フード左翼とフード右翼(朝日新聞出版)
- フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人 (朝日新書)/朝日新聞出版
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日本人を食の嗜好から大胆に二分している(実際には中身を見ると四象限に分類しているが)。
フード左翼とは、どちらかというと自然食を好む層。比較的、食に金と時間をかける。
フード右翼とは、どちらかというとジャンクフードを好む層。比較亭、色に金と時間をかけない。
この二つの層に日本人は分かれており、それぞれの層で食だけではなく、政治思想が異なるという主張。
内容については賛否あろう。
食と政治の関係性に興味がある人にはおすすめする。過去(特に1990年代)からの経緯も丁寧に記述してあるので、食文化の変遷を社会の変化の観点から考えたい人には面白いと思う。
ただ、それ以外の人には必ずしもおすすめしない。
タイトルがキャッチ―でマスっぽい割には、そういう意外とターゲットの狭い本だと思う。
さて、この本については、内容ではなく、この大胆な二分という試みについて経営コンサルタント視点で考えてみたい。
経営コンサルタントも「〇〇〇は三つ」とか幾つかに単純化して分類してしゃべることはよくある。
(経営コンサルタントは、この本のように二つに分類するよりも、なぜか三つに分類することが多い。または四象限にして四つか)
この分類するということの効用はなんであろうか。
それは、認知限界を補うことである。
あらゆるものは個性があってユニークな存在なのであるという主張は得てして正しい。ただ、そうであれば、その一つ一つのユニークさを理解したり、そのユニークさに応じてテーラーメードの議論をしなくてはならず、それは人間の認知の限界を超えている。
そこで、複雑で一つ一つがユニークなものの中で、類型を見出し、それにラベルを張ることで、人は認知限界を補い、理解や議論を可能にしている。
では、分類は常によいものかといえば、そうではない。
分類することで犠牲にしているものはなんであろうか。
それは、固定観念をつくってしまうことである。いわゆる「レッテルを張る」というやつである。このレッテルを張る状態になってしまうと、なんでも先入観をもって理解してしまい、その先入観がおかしいときには物事を誤解してしまうのである。
フード左翼とフード右翼も面白い分類である。ただ、そればかりに気をとられ、他の分類の仕方も柔軟に使いこなさなくては固定観念で物事をみて、物事を誤解してしまうことになる。これは、分類を使う側が理解しておかなくてはいけないことである。
経営行動(ダイヤモンド社)
- 新版 経営行動―経営組織における意思決定過程の研究/ダイヤモンド社
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昨日紹介した「会社を変える会議の力」(講談社)でも引用されていたサイモンの意思決定論の本。
この本自体は第四版の翻訳本で、相当に古い本だが、ちょっと小難しい経営の本に興味がある人にはおすすめしたい。
サイモンはノーベル経済学賞を受賞した経営学者。
ノーベル賞受賞の業績はこの本などで議論されている「限定合理性」という概念。
昨日紹介した「会社を変える会議の力」でもうまくまとめられているので興味がある人はそちらを読むとよいが、要は、意思決定は経済学が想定するほどに合理的ではなく、制約された中でギリギリ満足できる範囲の結論を落としどころにしているという主張。
わかりやすいのは選択肢の制約かな。
美味しいものを食べるのが目的であれば、美味しいものを出す店を果てしなくリストアップしてそれらの中から選んで食べるのであろうが、どんな店があるかは全部はわからないので、日々の意思決定では限られた選択肢の中から選んでいるということ。
経営コンサルタントの視点でこの限定合理性を捉えると、巷で言われる「客観性」と「合理性」という言葉の使い方について考えさせられる。
巷では、「経営コンサルタントは客観的だよね」とか、「経営コンサルタントは合理的だよね」とか言われている。
しかし、経営コンサルタントとしては、「合理的」であることは必要条件だが、「客観的」であることは必要条件ではない。
経営コンサルタントは問題を解決するという目的に対して、一直線に考える。ある意味で合理的だ。ただし、限定合理的だ。選択肢を果てしなく追い求めることはしない。ましてや、「客観的にみて、これで選択肢は全部です」なんて言わない。
ベストを探して問題の解決が遅れるくらいなら、ベストではなく、少なくとも今よりベターの選択肢を選ぶ方が断然クライアントの役に立つことがあるのである。
意思決定について真面目に考えたい人は読むとよい本。
会社を変える会議の力(講談社)
経営コンサルティングファームのATカーニーのマネージャーの会議についての本。
競合ファームのコンサルタントの本を褒めるのもなんだけど、これはおススメ。今年上半期一番のおススメになる予感。
会議は得てして悪者になりがちで、会議ばかりという愚痴ばかりだが、会議があるから皆で集まって問題解決ができるんだという主張。
一人のリーダーの決断より会議での決断の方がいいのに、なんでリーダーを待望するばかりで、会議をまともな問題解決の装置にしないんだという強いスタンスが張られている。
そして、会議を「組織における問題解決の装置」と定義し、類似する打ち合わせの連絡会、報告会、検討会と区別した上で、会議をまともにしていくための方法論が議論されている。
経営コンサルティングの観点からすると、これね、本当にそうだと思う。完璧に言い得ている。
会議がダメなんじゃなくて、会議の仕方がダメなんだよね、企業は。あと官公庁も。というかあらゆる組織は。
ATカーニーのマネージャーなので、相当の経験から得られたノウハウを凝縮しているのでリアル。
それでいて、会議は課題先進国日本ではますます必要になるという主張や、サイモンのノーベル賞の限定合理性のはなしとの絡みなどは、とても視点が高い。
このミクロとマクロのギャップもいい。
日本の会社から経営コンサルティングファームに移って最初にびっくりすることの一つは、経営コンサルティングファームの会議はとても生産的だということだと思う。
あと、意外と知られていないが、経営コンサルタントがクライアントの変革をする際に、うまく経営陣の会議での意思決定をサポートして変革する。
会議って、英語と同じくらいにグローバルで必要なスキルなのに、はっきり言って、まったく日本の企業はうまくない、というか会議として成立していない。
会議を笑うやつは会議に泣くよ。
この本は新入社員から経営者まで、あらゆる働く人におススメできる。
同じ外資系経営コンサルティングファームの経営コンサルタントとして、超絶に共感する。
- 会社を変える会議の力 (講談社現代新書)/講談社
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騎手の一分(講談社)
- 競馬騎手の藤田伸二さんの競馬界の暴露本。
- この本は面白いよ。
競馬好きの人は、競馬界の内情をする本として楽しめる。
武豊さんは能力は高いが、いまはオーナーや調教師に恵まれず、いい馬に乗せてもらっていないので結果が出ていないが、まだ能力はまったく衰えておらず、そこそこの結果を出していてすごいと触れられている。
経営コンサルタントの視点としては、これは競争戦略論的に考えると面白い。
競争戦略では、いろいろな考え方があるが、二大流派は、ポーターの環境決定論と、バーニーの資源決定論の二つであろう。
ポーターの環境決定論は、簡単に言えば、自分が得る結果は、周り次第であるという考え方。
バーニー(厳密にはバーニーが最初ではないが)の資源決定論は、簡単に言えば、自分が得る結果は、自分の能力や努力次第であるという考え方。
天才と言われた武豊さんにしても、オーナーや調教師次第、つまり環境決定的に、結果が落ちるということだよね。
いまの絶頂期と比べて劣る結果は、能力の劣化や努力の欠乏ではないということ。
結果が得られないと能力が衰えたとか、努力が足りないという人や組織は多いが、本当にそれが能力や努力の問題なのかはもっと検証すべきだよな。
そうしないと、いくら能力を磨いても努力をしても結果が得られず、やる気が継続しなくなる。
たまには、もっと外を見よう。
- 騎手の一分――競馬界の真実 (講談社現代新書)/講談社
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下町ロケット(小学館)
- 半沢直樹で有名になった(小説タイトルは別名だが)池井戸潤さんの直木賞受賞作。
- これは、出世ラインからは外れて、やる気を失いかけている中年社員に読んでもらいたいな。
小説としてのストーリーはいうまでもなく秀逸。
得意の銀行ネタだけではなく、メーカーの特許議論も丁寧にカバーしているのも生々しくてよい。
いろいろなアクシデントと苦戦をしながら、苦悩の末に成功していく。
経営コンサルタントの視点から思うことは、こういう行き当たりばったりの苦労の末の成功を、外部のメディアや競合は「あの企業は戦略的だった」と言ったりするんだよなということ。
本人たちはそんなに「意図した結果」を得ていない。
たいていの成功は「意図せざる結果」だ。
なのに、まわりは過剰にそこに人間や組織の知性を見出し、または、他人を過剰に評価してそこに意図を感じたがる。
そして、自分達自身について「戦略がない」と自虐する。
「戦略がない」と自虐するのはアホだよ。
たいていの会社は「戦略がない」。それでもあるときに「戦略」ができるかもしれないし、または、「戦略」がないままでも、それでも成功するときには成功する。
「戦略がない」という自虐は、なにもやりたくないというサボりの言い訳に過ぎないよな。
- 下町ロケット (小学館文庫)/小学館
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