郷愁の味
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幼少期の好物は塩むすびでした。中身は入っていなくて、味付けは塩と味海苔。これが美味いんですね。遠足のお弁当には必ず母親にリクエストしていました。いまだに大好きです。
ていう話を結婚して間もない頃妻にすると、「え?中身入ってないおにぎりとかあるの!?」みたいな反応をされました。焼き海苔文化圏の住民はあの味を体験せずに大人になるのかと驚いたものです。
とか言いつつ鮭おにぎりを食べた時の衝撃も忘れられません。「うっま!」ってね。やはりサーモンは特別。文字盤にしたい気持ちもよく分かります。
Heritage 1938 Chronometre / TISSOT
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ケース径:39.0mm
φ39mmのケースは3ピース構造。ベゼルはポリッシュ、ミドルケースはサテン仕上げで、細かい細工の入ったリューズはかなり良いですね。
厚さ11.1mmというのは数字的には悪くありません。ラグ形状と合わせて装着感は試着するのがベストですが、特に懸念すべき点があるようには思えないです。
ストラップはレザーとありますが、何レザーなのかは不明。型押しも甘いので、おそらく最もコストを省いた箇所でしょう。ストラップは追々買いましょう。それはそれで楽しいものです。
ラグ幅から20-18mmと僅かにテーパーの掛かったピンバックルには旧ロゴが入っているので、これは使えますね。
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それだけにこの先祖返りはビックリです。生きとったんかワレェ、というヤツですね。
理由はおそらくCOSCを取得するコストを吸収する為でしょう。その為にムーブメントを旧式化させるなんて本末転倒にも思えますが、この時計は文字盤に旧ロゴとCHRONOMETREの文字を入れなければならなかった。
性能の担保と言うより、このノスタルジックな雰囲気を演出する為のCOSC取得が先にあったのだと私は勝手に思っています。もちろん精度の保証だって付くんだから時計としても正しい姿ですよね。
自動巻なので着用している限りはパワーリザーブより携帯精度の方が重要ですし、それに今更2824というのも一周回ってアリじゃないですか。
<グレー文字盤のバリエーション>
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まあ理想を言えばφ36mmくらいで出して欲しかったですけどね。
ティソはPRXも小径版を出しているので、その辺りの売上を見てこのモデルのパッケージを決めたのかも知れませんが、2023年の新作に2824を使うなんて奇策に出るなら、サイズも突き抜けて良かったのでは?とか思います。
それでもこの作品を取り上げたのは、限られた予算の中で、いかに面白い物を作るか?というテーマと懸命に戦ったティソ開発陣の苦労が垣間見えるからです。
ヘリテージ1938は腕時計が時刻を知るために不可欠なツールであった時代の最も基本的な要素、すなわち正確性と可読性と実用性のみを抽出し、それ以外の加飾を排した実に清々しい時計ではないかと思うのです。
なんだか腕時計が天文学的価格に逝ってしまった昨今の世界ですが、誰もが手に出来き、そして笑みをこぼすような時計ってのもまだまだあるもんです。
まるであの日の塩むすびのように。
サーモンだけど。