ビットコインは金のデジタル版だと言われるが、その所以はビットコインの発行量には制限が設けられており、2100万枚以上発行されないようプログラムされていること、特定の発行者がいないため信用リスクがないことにある。

 

 

つまり金と同様に有限かつ誰かの負債ではない資産であり、それ故金と同じ役割を果たす、金のデジタル版であると認識されている。

 

 

 

しかし僕はビットコインが金と同じ役割を担えるかどうか疑問に思っている。

 

 

 

 

金とは戦争のための通貨であり、有事の金と言われるように地政学リスクが高まると投資家や各国の中央銀行等が資産を保全するために買う傾向にある。

 

 

 

 

第二次世界大戦時、どの国が勝つか(つまりどの国の通貨を持っていれば安全なのか)分からなかった時代において、イギリスや他のヨーロッパ諸国の中銀は外貨を金としてスイスに保管していた。

 

 

 

(ちなみに有史以来一度も価値がゼロになったことがない資産は金だけだ)

 

 

 

 

一見すると、発行量が決まっているビットコインも金と同じ性質を持ち合わせているため、戦時下では資産の一部をビットコインに変えることは理にかなっているように感じられるかもしれないが、ビットコインシステムの根幹を担っているのはブロックチェーンに送金データ等を記録するためのマイニングという作業だ。

 

 

 

 

つまり、一定期間に行われた送金等、誰がいくらビットコインを保有しているかの情報を複雑な計算を用いて箱詰めし、それをチェーンの最後に連結させるのだが、これを一番早く行なった人に一定のビットコインが報酬として支払われる仕組みだ。

 

 

 

 

ただ戦時下において、もし有り金をビットコインに換金しようとしても、それをマイニングしてくれる人がいなければいつまで経っても取引が完了しないことになる。

その結果、流動性が極端に低下し、ビットコインシステムは破綻するだろう。

 

 

 

 

実際2020年、コロナウイルスが蔓延し市場がパニックに陥った時、ビットコインも一時的に50%以上下落したが、その原因は投資家の投げ売りに加えてマイニング参加者が減ったことが挙げられている。

 

 

 

 

つまりビットコインシステムはマイニングを行ってくれる人が存在することが前提となっており、万が一第三次世界大戦でも起きた場合に、膨大な電力を食うマイニングにいそいそと勤しむ人間がどのくらいいるか、正直あまり期待しない方がいい。

 

 

 

 

そもそもビットコインが全て発行し尽くされた時(2150年ごろと言われている)、それ以上マイニング作業をしても報酬としてビットコインが貰えないのであれば一体誰がマイニング作業をしてくれるというのかなど、その後のシステムを維持するには結局のところ大幅なシステム変更を余儀なくされるはずであり、そのような意味において、ただ存在するだけで価値がある金とは仕組みが根本的に異なる部分が多い。

 

 

 

 

ブロックチェーン技術も、それを基盤としたビットコインシステムも非常に精巧に作られており、世界を変える可能性を秘める素晴らしいものではあるが、金と同じ役割を果たしてくれるかどうかという点ではあまり期待しない方がいいと思う。