Q&A2608 Th1/Th2について | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 他院で移植予定、リプロでオプション検査実施。
 
Th1、Th2の値についてお聞きしたいのですが、
Th1: IFNγ+/IL4−  20.9
Th2: IFNγ−/IL4+  2.4
Th0: IFNγ+/IL4+  1.3
  : IFNγ−/IL4−  75.4
Th1/Th2(CD4)比   8.7(=20.9/2.4)
という値でした。この場合、タクロリムスなどの免疫抑制剤を使用する必要はありますでしょうか。移植予定のクリニックでは、コロナの影響で現在使用は出来ないとの事でした。また、不育症専門のクリニックの医師によると安易にタクロリムスを使用するのは好ましくないとの事で混乱しています。

最後の移植になるかと思いますので、他にはBCEや子宮内フローラ検査など一通り実施しましたところ、不育症は少し引っ掛かりアスピリンとヘパリン対応、子宮内は良い菌も悪い菌もいないとの事でラクトフェリンを3錠服用中(移植前から膣錠使用予定)です。いずれにしても年内のどこかのタイミングで移植を実施したいと思っておりますが、待っている間に現在のこの状態が悪い方へ変化しないか心配です。(現在44才、正常胚盤胞一つ凍結中)

松林先生は以前に夏場は移植に向かないと仰っていたと思いますが、移植するなら秋頃など適切な時期はありますでしょうか。

 

A Th1/Th2についての議論は、私が慶應義塾大学病院の不育症外来を担当していた25年前にさかのぼります。当時は、私もTh1/Th2検査を実施しておりましたし、論文も発表しました。しかし、夫リンパ球免疫療法が2002年に米国FDAで全面禁止となった際に夫リンパ球免疫療法の対象者を選別する検査として用いられていた全ての検査(夫婦HLAタイピング、MLCリンパ球混合培養試験、クロスマッチ、遮断抗体、Th1/Th2検査など)が否定されました。その後は、Th1/Th2に関する論文は時々発表されていますが、検査の信頼性や再現性などに疑問点もあり、リプロでは検査導入を見送っています。従って、タクロリムスなどの免疫抑制剤を使用する必要があるかどうかは不明です。もし使うとしたら、コロナが落ち着いてからが良いのは間違いないでしょう。なお、ビタミンDならば使っても差し支えありません。

 

暑い夏は移植に向かないと言う論文がありますが、個人差(あるいは人種差)もあり一概には言えません。季節変動はわずか2%程度です。お急ぎの方はすぐ移植、お急ぎでない方は秋から冬に移植が良いかと思います。

 

Th1/Th2については、下記の記事を参照してください。

2019.2.24「ビタミンDでTh1/Th2が改善する!?

2019.2.23「☆Th1/Th2バランスについて

2017.12.31「☆IVIG(免疫グロブリン)が有効な方は?

2017.8.31「タクロリムスによる妊娠率改善の可能性 その2

2016.3.24「抗TNFα製剤による妊娠率改善の可能性」

2016.2.12「免疫グロブリン(IVIG)の効果 その2

2016.2.5「タクロリムスによる妊娠率改善の可能性

2013.12.13「☆夫リンパ球免疫療法

 

妊娠の季節性変動については、下記の記事を参照してください。

2020.5.14「」☆秋から冬が最も妊娠しやすい!?

2019.10.18「出生数の季節変動

2018.1.11「Q&A1699 季節変動は?

2015.9.19「宗教のルールによる出生数の増減

2013.7.22「☆季節により妊娠率•流産率は違うか?

2012.12.1「☆何月が妊娠しやすい?

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。