妊娠方法によるふたご妊娠のリスクの違い | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

ふたごの妊娠(双胎)はひとりの妊娠より母子のリスクが2〜16倍になることが知られています。本論文は、妊娠方法によってふたご妊娠のリスクが変化するかを国家規模の統計により調査したものです。

Fertil Steril 2016; 106: 371(オランダ)
要約:2000〜2012年のオランダ出生統計データベースをもとに、初回出産で男女のふたごを出産した方6694名を、妊娠方法によって4群に分類し(自然妊娠3276名、排卵誘発タイミング妊娠470名、排卵誘発人工授精妊娠511名、体外受精顕微授精妊娠2437名)、母子の妊娠リスク(妊娠高血圧症候群、早産、出血、分娩方法、出生時体重1500g未満あるいは10パーセンタイル未満、APGARスコア<7、NICU入院、奇形、周産期死亡)を比較しました。

全ての項目で有意差が認められなかったもの
自然妊娠=排卵誘発タイミング妊娠(母子ともに)
自然妊娠=体外受精顕微授精妊娠(お子さんのみ)

有意差が認められたもの
自然妊娠<排卵誘発人工授精妊娠(APGARスコア<7)1.38倍
自然妊娠<排卵誘発人工授精妊娠(周産期死亡)1.56倍
自然妊娠>体外受精顕微授精妊娠(妊娠高血圧)0.74倍
*その他の項目には有意差はありませんでした。

解説:妊娠方法によってふたご妊娠のリスクが変化するか否かについては、賛否両論あり結論がえられていませんでした。本論文は、明らかな2卵性妊娠(男女を妊娠)かつ初回出産に限定して国家規模の統計により調査したものです。その結果、妊娠方法による違いはほとんどないことを示しています。つまり、ふたご妊娠のリスクは「ふたご」であることが一番の理由であることを意味します。

下記の記事を参照してください。
2013.4.7「☆☆2人の元気な赤ちゃんを授かるにはどっちが良い?」
2016.3.4「医療経済学からみた1個胚移植と2個胚移植」