☆通院前の妊活に有効な排卵日推定法は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、通院前の妊活女性に有効な排卵日推定法について、Webによる調査を実施したものです。

 

Fertil Steril 2019; 112: 892(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.06.036

Fertil Steril 2019; 112: 815(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.07.1345

要約:2013〜2018年に米国とカナダの夫婦を対象にオンラインでのコホート研究(PRegnancy STudy Online=PRESTOスタディー)を実施しました。不妊治療やピルを使用していない女性(21〜45歳、平均年齢29.9歳)で妊活期間6ヶ月以下(平均2.1ヶ月)の方を対象に、各自が実際に行っっている排卵日推定法について質問票調査を行いました(5688名)。初回登録時と、2ヶ月ごとに質問票に回答いただき、妊娠が成立するまで、あるいは12ヶ月経過するまで、前方視的に経過観察を行いました。75%の方が何らかの排卵日推定法を実施しており、そのうち73%で複数の排卵日推定法を実施していました。使用頻度の高い順に、月経周期の記録71%、頸管粘液モニター39%、尿中LHサージ検出32%、基礎体温21%、子宮頸部の位置変化確認12%でした。何らかの排卵日推定法を実施されていた方は、何も使用していない方と比べ妊孕能が1.25倍(1.28〜1.36倍)に増加していました。最も妊孕能が増加したのは、月経周期の記録+頸管粘液モニター+尿中LHサージ検出の3つを実施した場合の1.48倍でした。

 

解説:1900年代にテオドールヘンリックは、月経前の体温が高いことを見出しました。1930年代には、月経周期の記録や基礎体温が用いられるようになりました。現在は、頸管粘液モニター、尿中LHサージ検出、唾液中LHサージ検出、子宮頸部の位置変化確認、排卵日予測アプリなどが、自分でできる排卵日推定法です。しかし、これらは本当に有効なのか、どれが最も優れているかに関する研究はありませんでした。本論文は、通院前の妊活女性に有効な排卵日推定法について、Webによる調査を実施したものであり(PRESTOスタディー)、それぞれの方法がそれなりに有効であること、月経周期の記録+頸管粘液モニター+尿中LHサージ検出の3つを実施した場合が最も確率が良いことを示しています。不思議なのは、全くお金がかからない単なる月経周期の記録もそれなりに有用であることです。本論文の対象者は大卒者が73%であることや、自己記入式の質問票のため正確性に欠けるなどの問題点がありますが、通院前の妊活に有効な排卵日推定法について明らかにした興味深い研究です。

 

コメントでは、可能な限り交絡因子を排除して検討していますが、必ずしも全てが考慮されていないことを指摘しています。例えば、何らかの排卵日推定法を実施されていた方の性交回数は、何も使用していない方より多くなっていました。何らかの排卵日推定法を実施されていた方は、何も使用していない方と比べ、妊活に対するモチベーションが高いことが考えられますので、ライフスタイルの改善などにも積極的に取り組んでいることが推測されます。従って、結論づけるためにはさらなる検討が必要です。

 

なお、通院中の方は、超音波検査により卵胞チェックするのが最も良いです。

 

PRESTOスタディーについては、下記の記事を参照してください。

2019.6.25「不眠と不妊:女性の睡眠障害は良くない

2018.4.12「男性は毎日8時間睡眠がお勧め

2017.1.12「☆妊娠前の鎮痛剤使用と妊娠成立の関係