中隔子宮のガイドライン(ASRM) | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

米国生殖医学会(ASRM)から中隔子宮のガイドラインが発表(Fertil Steril 2016; 106: 530)されましたので、ご紹介いたします。

診断:子宮底部の筋層の中間から子宮内の突出先端までが1.5cm以上であり、突出部の角度が90°未満のものを中隔子宮とする(双角子宮は子宮内の形状は中隔子宮と似ているが、子宮底部の外側の凹みが1cm以上あるものとする)。また、弓状子宮(子宮内の突出先端までが1cm未満であり、突出部の角度が90°以上)は正常変異と考える。

推奨(エビデンスレベルをA〜Cで表示)
1 診断には画像診断+子宮鏡が望ましい(腹腔鏡+子宮鏡は侵襲性が高い):グレードB
2 不妊症や流早産既往の場合には、中隔切除が望ましい:グレードC
3 不妊症や流死産既往のない場合には、よく相談のうえ方針を決める:グレードC

解説:中隔子宮は流早産と骨盤位(さかご)のリスクが増加することが知られていますが、不妊症との関連はやや証拠不十分です。不妊症や流早産既往の場合には、中隔切除により生産率が改善されますが、不妊症や流死産既往のない場合には、手術の効果とリスクを天秤にかけて考える必要があります。中隔切除は内視鏡で行いますが、手術に使用するデバイスとして最適のものは決まっていません。また、術後の妊娠許可までの期間や癒着防止の対策として最適のものは決まっていません。