本論文は、中隔子宮は治療すべきか否かについての多施設共同研究です。
Hum Reprod 2020; 35: 1578(オランダ、米国、英国)doi: 10.1093/humrep/dez284
Hum Reprod 2020; 35: 1495(ポーランド)doi: 10.1093/humrep/deaa142
要約:2000〜2018年に、オランダ、米国、英国の21施設で中隔子宮と診断された方257名を対象に、中隔切除術の実施の有無と妊娠予後について後方視的に検討しました。結果は下記の通り(全ての項目で有意差を認めませんでした)。
中隔切除術 実施 非実施
妊娠率 72,2%(109/151) 84.9%(90/106)
出産率 53.0%(80/151) 71.7%(76/106)
妊娠継続率 58.9%(89/151) 75.5%(80/106)
流産率 46.8%(51/109) 34.4%(31/90)
早産率 29,2%(26/89) 16.7%(13/78)
胎位異常率 19.1%(17/89) 34.6%(27/78)
解説:中隔子宮は、0.2〜2.3%に認められる子宮形態異常です(分類法によって率が異なる)。分類法は、現在3種類(ESHRE/ESGE2013、ASRM2016、CUME2018)あり、年月とともに変更されることも相待って、未だ定まっていません。これまで中隔子宮の存在は、不妊症、流産、早産、胎位異常(逆子など)のリスク因子であると考えられ、比較的エビデンスレベルの低い研究を元に、中隔切除術が推奨されていました。本論文はこのような背景の元に行われた多施設共同研究であり、中隔切除術の有無で妊娠予後は変わらない(つまりオペは不要)ことを示しています。しかし、後方視的検討では結論は導けませんので、現在ランダム化試験がオランダで進行中です。
コメントでは、一致した診断基準の策定と大規模なランダム化試験の必要性を強調しています。
下記の記事を参照してください。
2018.5.12「弓状子宮は正常胚の妊娠成績に影響しない」
2018.5.3「弓状子宮の分類について」
2016.9.24「中隔子宮のガイドライン(ASRM)」
2015.11.29「子宮形態異常(子宮奇形)の妊娠経過」
2015.4.7「子宮形態異常の分類の違い(ASRM vs. ESHRE)」
2014.2.6「☆子宮形態異常の妊娠への影響は?」
2013.8.30「☆子宮形態異常の新分類」