出生数の季節変動 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、出生数の季節変動について調査した興味深い報告です。

 

Hum Reprod Open 2018; 4: hoy015(スゥエーデン)doi: 10.1093/hropen/hoy015

要約:1940〜2012年に出産した6,768,810名の国家データベースから、母親の年齢、学歴、何人目のお子さんか、再婚かなどの社会学的な背景との関連を縦断調査しました。1940〜1999年に出産した方は、欧州特有の出生数の季節変動を示しました(春に多く年末に少ない)。しかし、21世紀になってからはこの季節変動は少なくなりました。出生数が年末に少ないのは、高学歴、35歳未満、第2子や第3子にみられ、再婚や第1子の場合にはこの傾向が認められませんでした。

 

解説:ヒトの出生数には季節変動があることが知られています。欧州では春に多く年末に少なくなりますが、米国では夏と秋に多く春に少なくなります。一方、イスラエル、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどでは季節変動はほとんどありません。生まれ月によって健康状態に変化が生じるという論文もあります。本論文はこのような背景に行われたスゥエーデンの国家データベースを用いた研究であり、かつて見られた季節変動が最近では見られなくなっていることを示しています。

 

出生数の季節変動は下記により変化しうると考えられますが、何がどの程度関与しているのか明らかではありません。

1 気候:日照時間や気温による男女のホルモンバランスの変化で、精子や卵子の状態が変化する可能性

2 エネルギー状態:栄養状態の変化、農薬や殺虫剤、大気汚染により、精子や卵子の状態が変化する可能性

3 社会的宗教的背景:性交渉の頻度の変化(例えば大型連休の9ヶ月後に出生数が増加すること)

4 女性の社会的地位や学歴:夫婦の人生設計やお子さんの将来を見据えたバースプラン

 

なお、日本では、7月、8月、1月にお産が多く2月と11月がお産の少ない月です。

 

下記の記事を参照してください。

2012.12.1「☆何月が妊娠しやすい?