監督:水田伸生
主演:中島健人、堤真一、池田エライザ、山崎育三郎、中島歩、美波、尾野真千子
 

人気作家・真保裕一の同名小説を「アイ・アム まきもと」「謝罪の王様」の水田伸生監督が映画化し、政治家一族の孫娘誘拐事件の行方を描いた社会派サスペンス。

政治家一族である宇田家の次男・晄司は建築会社を設立したものの倒産し、政治スキャンダルの渦中にいる国会議員の父・清治郎の秘書を務めながら煮え切らない日々を過ごしていた。そんなある日、宇田家の長女・麻由美の幼い娘が誘拐されてしまう。犯人の要求は身代金ではなく、翌日の午後5時までに記者会見を開いて清治郎が犯した「罪」を告白しろというものだった。それは国家を揺るがすほどの罪で、権力に固執する清治郎は口を開こうとしない。晄司は家族の命を救うため、罪に隠された真相を暴くべく立ちあがるが……。(映画.com)

 

2023年製作/101分/G/日本
配給:松竹
劇場公開日:2023年10月20日

 

 

自白しても政治腐敗は拭えず 

 

前から気になってはいたが、
劇場公開時には鑑賞が間に合わなかった。
 
アマプラに上がっていたので鑑賞。
思っていたのとは違ったので、
結果、映画館に行かなくて良かった。
 

 

  グッと来た点

 

①途中までは面白い
 
身代金目的ではなく、
政治の罪を自白させるというアイディアが良かった。
 
迫り来るタイムリミットの中で追い込まれていく悪徳政治家、
その周辺で起こるのテンポも良く、
第2回の記者会見位までは面白かった。
 
 
②政治の闇は拭えない
 
宇田の自白によって、
首相は退陣となり、
新たな首相に官房長官がつく。
 
しかし、この官房長官も政治の闇のどっぷり浸った人物で、
政治というものが、権力と駆け引きの世界で、
綺麗ごとではないドロドロした感じをそのまま表現しているのが良かった。
 
幹事長室のポスターに笑顔の議員の写真に「明るい日本」と書かれているのが、
皮肉マシマシで良かった
 

 

  惜しい点

 

①オチが弱い
 
犯人は町工場の兄弟。
 
自分たちの父親を殺して、
その死体を埋めた場所が掘り返されてしまうかもしれないという事で、
予定されていた工事を中止させるために宇田の自白を強要したというものだった。
 
が、特にトリックがあるというわけでも、
そして、町工場の兄弟が救われるものでもないので、
途中まで面白かった展開が、
犯人逮捕後に一気に冷めていった。
 
 
②痛快さがない
 
町工場の兄弟、
つまり庶民は人生に絶望するが、
政治家は宇田とその家族以外は、
対したダメージもなく幕を閉じる。
 
もう少し政治家サイドに大ダメージが入る内容の方が、
庶民的には痛快だった。
 
昨今の裏金問題のニュースからも、
いち庶民としてこの程度のダメージでは全く物足りなかった。
 
 

  感想

 

最初のフリが良かっただけに、
政治ドラマにしてしまえば見応えをキープできたのにと思った。
 
ラストで犯人に庶民を絡めてしまったから、
急にスケールも小さくなったし、
怒りの矛先が曖昧になり、
痛快さまで失ってしまった印象。
 
初速が良かっただけに、後半の失速が非常に惜しい。
 
原田眞人監督が撮ったら、
もっとヒリヒリした感じになったんじゃないかな。