今からおよそ5年ほど前に、コンサートなどで使う多色型サイリウム、いわゆるマルチカラータイプのペンライトの発色別電流値を測定してブログで紹介したことがあったが、その後発売された商品ではいくつか改善された点がある様なので、新製品を調達して電流値を再測定した。
以前の投稿に掲載した比較グラフなどは、これまでSNSなどを通じて仮名の件数でシェアされているが、今回の投稿はこれらの改訂版となる。
過去の投稿は次の通り。
この手の商品は商品カテゴリが曖昧なのか、包装パッケージにはサイリウムともペンライトとも書かれていない。つまり、家電でいえば冷蔵庫とか掃除機といったようなカテゴリーが書かれていないのだ。なので、家電量販店などの販売員にこの商品が陳列されている売り場を聞く場合、「冷蔵庫はどこにありますか」といった様な質問ができず、「コンサートとかライブで、ほら、客先で振るLEDのライトって、ありますよね?あれ、どこにあります?」みたいな尋ね方になってしまうのだ。
因みにWikipediaを見ると、
ペンライト:
「ペンライト (penlight) は、ペン型の懐中電灯である。狭義には本物のペンの大きさの先だけが光るものを指すが、他にもさまざまな形態・方式のものがある。広義には、ライトスティック (lightstick) と呼ばれる、やや大型の広い範囲が光る器具を含む。小型軽量で携帯性に優れているため、機械設備や工事関係をはじめ、医療・福祉分野まで幅広く利用されている。」
とあり、かなり漠然とした商品化カテゴリなイメージだ。
一方、サイリウムは本来の意味では化学発光による照明器具の総称であるが、
「サイリュームは商品名で、世界初のケミカルライトであり、ケミカルライト全般をサイリュームと呼ぶことが多く、これらの代名詞となっている。サイリウムと表記されることも多いが、これはサイリウムという商標は(ケミカルライトの商標としては)登録されておらず、他社製品をサイリュームとして売ると商標権侵害になるためで、販売メーカーもあえてサイリウムとして売ることがある。」
つまり、サイリュームとかサイリウムとか、実はペンライトの一つなのだが、商品に対するネーミングとしてはかなりややこしい。そのため、包装パッケージには商品カテゴリが記載されていないのかもしれない。
今回評価する商品はライブ会場で客席で振るペンライトのことなので、本稿ではペンライトといわず、サイリウムと称することとする。
前回の評価商品は株式会社ルミカの「ルミエース2」というサイリウムであったが、今回の評価は、その改良版らしいルミエース2オメガ(以下、オメガと略す)という商品とルミエース2の比較である。
上がルミエース2オメガ、下がルミエース2
オメガの改善点は、ルミエース2が発色数12色であったことに対し、オメガはデフォルトの12色+カスタム12色という色数となっていることや、電池残量インディケータが搭載されていることなどがあるが、最大の改善点は白色LEDが搭載されていることだ。
白色の発光方法は、ルミエース2の発色はRGB(赤、緑、青)‐LEDの混色で作っていることに対し、オメガでは混色LEDのほかに白色LEDを独立して搭載していることだ。そのことを明言すべく商品パッケージに「4LED(RGBW)搭載」と謳っている。
RGB混色型での問題点は、電池がヘタってきて起電圧が降下してくると、単色のRGB(赤、緑、青)だけしか発光しなくなってしまうことにある。電池のヘタりに伴って白色がピンク色に変わり、最後にはダイオードの順方向電圧降下の閾値が最も低い赤だけが残ることから、白色だったサイリウムが赤くなってしまうということがあるのだ。
ライブが終盤になり、白一色で埋め尽くすといったフィナーレの時に、自分のサイリウムだけ赤いという、なんとも残念な参戦となることもあるのだが、白色が独立していればその様なことはなくなるはずだ。そういった期待から、このルミエース2オメガの発色別消費電力状態を確かめることにした。
ルミエース2もオメガも同じルミカ製で、外観やボタンの配置などは全く同じで、重量も手に持つ感覚ではほぼ同じだ。
まず、オメガの電流を測定してみた。次いでに以前のルミエース2の方も併せて測定した。今回は定電圧印加での電流と、実際の使用状態を想定した乾電池使用での電流を測定した。乾電池は内部抵抗が大きいことから電流を引き出すと電圧降下が生じるため、定電圧電源での測定とは値が異なってくる。いきおい、乾電池での測定結果は電圧値と電流値の併記が必要となるのだが、その様な煩雑な表記だと直感的には分かり難いため、今回は電圧と電流による計算値としての電力の値でグラフ化した。
測定条件は次の通り。
定電圧電源: 商品仕様は単四型乾電池三本使用となっているので、4.5Vとした。
乾電池電源: 乾電池はテクノロジ―によって様々な種類があり、値段相応といわれるように、商品によって電池容量が異なる。本製品の「ご使用方法」にはアルカリ乾電池の使用を推奨していると書かれているのだが、アルカリ乾電池も商品によって電池容量が異なることから、今回はその中から低価格で入手性の良いダイソーの単四型乾電池を用いた。
測定方法は、定電圧電源の場合は電流の値を電源装置に表示されている電流値とし、乾電池の場合は自作の電圧電流パネルメータの表示データを電流値とした。このパネルメータはデジタル式LED表示となっているので若干のドライブ電流が自己消費されているが、今回の測定は各色別の相対値を見るので、メータのドライブ電流は無視して比較する。
定電圧電源を用いた計測
自作の電圧電流メータを用いた計測
これらの測定結果を次に示す。
まず定電流印加に於けるルミエース2とオメガの比較だ。棒グラフの上段がルミエース2、下段がオメガである。
機種別・色別消費電力ベンチ―マーク(定電圧電源)
機種別・色別電流値(定電圧電源)
この図で明らかになったことは、オメガの白色での消費電力が大きいことだ。これは意外であった。これまで、白色LEDは青色LEDに青色の補色である黄色の蛍光体を被せて色を作ってあると理解していたので、消費電力は青色並みだろうと思っていたのだが、定電圧電源供給での結果は、RGB混色による白色発光と同様に大きな電力を消費していた。
しかしながら、次示す乾電池駆動での値を見ると、乾電池駆動の場合には白色の電力がルミエース2よりも削減されていることがわかる。つまり、他の発色よりは大きいことは変わりないのだが、ライブなどでの乾電池使用時には定電圧での消費電力よりは小さいことになる。
機種別・色別消費電力ベンチ―マーク(乾電池電源)
機種別・色別消費電流値データ(乾電池電源)
このような消費電力問題とは別に、オメガのメリットは写真の様に電源電圧が降下しても白色を保ち続けることが挙げられる。このメリットは極めて大きく、たとえ輝度が弱くなっても白は白として維持できるので、自分だけ色違いという状態は回避できる。
ルミエース2で電池起電力が落ちた時の白色の状態
ルミエース2オメガで電池起電力が落ちた時の白色の状態
次にルミエース2とオメガの相対電力比について、定電圧源及び乾電池供給の比較を次に示す。
定電圧電源、機種別・色別レーダーチャート
乾電池電源、機種別・色別レーダーチャート
ここで確認できることは、黄色及びサクラピンクといった色の商品電力はオメガの方がルミエース2を上回っていることだ。この辺りの色を点けたままにしておくことは、電池の浪費を高めることになるので留意しておきたいところである。
一方、オメガの紫色はルミエース2よりも消費電力が小さいことも特徴の一つだ。乃木坂46のチームカラーは紫で、アンコール最後の曲である「乃木坂46の詩」ではサイリウムを紫にするというのが定番中の定番。その時、電池がヘタっていると紫色は赤っぽくなってしまうのだが、もともとの消費電量が少なければ曲の途中から色が変わってしまうということも回避できよう。
なお、光の三原色であるRGB(赤、緑、青)についてはルミエース2、オメガ、ともにLED単色発光であるので、消費電力は小さい。ライブに於いて特に色の統一の必要がない場合には、この三色のどれかにしておけば電池の消費を軽減できる。
その他、機能としてカラーリザーブ機能、「好きな発光色に一発チェンジ」とあるが、これは電源オフ時の色設定を維持する機能のことで、ルミエース2から継続している機能だ。但し、電池を抜くといった様な電源にシャットダウンするとリセットされる。これは、電池交換しない限り電源をオフにする直前の色が保持されているのでされているので、便利な機能である。
更にオメガには電池残量インジケータ搭載という機能が追加されている。これは「電池残量が少なくなると、センサーボタンが赤色で点滅する」とあり、オメガの新機能だ。電源電圧を下げていくと、およそ2.7Vまで電源電圧が降下した時点で点滅する。ただし、一度点滅すると電源電圧が復帰しても点滅は解消せず、電源オフするまで点滅は消灯しない。
なお、デフォルトの12色以外のカスタム12色については、ルミエース2にはない機能なので今回の比較では省略したが、大体デフォルト12色に近い消費電力であると想像できる。
以上がチェック結果であるが、ルミエース2に比べてオメガの最大の特徴は、電池が消耗して供給電力が減少しても白色は保持されていることであり、これは有難いメリットである。
オメガの特徴を踏まえ、推奨される使用方法は次の通り。
・ 白色LEDが独立しているので、電池容量が低下しても白色を維持する
・ 但し、白色LEDの消費電力は大きいので、必要意外ではなるべく使わない方がよい
・ 紫の消費電力がルミエース2よりも大幅に小さくなっているので使いやすい
・ パステルカラー系はルミエース2よりも若干消費電量が大きいので、使用時には注意する
・ ルミエース2と同様、特に色指定がない場合には赤、緑、青の三原色を使用しておくと電池の消費が少ない
現在、新型コロナ禍にあってライブはネット配信がデフォルトになってしまっているが、早期のリアルライブの再開を期待したい。
なお、これらのグラフはどんどんシェア頂き、ライブ参戦中に電池消耗による色変化などの事故が起きないように電力プランを作成する上での参考になれば幸いである。