本論文は、妊孕性の季節性変動に関する欧米の前方視的検討です。
Hum Reprod 2020; 35: 565(米国、デンマーク)doi: 10.1093/humrep/dez265
Hum Reprod 2020; 35: 488(米国)doi: 10.1093/humrep/deaa006
Hum Reprod 2020; 35: e1(編集長)doi: 10.1093/humrep/deaa066
要約:米国とカナダで2013〜2018年に登録された21〜45歳のこれから妊娠を目指す女性7443名(PRESTOスタディ)、デンマークで2007〜2019年に登録された18〜45歳のこれから妊娠を目指す女性11655名(SG/SFスタディ)を対象に、2ヶ月に一度アンケート調査を行い、最大1年間あるいは妊娠判明まで前方視的に追跡調査を行いました。なお、妊娠を目指して半年以内とし、妊娠治療を実施しない方のみを対象としました。結果は下記の通り、「妊娠した月」をもとに集計したところ、妊孕性は秋に最大で、春に最小となりました。
PRESTOスタディ SG/SFスタディ
N 5827名 8504名
平均年齢 29.9歳 28.7歳
夫平均年齢 31.9歳 31.0歳
妊活期間 2.1ヶ月 2.0ヶ月
BMI 27.7 24.1
季節性変動での妊娠率の比較
最大期/最小期 1.16倍 1.08倍
(CI) (1.05〜1.28) (1.00〜1.16)
最大時期 11月25日 12月1日
PRESTOスタディでは、居住地の緯度別に季節性変動での妊娠率の比較を実施しており、下記の通り。
<北緯35° 1.45倍(1.14〜1.84)
北緯35〜39° 1.21倍(1.00〜1.48)
北緯40〜44° 1.12倍(1.00〜1.29)
北緯45°< 1.14倍(1.00〜1.46)
解説:妊孕性の季節性変動に関するこれまでの研究結果は様々であり、一致した見解は得られていませんでした。過去の研究では「生まれた月」を基準に比較しており、「妊娠した月」で検討した論文はありませんでした。早産により妊娠期間は様々であり、「妊娠した月」での検討が重要と考え、本論文の研究が行われました。その結果、妊孕性は秋に最大で、春に最小となりました。また、緯度が低いほどこの差が大きくなりました(デンマークはPRESTOスタディの北緯45°<に相当)。このような妊孕性の季節性変動が生じる要因は不明ですが、気温、ビタミンD値(日照時間により変化)、感染性疾患、生活習慣(活動性、食事)など季節性変動をきたす他の因子が関与している可能性もあります。
コメントでは、本論文の意義を高く評価した上で、CI(信頼区間)での検討ではなく、P値での検討をすべきであるとしています。また編集長は、冬が終わると性行動が活発になるという過去の論文を示した上で、本論文のデータから夜が長い時期に妊孕性が高い理由について再考すべきであるとしています。非常に興味深い研究です。
妊娠の季節性変動については、下記の記事を参照してください。
2019.10.18「出生数の季節変動」
2018.1.11「Q&A1699 季節変動は?」
2015.9.19「宗教のルールによる出生数の増減」
2013.7.22「☆季節により妊娠率•流産率は違うか?」
2012.12.1「☆何月が妊娠しやすい?」
PRESTOスタディーについては、下記の記事を参照してください。
2019.11.28「☆通院前の妊活に有効な排卵日推定法は?」
2019.6.25「不眠と不妊:女性の睡眠障害は良くない」
2018.4.12「男性は毎日8時間睡眠がお勧め」
2017.1.12「☆妊娠前の鎮痛剤使用と妊娠成立の関係」