経営コンサルタントの読書備忘録 -5ページ目

ゼロ:なにもない自分に小さなイチを足していく(ダイヤモンド社)

ホリエモンさんの自叙伝。

売れているけど、話題性だけではなく、中身もあるよ、この本。

ホリエモン嫌いしている人も、この本は一読の価値があると思う。


成功した人の自叙伝って、過去を美化したものが多く、たいていは入ってこない。

ふだん、経営コンサルティングを通じて経営者とお食事していても、過去の話はたいていが美談ばかり。

なんだけど、この自叙伝は、過去はまずは事実ベースで淡々と描かれている。そして、そこでの心理描写はどちらかというと美しいものや楽しいものだけではなく、暗いものや悲しいものがミックスされている。

心理ってたいていそうミックスなのに、多くの自叙伝が美化しすぎているんだよなと改めてこの本を読んで思った。


美化された自叙伝はナルシズムを感じて気持ち悪くて入り込めないが、この自叙伝は小説のように入り込める。


一読の価値がある。

ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく/ダイヤモンド社
¥1,470
Amazon.co.jp

君に友だちはいらない(講談社)

3年ぶりくらいでブログを更新。

さあ、これからは書いていくぞ。


「武器としての」シリーズを書かれた元経営コンサルタントの瀧本哲史さんが書かれている。


結論言えば、おもしろい本。

組織でもなく、個人でもなく、目的を共有しない友だちでもなく、目的を共有したチームとその仲間でやっていけという本。

得てして、組織と個人の二者択一の議論が起こりやすい。

そして、その間をとると、友だちなどの議論になりがち。

そこで、チームという「目的」を共有した仲間という選択肢を提示しているところが面白い。

ここまでがシンプルな書評。


ただ、私は経営コンサルタントなので、経営コンサルタント視点で加えたい。

このチームという概念は、完全に経営コンサルティング会社がやっていること。

どこのコンサルでもこうやっている。プロジェクトのメンバーを総称して「チーム」と呼ぶ。

目的のもとに多様なメンバーが集まり、目的が達成したら解散する。

コンサルティングファームには定常的なラインがないので、上司や部下という考え方がないんだよね。

パートナーもマネージャーもジュニアコンサルタントもチームにおけるポジション、つまり、役割分担しているだけ。

そう考えると、批判はあるかもしれないけど、経営コンサルティングファームの働き方って少し進んでいるんだよなと思う。


ちなみに、この本は、若者もよいが、年配にも読んでほしい。

組織戦やり過ぎな年配に。

君に友だちはいらない/講談社
¥1,785
Amazon.co.jp

伊藤博文 近代日本を創った男


ご存じ、日本初代首相の伊藤博文についての本です。


正直、期待外れでした。

先に読んだ山県有朋の本の方が、ファクトも、そしてそれに対しての光の当て方もリッチでした。


そう、ファクトが弱いんです。

なので、何かしらの人の意見を聞いているようで、納得性が低いのです。


ただ、伊藤博文について自体は、非常に勉強になりました。

先の山県有朋もそうでしたが、この人も、とにかく若い20代から活躍し、明治後期まで第一線で頑張り続けるのだから大したリーダーだと思います。

ただ、優れたリーダーが意識しなくてはいけないのは後継者育成。

ついつい、優れた社長の次の代に、企業が傾くということがよくあります。

ユニクロで柳井さんが社長を退いてから企業が停滞したのと一緒でしょうか。


明治維新という修羅場をくぐり抜けたリーダー達には光があたっていますが、その裏で後継者を育てられなかったこと、そして、それが昭和前半の混沌につながった可能性があることなどについても、もう少し光があたってもよいのかもしれません。


いつか、明治と昭和のあいだの大正時代のリーダー達の本でも読んでみたいと思います。



伊藤博文 近代日本を創った男/伊藤 之雄
¥2,940
Amazon.co.jp

ブレイズメス1990


この夏、私がはまっている海堂尊氏の最新作の単行本。

これも面白い本でした。


プロフェッショナルの働く動機は何か?

これが、この本の一つの論点かと思います。


途中、

「お前は何のために、そしてどういう気持ちで毎日医者の仕事をしている?」

と主人公の世良が問われるシーンがある。


この小説では、「医療があるから患者があるのか、患者があるから医療があるのか」や「金がなくては医療は成り立たない」など、プロフェッショナルである医者が「患者第一」の合言葉のために、思考停止してしまっている論点を敢えて投げかけている。


「患者第一」とは、プロフェッショナルではクライアントファーストという言葉でよく言われる。

クライアントファーストを理念的に追求していくと、最後はボランティアになる。

報酬をもらうのは、クライアントの利益には反するからだ。

だが、それではプロフェッショナルはいなくなる。


プロフェショナルとお金、難しい論点だが、海堂氏の主張のとおり、難しいから思考停止するのではなく、常に考えておき、自分なりの判断軸を持てるようになることが必要なのだと思う。


良い本です。

ブレイズメス1990/海堂 尊
¥1,680
Amazon.co.jp

山県有朋―愚直な権力者の生涯


明治の元老の山県有朋についての本。

おもしろい本でした


山県有朋というと、「陰」のイメージで描かれることが多いと思います。

明治維新においては、「陽」の同じ長州藩の高杉晋作と比較される。

西南戦争においては、「陽」の敵の首魁の西郷隆盛と比較される。

明治中期においては、「陽」の長州閥の双頭の伊藤博文と比較される。


この本でも、山県有朋の「陰」の部分は認めつつも、「陽」の部分を無理なく炙り出していて痛快だった。

「陽」だけを無理やり伝えると、「本当か?」と思ってしまうが、「陰」の部分も認めることで客観性が増し、双方を理解しやすくなっている。構成や書き方の妙だと思う。

コンサルタントの報告書も、とにかくいきなり言いたいことをハイライトするのではなく、全体像を見せた上で言いたいことをハイライトするこことで、納得性が高まるのと同じ。

歴史家も、コンサルタント同様にプロフェッショナルである以上、相手の納得性を担保する説明が求められるのであろう。

(わかったことを「言う」のと、相手が納得するように「伝える」のでは機能としての保証レベルが異なる)


いずれにせよ、明治維新の人達は若い。

高齢化社会とはいえ、なぜ、今の日本は20代、30代がこれほどまでに活力がないのであろうか。

その理由をそれより上の年齢層が蓋をしているからとするのは、無理があるであろう。

明治維新の頃は、階級や、藩主など、今よりよっぽど蓋があったはずであるから。

考えなくてはいけない論点である。




山県有朋―愚直な権力者の生涯 (文春新書)/伊藤 之雄
¥1,365
Amazon.co.jp