他者の足を引っ張る日本人
オーバーツーリズム、つまり観光客がその地におし寄せることで住民の生活に悪影響を及ぼす現象が社会問題になっている。元は大都市に発生しやすい問題だったが、政府の政策が功をなし旅行客が地方都市にも押し寄せている現状では日本全土の問題と言ってもいいだろう。特に住民を不満にさせているのが日帰り旅行。宿に宿泊しないためその街にお金が落ちにくく、ただ混雑だけが発生して経済効果が乏しいという最悪の状況を生み出している。旅行客のマナーが悪く、住民が不快になるという問題もある。そのようなオーバーツーリズム現象に我慢の限界に達した北海道・美瑛町の住民は、観光地を破壊するという暴挙に出た。観光地シラカバ並木の伐採人口約9000人の北海道美瑛町では、年間で町民の210倍もの観光客を受け入れていた。しかし先にあげた問題が地元民の生活に影響を及ぼしていることに苛立ち、住民はその地の観光名物だったシラカバ並木40本を伐採した。確かに、この地にオーバーツーリズムがもたらす弊害が存在したことは事実なのだろう。しかしその対策として美しい自然と調和していたシラカバの木を全て伐採するという暴挙に出るのは、はっきり言って異常と言わざるを得ない。そもそも、観光地を破壊することでかえって混雑が増大するのではないだろうか?今まであった観光地が消滅すれば、観光客は別の観光地へと赴く。シラカバ並木があった場所そのものの混雑は緩和されても、少し離れた他の観光地にその分の人がプラスで集中するため「混雑緩和」という観点で見れば本末転倒というか、全く根本的な解決になっていないことは想像に難くない。私はこの、住民による観光地破壊の裏には、もっと複雑な感情的問題が潜んでいるのではないかと考える。旅行に行く時間的・金銭的余裕のある人に対する嫉妬大阪大学の研究によると、日本人は他の民族に比べて「他人の足を引っ張る傾向」が強いという。要するに、自分が日々忙しく働いている中で、旅行に行く時間を確保でき、かつそれだけの金銭的余裕のある人に対して、自分でも気づかないまま日頃から鬱憤を貯めてはいなかっただろうか?そんな人たちが自分が住んでいる地域まで足を運び、楽しそうに写真を撮ったりしながら盛り上がっている状況を見て、心の中に黒い感情が芽生えはしなかっただろうか?別にそれ自体は悪い感情ではない。日本人に限らず、人間である以上他者を羨む、妬む気持ちは誰だって持っているものだし、それが向上心につながることもある。しかしそれが悪い方向に働いた結果、「地域の快適さを守る」という大義名分で嫉妬心をカモフラージュさせ、観光地を破壊するに至ったのではないだろうか?自分たちが今まで指を咥えて眺めていた楽しそうな観光客に制裁を加えることを、心のどこかで楽しんではいなかったか?私は、この自分の解釈があながち間違っているとは思わない。町が混雑を助長するだけで経済効果を受けられないのなら、観光を有料にすればいい。またマナー違反をした観光客からは罰金を徴収すればいい。それだけでも少しは混雑緩和、経済的恩恵をもたらすだろう。そのような対策を施すよりも観光地を破壊することを選んだその背景には、制裁を加えたい・一矢報いたいという、人間、特に日本人が抱える心の闇があるような気がしてならない。伐採されたシラカバ並木の写真