分子栄養学のススメ -10ページ目

分子栄養学のススメ

分子栄養学の確立者である三石巌によって設立された会社“メグビー”のブログです。

季節の変わり目で寒暖差が大きくなってくると、くしゃみ・鼻づまり・鼻水が止まらない・・・そんなことはありませんか?

 

ひょっとするとその症状は「寒暖差アレルギー」かも知れません。

 

そこでまずは、アレルギー性鼻炎との違いをご紹介します。

 

「アレルギー性鼻炎」と「寒暖差アレルギー」は何が違うの?

「アレルギー性鼻炎」とは?

 
「アレルギー性鼻炎」の主な原因は、抗原抗体反応によるものです。

空気中に浮遊する花粉やハウスダストなどの原因物質「アレルゲン」を吸い込み、その成分が鼻の粘膜から体内に入ることによって、「鼻水・鼻づまり・くしゃみ」などの症状が引き起こされる病気です。
 
通年性アレルギー性鼻炎(一年を通して症状が出るタイプ)と、季節性アレルギー性鼻炎(特定の季節に症状が出るタイプ、いわゆる花粉症)とがあります。
 

<アレルギー性鼻炎が起こるしくみ>

「目でみるからだのメカニズム」堺 章 (著)
 
アレルギー性鼻炎は、上記イラストのようなしくみによって起こります。

抗原(花粉、ダニなどのアレルゲン)を吸い込み、アレルギー抗体(IgE)がすでにできている人が、また同じ抗原を吸うと抗原と抗体が結合し、肥満細胞好塩基球から化学伝達物質が出ます。

化学伝達物質は、鼻粘膜に分布している三叉神経を刺激して「くしゃみ」や毛細血管や分泌腺なども刺激し、血管が拡張、「鼻水、鼻づまり」などの症状を起こします。

※肥満細胞
別名マスト細胞とも呼ばれ、アレルギー反応に深く関与しています。
肥満細胞表面には、IgEと呼ばれる免疫グロブリン(免疫に関与するタンパク質)が付着し、アレルゲンと反応すると、ヒスタミンなどの化学伝達物質を放出します。

※好塩基球
白血球の一種で特定の抗原に出会うとヒスタミンなどが放出され、アレルギー反応が起こります。

※ヒスタミン
血管を広げ、血管の透過性を亢進する働きがあり、知覚神経を刺激して痒みを起こしたり、覚醒と食欲にも関与しています。


※三叉(さんさ)神経
顔の触覚や痛覚、冷熱感、口腔(口の中)・鼻腔(鼻の中)の感覚などを脳に伝えています。


三石巌は「アレルギー性鼻炎」に悩む人には次のような対策をおすすめしておりました。

 

アレルギー性鼻炎で悩む人は、鼻粘膜が過敏だと言われています。
粘膜表面が乾くと刺激を感じやすくなります。

粘膜は粘液によって保護されています。
粘膜分泌担当細胞の働きを助けるのはビタミンAです。


アレルギーの症状は、ヒスタミンが引き金によって、自律神経を介して引き起こされます。
ヒスタミンは「ビタミンC」によって分解されます。


自律神経のバランス調整には、「ビタミンA、ビタミンB群(B1・B2・B12・ニコチン酸・パントテン酸・葉酸)、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、ミネラル(マグネシウム、亜鉛、ヨード)」などの摂取が欠かせません。


アレルギー体質の人は、T細胞産生遺伝子の個体差によるビタミンの必要量が大きいので、特に「ビタミンE」の摂取強化がおすすめです。


さらに、炎症が起こると活性酸素の発生量が増えるため、活性酸素除去の働きがある「ビタミンC、ビタミンE、βカロチン、植物性ポリフェノール」などが必要です。


※綿棒にビタミンEオイルをつけて、直接鼻粘膜に塗布する方法もおすすめです。
 

「寒暖差アレルギー」とは?

アレルゲンが原因ではない?


「寒暖差アレルギー」とは、医学的には「血管運動性鼻炎」と呼ばれています。


アレルギー性鼻炎とは異なり、アレルゲンによる免疫異常を原因とせず鼻炎を引き起こす病態です。

 

そのため、検査をしてもアレルゲンの特定ができず、鼻水中の好酸球(アレルギーの場合は陽性)は陰性となります。

寒暖差アレルギーは、自律神経の乱れ(特に副交感神経の亢進)によって起こると言われています。

自律神経とは、脳からの指令を受けて、全身の臓器や筋肉の働きを調節する神経です。


自律神経には2種類あり、活動時や昼間に活性化して全身を緊張させるのが「交感神経」、安静時や夜に活性化して全身をリラックスさせるのが「副交感神経」です。


交感神経は血管を収縮し、副交感神経は血管を拡張し・血圧の低下・心拍数の減少にはたらき、この二つの神経が内臓や血管の働きをコントロールしています。

鼻の粘膜にある血管の収縮・拡張も自律神経によってバランスが保たれていますが、寒暖差が大きいと鼻の粘膜の血管の収縮・拡張が環境に対応できなくなり、くしゃみ・鼻水などの寒暖差アレルギーの症状があらわれます。


さらに、食欲不振、頭痛、蕁麻疹などの症状がみられることもあります。


一般的に、7℃以上の寒暖差があると発症しやすいと言われ、日中と朝晩の気温差が激しい日が続く今の季節は、注意が必要です。

寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)の治療は、原因が不明な場合が多く、症状を抑える対症療法(一時的な症状の消失・緩和)が基本となります。
内服薬として自律神経の働きを整える抗ヒスタミン薬、鼻の炎症を抑える点鼻薬として副腎皮質ホルモン(ステロイド)薬が処方されるケースが多いようです。
薬物による治療を行っても改善がみられない場合は、レーザーや電気で鼻の粘膜を焼くといった手術が行われることもあります。
薬の長期的な服用は、副作用のリスクや解毒に関わる臓器への負担が高まることが考えられるため、できれば服用を避けていきたいものだと思います。

寒暖差アレルギーは、自律神経の乱れによる影響が主な原因と考えられるため、自律神経を整える対策などが必要になります。

<栄養対策>
●自律神経の正常化(ビタミンB群(特にB12)、レシチン、ミネラル(カルシウム、マグネシウム)


※自律神経を正常化する栄養対策についてはこちらをご覧ください。
 

 

 


●ストレス対策(良質タンパク、ビタミンC、ビタミンE)
 ストレスは、自律神経を乱す大きな要因です。

 

体内で、ストレスが発生すると良質タンパク、ビタミンC、ビタミンEによって抗ストレスホルモンが合成され、ストレスから身体を守ります。

 

まずは、ストレスに感じることは避け、解消することが大切です。


また、抗ストレスホルモンの合成が十分に出来るように準備しておくことで、ストレスを受けても自律神経への影響は軽減されることにも繋がります。

●炎症対策(ビタミンC、ビタミンE、植物ポリフェノール、コエンザイムQ10、カロチノイド)


鼻炎は、文字通り炎症により症状が引き起こされます。

 

炎症部には、活性酸素という正常細胞にまでも傷害を与えその働きを失わせてしまう物質が多く発生しています。


そのため、炎症が長引くと傷害を受ける範囲が増え、傷ついた組織は刺激に過敏になってしまうため、抗酸化物質を十分に確保し細胞の保護を強化することが大切です。

●鼻粘膜の強化(良質タンパク、ビタミンA、ビタミンB群(特にB2)、ビタミンC、レシチン、亜鉛、鉄)


アレルギー性鼻炎も寒暖差アレルギー(血管運動性鼻炎)も粘膜の状態が症状を大きく左右します。


粘膜は4〜6日で古い細胞から新しい細胞へと入れ替わり、皮膚は28日、赤血球は120日程度掛かることからも、代謝回転(作り替え)が非常に早い組織であることが知られています。


そのため、作り替えに必要な材料が不足してしまうと、古い組織のままになってしまうことや使い古した材料をリサイクルして再合成するため粘膜組織は弱くなってしまいます。


弱っている粘膜は、刺激(花粉、ダニ、冷たい空気など)に対して過敏に反応しやすくなるため、粘膜の状態は鼻炎対策をする上で大変重要な要素です。

自律神経を整えるには、栄養に加え、適度な運動、規則正しい生活を送ることも大切です。

●適度な運動
適度な運動は、ストレスの発散になる他、自律神経のバランスを保つトレーニングにもなります。

 

運動時は交感神経が高まり、運動後は副交感神経が高まるというように、自律神経の切り替えが行われています。


交感神経と副交感神経の切り替えを促すことで、自己訓練にも繋がり、自律神経の安定化を保つことができます。

 

運動が苦手な方は、呼吸に気をつけるだけでも効果があると言われています。

●規則正しい生活
自律神経は、体内時計(概日リズム)と連動して、身体のさまざまな働きを調節しています。

 

就寝、起床、食事は、体内時計をリセットしたり整えたりするタイミングになりますので、これらを規則的に行うことは自律神経のバランスを整えることにも繋がります。

また、温度差が大きいと「寒暖アレルギー」の症状が出やすくなりますので、身体をなるべく冷やさない工夫が大切です。

 

特に首・手首・足首を温めて血流をよくしましょう。



身体を温める方法については「温活のススメ」に詳しく記載しておりますので、あわせてご覧ください。

 

 

私たちの体は、骨も血液も筋肉も、細胞が日々少しずつ入れ替わっています。
そのため、毎日の食事から栄養素を補給することがとても大事です。
細胞を新しく造り替える際に必要な材料(栄養素)が不足すると、その組織が弱くなり、様々な症状が現れる原因となります。

例えば老眼は、水晶体の弾力性が弱まって調節機能が低下し、近いところが見えにくくなる症状ですが、三石巌「老化と活性酸素」(阿部出版)の中で、「少なくとも初期であれば、栄養条件の改善で良くなるのが普通であり、高タンパク食を摂ることが大事である」と提言しています。

眼の組織づくりには、良質タンパクを土台に、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンA、ミネラル(亜鉛、クロム等)などが必要です。普段からこれらの栄養素に不足が起こらないよう摂取することで、眼の組織強化につながります。

■良質タンパク:組織の材料として、最も重要な役割を持つ
■ビタミンA:角膜保護成分を作る(ドライアイ予防)
■ビタミンB群:視神経や筋肉(毛様体筋)の疲れをとる
■ビタミンC:硝子体(ヒアルロン酸、コラーゲンなど)を維持する
■ミネラル(亜鉛、クロム等):亜鉛はビタミンAの視覚作用に、クロムは角膜の機能維持に関与する

 

眼に良いとされるカロチン、ルテイン、ブルーベリー・・・何が違うの?

 

眼の水晶体や網膜にはカロチノイドが含まれています。
カロチノイドとは、食品に含まれているなどの色素成分で、カロチン類(アルコールに溶けない)とキサントフィル類(アルコールに溶ける)に大別されます(下表)。

 

 

◎カロチン類の代表格「ベータカロチン」

抗酸化作用があり、目の角膜や皮膚など、全身の粘膜を健康に保ちます。
緑黄色野菜に豊富で、体内でビタミンAに変わりますが、ビタミンAの摂取が十分であれば、ベータカロチンからビタミンAへの変換にはブレーキがかかります。

そのため、ビタミンAは動物性食品(乳製品や卵など)からきちんと補給し、ベータカロチンには抗酸化作用を期待するのが賢明です。
 

◎眼の黄斑部に多い「ルテイン」

黄斑部には黄斑色素と呼ばれるルテインが多く、光を遮るフィルター役となり、抗酸化作用によって保護しています。

ルテインは、二重結合を多くもつ分子構造により、活性酸素を除去します。
ロドプシン(光を受容する色素タンパク質)や網膜の神経細胞を守り、炎症性サイトカイン(腫瘍壊死因子〈TNF〉、インターロイキン〈IL〉など)の産生を抑えて網膜保護に働く抗炎症作用も認められています。
 

◎強力な抗酸化作用「アスタキサンチン」

ルテインと同じくキサントフィル類のアスタキサンチン赤橙色の天然色素で、抗酸化作用抗炎症作用が認められています。

アスタキサンチンの抗酸化力は強力で、ルテインの約3.5倍とされています。

長時間に及ぶパソコンやスマートフォンの利用頻度が高い現代人の眼精疲労や調節機能改善が確かめられています。

 

◎カロチノイドの相乗効果

カロチノイドは、緑黄色野菜に含まれるベータカロチンやルテイン、鮭などに含まれるアスタキサンチンなど、種類は様々です。

異なるカロチノイド同士を併せて摂ると、相乗効果が生まれ、抗酸化力などがより一層高まります

◎カロチノイドと混同しやすい?「ポリフェノール」

ポリフェノールは、水酸基(OH基)を複数持っているのが化学構造上の特徴です。

この水酸基が、活性酸素を捕らえ、強い抗酸化作用を発揮します。
 

ポリフェノールは、植物が紫外線などの刺激から身を守るために、光合成によって作られ、植物の色素や苦味・渋みなどの成分に多く含まれています。
数多くの種類があり(アントシアニン、カテキン、イソフラボンなど)、それぞれが独自の作用を持っています。

◎アントシアニンが多い「ブルーベリー」

アントシアニンは、ポリフェノールの一種で、毛細血管を強化し、血行を改善します。

ロドプシンの再合成を活性化させたり、網膜細胞の血流をよくします。疲れ目の予防と改善、視力回復効果が分かっています。
 

アントシアニンは、ブルーベリーに多く含まれますが、カシスなどのベリー類や、ナスの皮、紫キャベツなどにも含まれています。

<参考書籍>
「見てわかる!栄養の図解辞典」(PHP研究所)

 

 

 

厚生労働省より発表されている「日本人の食事摂取基準」ではビタミンCの推奨量として1日に100㎎(12歳以上の男女の場合)とされています。
しかし、分子栄養学ではもっと多くのビタミンCの摂取を勧めています。
ビタミンCは水溶性ビタミン(水に溶けやすく、油脂には溶けにくい性質のビタミン)のため、毎日摂取する必要があります。
ビタミンCを大量に摂取しても尿から捨てられてしまうから無駄ではないか?というご質問をたまに受けますが、私たちの身体はそう単純にはできていません。
尿から排出されるということは、吸収され、体内を回り、腎臓で尿として濾し取られたということなのです。



 

ビタミンCの吸収率

ビタミンCは1回で吸収できる量が決まっていると言われており、30~180mg経口摂取した際は、70~90%吸収されますが、1000mg以上5000mgまで摂取量を増量すると、吸収率は漸減し21%まで低下するといわれています。しかし、180mgで90%吸収できても162mgしか吸収できていないことになり、5000mg摂取して21%しか吸収できなかったとしても1050mgは摂取できていることになります。
吸収率は摂取量が増加するとともに減少しますが、トータルでの吸収量は、摂取量に比例することになります。



ビタミンCが体内で合成できるとすると・・・

ヒトは体内でビタミンCの合成をすることはできませんが、モルモットやインド産のコウモリなどの例外を除けば、サルとヒト以外の動物はビタミンCの合成能力を持っています。
動物進化の過程でビタミンC合成酵素が失われたと考えられています。
ラットの肝臓が1日に合成するビタミンCの量を体重60㎏の成人の場合に換算すると1.7〜3.4g(1700〜3400㎎)となります。これだけのビタミンCを摂取していれば、ストレスのない状態であれば、ビタミンCの血中濃度は保たれますが、ストレスがある場合には必要量は跳ね上がります。
このように、ストレス社会で生きている私たちにとっては㎎単位のビタミンCではなく、g単位のビタミンCが必要であると考えられます。


必要量には個体差がある

私たちの身体は全員同じではありません。
両親から受け継いだ遺伝子を基に動いています。
また、人それぞれ状況も違います。
ストレスが多くある人もいれば、ほとんど感じていない人もいます。
そのため、ビタミンの必要量にも個体差が出てきます。
水溶性ビタミンの必要量は1〜100、脂溶性ビタミンの必要量は1〜10という個体差があると言われています。
ストレスを感じると副腎から抗ストレスホルモンであるコルチゾン・コルチゾールが分泌されます。このコルチゾン・コルチゾールの合成にビタミンCが必要になり、ストレス時には大量消費が起こります。そのため、ストレスが多い人はそれだけ多くのビタミンCを摂取することが必要になります。
なお、抗ストレスホルモンの合成には良質タンパク、ビタミンC、ビタミンEが必要です。

ストレスについてはこちらのブログも参考にしてください。
コロナ鬱になる人、ならない人 | 分子栄養学のススメ (ameblo.jp)

合成品と天然品の違い

ビタミンCを合成できる動物の体内ではブドウ糖(D-グルコース)からビタミンCを合成していますが、植物は果糖(D-フルクトース)から合成しています。
また、合成品と言われるビタミンCは様々な合成方法がありますが、主にブドウ糖(トウモロコシデンプンなど)から微生物による発酵によって合成されています。


動物が合成するビタミンCも植物が合成するビタミンCも合成品と呼ばれるビタミンCもすべて同じビタミンC(L-アスコルビン酸)であり、体内での化学作用についても違いはありません。

ビタミンCはどれくらい摂取すればいい?
 

通常、ビタミンCの必要量は1日に2g〜10gと考えています。
それでは、自分にとってどれくらいが必要なのか?ということですが、ビタミンCには最大耐容量というものがあります。これは、経口でビタミンCを摂取した場合、下痢が起きない限界量のことを指します。
ビタミンCは天然の便秘薬と言われ、腸の蠕動運動を促す働きがあり、大量に摂取するとお腹が緩くなったり、下痢を起こします。
ビタミンCの摂取でお腹が緩くならない量を必要量と考えるとわかりやすいと思います。
ただし、この必要量は状況に応じて変化し、ストレスが多い時や風邪をひいたときなどは増えるため、体調の変化に応じてビタミンCの摂取量も変えていくことが大切です。

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参考
厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』HP
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c03/16.html