☆子宮形態異常の妊娠への影響は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

子宮形態異常(子宮奇形)の妊娠への影響について質問がありましたので、一度まとめておきます。

Hum Reprod 1997; 12: 2277
要約:手術しないで妊娠に臨んだ場合の生産率は、単角子宮44%、重複子宮40%、双角子宮63%、中隔子宮62%、弓状子宮83%でした。

Hum Reprod Update 2001; 7: 161
要約:手術しないで妊娠に臨んだ場合の生産率は、単角子宮45%、双角子宮40%、中隔子宮40%、弓状子宮65%でした。

Obstet Gynecol 2001; 98: 1099
要約:手術しないで妊娠に臨んだ場合の生産率は、中隔子宮50%、弓状子宮76%、正常子宮85%でした。

解説:「手術しないで妊娠に臨んだ」とありますが、単角子宮と重複子宮については手術法がありません。双角子宮、中隔子宮、弓状子宮については、手術を行うことができます。しかし、上記の生産率からみても、弓状子宮に手術を行う意義はほとんどないと考えます。双角子宮と中隔子宮については、手術を行う場合もありますが、中隔子宮は子宮鏡で行えるのに対し、双角子宮は開腹手術となりますので、身体への負担が大きく異なります。

生産率が低下する理由として、単角子宮と重複子宮は子宮の容積の問題(子宮の容積が半分)、双角子宮と中隔子宮については血流不足の問題(不十分な血管構築)と考えられています。このため、流早産の頻度が増加し、胎児の位置異常(さかごなど)が生じます。

下記の記事を参考にしてください。
2013.7.8「☆見逃しやすい子宮と膣と腎臓の形」