私たちの体は、骨も血液も筋肉も、細胞が日々少しずつ入れ替わっています。
そのため、毎日の食事から栄養素を補給することがとても大事です。
細胞を新しく造り替える際に必要な材料(栄養素)が不足すると、その組織が弱くなり、様々な症状が現れる原因となります。
例えば老眼は、水晶体の弾力性が弱まって調節機能が低下し、近いところが見えにくくなる症状ですが、三石巌は「老化と活性酸素」(阿部出版)の中で、「少なくとも初期であれば、栄養条件の改善で良くなるのが普通であり、高タンパク食を摂ることが大事である」と提言しています。
眼の組織づくりには、良質タンパクを土台に、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンA、ミネラル(亜鉛、クロム等)などが必要です。普段からこれらの栄養素に不足が起こらないよう摂取することで、眼の組織強化につながります。
■良質タンパク:組織の材料として、最も重要な役割を持つ
■ビタミンA:角膜保護成分を作る(ドライアイ予防)
■ビタミンB群:視神経や筋肉(毛様体筋)の疲れをとる
■ビタミンC:硝子体(ヒアルロン酸、コラーゲンなど)を維持する
■ミネラル(亜鉛、クロム等):亜鉛はビタミンAの視覚作用に、クロムは角膜の機能維持に関与する
眼に良いとされるカロチン、ルテイン、ブルーベリー・・・何が違うの?
眼の水晶体や網膜にはカロチノイドが含まれています。
カロチノイドとは、食品に含まれている赤、黄、緑などの色素成分で、カロチン類(アルコールに溶けない)とキサントフィル類(アルコールに溶ける)に大別されます(下表)。
◎カロチン類の代表格「ベータカロチン」
抗酸化作用があり、目の角膜や皮膚など、全身の粘膜を健康に保ちます。
緑黄色野菜に豊富で、体内でビタミンAに変わりますが、ビタミンAの摂取が十分であれば、ベータカロチンからビタミンAへの変換にはブレーキがかかります。
そのため、ビタミンAは動物性食品(乳製品や卵など)からきちんと補給し、ベータカロチンには抗酸化作用を期待するのが賢明です。
◎眼の黄斑部に多い「ルテイン」
黄斑部には黄斑色素と呼ばれるルテインが多く、光を遮るフィルター役となり、抗酸化作用によって保護しています。
ルテインは、二重結合を多くもつ分子構造により、活性酸素を除去します。
ロドプシン(光を受容する色素タンパク質)や網膜の神経細胞を守り、炎症性サイトカイン(腫瘍壊死因子〈TNF〉、インターロイキン〈IL〉など)の産生を抑えて網膜保護に働く抗炎症作用も認められています。
◎強力な抗酸化作用「アスタキサンチン」
ルテインと同じくキサントフィル類のアスタキサンチンは赤橙色の天然色素で、抗酸化作用と抗炎症作用が認められています。
アスタキサンチンの抗酸化力は強力で、ルテインの約3.5倍とされています。
長時間に及ぶパソコンやスマートフォンの利用頻度が高い現代人の眼精疲労や調節機能改善が確かめられています。
◎カロチノイドの相乗効果
カロチノイドは、緑黄色野菜に含まれるベータカロチンやルテイン、鮭などに含まれるアスタキサンチンなど、種類は様々です。
異なるカロチノイド同士を併せて摂ると、相乗効果が生まれ、抗酸化力などがより一層高まります。
◎カロチノイドと混同しやすい?「ポリフェノール」
ポリフェノールは、水酸基(OH基)を複数持っているのが化学構造上の特徴です。
この水酸基が、活性酸素を捕らえ、強い抗酸化作用を発揮します。
ポリフェノールは、植物が紫外線などの刺激から身を守るために、光合成によって作られ、植物の色素や苦味・渋みなどの成分に多く含まれています。
数多くの種類があり(アントシアニン、カテキン、イソフラボンなど)、それぞれが独自の作用を持っています。
◎アントシアニンが多い「ブルーベリー」
アントシアニンは、ポリフェノールの一種で、毛細血管を強化し、血行を改善します。
ロドプシンの再合成を活性化させたり、網膜細胞の血流をよくします。疲れ目の予防と改善、視力回復効果が分かっています。
アントシアニンは、ブルーベリーに多く含まれますが、カシスなどのベリー類や、ナスの皮、紫キャベツなどにも含まれています。
<参考書籍>
「見てわかる!栄養の図解辞典」(PHP研究所)