本論文は、妊娠治療前の妊娠率予測因子についてPRESTOスタディーのデータを用いた検討です。
Hum Reprod 2022; 37: 565(米国)doi: 10.1093/humrep/deab280
Hum Reprod 2022; 37: e1(英国)コメント doi: 10.1093/humrep/deac037
要約:米国とカナダで2013〜2019年に登録された21〜45歳のこれから妊娠を目指す女性4,133名(PRESTOスタディ)を対象に、2ヶ月に一度食事および生活習慣の調査(DHQ II、163項目)を行い、最大1年間あるいは妊娠判明まで前方視的に追跡調査を行い、妊娠率予測モデルを作成しました。モデル1と2のAUCは、それぞれ70%と66%でした。妊娠率に有意にプラスに作用する因子は過去の授乳歴ありとマルチビタミンあるいは葉酸摂取ありで、妊娠率に有意にマイナスに作用する因子は女性年齢増加、女性BMI増加、不妊症でした。また、不妊症でなく妊娠歴のない女性では、女性年齢増加、女性BMI増加、男性BMI増加がマイナスに作用しました。
解説:これまでに報告された妊娠率予測モデルでは、AUCが59〜64%であり、必ずしも満足できるものではありませんでした。本論文は、妊娠治療前の妊娠率予測についてPRESTOスタディーのデータを用いた検討であり、AUCは66〜70%と良好で、プラスおよびマイナスに働く因子もはっきり見つかっています。非常に興味深い研究です。ただし、患者さん個人によるアンケート調査を元にした検討であるため、正確性に欠ける可能性は否定できません。
コメントでは、本論文の方法では妊娠率予測因子との関連を示しているだけであり、因果関係を示していないことを強調しています。
PRESTOスタディーについては、下記の記事を参照してください。
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