Q&A2354 顕微授精のリスクは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 顕微授精のリスクについて教えてください。 私のクリニックでは体外受精をして受精しなかったものは顕微授精に回すという技法が取られています。しかし顕微授精のリスクがネットなどで検索すると多々出てきて不安になります。例えば欧米では顕微授精で生まれた子供には先天性異常率が自然妊娠よりも高いなど。 また、一匹の精子を 穿刺注入することによる卵子への衝撃なども全くゼロではないのかなと個人的に思ったりもします。
 

A 顕微授精と体外受精のお子さんの予後調査はバイアス(母集団が平等に選ばれていないがかかっていますので、そのまま額面通りに受け取ってはいけません。顕微授精でも体外受精でも受精卵ができて妊娠できる方と、顕微授精でしか妊娠できない方には大きな隔たりがあります。同様に、自然妊娠できる方と、体外受精でしか妊娠できない方にも大きな隔たりがあります。つまり、自然妊娠が難しい方は根本的に何らかの問題点があり、顕微授精でしか妊娠できない方にも根本的に何らかの問題点があると考えらます。体外受精や顕微授精の真のリスクを議論するためには、自然妊娠できる方での比較が必要ですが、現実的には実施できません。実施する必要がないからです。従って、自然妊娠できる人、人工授精で妊娠できる人、体外受精で妊娠できる人、顕微授精で妊娠できる人はそれぞれ異なる集団になります。異なる集団を同列に比較する事はできません。それがバイアスです。現在のところ、妊娠方法によるお子さんの予後に違いはないと考えられています。

 

下記の記事を参照してください。

2019.6.23「☆PGD実施後の5歳児の発達調査:その2

2016.8.27「妊娠方法によるふたご妊娠のリスクの違い

2015.5.26「☆不妊症と赤ちゃんの先天異常の関係

2015.4.19「1卵性の双子の原因は家系にあり

 

なお、このQ&Aは、約3ヶ月前の質問にお答えしております。