経営戦略の思考法(日本経済新聞出版社)
- 経営戦略の思考法/日本経済新聞出版社
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著名な経営学者の経営戦略にかかわる思考法の本。
前半は経営戦略論の先行研究のレビュー。よくあるポーターなどの環境決定論、バーニーなどの資源決定論、そして、それら静的(一義的)な決定論ではなく、時系列を入れた戦略論をひたすらにレビュー。
知っている人からすれば、なにも新しいことはない。
後半は、メカニズムという名前の思考法だが、因果連鎖を図式化して考えようという提案。
この本は、やたらと先輩経営学者、特にこの本を読むであろう日本の先輩の経営学者への賞賛の嵐といった「よいしょ」が目立つ。まあ、社会科学者全般にそうなのだが。
経営コンサルタント視点でこの「よいしょ」を考える。
要は経営学の世界は成果主義ではないのであろう。
「なにを言ったか」ではなく「誰が言ったか」が大事にされる。
それは、結局は成果を他人が客観的に評価できないので、誰かその世界の基準となる権威をつくりたがる。
そして、その権威に認められるかがその世界での成功のコツ(KSF)になる。
成果主義ではない官僚的な企業ほど、権威主義で「よいしょ」がすごい。それと同じものを感じる。
ノーベル賞を取った山中教授の論文を比較までに読むと面白い。
当然、イントロでは先行研究のレビューはするが、賞賛などの「よいしょ」は見当たらない。
再生医療学の世界は、成果主義なのであろう。まあ、小保方さんのような若手が、よくも悪くも、注目を浴びることができるくらいだから(その後の転落は残念だったが)。
やっぱり、「よいしょ」はなんかカッコ悪いねというのが結論。そういう働き方はしたくないね。
七つの会議(日本経済新聞出版社)
- 七つの会議/日本経済新聞出版社
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先に書評した下町ロケットの著者で昨年大きくヒットした池井戸潤さんの企業小説。
企業の不祥事の原因と結果と連鎖を会議というシーンを描写することで表現している。
特に原因と結果の連鎖が、当事者たちが意図したものと、意図せざるものがあり、その意図せざるものがいろいろと起こしているというのが面白い。
さて、経営コンサルタント視点で考えると、この「意図せざる結果」というのはいろいろと考えさせられる。
古くは、社会学などでも「意図せざる結果」というのは古くから議論されている。
個人的には、世の中で、「優れた戦略」と評されているもののほとんどは「意図せざる結果」だと思っている。
そこまで、企業は戦略を立てて、そのシナリオ通りに実行して結果を出していない。
このために、経営コンサルタントが呼ばれて戦略を立てて、意図的に成功と呼ばれる結果にたどり着くための計画を立てる。
この意図せざる結果で成功を続けると企業はどうなるか?
簡単に言えば、経営陣が勘違いをする。いや、経営陣だけではなく従業員も勘違いする。
結果として、おごりが生じて、環境変化に対応できなくなり、環境変化が起きた時に対応が遅れ、一転して転落の道を歩むことは多々ある。
意図せざる結果は、確かにその場は結果オーライだが、それは次の油断につながるため、中長期的には組織を壊すリスクがあることを理解しておく必要がある。
科学を語るとはどういうことか(河出書房新社)
- 科学を語るとはどういうことか ---科学者、哲学者にモノ申す (河出ブックス)/河出書房新社
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週末に紀伊國屋書店で目についたので購入。
両方とも学者で、科学哲学者と物理学者の議論の本。
議論というよりも、討論かな。
これは、予定調和的ではなく、最後まで話が交わらない、学者同士のガチの意見対立で面白かった。
最後まで、二人の見解が交わらないし、かなり物理学者のコメントが辛辣で面白かった。
この中で、物理学者が科学哲学者を糾弾している。
糾弾内容は、哲学者たちは権威ある人をもちあげていて、権威主義であって、科学的な態度ではないというもの。
これを経営コンサルティング視点で捉えると、哲学者たちはファクトベースじゃないってことだよな。
逆に科学者は権威なんかよりも実験結果次第でいくらでも理論を捨てるということだからファクトベースってことだよな。
経営コンサルティングの一つの価値に、経営者の思い込みをファクトによって解放してあげるというものがある。
経営者って、現場から遠いところにいるために現場の事実から遠いところにいる。それでいて、経験だけは豊富なのでこれまでの経験に基づく思い込みで演繹的に意思決定をしがちである。
それはうまくいくときもあるけど、ケースがそれまで経験したものと異なれば、うまくいかないことの方が多い。
それを、現場の事実を拾ってきて経営者に客観的に報告することで、経営者の思い込みを壊し、冷静な意思決定を促すというもの。
哲学者って、この本を読んでいて思ったけど、本当にファクトよりも自分の頭の中の思い込みを大事にするのに驚いた。
たまに、“哲学的”って思慮が深いみたいな感じで褒め言葉で使われることがあるけど、哲学的な人には経営はできないなと痛感したよ。なので、これからはあまり経営者に対しては“哲学的”って言葉は使わないように気を付けることにする。
密室の鍵貸します(光文社)
- 密室の鍵貸します (光文社文庫)/光文社
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「謎解きはディナーのあとで」の東川篤哉さんの初期作(デビュー作?)。
コメディータッチで、私立探偵とその助手の珍騒動を描いている。
「謎解きはディナーのあとで」のイメージが強い人は、おそらく、軽い感じということで敬遠する人もいるであろう。
しかし、経営コンサルタント目線だと、この東川篤哉さんって、軽いどころか、かなり、重厚だと思える。
確かに、コメディータッチで、文章はひらがなが多くて、読みやすい。
なので、“本格派”好きな人はバカにするかもしれない。
しかし、そのコメディーの中で、とにかく伏線がしっかりと回収されるし、その回収までの論理がしっかりと描かれている。つまり、とてもロジカルなのだ。
伏線があるが回収し忘れている小説や、帰結が論理的ではなくもう著者の言い切りに過ぎない小説は、読んでいてつまらない。
これって、経営コンサルタントのプレゼン資料に似ている。
序盤で「問題分析」で触れられたことが、「課題」につながり、それが後で「打ち手」につながる。それが、資料上で、あたかも伏線のように浮かび上がっては、相手にその論理を突きつける。
経営コンサルタント好みの小説家だと思うな。
会社を変える分析の力(講談社)
- 会社を変える分析の力 (講談社現代新書)/講談社
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少し、あいだが空いたけど、更新。
大阪ガスの分析部門の方の分析論。
以前に紹介した「会社を変える会議の力」が面白かったので、そのシリーズとして読んでみた。
ただし、「会社を変える会議の力」は外資系経営コンサルタントが著者で、この二つは著者が異なるので注意。
いろいろと書いてあるけど、要は、分析は目的が大事という主張。
分析で迷ったら、目的に戻るべし。分析の目的とは、意思決定に寄与すること、とのこと。
これを経営コンサルタントの観点から考えてみよう。
経営コンサルティングファームに入ってくる新人は、たいてい仕事が手戻る。
結果、寝れない日々が続く。
幾つか理由があるのだが、その一番の理由は分析が下手だから。
分析が下手な理由も幾つもあるのだが、その一番の理由は作業におぼれて分析の目的を忘れるから。
そこで、パートナーやマネージャーから、突っ込まれて、仕事が手戻り、寝れなくなる。
作業に没頭すると、周りが見えなくなり、特に目的を見失ってしまう。
「なんのために分析しているんだっけ?」という自問自答は大事だよ。
分析をエクセルワークと勘違いしている新人は多いが、一番大事なのは分析の目的、つまり、問題の設定をどうするかということにある。
それがわかるまでは、新人経営コンサルタントは寝れない日々が続く。
同じ経営コンサルタントとして「会社を変える会議の力」(下記)の方がやっぱり面白いのだが、この本はこの本でいいことを言っている。
- 会社を変える会議の力 (講談社現代新書)/講談社
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