TEDの番組で、人間の体部分には老廃物を運ぶリンパ管が発達しているが、脳にはリンパ管がないことを知った。
https://www.ted.com/talks/jeff_iliff_one_more_reason_to_get_a_good_night_s_sleep/transcript?language=ja
では脳の老廃物は、どうやって除去されるのか。
人が眠ると、脳細胞が収縮する。すると、脳の血管に沿って髄液が流れ、その髄液に老廃物が吸収されるのだという。
「眠ると脳細胞が収縮し、髄液が流れやすくなり、それによって老廃物が除去される」という仕組みに僕はとても感心した。そして、なんだか僕の脳には老廃物がいっぱいあるような気がしてきた。たっぷりと寝て、老廃物を除去しようと思った。
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それからできるだけ夜は長時間、眠るようにした。早いときなど9時台に寝てしまう。
早く寝るようになってから、おかしな夢を多く見るようになった。
僕はおもちゃ工場の屋上にいる。遠くに海が見える。周りにはマンションが建っている。僕は19歳。世間の迷惑も顧みず、大音量で音楽を聴きながら、屋上でぐうたらしている。心のどこかで「きっと誰かに迷惑をかけているだろうなあ」なんて思っているが、僕は気にしない。音楽は同じフレーズが延々とかかっている。
誰かが家のチャイムを鳴らす。夢のなかで、誰かが苦情を言いに来たのだと思う。チャイムが鳴り続ける。僕はそれであわてて起きた。
起きたとき、チャイムだと思っていたのは家にある鳩時計だとわかる。まだ深夜の12時だった。起きた後も夢のなかで聴いていた音楽は頭にこびりついていて、なかなか頭から離れなかった。
そのフレーズは、寝ぼけた声で、キンドルに記録しておいた。
起床した後の冷静な頭で聞き直すと、どことなくナックの「マイ・シャローナ」の冒頭部分に似ている。
これが俺の夜の魂と身体の音楽なのか、と思った。
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今週は係の新年会があった。
想像していたとおり、5次会まで行ってしまい、帰ってきたのは午前になってからだった。
普段、寝ているせいで、こんなときは妙に元気になってしまう。
つまらない街だと普段は思っているが、酔っぱらうと、急に楽しい街で飲んでいるような感覚になる。いつも行くスナックが休みで呆然としていたら、初対面のホステスさんがママの許可を取って同じ系列で格上のスナックに連れて行ってくれる。いつものボトルも運んでくれる。
「今週は、安く飲めるように設定しているのよ。」
ママさんのおかげで贅沢な気分にさせてもらったが、支払いもなかなか格上だった。それでも安く設定してくれているのだとは思った。でももう来れることはないだろう。
最後のラーメン屋でビールを飲んで別れた部下は、職場と家が離れているために、ホテルに泊まることになっていた。
翌朝、職場に行くと、その部下が出勤している。「早いな」と声をかけたら、職場の物置に泊まったのだという。座布団を並べて、布団をかけ、ストーブで暖を取りながら夜を明かしたらしい。
「ホテルは?」
「別れた後、ホテルに電話したら、いっぱいだと断られまして。」
「それなら俺に電話してくれれば、俺の家に泊めたのに。」
俺が飲み過ぎたために犠牲者を増やしてしまった。よく反省したい。
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ネットで、腕時計を衝動買いしてしまった。
カシオのオシアナスで、今でも「おまえなあ、ちゃんと真面目に考えろよ。」と自分に説教したくなるような高い値段だ。
基本的に、時計は止まらないこと、正確であることに価値を見いだしている。
確かに新しいオシアナスは、海外に行っても、現地の電波を拾って正確に時を刻むらしいけれど。
買ってしまったあと、何度もキャンセルすることを考えた。
こんな時計を買うお金があったら、できることがたくさんありそうな気がした。
俺はどうしてこんな愚かな出費をしてしまったのだろう、とずっと悩んでいた。
高級腕時計の原価が、実は相当に低いということも知識としては知っている。
買う必要が本当にあったのだろうか。
木曜日の夜、家にオシアナスが届いた。時計の価値は、見た目ではよくわからない。
金曜日の夜、仕事帰りに、新しいオシアナスを職場近くの時計店に持ち込んでベルトの長さ調整をしてもらう。ついでだからと、古いオシアナスのベルトも直してもらうことにした。
新しい腕時計をはめて店を出ると、少し風景が変わって見えた。高い時計を腕にしていると背筋が伸びるような気がする。時計店から駐車場まで歩きながら、「もう買っちゃったんだから、よかったってことにしよう。」と思った。
「時計とともに新しい時代が始まるんだな、という気がした」と無理矢理に思った。
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そして金曜日、家に帰ってきて少し勉強をしたあと、キンドルでずっと漫画を読んでいた。
夜の10時を過ぎて、そろそろ寝ようかと思っていたら緊急の電話が入った。
電話口で聞いた話は強烈で、かなりの事故だった。逃避したい気持ちが出たのだろう。「俺はもうすでに夢を見ているのだろうか?」という気がしたほどだった。
それからの数十分間は、電話をかけまくった。この事件を処理するには俺が先頭に立たなければならないことが認識できたので、覚悟を決めて対応方針を決めた。それから、ジャンパーをつかむと職場まで車を飛ばした。
職場には既に1人、部下が出勤していた。指示を出して、あちこちからの連絡が来るまで待機をしていた。
結果的には、大したことはなかった。あちこちに連絡をし直し、自宅待機組にも解除連絡をした。部下を帰したあと、まだ残業していた他部署の男と話をしていた。
暗いなか、現地にパトロールに行っていただいた委託先の方から最終の報告を受け、僕も帰った。家に着いたのはもう12時を過ぎ、1時近かった。
脳が興奮していたせいかなかなか寝付けず、いつまでも漫画を読んでいた。何時に寝たのかはよく覚えていない。
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小玉ユキの「坂道のアポロン」(フラワーコミックス)を全巻(9巻まで)読んだ。
時代は1960年代。その頃の高校生や大学生の姿を描いている。それぞれに様々な事情を抱えながらも、恋やジャズにのめり込んでいく男達の青春は、甘く苦い味がする。
ピアノが弾けたらなあ、と僕はいつも思う。漫画のなかで主人公がジャズピアノを弾いている姿がうらやましくてならなかった。
読み応えのあるしっかりとした漫画で、多少、少女漫画特有の甘さは感じるけれど読む価値があると思う。
僕はこの漫画を読んで、恋の感覚を思い出した。こんな感覚は中学生くらいで忘れてしまっていた。それから、俺も本当は洗練されていない、田舎っぽい女の子が好きだったんだなあ、と漫画を読みながら思った。今では見かけることもないけれど。
なんだか、とてつもなく大きな忘れ物をしてきたような気がする。それを取りに戻ることはもうできない。ただ、この漫画を読んで、僕は忘れ物をしていたことに気がついて、よかったように思う。後悔は募るけれど。
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診療情報管理士の勉強を始めた。半ば承知していたが、思ったよりも勉強に時間が必要だ。「もっと前から勉強していれば楽だったのに」と思っても仕方がないことを思う。
とにかく今は勉強するしかない。頑張りたいと思う。