ペンライトと言う商品があるのをご存知だろうか。コンサート会場などで客席で曲に合わせて振るスティック上のライトのことだ。会場に於ける盛り上がりはこのペンライトの有無で大いに変わるのため、最近は必携品となっている様だが、かつては使い捨てのサイリウムが主流だった。
ペンライトの前に、サイリウムの発光原理に就いて簡単にまとめておこう。
サイリウムは分離された二種類の液体とそれを封じ込めた容器及び外装容器で構成されている。一つは蓚酸ジフェニルと蛍光色素(色素増感太陽電池:Dye Sensitized Solar Cellの色素「Dye」と同意)の混合液と過酸化水素水(消毒で使われるオキシドール)だ。この二つの液体が混合されると蓚酸ジフェニルが過酸化水素水によって二酸化炭素に分解されるが、そのときに蛍光色素に対して発光するに十分なエネルギーで励起され、蛍光色素が価電子帯に戻る時に放たれる光がサイリウムの光である。広義で云えば、電子がエネルギーを放って発光するLEDとよく似ている。この混合は、容器を強く叩くことで中の容器が破壊されて混合される仕組みとなっている。
つまり、サイリウムを発光させるためには物理的な衝撃が必要なのだ。この衝撃、普通に叩く程度であればよいのだが、コンサートなどで興奮状態にあると叩く力が強すぎることがあり、実際、外側の容器まで破損する事件が起き、蛍光物質が外に漏れて座席や服が汚れる騒ぎとなったことがあった。それがサイリウムの使用を禁止した動機らしい。
そこでペンライトの復活だ。
元々ペンライトは工事現場などで車両の交通整理などで疲れているもので、そう、警察による検問で車を誘導するときに使うアレで、古くは豆電球を使ったものであったが、近年は発光源をLEDとしたものが主流である。現在はこれがサイリウムのアトガマとしてもっぱらコンサートライトで使われている様だ。LEDであれば電池の持ちもいいし、原則として球切れの心配も無い。
かつては赤、緑、黄、青などの単色タイプだけだったため、猛者たちはコンサートに様々な色のペンライトを携えて参戦していたが、近年は一本で多色のものが出始め、色についても三原色だけではなく混色によって様々な色を発光するタイプのペンライトが見られるようになった。実際、曲に合わせてペンライトの色が統一されると盛り上がりも一層高まり、高い高揚感が得られるというもの。
しかし、3時間を越えるコンサートで少し気になるのは乾電池の寿命である。
3時間程度のコンサートであれば電池切れという問題はあまりないだろうが、それでも終盤戦になったころに薄暗くなったペンライトを振るのはなんとなく切ない。もちろん換え電池を持参するのが定法ではあるが、好奇心的に、一応、どの色の時が最も長時間発光できるかをチェックしてみた。それがこのグラフだ。
測定に当たっては、ルミカ製、ルミエース2キラキラタイプを用いた。
ご覧の様に、というか想像通り、RGB(Red:赤、Green:緑、Blue:青)の三原色が最も電流値が低く、それらの混色によって生成される色の場合には電流値は増大し、三つの色が総て混色している白は最大値となっている。
アルカリ乾電池は内部抵抗が大きいので電圧降下が生じるため、負荷をかけた時の入力電圧はそれによって変動するので、ここでは乾電池を用いずに定電圧電源から電圧を供給して電流を測定した。本製品の仕様は乾電池3本駆動なので、4.5Vの定電圧を用いた。
測定結果、会場統一色で振るときは別として、思い思いに振るときには三原色を選んで振っておいた方が電池の持ちはよいことが判った。特に青がオススメである。