今週末は仕事で、直接、現場に行かなくてはならなかった。現場には駐車場がほとんどないというので、僕は自転車で行くことにしていた。
朝9時からだったので、家を8時30分くらいに出る予定でいた。外は雨が降っていた。
家で作業着に着替えた。作業着のズボンを注文するときに、太ったときのために少し余裕を持って頼んでおいたのだが、ズボン丈がウエストサイズと連動していると思わなかった。ズボン丈が長すぎて、折り返さないと引きずってしまう。作業着としては不便だが、とりあえず内側に折り返して、様子を見ることにする。
小さなザックにカッパや持って行く荷物を詰めているときに、ふと名刺を持っていないことに気がついた。今日はいろんな人に会うのに、なんてこった。
財布のなかを見たら名刺が2枚だけあったが、2枚では心許ない。それで迷ったが、会社まで車に乗って取りに行くことにした。
ザックに荷物を詰めるのをモタモタしていたので、会社に向かうために車に乗ったのが、もう8時10分だった。外は小雨だった。
会社の守衛に理由を言って、すぐに戻ってくるからと言ったが、やはり書面に時刻とかどこの部署に行くのかを書けと言うので面倒くさいなあと思いながら書いて、鍵を受け取って机まで走った。
部署内は工事中だったので、鍵がなくても入ることができた。
「くそう。なんてこった。」
守衛と話してムダにした数分間がうらめしい。
机のなかから名刺を取り出して、また入り口まで走り、守衛に鍵を渡して、車に飛び乗った。雨はだんだんと激しくなってきた。
家についてから、ザックを持ってすぐに自転車まで走った。久し振りの自転車だった。乗れるのかどうかも少し不安だったが、自転車に乗るといった「体で覚えた記憶」は、小脳がいつまでも覚えているらしい。スムーズに乗ることができた。ただ、雨で道路にある金属製のグレーチングが濡れていて、車輪が滑るのが少し怖かった。
雨で体が濡れてしまうのはわかっていたが、もう諦めていた。
現場は地図で1度見ただけで、うろ覚えだった。
車幅5メートルほどの田舎道のど真ん中を、目的地を探しながら自転車で走っていたら、突然、車が飛び出してきた。危うく死ぬところだった。
車が急ブレーキをかけ、僕もなんとか回避して、「すみません。」と頭を下げた。運転していたお爺さんも驚いたらしく、しばらくは車も動き出さなかった。
現場は川の堤防の上で、僕は堤防の下の場所に到着した。距離は近いが高低差がかなりある。舗装していない砂利道を、自転車で堤防の上にまで登った。
なんとか間に合ったが、息があがっていた。雨もまだ降り続いていた。
「若いなあ。自転車で来るなんて。」
地元の人に冷やかされる。
「カッパを持っているなら、小屋のなかで着替えればいい。」
小屋の中で作業着の上からカッパを着た。
カッパを袋から取り出すときに、妙にきれいにカッパが袋にしまわれているので、どうしてだっけ?と少し考えた。そういえば前の彼女が仕事でどこかに行くときに、このカッパを貸してあげたのだった。「そういうことか。」なぜか溜息が出た。
現場で部下がいろいろと説明をしているのを聞きながら、僕もいろいろと勉強した。堤防の構造とか、計器のこととか知らないことばかりだったので新鮮な気持ちで聞いた。
午前中で、全てが終わった。結局、いろんな人に会うには会ったが、名刺は1枚も使わなかった。雨が上がり、空は曇りだった。カッパはザックにしまい、また自転車に乗って家まで帰った。
家でシャワーを浴びて雨や汗を流し、洗濯をした。それから昼寝をしたら、ぐっすりと眠ってしまった。
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翌朝の日曜日に、ワイシャツ等のクリーニングを頼みに、スーパーのなかにあるクリーニング店に行った。
一応、昨日洗濯した作業ズボンも持って行った。裾上げを頼もうと思ったからだ。
裾上げができるか聞いてみたら、「できますけれど、1200円からになります」と妙に事務的に言われて、「それから1週間はかかります」なんて言われたので、「じゃあ、いいです」と断ってしまった。
帰りの車のなかで、別に1500円だと言われても1週間かかっても頼めばよかったのに、どうして俺は断ってしまったんだろう、と思った。車を走らせながら、裾上げをしてくれそうな店を探したがなかなか見つからない。
大きなスーパーに行った。男物の服を売っている店で頼もうかと思っていた。そこで服を売っているコーナーに行く途中で、ふと「作業着なんだから、作業着ばかり売っているワークマンという専門店に行けばいい」と思い直して、その店に行くことにした。
「でもワークマンで裾上げなんかしてくれるんだろうか?」
ダメならそのときに考えようと思って、とりあえずワークマンに行った。
レジにいるきれいな女の人に裾上げを頼んだら、210円だと言われた。「そんなに安いんだ」と驚いた。話しも簡単だった。
「このくらい切ってください。」裾を折り返しながら頼む。
「このくらい、ですね。」
月曜日にはもうできあがっているという。簡単で安くていいなあ、と思った。
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近藤誠という司法書士の書いた「新米司法書士はるかの事件ファイル」(自由国民社)を読み終わった。
小説のストーリーは凡庸だが、それなりに面白かった。法律知識が楽しく身につく!というキャッチコピーはどうも納得がいかないけれど、司法書士の仕事がよく理解できるという点では優れていると思う。飛び込みの仕事が多いことや、責任の重さ、身勝手なクライアントのことを考えると、この世界も決して楽ではない。
司法書士の友人が仕事の話しになると、いつも顔つきが真剣になる、その意味が少しわかったような気がした。
よく話しには聞く、不動産詐欺というものがどういうものかもわかったが、解決の方法がよくできすぎていて、ちょっと笑ってしまった。こんなに免許証ひとつで何から何までうまくいかないだろう。
あと、本のイラストというのは、読者の理解を深めたり、状況を視覚的に明らかにするために使うものだと思うけれど、この本のイラストはただ「萌え」系のイラストというだけで必要性を全く感じない。俺が編集者だったら1秒でボツにするところだが、著者は喜んでいるようだ。その感覚はよくわからない。
***おまけ***
「新米司法書士はるかの事件ファイル」で不動産詐欺を暴くきっかけとなった運転免許証の数字について
運転免許証には12桁の数字が記載されている。
最初の2桁は最初に免許を取得した都道府県がわかるという。
本のなかでは、「30だから東京都です」なんてはるか先生が言っていたけれど、それを読んで違和感を感じていた。都道府県は47しかないし、普通、東京の番号は13のはずだからだ。
それで調べてみたら、最初の2桁は都道府県別の公安委員会コードらしい。それは、このように振られている。北海道が10番台、東北が20番台、東京が30で、他の関東甲信越が40番台、北陸・中部が50番台、関西が60番台、中国が70番台、四国が80番台、九州・沖縄が90番台になっている。
より具体的には、こうなっている。
10北海道本部、11函館、12旭川、13釧路、14北見、
20青森、21岩手、22宮城、23秋田、24山形、25福島、
30東京、
40茨城、41栃木、42群馬、43埼玉、44千葉、45神奈川、46新潟、47山梨、48長野、49静岡、
50富山、51石川、52福井、53岐阜、54愛知、55三重、
60滋賀、61京都、62大阪、63兵庫、64奈良、65和歌山、
70鳥取、71島根、72岡山、73広島、74山口、
80徳島、81香川、82愛媛、83高知、
90福岡、91佐賀、92長崎、93熊本、94大分、95宮崎、96鹿児島、97沖縄、
00その他
3桁目と4桁目は、初めて免許を取得した年の西暦の下2桁が記載されている。
5桁目から10桁目は謎で、11桁目は偽造かどうかのチェック用数字。
最後の12桁目は、紛失・盗難などによる再交付の回数だという。
自分のを見たら、僕は東京で最初に免許証を取ったので最初の2桁は30だった。それから12桁目に1が入っている。名古屋で仕事をしていたときに免許証を失効させてしまい、再発行を受けたからなのかもしれない。本を読んでいたときには、ここに更新回数が載っているのかと思っていたけれど、更新回数ではなくて、あくまで「再発行」の回数。だから普通は0なんだと思う。