蒸気機関は「外燃機関」と呼ばれる動力装置の一種です。「外燃機関」はもちろん「内燃機関」の対語です。

内燃機関は、「入れ物の中に気体にした燃料を入れ、その入れ物の中で高温或は高圧(またはその両方)にして爆発(急激に燃焼)させ、その爆発による膨張の向きを(入れ物の形状によって)制御することにより動きに変換する」道具です。

外燃機関は、「入れ物の中に膨張収縮する物質を入れ、その入れ物を外から暖めてその入れ物の中の物質を膨張収縮させ、その膨張収縮を動きに変換する」道具です。

もちろん、爆発=急激な燃焼反応を利用する方が、時間あたりに取り出せる運動エネルギー量(出力密度)が大きくなることは明白です。急激な反応ですからね。(燃費やエネルギー密度とは別の概念です)

さて、ここでは、「どちらがより強力か」を問題にしているのではありません。

この2つの間に連続性があることに注目していただきたいのです。
4番目の段階は、もちろん石油時代です。

1859年にペンシルバニア州で油田開発が始まってから50年ほどは、石油は主に照明用として利用されていました。

今世紀に入る直前から燃料として石油を使う動きが出てきました。

内燃機関の登場です。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのことです。

もっとも、内燃機関が登場する前に、蒸気機関で走る自動車が発明されてはいました。前世紀~今世紀初頭には実際に走っていました。

それを内燃機関が置き換えていったのです。

こうして自動車時代が到来し現在に至っているわけです。

ところで、内燃機関とはどういう道具でしょうか?

蒸気機関とどう違うのでしょうか?
前回まで書いたエネルギーの人類史を振り返ってみましょう。

第1段階: 薪を中心としたバイオマスを燃やす

第2段階: 石炭をコークスにして燃やす

第3段階: 石炭/コークスを単なる熱源としてだけでなく、蒸気機関を経由して人工的な道具の動力源とする

さて、私も最近気づいたのですが、この3つの段階には「燃焼反応を利用する」という共通点があります。(正確には「有機化合物の酸化反応(燃焼・爆発)を利用する」と表現すべきかもしれませんが、とりあえず「燃焼反応を利用する」と表現することにします)

このことを念頭に置きつつ、次の第4段階について考えてみましょう。

製紙メーカーは植林に熱心です。

日経産業新聞 10月31日(火) 17面

[概要]

・日本製紙はオーストラリア(NSW州)に植林地3400万平方メートルを新規取得

・日本製紙がオーストラリア国内に保有する植林地は合計で5億2000万平方メートルとなる

・オーストラリアの認証団体が森林に対して実施している「AFS認証」をすべての同国内植林地で受けている

・同国内植林地では、ユーカリを育成

・南アフリカとチリにも自社林を持つ

・(日本国外の)植林地の3分の2がオーストラリア国内のもの

・(日本国外の)すべての植林地でISO14001認証を取得済み

・今後は国内の社有林にも認証取得に注力

森林の認証って、どういう認証なんでしょうね。

同じ発言を、産経新聞からも拾ってみましょう。少し内容が異なります。

産経新聞 11月17日(金) 11面

(Quote)
エタノール増産に異論 石連会長「消費者に不利益」

石油連盟の渡文明会長(新日本石油会長)は16日の会見で、国産バイオエタノールを年産600万キロリットルへ増産する政府目標について「まだ決まっていないと思っている」と述べ、石油業界として容認できないとの姿勢を強調した。

新たなエタノール増産目標は、安倍晋三首相と松岡利勝農水省が今月1日に会談して合意。関係省庁による「バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議」でも確認された。

しかし渡会長は、増産構想を「農業対策だ」と批判。「われわれは農業団体に属していない。協力する余力はない」と距離を置く姿勢を示した。

600万キロリットルの数値にも「理解できない。安倍総理は数字を出していないと(経済産業省に)聞いた)と反論。あくまで受け入れない構えだ。エタノール混合ガソリンの規格では、農水省などが推進する直接混入方式(E3)は「消費者のデメリットになる」として、販売に協力しない考えを改めて表明。石油業界が進める添加剤方式(ETBE)への一本化を訴えた。 (Unquote)

石油連盟が「自陣営だけで強行突破しようとしている」と書きましたが、この記事は、すごくそう私に思わせてくれます。

日経産業新聞 11月17日(金) 4面

(Quote)
バイオマス燃料事業組合 来年1月に設立 石連会長会見

石油連盟の渡文明会長(新日本石油会長)は十六日の会見で、バイオエタノール導入に向け、来年一月に「バイオマス燃料供給有限責任事業組合(LLP)」を設立する計画を明らかにした。石連加盟の元売り各社が出資し、バイオエタノールを一括調達したうえで各社へ供給する。

石油業界は二〇一〇年までに原油換算で二十一万キロリットルのバイオエタノール導入を公約。イソブテンと合成した「ETBE」をガソリンに混合する方式で、来年五月から関東圏約五十カ所の給油所で販売を始める。新会社の代表者や出資比率などは未定。当初は欧州などからETBEを調達するが、将来はバイオエタノールを輸入し国内でETBEを製造する方針。

会見要旨は以下の通り。

【農林水産省が打ち出したバイオエタノール六百万キロリットル導入案】どういう経緯かわからないが、安部首相は六百万キロリットルという数字に言及していないと聞いている。それが当たり前で、安堵(あんど)している。二〇一〇年に五十万キロリットルという閣議決定された目標を消化するのに必死の状態で、それを通り越して六百万キロリットルというのは理解できない数字だ。

【ガソリン需要の減少】
価格上昇による買い控えが原因と言われているが、低燃費な軽自動車が増えるなど、自動車保有の構造変化が大きく、すぐには元に戻らない。(燃費改善に役立つ)低硫黄ガソリンやバイオエタノール導入などは、環境対応のため(石油需要減少を)覚悟してやっている戦略。石油業界は設備集約や売り方に知恵を出して対応していくしかない。 (Unquote)

これまでに掲載した記事の内容で、重要と私が思う部分をまとめてみます。

① 11月1日、安部首相は松岡農相に「国産バイオ燃料の普及促進」と「農水省中心の推進会議立ち上げ・実現に向けた工程表の作成」を指示した。

② 11月10日、バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議が開催され、今年度中(来年の3月中)に工程表を作ることで合意。
→ 「バイオマス・ニッポン」は農水省のプロジェクト

③ 石油連盟を中心とする石油業界は、エタノールを直接ガソリンに混ぜることに反対。イソブテンとエタノールを合成させたETBEをガソリンに7%以下混ぜることを主張。

④ 経済産業省は、基本的にETBE派。ただし、記事を読む限り、明確に「エタノールの直接混入に反対」とは言っていない。

⑤ 農水省と環境省は、3%ガソリンに混ぜる「E3」方式を主張。

以下は、私が受けている印象です。(まだ、確定的なものでは、とてもありません)

(A) 農水省と環境省:
「地産地消」について首相のお墨付きをもらったので(日経記事を信じる限り、指示内容は“国産バイオ燃料の普及”です)、イケイケになっているように見えます。

(B) 経産省:
産経の論調とは違ってしまうんですが、ようく見ると、私には「経済産業省が明確に首相と衝突するのを避けている」ように見えますね。経産省発言だけ言い回しがとても微妙に見えるんです。(気のせいでしょうか?)

(C) 石油業界:
「自分たちの手の届かないところで燃料生産と流通が行われること」を恐れて、必死こいてETBEを自派陣営だけで強引に推進し、先に既成事実を作って強行突破しようとしているように見えます。

しばらく、観察を続けましょう。

もう一つ新聞記事をご紹介しましょう。こちらは長い記事ですので、該当部分だけを抜粋します。

日本経済新聞朝刊 11月15日(水) p1

(Quote)
エコを競う 環境パワーゲーム

(前略)

十日、農水省内で開催した政府の「バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議」。バイオエタノールの導入策を検討するために開いたが、会議の実態は新たな利権の奪い合いだ。

農水省はガソリン消費量の一割に当たる年六百万キロリットルの導入目標を掲げるが、甘利明・経済産業相は「威勢はよいが課題は多い」。新エネを巡る農水省と経産省との綱引き。石油連盟も対応は冷ややかだ。エタノールの生産技術はあっても、これでは利用が進まない。 (後略) (Unquote)

さて、4つの記事をご紹介しました。ここから何が見出せるか考えてみることにしましょう。
同じ日に産経新聞も記事を載せていました。


産経新聞 11月11日(土) p9

(Quote)
売るに売れない?国産エタノール 農水・環境省と石油業界 軋轢

バイオエタノール混合ガソリンの本格導入を控え、流通を担う石油業界と、国産エタノールの普及を目指す農林水産省、環境省との間で軋轢(あつれき)が表面化している。エタノールをETBEという添加物に転換して混ぜる方式に一本化したい石油会社に対して、両省はエタノール3%を直接混入する「E3」方式を推進しているからだ。このままでは農家が生産した国産エタノールが一般のガソリンスタンド(GS)で販売されない事態に陥りかねず、両省は石油業界に協力を求める働きかけを強めている。(上野嘉之)

政府の京都議定書目標達成計画では、平成22年までにガソリンなど輸送用燃料のうち50万キロリットルを石油からバイオ燃料に置き換えるとしている。

ガソリンについて石油連盟は「ETBE一本でいく」、元売り会社も「E3販売は視野にない」(新日本石油)との認識だ。ETBEの方が品質が安定し、排出ガスもクリーンとの理由だが、流通の主導権を握る狙いもうかがえる。

石連は近くブラジルからエタノールを輸入する会社を設立し、関東、関西などの工場でETBE燃料を一括製造して流通させるとしている。

これに対し、来年から北海道などで年間5万キロリットルのエタノール生産を目指す農水省は、「エタノールを都会に運んで加工しては、コストが上昇して売れない」と反論。産地付近で直接混入するE3を推進する。同様に地産地消モデルを目指す環境省もE3派だ。

だが、石油業界がE3の販売を拒否すれば「エタノールを増産しても農協系GSでしか売れなくなる」(農水省)。このため環境省は石油販売会社にE3も取り扱うよう“お願い”しており、農水省も元売り会社に働きかける予定という。

一方、経済産業省は石油業界の態度を容認している。

政府が10日開いたバイオマス・ニッポン総合戦略推進会議では、経産省がエタノールの安定供給と低価格化を唱えたが、他省庁は「生産量が少ない国産エタノールへの牽制球」と警戒した。

農水省には農家の所得を増やす思惑。環境省は京都議定書の温暖化ガス排出削減目標達成が最重要課題で、石油業界には3省の“呉越同舟”の内情も見透かされている。 (Unquote)

次期IEA事務局長が日本人になることが決定しました。任期は来年9月から4年間です。

http://www.iea.org/textbase/news/ED_press.pdf

15日(金)の日経朝刊5面にも記事があります。

同日の日刊工業新聞3面には比較的詳しい記事があります。顔写真付きです。全文をご紹介しましょう。

(Quote)
IEA事務局長にOECDの田中氏

国際エネルギー機関(IEA)は14日、次期事務局長に経済協力開発機構(OECD)の田中伸男科学技術産業局長(56)を満場一致で選んだ。クロード・マンディル現事務局長の任期満了後の07年9月1日に就任する。任期は4年。日本人のIEA事務局長就任は初めて。世界中でエネルギー安全保障への関心が高まる中、日本政府は国際協力を積極的に進めるため田中氏をIEA事務局長に擁立した

田中氏は73年通商産業省(現経済産業省)に入り、通商政策局通商機構部長、在米日本大使館公使などを経て04年OECDに出向した。

IEAはOECD加盟の先進・石油消費国を主体に26カ国で構成する。田中氏はエネルギー消費国のまとめ役となる。中国、インドなどエネルギー消費が急増しているIEA非加盟国との関係を深め、世界のエネルギー需給バランスを安定させることも期待される。 (Unquote)

#151で書きましたように、田中氏は選挙前に首相に面会しています。

http://ameblo.jp/mattmicky1/entry-10019831748.html#cbox

経済産業省事務次官と資源エネルギー庁長官が同席した上での面会です。IEA事務局長選挙にあたって官邸の支援があったと私は推論していますが、日刊工業新聞の記事はその傍証となり得ると思います。

記事第一段落の最後の文章をよく見て下さい。

主語は「日本政府」です。述語が「擁立する」になってますね。

「日本政府は...(田中氏を)...擁立した」

日刊工業新聞は、「日本政府は意図して田中氏をIEAに送り込んだ」と述べているわけです。

ま、でも、これからが勝負ですね。これからどう対処していくかが問われます。