渾身のエルプリメロ


機械式時計業界では今日まで新作見本市であるWatches & Wondersという一大イベントが開催されており、各社から様々な新作が発表されているわけですが、量が多すぎてついて行けません。


世間の耳目を集めるのはやはりロレックスパテック・フィリップですが、他にも各社意欲的な新作を投入しています。


そんなか中でひっそりと(?)注目に値する限定モデルが登場しました!



Chronomaster El Primero Final Edition / ZENITH

出典:www.ablogtowatch.com


Ref:-
ケース径:38.0mm
ケース厚:12.45mm
重量:-
ケース素材:ステンレス・スティール
風防:サファイア・クリスタル
裏蓋:サファイア・クリスタル
ベルト素材:ステンレス・スティール
バックル:バタフライ式Dバックル
防水性:10気圧(100m)
価格:$9,850.-

ゼニスから登場したのがクロノマスター・エルプリメロの限定版。ファイナル・エディションと銘打っており、これでφ38mmのクロノマスターがディスコンになるようです。

ゼニスは今年クロノマスター・スポーツというコレクションを発表し、話題となりました。


発表当初は絶賛されたというより、デイトナに似すぎじゃね?という声もあったりして(私もそう感じました)、賛否両論だったような気がしますが、なんだかんだ言って特にブレスレットモデルは品切れのお店が多いようです。

φ41mmのクロノマスター・スポーツに対してこのモデルの最大の特徴は、φ38mmノンデイトオープンワークなしクロノマスターという事です。

このありそうでなかったパッケージは実は好事家から最も求められていたものではないでしょうか?


これまで展開されていたクロノマスター38は、4時半位置にデイト窓を置くという愚行を犯しており、私は全く好きになれませんでした。

超個人的な嗜好ですが、私は4時半デイトの時計は絶っっっ対買いません。そもそもデイト要らない派な自分にとっては、多少バランスを崩してでもデイト入れたろ、という根性が透けて見えるこのデザインが受け容れられないのです。

さらにオープンワーク

これはむしろクロノマスターの象徴的意匠とも言えるので、文句を言う方が筋違いなのかも知れませんが、私はこれも苦手です。

いやだって破廉恥でしょ。

まあそんな訳で、小径は言わずもがな、ノンデイトでオープンワークなし文字盤のクロノマスターは全世界的に希求されているモデルだと思っていたのですが、38mmがディスコンとなれば所詮は場末のオタクの戯言であったという事か笑


デザイン面では9時位置の赤いスモセコダイアルが目を惹きます。インダイアルの色を変えるのはゼニスお得意の表現ですが、赤というのは過去あったでしょうか?

ややクセがあるので好みが分かれるかも知れませんが、落ち着きのある色味なので私はアリだと思っています。

シリンダー型のプッシャーはねじ込み式でもないので、気軽にクロノグラフを使えますし、リューズの大きさも適切です。

ケースは38 x 12.45mmという事で、クロノグラフモデルとしては非常に扱いやすいサイズだと思います。厚さ12mm台であればスーツに合わせても取り回しは難しくないでしょう。

ネジ留め裏スケ仕様の裏蓋ながら100m防水を確保しており、SSブレスと合わせて実用性に優れる点も見逃せません。

ライバル(と敢えて言いますが)のデイトナと比較してもサイズ感、シースルーバック、プッシャーの使い勝手などではゼニスが上回ると個人的には考えています(フラッシュ・フィットやブレスの質感はロレックスが100倍良いけど)。

出典:watchbase.com

型番:El Primero 4061
ベース:El Primero 400
巻上方式:自動巻
直径:30.0mm
厚さ:6.60mm
振動:36,000vph
石数:31石
機能:スモセコ3針クロノグラフ
精度:-
PR:50時間

搭載するのは勿論エルプリメロ。その中でノンデイト仕様のEl Primero 4061になります。従前から存在している機械なので目新しいモノではありません。

しかし改めてエルプリメロの完成度の高さには驚かされます。1969年に誕生したエルプリメロはその後50年以上にわたってバリバリの現役です。

勿論この間マイナーチェンジは経験していますが、コラムホイール・キャリングアーム式のクロノグラフ機構、36,000振動/時のハイビート、50時間という十分なパワーリザーブを擁し、自動巻クロノグラフでありながら30 x 6.6mmというサイズに収まっている設計は見事です。

古典的なキャリングアーム式なので見た目が美しいというのも大きな付加価値だと思います。

まあ、まじまじと見ると調速機構が今時エタクロン風だったりして流石に時代を感じますが、それでも時計好きを名乗るなら必修課題といえるムーブメントです。

このモデルに関して確たる情報はないのですが、最近のエルプリメロは軒並みCOSC認定(日差 -4/+6秒)を取得していますので、ファイナル・エディションも同様かも知れません。

繰り返しになりますが、シースルーバックから伝説的ムーブメントを鑑賞できるというのは、オーナーにとって無常の喜びでしょう。

さてしかしこのモデル大きな問題があります。

それは僅かに38本の限定販売であり、しかも小売は米国テキサスにあるTIMELESS LUXURY WATCHESという業者限られているという点です。

ご想像の通りすでに予約完売しており、現在はキャンセル待ちを受け付けているという状況のようです。

38本しかなければキャンセルが出る可能性も低そうですし、発表時点で既に幻のモデルになってしまっているという何ソレ的な状況です…

マジで今日の記事は何なの?と言われそうですが、別に買えなくたってこんな素晴らしい時計があったら知っておいて損ないですよ、という思いだけで書いております笑

それに私は知らなかったんですが38mmのノンデイト・クロノマスターはこれが初めての試みではありませんでした。

El Primero C.01として2019年(エルプリメロ 50周年)にやはり米国向けの限定モデルとして、El Primero 4061を搭載したφ38mmのクロノマスターがリリースされています。


こちらもホワイト/グレーのモノトーンダイアルが持つクールな雰囲気が堪らない傑作と言えるでしょう。


しかしSSブレスを纏った本作こそ実用性の高さから多くの人の支持を受けたはずです。

価格はSSブレスレットに3種類のレザーストラップが付いて$9,850(約110万円)と、レギュラーモデルとほとんど変わりありませんから、非常にお買い得と言えるでしょう。

返す返すこの超限定ロットは勿体ないです。日本でも何処かの小売店が乗っかればよかったのに、と思わざるを得ません。

1,000本くらい出しても余裕で捌けたんじゃないかと思いますけど。

これにて一旦φ38mmクロノマスターはディスコンなので、俄然デイト付きでも38mmが貴重な気がしてきますね。

そう思って楽天Chrono24なんかを見てみると、スケルトンじゃない38mmって全然ないんですよ。過去モデルも既に入手が困難なのかも知れません。

いずれ復活すると信じていますが、後悔先に立たずとも言います。φ38mmのクロノマスターを狙っていた方は早めに探された方が良いかもです。