本論文は、男性の睡眠時間と妊孕性の関係を調査した興味深い報告です。
Fertil Steril 2018; 109: 453(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2017.11.037
要約:2013〜2017年に米国とカナダの夫婦を対象にオンラインでのコホート研究(PRegnancy STudy Online=PRESTOスタディー)を実施しました。不妊治療やピルを使用していない女性(21〜45歳)を対象に、まず質問票調査を行いました(5601名)。次に、オプションとして男性のパートナーへの質問をしても構わないか提案し、許可の得られた男性(21歳以上)に質問票調査を行いました(1176名)。8週間毎に女性へ妊娠の有無を調査し、妊娠成立か最大12ヶ月まで経過観察を実施しました。なお、質問票の不備、妊娠された方、かつて不妊治療を行なっていた方などを除外しました。8時間の睡眠時間の妊娠率を1.0とした場合の睡眠時間による妊娠率は下記の通り。
睡眠時間 <6時間 6〜7時間 7〜8時間 8〜9時間 9時間以上
妊娠率 0.62* 1.06 0.97 1.00 0.73
*有意差あり
なお、シフト制勤務(夜勤)の有無、過去の妊娠歴の有無、不妊歴の有無による変化はありませんでした。
解説:米国では5000〜7000万人の方が睡眠障害に悩まされているとの報告があり、世界的に睡眠障害の方が増えているようです。睡眠時間と肥満、心血管疾患、全ての死因との関連はU字型を示し、睡眠時間が短くても長くても良くありません。現在のコンセンサスでは、睡眠時間が7〜9時間が最適とされ、6〜7時間はやや不十分、6時間未満は不十分としています。なお、9時間以上の睡眠時間に関するコンセンサスは得られていません。これまでに、睡眠障害の男性では精子数の減少やテストステロン低下を認めるとの報告がありますが、いずれも疫学調査(統計)や横断研究であり、前方視的検討はされていませんでした。本論文はこのような背景の元に行われ、妊娠を目指す男性は6時間未満の睡眠は少ないため6〜9時間睡眠を心がけるのがお勧めであることを示しています。なお、この結果は他の疾患と睡眠時間の関係と同様です。