ライブなどで大活躍する武器といえば、ペンライトだ。今や参戦する上での必携品でもある。
ペンライトにも、様々な技術改善がなされ、これまでの様な乾電池駆動ではなく、いよいよ充電式が登場してきた。
これまでにも、乾電池の代わりにニッケル水素型充電池を使うという方法もあったが、その使い方だと、ニッケル水素充電池の起電圧が1.2V(乾電池は1.5V)であることから、使用開始時点での電源電圧が低い事により光量や発色などの問題が起きるため、メーカーは充電池の使用を推奨しておらず、そのことは取説にも記載されている。
従って、乾電池を使用することがデフォルトとなっているのだが、充電方式であれば利便性はよい。これまでにも市場要求はあったと思われるが、メーカーとしては乾電池の収益も大きかったことだろうから、充電式への対応は技術的な問題ではなく、営業的な問題があったことは想像に難くないが、その問題を乗り越えていよいよ製品化したわけである。SDGs的にも、メーカーにとってはCSRとして順風となるはずだ。
さて、充電式のペンライト製品、数あるペンライトメーカーの中で先陣を切ったのは株式会社ルミカの「大閃光ブレード CHARGE」。商品ネーミングにCHARGEと銘打つ、ルミカ史上初の充電式ペンライトでもある。
乾電池にも様々あって、老舗電機メーカー製のものや、ルミカからも発売されている「大閃光電池」の様に、液漏れ防止、10年保存などの特長をもつ、いわゆるメーカーモノから秋葉原で売られている中華製のものまで含めて種類も様々だが、100均で売られている乾電池でも通常の3~4時間のライブ公演時間程度の使用であれば十分光量が保てるし、1年程度であれば電池を入れっぱなしでも液漏れは殆ど起きないので、使用上はどれでも問題はない。
現時点で言うとダイソーなどの100均製は5本パックが100円なので、単三乾電池3本で駆動する一般的なペンライトであれば、例えば2本のペンライトを携えて3日間のライブ前に毎回乾電池を取り換えて参戦するとした場合、合計18本の電池が必要なので、乾電池代は400円となる。この出費をどう考えるかにもよるが、充電式であれば、充電に必要とする商用電源からの電力はごくわずかなので出費は限りなくゼロである。それがルミカからのソリューションだ。
自分のケースでいうと、過去1年間のライブ参戦の他、推し仲間同士で配信を見るときにもペンライトを携えていくので、ペンライトの出番は年間20回ほどだ。計算すると、3x2x20=120本。100均の5本100円のパックを使用とすると2400円となる。この金額を乾電池購入に費やしている計算となる。実際には、配信の時は新品ではなく、電池容量をチェックして十分残量があればそのまま使うため、そこまでの金額になっていないのだが、リアルでの参戦時は必ず新品に交換しているので、それだけでも結構な金額になる。
いきおい、これからペンライトを買うとしたら迷うことなく充電型となるのだが、現在使用しているものを買い替えるとなれば、およそ3年程度で乾電池消費額と相殺になる計算だ。となると、あとは実際の使用に関する使い勝手の問題である。
乾電池の場合、意外とメインテナンスが必要だ。よくあるのが電極の汚れによる接触不良。これが発生すると新品と交換してあったも突如として発光しなくなったりする。これが起きると、かなり悲惨だ。テレビのリモコンなどでボタンが利かなくなった時、電池ケースを開けて乾電池を一度抜いて入れ直すと解決することなどが良く起きるが、それが電極の接触不良だ。電極の経年劣化などで腐食が生じて発生する不具合である。
充電式の場合には充電池が封印されているのでこういう問題は起きない。しいて言えば、都度充電する必要があるということだが、そのわずらわしさは、乾電池を買いに行く手間と比べれば、遥かに微々たるもの。
ということで、充電式への買い替えを考えた。
一方、この新商品を購入する前に気になったことは、この「大閃光ブレード CHARGE」で採用されているLEDがRGBW4色かどうか、だった。
確認すべく、同製品のフライヤーやWebページを見ると、「電池残量が少なくなると、RGB混合色の場合は色のバランスが崩れてきます」という記載はあるが、RGBなのか、RGB+Wなのかの記載はない。そこで、ルミカへ直接問い合わせをしたみたところ、「大閃光ブレード CHARGE」もRGBWが採用されているとの回答だった。
RGBWの採用は重要である。なぜなら、RGBだけで白色を発光させている場合には、電源電圧の降下に伴ってRGBの発色が変化し、白色が赤い色に変化してしまう。つまり、白を発色させているつもりでも実際は赤っぽい色になってしまうわけだが、RGB+Wの場合には、電圧降下が生じても退色はしても白は白のままとなる。これは大きなメリットだ。
これで、買い替える理由は成立した。防水性は無いようだが、それはこれまでと同等。むしろ、乾電池式の場合だと電池ケースの蓋から漏水が起きる可能性があるのに対し、充電式は密閉されているだろうから、防水ではないが防滴的な効果は期待できるだろう。

大閃光ブレード CHARGE外観
ということで、早速調達した。これと、これまで使用していた同社製の「ルミエース2オメガ」と発光色や発光時間などを比較してみよう。また、仕様には記載のない充電に関する計測も行ってみる。
比較条件:
1. 色を評価するチューブ:
キラキラタイプだと製造バラツキによる光のムラが発声する可能性があるので、ほぼ均一に導光するマットタイプを用いた。このチューブはこれまでのルミエース2オメガ用のチューブと互換性があるので、交換が可能だ。小生の様にチューブをカスタム化しているユーザーにとって、これまでのチューブがそのまま使えるということは、大いに評価できる。
2.乾電池:
入手性や実用性を鑑み、敢えて最も電池容量が少ないと思われる格安のもの、すなわち5本で100円のダイソー単四乾電池を使用。もちろん新品で評価を行う。実際に使用する乾電池、使用期限は2030年11月と記載されている。使用に先立って測定した起電圧は3本とも1.6V。

ダイソー単四乾電池
大閃光ブレード CHARGEに内蔵されている充電池については、リチウムイオン充電池 3.2V, 1500mAhと記載がある。恐らく一般的なパック型の充電池が使用されていると思われるが、かなりしっかり嵌合しているので、新品のうちから無理矢理こじ開けるのは断念した。
3.発色比較を行うサンプリング色:
消費電流が最も大きい白色での比較とした。また、「大閃光ブレード CHARGE」では発色を三段階、すなわちエコモード、通常モード及びブーストモードがあるが、比較に当たっては通常モードで行った。
さて、本題のテストである。
まず、3つのモードに於ける発光の違いを調べてみた。
【ブーストモード、エコモードの発光量テスト】
大閃光ブレード CHARGEには、ブーストボタン及びエコボタンが装備されていて、ブーストボタンによって10秒間、より明るい発光が、エコボタンによって発光の節電モードが実現されている。
このそれぞれのモードの具体的な比較は、搭載されているLEDのルーメン値で比較すべきなのだが、公表されていない。こちらの手元には、光源から照らされている面の明るさを示すルックスを計測するELPAの簡易型照度計があるので、その計測値からルーメンへの変換は可能となるが、照度の測定は測定諸条件によって値が大きく変わるため、値の相対比較を行う方が現実的な差が感覚的に分かりやすいので、ペンライトと照度計を固定しておいて計測したLx値で表す。といっても、この値は飽くまでもそれぞれのモードでの相対比較を表す数字として捉えて頂きたい。

それぞれのモードに於ける値はエコモード:300、通常モード:1000、ブーストモード:1300と読める。これがそのまま消費電力や連続点灯時間、LEDの明るさなどに比例するわけではないが、エコモードというのは通常モードの1/3くらい、一方、ブーストモードは3割増しくらい、といった感覚で捉えればよいと思われる。
次に、一番重要な連続点灯時間のテストだ。
【連続点灯時間テスト】
カタログなどによると、
大閃光ブレード CHARGE: 通常時 約3~4時間、 エコモード 約6~16時間
ルミエース2オメガ: 約3~4時間
となっている。

電源投入時の主な色の発色性の比較
上の写真の様に、ルミエース2オメガと大閃光ブレード CHARGEとでは、使い始めの発光に差は殆どない。このうち、消費電力の大きな白色の経時劣化を目視的にチェックする。
実際のライブは大体3~4時間なので問題はなさそうだが、4時間連続点灯した後にどの程度退色するのか、或いは消灯しているのかなど興味深い。それについて、従来のルミエース2オメガとSide-by-Sideでの比較を行った。

テストの結果、4時間の連続点灯ではルミエース2オメガで若干退色が見られたが、大閃光ブレード CHARGEでは殆ど退色は認められない。3.5時間経過後にルミエース2オメガのプッシュボタンが赤く点灯しているが、これは乾電池の電圧降下が生じた時の警告である。実際は点滅となる。
ルミエース2オメガの退色は、6時間半を過ぎるとかなり進み、室内の蛍光灯下では、点灯しているかどうかがよく分からない程度まで退色する。
ただし、一度電源を落として10分くらい経過すると、よく知られている様に乾電池は一時的に復帰するので再び白色で点灯した。尤もその後の数分経過で再び退色していく。
一方、大閃光ブレード CHARGEは、満充電状態のものとほとんど変わらない発色を保っている。これは特筆すべき大きな特長である。

上が充電状態が満充電、下は10時間の連続点灯後
これは通常モードに於ける発光状態なので、エコモードであればもっと長時間発光を保つことだろう。
最後は、ライブ終了後、或いはその合間に行われる充電に必要な時間の測定だ。
【充電に必要な時間テスト】
ライブに行く前に充電することを忘れないことが大切だが、予め充電に必要な時間が分かっていれば、ライブ当日の充電も可能だ。そこで、8時間の連続点灯後に充電を行ってデータを取った。
充電開始後のUSBからの電源電圧は4.54Vで、流し込まれる電流は0.83A。一方、充電直後のデータを見ると、充電時間は1時間51分00秒で、充電容量は1293mAhであった。
仕様によると、内蔵されている充電池は1500mAhとのことなので、8時間連続点灯後でも、およそ300mAh程度の余裕があることになり、これを点灯時間に換算すると、あと2時間弱くらいは点灯し続ける計算となる。ただし、退色は著しいものになるかもしれないが。

充電し始めの状態。ペンライトの底部が充電中を示すグリーンに光る

充電終了後の計測値
いずれにしても、少なくとも8時間の連続点灯が可能である上、その後の充電も2時間弱で完了するというのは、極めて使い勝手の良いペンライトであるといえよう。
ライブによっては、3時間のライブが1部、2部と別れて公演されるということもあるが、連続点灯が8時間あれば問題ない。エコモードとの併用やMC中に電源を切るなどの対応を行えば、全く問題ないだろう。それでも心配な場合、途中に休憩があれば、その時間で満充電できる。先の実験の通り、8時間の連続点灯後でも充電時間は2時間弱である。
AC電源がない場合は、モバイルバッテリーを持参すればよい。ただし、2本のペンライトを同時に充電しなければならないので、1500mA程度のモバイルバッテリーを2台、または3000mAhで2ポート出力のあるモバイルバッテリ―が必要だ。
一方、乾電池式であれば1分もかからず交換が可能なので、その点は乾電池式の方が有利だろう。
次はもっと現実的なセンとして、ライブは3.5時間で終了、その後現地で充電して次のライブに参戦するという状況を想定し、充電時間と電流容量を測定してみた。計算上は526mWhの消費となるが、実験の結果、写真の様に充電は49分01秒で終了し、電流総容量は524mAhと、ほぼ計算通りの値となった。


まとめると、
「3.5時間のライブ中ずっと点灯させたままの場合、ライブ終了後50分で満充電となる。」また、3.5時間どころか8時間に及ぶ連続点灯でも、満充電の明るさと比較して殆ど退色はないことは前回のテストで立証済みだ。
ところで、今回の機種の登場、そう言えば以前のルミエース2オメガから4年くらい経っているので、幾つかの発色についてその消費電力を測ってみたところ、なんと、ルミエース2オメガでは消費電力が最大であった白色が、この機種では電力が大幅に削減されていた。
それがこのグラフだ。30分の連続点灯を行った後で満充電させ、充電に使われた電力をグラフ化したものである。

すべての色について測定するのは面倒だし、むやみに充放電させると充電池の寿命にも影響与えてしまうので、幾つかの色をピックアップして測定した。
確かに白色LEDの発光効率は技術革新が進み、年々改善されているので、そう言った新しいLEDが搭載されているのかもしれない。効率が上がれば明るさも増すが、明るさは他の色に合わせるとすれば、消費される電力は削減可能だ。
また、同時に計測された充電容量を基に、サンプリングした色の理論上の連続点灯可能時間を計算してみた。それがこのグラフである。

このグラフからも明らかなように、混色型の発色でも、エコモードなどを使用せずに通常モードでも、カタログに書かれている持続時間の3~4時間よりも大幅に保持できることが分かる。
こういう技術革新は有難い。
ということで、今からペンライトを購入しようと考えている人には、オススメな逸品である。なお、上に書いてある数字などは飽くまでもこちらの測定環境下での値なので、ご参考程度に。