ロナルド レーガン大統領と、中距離核戦力 = INF廃棄条約に調印し、1989(平成1)年にジョージ ハーバート ウォーカー ブッシュ大統領(パパ ブッシュ)と、東西冷戦の終結を宣言しました。
レーガン大統領と中曽根康弘総理大臣によるロンヤス関係に加え、ゴルビー旋風によって日米露の友好関係は日本史上で最良な時代でもありました。
広島市には退任後の1992(平成4)・1998(平成10)・2000(平成12)年の3回来広されていて、原爆資料館を見学した折には「歳月がヒロシマの悲劇の痛みを和らげることはできませんでした。このことは 決して繰り返してはなりません」と芳名録へ記帳されています。
☆被爆2世が語る平和記念日と世界史☆
May the world be filled with peace and happiness.
(世界が平和と幸福で満たされますように)
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